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なぜほとんどのものに色がついているのか?(3)

 金が貨幣以上に重要視される理由はご存じですよね。長期間安定してその質量が変わらないため、金のそのものを長い間保存できるからです。こういった使われ方をしているものはごくわずかです。だから希少価値が生まれる。ものが単一構造をとり、安定してそのままを維持するのは非常に難しいことなのです。

 どの分子も最終的には安定した状態で落ち着き、他からエネルギーが供給されなければ形を変えないようになります。それらは、鉱物や岩塩といったある一定以上の大きさの固体となって地球という星を形成しています。これらは、多くの場合結晶構造をとっています。

 ただ、金属のように単体の原子からできているわけではありません。「光沢とは何を見ているのだろうか?」で書いたとおり金属表面は電子に覆われ太陽光からもらったエネルギーで振動しています。つまり、非常に反応しやすい状態にある。そのため、空気中の酸素や窒素あるいは水分子と化学反応して酸化物の形に変わります。鉄が錆びるのはこの化学反応のためです。

 ただ、鉱物ができあがったのは、現在とはまったく違う、地球創生期なので、単純に空気中の分子と反応してできたわけではありません。

 多くの鉱物はこの酸化物が混ざり合ったものです。「透明であること」で書いたとおり、可視光の波長よりも大きな塊は、光を反射します。従ってほとんどの鉱物は白っぽい色をしています。鉱物に色が着いている理由は、こうして一番安定な状態になるためにある程度の大きさをもち、結晶構造をとっているからです。つまり、安定な状態を維持する形状になったため、結果的に色が着いているのです。

 それでは、動物や植物などの生き物には、なんで色が着いているのでしょうか? 実は、太陽光が届かない深海に住むエビたちの仲間には透明な姿をしたものがいます。これは、太陽光にされされることがないことと寿命があまり長くないからだと思われます。太陽光にされされている場所でもプランクトンのように透明な生き物はいます。これらは総じて寿命が短い生き物です。

 こう考えてみると、太陽光にさらされていて、かつある一定期間寿命を持った生き物に色が着いているように思えます。生き物は、新陳代謝することで生命を維持してます。古い細胞を捨て、新しい細胞に入れ替えることで生きています。新陳代謝をするには、エネルギーが必要です。そのエネルギーの大元を辿っていくと太陽光に行き着きます。

 まず、植物です。植物は、葉っぱの緑の部分で可視光の緑以外の波長領域の光を吸収します。その光のエネルギーを使って根から吸い上げた水と空気中の二酸化炭素を化学反応させて酸素をつくり出します。このとき、植物のエネルギーとなる炭水化物(ショ糖やデンプンなど)を自分の中にに取り込みます。

 この炭水化物をエネルギー源として植物は、生命を維持しているのです。植物の葉っぱが緑色をしているのは、太陽光のうち炭水化物を作るのに効率的な光を得るためです。そのため、結果的に葉っぱは緑色をしているのです。

 我々人間を含めた動物は、光のエネルギーを直接取り入れることはできません。そのため、植物や他の動物の炭水化物を摂取してそれを生命維持のエネルギー源としています。我々日本人の主食である米も炭水化物ですよね。お米を食べて新陳代謝できるエネルギーを確保しています。

 先ほど、深海に住むエビの仲間は、透明だと言いました。そう、動物のように、他のものを食べることで生命を維持するのであれば、寿命が短ければ、透明でもかまわないのです。しかし、太陽光のもとで、ある程度以上生命を維持するためには、太陽光から身体を守る必要があります。そのために紫外線などのエネルギーの高い電磁波から身体を守るために人間は、色素を持っています。

 全ての動物が人間と同じ目的で色素を持っているのかまでは、わからないのですが、おそらく寿命を維持するために色を持っているというのは間違っていないような気がします。
 動物も植物も生命を維持することで結果的に色を持っているのでしょう。

参考

 エッセイの目次

 光沢とは何を見ているのだろう?(1)

 光沢とは何を見ているのだろう?(2)

 光沢とは何を見ているのだろう?(3)

 透明であること(1)

 透明であること(2)

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