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SUPERCHUNK『Wild Loneliness』記念インタビュー マーク・マコーンが語った30年変わらぬインディースピリット

KKV Neighborhood #124 Interview - 2022.03.17
Interview by 山口智男 Translation by 竹澤彩子
Photo by Brett Villena

結成から33年を迎えてもなお、エモにも繋がるUSインディ・ロックの雄、スーパーチャンクのフットワークは極めて軽い。そんな彼らの活動はコロナ禍の真っ只中でも止まることなく、4年ぶりにリリースした12作目のアルバム『Wild Loneliness』もアコースティック・ギターの音色を前面に押し出しつつ、ストリングス、ピアノ、ホーンの音色も効果的に使った意欲作に。
スーパーチャンクは1989年、アメリカ南部ノース・カロライナ州のカレッジタウン、チャペル・ヒルで活動をスタートさせた。最初の3枚のアルバムこそ、マタドール・レコードからのリリースだったが、バンドの活動開始と同タイミングで自主レーベル、マージ・レコードを立ち上げ、以来、音楽だけを拠りどころにD.I.Y.の活動を貫き通してきた。

ティーンエイジ・ファンクラブのノーマン・ブレイクとレイモンド・マッギンリー、R.E.M.のマイク・ミルズ、シャロン・ヴァン・エッテンら、『Wild Loneliness』の豪華ゲストの顔ぶれが物語るのは、そんな活動を今も変わらずに続けるスーパーチャンクに対するリスペクトだ。

バンドのフロントマン、マーク・マコーン(ボーカル&ギター)が『Wild Loneliness』のバックグラウンドと、そこに込めたスピリットを語ってくれた。

――4年ぶりとなるニュー・アルバム『Wild Loneliness』のリリースおめでとうございます。オリジナル・アルバムとしては12作目なのですが、結成から33年のキャリアを持つみなさんでも新作のリリースにはワクワクするものですか?

どれだけやってもいまだにワクワクするものだよ。いざアルバムが完成して、今からようやくみんなに聴いてもらえるんだと思うとね。もしかして一番ワクワクする瞬間かもしれない。もちろん、アルバムを作る作業自体も大好きなんだよ。それでも作っている最中は目の前にある曲のことで頭がいっぱいで、どんな音なのかとか、曲の出来はどうなのかとか、この曲に必要とされてるものは何なのかとか、そこに全神経を集中しているからね。でも、アルバムが完成してしまえば、自分達にできることはすべてやった。あとはみんなに聴いてもらうだけだ、みたいな心境なんだよね。だから、いまだにワクワクする。新作を出すごとにサウンドの趣向を変えるのも1つにはそういう理由がある。毎回、自分達の作品を楽しみにしてくれている人達に次はどんな音になってるんだろう?って毎回ワクワクしてもらいたいからね。

――『Wild Loneliness』はスーパーチャンクのキャリアにおいて、どんな位置づけのアルバムになったという手応えがありますか?

アルバムの曲自体はコロナ禍だの、ロックダウンだのが起きる以前から書き始めていたんだよ。ただ、その時点からすでにアコースティック・ギターを中心に書いてはいたんだ。というのも、1つ前の『What A Time To Be Alive』(2018年)とはまったく違う方向に振り切りたいという気持ちだったからなんだ。今回の作品に取り掛かる少し前に『AF (Acoustic Foolish)』(2019年)という、4枚目のアルバム『Foolish』(94年)をアコースティック・バージョンとして再録音するという企画の作品を出していて、それを元に東京も含め、何本かライブもやってね。『AF』って作品自体もそうだし、その時のサウンドの感触がすごくいい感じだなって思ったんだよ。そこから自然にアコースティック・ギター中心に曲を書き始めたところにパンデミックが起こり、そのままロックダウンに突入してしまった。メンバー全員でスタジオに入ってレコーディングするのが困難な状況下で、ますますアコースティック・ギターで曲を書くってことが自分の中でストンと腑に落ちたんだ。今、インタビューを受けてるこの部屋で、1人でアコースティック・ギターで曲を書いてたんだけど、この場所で、たった1人でパンク・ロック的なラウドな音をかき鳴らす気分にはなかなかならないからね(笑)。

だから、最初は自宅で、1人で作り始めたんだけど、そのうち状況的に、今回ばかりは今までとはまったく違うアルバムの作り方をしないとってことが明白になってきた。例えば『AF』を作った時ですら、バンドとしてスタジオに入って、基本的にはどの曲もライブ・レコーディングしてるんだよ。アコースティック・ギターにドラムとベースという編成が特殊だったとは言えね。要するに、昔から全員で一緒の部屋に集まってレコーディングする方法が僕らのデフォルトだったんだ。だから、スーパーチャンクの作品としては、メンバーが各自のパートを個々にレコーディングしたのは今回が初めての試みになる。でもまぁ、自分としても今回はそれでしかたがないと思ってた…と言うか、むしろ、どういう感じになるのか興味津々だった。ただ、いかにも自宅でバラバラに録音しました的な音にするのは絶対に避けたかったし、いつもの昔ながらのスーパーチャンクの音が感じられるようにしたかった。だから、そこは本当にね、別々にレコーディングするってことで一番気がかりだった点だね。

――実際、リモート・レコーディングに挑んでみていかがでしたか?

やっぱり、みんなでスタジオに集まることができないっていうのは相当フラストレーションだったよ。ただ、いったんそういう形でレコーディングするって決めてからは、着々と作業を進めていった。ジョン(・ウースター/ドラムス)が僕のところに通って、ドラムを叩いてくれたんだ。もちろん、その間は2人ともずっとマスクをつけながらね。まあ、そうしたコロナ渦ならではの違いはありつつ、確かに最初は相当、違和感があったけど、リモートでもそこそこ行けるかもって確信してからは、なんとけ行けるって思った。結果的には大正解だったと思うよ。というのも、今回、僕達がこうした形でのレコーディングに踏みきったのは、「コロナ禍前の日常に戻るまで待っていたら、いつアルバムが出せるのかわからない。だったら思いきって行動してみよう」と思ったところもあるんだ。実際、そこで二の足を踏んでいたら、今回のアルバムはなかっただろう。それに曲を書いたら、できるだけ早く出したいという気持ちもある。今回のアルバムにしても、本当なら2021年に出したかったんだけど、それには間に合わなかった。それを考えると、今回、リモートでレコーディングに踏みきった一番の理由は、僕の堪え性のなさかもしれないな(笑)。

――『Wild Loneliness』の曲は、『AF』を作った延長で、極々自然にアコースティック・ギターで作り始めたそうですが、アコースティック・ギターの音色を前面に押し出しつつ、ゲスト・ミュージシャンが奏でるストリングス、ピアノ、ホーンの音色も効果的に使っていますね?

『AF』を作ったとき、オーウェン・パレットが何曲かでストリングスを担当してくれたんだけど、それがまあ素晴らしいの一言でね。ぜひともまたオーウェンに関わってもらいたいと思ったのも今回のアルバムのきっかけの1つでもあるんだ。あの時はゲスト・ヴォーカリストを招いたり、サックスの他にもいろいろな要素を取り入れたりしてるんだけど、どれもすごくいい感じだったので、それを自分達の新曲でも試してみたいという気持ちになったんだ。

――それでパンク的なエネルギーに満ち溢れていた『What A Time To Be Alive』とは、まったく違う方向に振りきった、と?

『What A Time To Be Alive』は、ただただ怒りを爆発させたようなアルバムだったと言うか、権威主義やファシズムの台頭に対しての憤りと、そうした怒りに常に晒されていることで、どれだけ自分の脳や精神衛生に良くないかってってことを、ひたすら訴えかけるアルバムだったんだ。前回のアルバムでそういうことをやっているから、今回はもっと社会やコミュニティのネガティブじゃないほうの、ポジティブな面にスポットライトを当ててみたいと思ってね。それこそ家族や友達とか、ご近所さんとの絆とか、そういう明るいところに目を向けてみたかったんだ。昨今のパンデミックだのロックダウンだのがあったおかげで、余計にそうしたものの価値を実感させられたところもあったしね。外に出ることもできないという状況で、家に籠って家族という極めて身近にいる人達と過ごすしかないんだから、その小さな単位の中で、できるだけポジティブな面を見出したかったんだ。

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――ところで、『Foolish』をアコースティック・アレンジで再レコーディングしたのは、なぜ? その頃から、『Wild Loneliness』で奏でているようなサウンドに興味があったのでしょうか?

過去何年か、 『Come Pick Me Up』(99年)ではジム・オルーク、『Here‘s To Shutting Up』(2001年)ではブライアン・ポールソン、『Majesty Shredding』 (2010年)ではスコット・ソルターというふうに名プロデューサーと一緒に仕事をさせてもらってきて、そこで少しずつ得た知識だったり、経験だったりを、自分達のアルバムにも反映させたいっていう気持ちはずっとあったんだ。アコースティックっていうことに関しては、昔からツアーでもアコースティックで演奏するコーナーを設けたり、それこそレコード・ショップのインストア・ライブなんかは完全にアコースティックでやったりしてたからね。そうやって自分達が昔から慣れ親しんでいる曲を元の姿とは違うフォーマットで体験するという遊びを昔から楽しんではいてね。それで自分達が運営しているレーベル、マージ・レコードの30周年記念で何か特別なリリースをしたいなということになって、マージやその他のアーティストやバンドの曲のカバー集は以前にも出したことがあるけど、自分達のアルバムを丸々カバーする企画はやってなかったなと思ってね。これもまた自分なりに何かしらサプライズやおもしろいことをしようというところから思いついたのが始まりなんだ。

――『Wild Loneliness』がリモート・レコーディングになったこともその1つだと思うのですが、パンデミックとロックダウンは、スーパーチャンクの活動にどんな影響を与えましたか? 

やっぱりツアーが難しい状況にはなったよね。いくつかのライブもリスケになったし、今まで普通だったことがもはや全然普通にできなくなった状況の中でバンドとして活動していく方法を模索していかなくちゃならなかった。今回のアルバムでも、なんとかツアーできたらいいと思うし、ぜひともライブで演奏してみたいという気持ちがあるんだよ。というのも、今回すごく特殊だったのは、自分のパートを各自が個々にレコーディングして作ってるから、今回の曲はまだ一度もバンドとして演奏したことがないんだ。つまり、バンドとしてまだ1回も演奏したことがない新曲の数々が今回、アルバムという形になってるっていう(笑)。だから、このアルバムの曲をどうやって演奏したらいいのか、これからリハーサルしながら探っていかなくちゃいけないんだ。これはまさに今回ならではの特殊な事情だよ(笑)。

――そんな中で、バンドの活動に対する考え方の変化や新たな気づきはありましたか?

自分達は思っていた以上に柔軟なんだっていうのは、意外な発見だった。今までとはまったく違うレコーディングを受け入れられることも、それで案外行けちゃうんだってことも。しかも、それでもこうしてスーパーチャンクらしい音になってるんだからね。

――スーパーチャンクのファンである詩人のマギー・スミスは『Wild Loneliness』について「This new record is less about what we’ve lost in these harrowing times and more about what we have to be thankful for.(今回のニュー・アルバムはこの何年間かのいたましい時間の中で失われてしまったものよりも、感謝すべきものに焦点を当てている)」と発言していますが、『Wild Loneliness』のスピリットを言葉にするとしたら?

うん、僕もまさにマギー・スミスの意見に同意するよ。あとはやっぱり、さっきの話にもあったように、ネガティブなエネルギーはできるだけ控えめに(笑)、その代わりできるだけポジティブなエネルギーを放っていきたかった。まあ、そのへんのバランスだよね。自分自身の気持ちも日々移り変わっていくものだし、いまだに政治に対する怒りを抱えているし、今のパンデミックの状況に対してフラストレーションも抱えてる。ただ、同時に今、自分は本当に恵まれているなっていう気持ちでもいるんだ。こうして家族や仲間に囲まれていてね。だから、そうした誰もが日々経験している感情の揺れ動きをポジティブとネガティブの両方で描いていきたかったんだ。

――『Wild Loneliness』を聴いて、ちょっと60年代のフォーク・ロックやソフト・ロックを連想したのですが、今回、アコースティック・ギター、ストリングス、ピアノ、ホーンを使って、バンド・サウンドを作る上でインスピレーションやヒントになったバンドや作品はありましたか?

あー、どうなんだろう。今、話を聞いて意外だなと思ったのは、自分の中では今回、割と80年代路線かなって思ってたんだよね。80年代って言ったら、自分がまさに10代の真っ只中の10年間なわけで、まさに多感な時期に聴いていた音楽なわけだよね。もちろん60年代、70年代の音楽も好きだし、自分がバンドを始めた90年代の音楽にだってもろ影響を受けているし。それこそ今回のアルバムにも参加してくれているティーンエイジ・ファンクラブだとか、あるいはエヴリシング・バッド・ザ・ガールだとか、ロビン・ヒッチコックだとか、リプレイスメンツだとか。今言った人達の作品をプレイリストにしてバンドの他のメンバーに参照用として送ったんだよね。日本からも細野晴臣さんの作品を入れたよ。細野さんの作品はアンビエント系から、思いっきりフューチャリスティックな方向に振りきったものまでかなり幅広く聴き込んでいるんだけど、ちょうど『HOSONO HOUSE』(73年)のリイシューが出た時期と重なったこともあって、けっこう聴いてるんだよ。だから元々のアイディアと言うか、イメージとしては、あくまでもアコ―スティック・ポップなんだけど、何かしらちょっとおかしいと言うか、何かちょっとこう奇妙な捻りが入っていると言うか。だから、アコースティックでフォークなポップだとしても、例えばバーズみたいな素朴で純粋無垢な感じと言うよりは、その裏で表に見えているサウンドとは別の文脈が同時進行しているようなものをイメージしていたんだ。

――80年と言っても、一般的な80年代のイメージのきらびやかなエレポップではないわけですね。

そうそう。例えばキュアーの『The Head On The Door』(85年)なんかは、僕にとって大切な、大好きな1枚なんだけど、あのアルバムにもアコースティック・ギターがふんだんに盛り込まれているんだよね。あるいはクリーンをやっていたデヴィッド・キルゴーを筆頭に、チルズ、バッツ、ヴァーラインズといった80年代のニュージーランドのバンドのサウンドって、アコースティック・ギター主体なんだけど、アコースティック・ギター自体がドライヴ感を担ってると言うのかな。ああいった感じのイメージだよね。

――アルバムにはマックとローラ(・バランス/ベース&ボーカル)が運営しているマージ・レコード所属のアーティストを中心に多彩なゲストが参加しています。中でもティーンエイジ・ファンクラブのノーマン・ブレイクとレイモンド・マッギンリー、R.E.M.のマイク・ミルズ、シャロン・ヴァン・エッテンの客演は話題の1つだと思うのですが、3組が参加することになったいきさつは?

そうだ。今の80年代話でもう一つ思い浮かべたのがR.E.M.で。すごく疾走感があるサウンドに乗せて、その裏で表には見えないダークな本質が根底を流れていくようなね。でも、表向きにはあくまでも華やかなギター・サウンドで彩られているという。マイク・ミルズは以前に何度か会ったことがある程度で、元々知り合いではなかったんだけど、昔から他のミュージシャンのサポートを積極的に務めてるっていう印象だった。僕は個人的にマイル・ミルズのあのバック・ヴォーカルこそがR.E.M.の隠れた主役であり、彼の奏でるハーモニーこそがR.E.M.のたまらない魅力の一つだと昔から感じてたんでね。今回、「On The Floor」を書いた時に、すごくR.E.M.っぽいなと思ってね。この曲に本物のマイク・ミルズがバック・ヴォーカルをつけてくれたら、なんてゴージャスなんだろうと思ってね(笑)! ノーマンとレイモンドは元々親しい間柄で、一緒にツアーもしたし、マージから作品も出しているし、あの2人ならコロナ渦でも自宅にレコーディング環境がちゃんと揃ってるに違いないと踏んだわけさ(笑)。シャロン・ヴァン・エッテンのパートナーでもあるドラマーのジーク・ハッチンズは元々僕のサイド・プロジェクトのポータスタティックでドラムを叩いてくれてたんだ。他にもいろいろなバンドでドラムを叩いてるんだけど、シャノンともジーク繋がりで少しだけ面識があったんだ。それに純粋に彼女の音楽のファンでもあったしね。「If You Are Not Dark」を作った時にシャロン・ヴァン・エッテンの「Seventeen」に重なるところがあるなと思ってね。ぜひとも彼女に歌ってもらいたいということで声をかけてみたら、幸い彼女も自宅にレコーディングできる環境を持ってたんで、それで今回リモートでの共演が実現したわけさ。

――ところで、マージは現在ではUSインディを代表するレーベルに成長しましたが、レーベルを運営する上で一番大事にしていることは? また、レーベルを運営する上で考え方が変わったことと変わらないことを挙げるとしたら?

今ではスタッフの人数もだいぶ増えたけど、最初は本当にごく少人数で回していたんだ。今は確か総勢21名のスタッフ体制になるのかな。ただ初めはほんとにローラと僕の2人きりだったから、その頃から比べたらレーベルとしてはかなり大きく成長したことになるけど、それでもいまだにあの頃と何ら変わっていないような気もするんだよ。僕達の基本的な考え方だとか、物事へのアプローチとか、どんなアーティストと一緒に仕事をしたいかっていう考え方とか。ただもう純粋に音楽ありきで、ここまでずっとやってきてるんだ。その音楽を聴いて、ワクワクドキドキする気持ちなれるかどうか、自分達と同じ感性を共有できるアーティストなのかどうか。単純にそれだけだよ。

これはアーティストと接していく中で今でも度々、実感させられることなんだけど、要するに僕達はアーティストと一緒に仕事をさせてもらってるんだよ。彼らアーティストは音楽を生み出し、アートを生み出しているわけだけど、うちのレーベルに所属しているどのアーティストも仮に、どこのレーベルに所属してなくても、やっぱり今と同じように音楽を作って、アートを作っていると思うんだ。それが彼らにとっては息を吸うみたいに当たり前で必要なことだから。ただ、時代と共に変化を感じてるのは、年々、将来伸びていく可能性を秘めたバンドを発掘することが難しくなっているっていうこと。というのも、今ではありとあらゆるプラットフォームにアクセスできるから、僕が発見する頃にはすでにBandcampで作品をリリース済みだったりして(笑)。僕がいいバンドだなって思う頃には、その界隈ではとっくに知られた存在になっている(笑)。そこがずいぶんと時代が変わったなとは思うところだけど、ただ、バンドやアーティストにとっては必ずしもマイナスではないし、むしろプラスの方が多いんじゃないかな。

――『Wild Loneliness』の最後を締めくくる「If You’re Not Dark」のエレクトリック・ギターのフィードバックを生かしたサイケデリックな音像が印象的でしたが、マックが特に気に入っていると言う曲をその理由と合わせて教えてください。

一番気に入ってるのは、やっぱりアルバムのタイトル・ソングにもなっている「Wild Loneliness」かな。今回のアルバムの持っている魅力がギュッと凝縮されているような気がするんだよね。デヴィッド・キルゴーを思わせるギターに先導されるキャッチーなギター・ロックと思わせたところで、アンディ・スタックのサックス・ソロが割り込んでくるという予想外の展開に、うわーって驚いてるところで、突然終わりを迎えるっていう。このアルバムの魅力をすごくコンパクトに伝えている気がするね。

――最後に、日本の熱心なスーパーチャンク・ファンにメッセージをお願いします。また日本で会えることを楽しみにしています。

日本でのライブは毎回すごく印象に残ってるってことは、ちゃんと伝えておきたい。メンバー全員とも日本に行くことを本当に楽しみにしてるんだ。最後に日本でライブをやったのがパンデミック前になるから、2019年の11月なのかな。パンデミックが始まる前にギリギリ・セーフみたいな形で、日本でツアーができたのは不幸中の幸いだった(笑)。あと毎回、何が楽しみかって言ったら、レコード・ショップ巡りだ。コロナ禍のロックダウン期間中に最後に日本に行った時に買い込んでいたレコードの数々のおかげでどれほど救われたことか。日野皓正、板橋文夫といった日本のジャズ・アーティストの作品だとか、アメリカでは入手できない日本のアンビエント系の作品を含めた日本の80年代ものとか。日本ではポップ・ミュージックのカテゴリーに入るのかなと思うんだけど、dip in the poolの作品はものすごく好きで、ソロ・アルバムを作る時にものすごく影響を受けてるんだ。あと、恥ずかしながら毎回楽しみにしてるのは日本の食事だ(笑)。日本でマズいご飯を食べた記憶がない。だからもう、できるだけ早く日本に行ってライブがしたいし、日本のファンのみんなとも会いたいよ。

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