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salsa『ANGLE』発売記念 3人のラーメンライターによるクロスレビュー

KKV Neighborhood #193 Disc Review - 2023.11.09
salsa『ANGLE』review by 斉藤光輝HASH-ROYALケイキリヲ

AQU-003

はじめに
2010年代初頭からライブを中心に活動を続けてきたsalsaが8年ぶりとなる2ndアルバム『ANGLE』をリリースした。私たちが日々を暮らす上で感じる違和感やズレを一歩踏み込んで見つめて曲に落とし込むsalsaのスタイルは常に一貫している。私にとってライブハウスはそういう異形の才能が集い、生まれる場所であり、時にそれが世間の常識と思われていた間違いを突き崩すこともある。ライブバンドとしての定評は申し分のない彼らもコロナの時期にはバンドの立ち位置や意義をもう一度考えないといけなかったはずだ。それには葛藤もあったはずで、その内省せざるえない時期に作られた本作はやはり変わることのないsalsaの音楽となっている。
私は今作をリリースするにあたってレーベルとしていくつかのサポートをすることにした。そこには明言できるようなはっきりとした理由はないのだけれど、salsaというバンドの正直さと前に進もうとする意思には何か教えられるものがあるような気がしている。
このクロスレビューは鈴木健介のラーメンライターとしての繋がりで実現したのだが、ラーメンとロックが直接繋がるわけではない。しかし、この組み合わせはいろんな意味でsalsaというバンドをよく表しているのではないだろうか。
与田太郎(KiliKiliVilla)

しらす(斉藤光輝)

新作『ANGLE』のリリースおめでとうございます。vo.&gの鈴木健介(以下スズケン)が大のラーメン好きだから、その繋がりで呼ばれた俺だけど、1990年から約20年近く宇田川町や新宿でレコードやCDのバイヤーをやっていたんだ。しかもレーベルの与田さんにはその時代スゲぇ世話になってて、こんな話断る訳にはいかねぇだろって事なんだ。俺が食べたラーメンの杯数もヤバいけど、コメントを書いた音楽作品の数も相当なもんだぜ。
スズケンとの出会いは6〜7年前で、場所は下北沢の「光の森」という飲み屋。最初はラーメンの話で意気投合し、2015年リリースの『VERY HARDCORE』でsalsaの音楽を聴き、ライヴハウスに足を運ぶようになった。ちなみにスズケンのラーメンの好みはひと言で言えば“硬派”だ。話題を追っかけるだけでなく、ラーメンの本質に迫る食べ歩きに共感する。TBSラジオでスズケンのラーメン愛に満ちたトークを聴いた人もいるだろう。完全に余談とは言え、この姿勢がsalsaの音楽に与える影響は大きいと感じている。
して待望の新作がこの『ANGLE』だ。
3人で生み出す豪速球のグルーヴ。ニヒルな笑みを浮かべたと思ったら、時に底抜けにダンサブルであり、ロックンロールのダイナミズムを見事なまでに体現。salsaの演奏には3人独特の間や空気がある。世の中には何かを足せば良くなるバンドもいるが、salsaの場合はこの3人で完成されていて、その緊張感が堪らないんだ。正にミニマムでマキシマム。これがsalsaの真骨頂。
salsaの本領発揮はやはりライブだ。ライブハウスごとひっくり返す様な痛快なパフォーマンスは圧巻だ。ひねくれてるのかと思ったら、真正面からものすごい勢いで突撃されるから気をつけてくれ。コロナ禍も寡黙にスタジオに入り続けていたsalsaの破壊力はハンパないぜ。俺が言うんだから間違いない。本作「ANGLE」を手にした人、サブスクで聴いた人、全員ライヴハウスへの道ができている。ライブハウスで会おう。

しらす(斉藤光輝)プロフィール
1990年に愛知県より上京し、WAVE、TECHNIQUE、タワー・レコードといったレコード屋に勤務する傍ら、テクノDJとしても活動していた。趣味のラーメンの食べ歩きでは日本全国47都道府県を食覇。現在はラーメンの「レコード大賞」とも言われる「TRYラーメン大賞」(講談社)で16年審査員を務める。2020年には「マツコの知らない世界」(TBS)に出演した。

HASH-ROYAL

極めてダンサブル。
本作を一言で言い表すとするならば、私はこの言葉をチョイスする。
ここで言うダンサブルは、四つ打ちを並べただけのステレオタイプなそれではなく、むしろ真逆の構造で成り立っている点が本作の独自性。

オーガニックで外連味のないサウンドプロダクションで紡がれた、呆れるほど膨大なリハーサル量が一聴して伝わるほど正確無比な音たち。
しかもそれが無機質にならず、むしろ生々しさが濛々と立ち込めており、それはさながらライブハウス特有の眩いばかりの地下臭を思わせるほどだ。
見方によっては全編が即興演奏のような不規則性が生む、ダイナミックな快感。

そこに乗る、浮遊的でいて心の隙間に染み入るようなメロディ。
これらが溶け合って放つ、怪しくも心を鷲掴みにするオーロラのような音像。

自宅のスピーカーから届く聴覚への刺激、たったこれだけで酩酊へと誘うかのようなパフォーマンスに、これは本当にスタジオ作品なのか?と思わず疑ってしまったのも無理もない。

音源でこれほど踊らせるのだから、生の現場で身体が動かない訳がない。
いつもと変わらぬ日常に身を置いていようが、空想世界へ強制連行してくれる、危険かつ甘美な作品の誕生だ。

HASH-ROYAL プロフィール
重鈍グルーヴ型ヘヴィロックバンドJUNKY WALTZ(現在は活動休止中)を率い、過去フルアルバム2作をリリース。その傍ら、全国のライブ会場近辺でラーメンを食べ歩き、47都道府県踏破を達成。
また地元・東海地区で「東海三県 自家製麺活性化プロジェクト」を主宰。
東海地区のラーメン本・ラーメン特番の審査員など、ラーメン関連のメディア出演も多数。
2022年にはラーメンに関する疑問・珍問をロジカルに解き明かす、ラーメン教育系YouTubeチャンネル「HASHのラーメンアカデミア」を開設。全世界のラーメンリテラシー爆上げに向けて邁進中。

ケイキリヲ

下北沢のサーファー。沢を下るサーファー。

サーファーリトルチルドレン、salsa。
たぶん天気予報なんか見ちゃいない。朝のニュースをわりと勤勉にチェックしているから、天気予報もそれで見ている。冷たくなって脂固まる前に飲み干してしまいたい音の塊。因数分解不可能な音の波が、北沢川から目黒川を経て大海原へ飛び込んでいくのを、俺は、見た。というか、入水音とリズムを、リディムを、感じ取った末に出た言葉。

こ、これは!?!?!?

マブシャブフィードバッカー・イエスボス。これはインテレクチュアル下北沢ロックの不可逆圧縮音源。茶沢通りの坂を下っても三軒茶屋の階段にたどり着けない脳みそズルむけているユーレイは、前歯というイメージを失っても踊っている。この夏の日差しの熱さで外野フライも見えなくなっている。単純明快に言えば、りかいがおいつかない。

このアルバムはSDRRというよりもSSR級のレアカード。

最後にこれを言わなきゃいけないなんて、なんてザマだ。マザーファッカー。俺、少しついてなかったな。こんな刺激の強い音源、聴かされると思っていなかったんだ。
やっちゃおう💩🍺👍🌈

ケイキリヲプロフィール
腐れインスタグラマー。食料は主にラーメン。下手の酒好き。モリッシーの来日公演のチケット代を入金し忘れるという痛恨のミスを犯した近況報告をここに残させていただきます。


AQU-003

salsa / ANGLE
CD 3,000円税込

2011年に初の音源をリリース、以降下北沢のライブハウスを中心に活動。ポスト・パンク的な硬さとキレの良い直線的なサウンドにのせて違和感やズレを独特の感性で歌うトリオ。特定のシーンに関わることなく独自の路線を淡々と進み、孤高とも思えるスタイルは現代の常識からはみでた存在とも言えるが仲間は多い。コロナ禍で一度自分たちの立ち位置と音楽を見つめ直し、しかし変わルコとのないスタンスでアルバムを完成させた。これまで2度のアメリカ・ツアーを行い手応えを掴んで帰国、2024年には3度目のアメリカー・ツアーを行う予定。
収録曲
1.サーファー
2.天気予報
3.wash
4.ユーレイ
5.ABUKU
6.やっちゃおう
7.New Song
8.SKA
9.SDRR

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