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再掲載:マック・マコーン (SUPERCHUNK)、加藤修平 (NOT WONK)対談

KKV Neighborhood #201 Dialogue - 2023.12.22
マック・マコーン (SUPERCHUNK)、加藤修平 (NOT WONK)対談

この対談は2019年11月にSUPERCHUNKが来日公演でNOT WONKが共演した時に収録され翌月にキリキリヴィラのサイト内のマガジン・コーナーで公開された。先日SUPERCHUNKとNOT WONKが2024年の3月に合同ツアーを行うことが発表された、今回はそのツアーの開催記念として再掲載しようと思う。

PNEUMATIC TOUR 2024

『SUPERCHUNK and NOT WONK "PNEUMATIC TOUR 2024"』
時間:全公演 OPEN 18:30 / START 19:30
■2024年3月20日 (水・祝)北海道/苫小牧 ELLCUBE
料金:U-23 4,000円 / 一般 6,800円 / 当日 8,000円

■2024年3月23日 (土)大阪 堺 FANDANGO
料金:U-23 4,000円 / 一般 7,000円 / 当日 8,000円

■2024年3月24日 (日)東京 新代田 LIVE HOUSE FEVER
料金:U-23 4,000円 / 一般 7,000円 / 当日 8,000円

■2024年3月25日 (月)東京 新代田 LIVE HOUSE FEVER
※SUPERCHUNKワンマン公演
料金:U-23 4,000円 / 一般 7,000円 / 当日 8,000円

オフィシャル先行受付中:2023年12月25日(月) 23:59まで
チケットリンク:https://w.pia.jp/t/pneumatic/

主催/制作:Bigfish inc.
制作協力:ATFIELD inc. / Rimeout Recordings
INFO:エイティーフィールド 03-5712-5227 / http://www.atfield.net/


Photo by 佐藤祐紀

NOT WONKがファースト・アルバムを出した頃、加藤修平は〈Superchunkみたいにギターを弾いてMEGA CITY FOURみたいに歌えたらいいなってずっと思っています〉(https://www.hmv.co.jp/news/article/1505140033/)と公言していた。そんな彼にとって、11月18日に開催されたスーパーチャンクの来日公演でバンドが共演を果たしたことは、ひとつ夢を叶えた瞬間だっただろう。実は対バン当日のお昼、加藤とスーパーチャンクのマック・マコーンは初めて言葉を交わしていた。国は違い、歳も30近く離れていながらも、ともにオルタナティヴであり、なによりパンクである2人の誠実な対談。

インタビュー、構成:田中亮太、与田太郎
通訳:竹澤彩
写真:佐藤祐紀

苫小牧でスーパーチャンクを聴いていいた唯一の高校生

加藤「僕はいま25歳なんです」

マック「そうなんだ! 僕が25歳のとき、はじめて日本に来たんだよ。たしか92年。その頃は未来のことをそんなに考えてなかったと思う。レコードを作ってツアーして、次のレコードを作って……という感じで目の前のことに精一杯だったからね。大きなヴィジョンを意識することもなかったんだ。とにかく世界をツアーして回ることを楽しんでいたね」

加藤「僕がスーパーチャンクを最初に聴いたのは、高校3年生のとき――2012年頃でした。僕は北海道のめちゃくちゃ田舎の街に住んでいるんですけど……」

マック「北海道でライヴしたアメリカのバンドといえばフガジだよね。彼らが北海道のことを話していたことを覚えているよ」

加藤「そうです。聴きはじめた頃は、たぶん僕が苫小牧で唯一スーパーチャンクを好きな高校生でした(笑)。初めて買ったギターのネックにもスーパーチャンクのステッカーを貼ってましたよ。それ以前はもっとテンポの速いパンクとかを聴いていたんです。少し違う音楽への入り口がスーパーチャンクでした。自分が好きなパンクのキャッチーな部分もいっぱいあるけれど、でももっと緻密に音楽を組んでいる感じ。そういうところに惹かれました」

マック「僕たちが音楽を始めた時期は70年代のパンクやハードコアを聴いていたんだけど、僕の好きなディッキーズやD.O.A、ジェネレーションXなんかはパンクだけどポップでキャッチーな曲もやっていた。加えて僕はラジオを聴いて育ったんだよね。70年代後半にパンクが出てくる前には、ELOやAC/DCなんかのポップやクラシック・ロックもよく聴いていたね」

加藤「パンクが好きな人はパンクしか聴かない傾向が強いと思うんです。スーパーチャンクを聴いたとき、パンクだけを聴いていたら絶対にこういう音楽はできないだろうなと思いました。すごくいろいろなもの……70年代のパンクの感じもあるし、さまざまな音楽がミックスされていて」

マック「それは田舎街にいたのも関係しているかもしれないね、80年代のノースカロライナは、北海道に負けないぐらい田舎で、とにかくNYなんかとは違ったんだ。だから、スミスとかローカルのパンク・バンドとかオルタナティヴなサウンドをラジオでチェックしていたんだ。そして、大学生になってバンドを始めるときに、自分が聴いてきたサウンドをミックスしてみた」

Photo by 佐藤祐紀

加藤「スーパーチャンクをやるにあたって、最初からオルタナティヴという方向性があったんですか?」

マック「はじめからそういうアイデアがあったというよりも、自分たちが好きなアーティスト、たとえばハスカー・ドゥやソニック・ユースなんかに影響を受けていただけなんだ。彼らのサウンドはとてもユニークだよね(笑)。だから僕らもおもしろいサウンドをめざしつつ、かつ良い曲を作ってみたいと思っていた。でも、それが何か特殊なことだと意識はなかったね」

加藤「それは僕と一緒です(笑)」

変わらない魅力、新しいことに挑む楽しさ

加藤「スーパーチャンクが去年リリースしたアルバム『What a Time to Be Alive』を聴いてビックリしました。マックも今年52歳で、いったらヴェテランなわけじゃないですか? なのに、こんなにフレッシュにギターを鳴らしている。キャリアを積み重ねてきたアーティストは音楽的に静かになっていく傾向があると思うんです。でもスーパーチャンクの新作はめちゃくちゃうるさかった(笑)。20年前のアルバムよりもうるさい。そこにすごく感激したんです」

マック「それは僕らにとってもレコードを作るうえでのチャレンジのひとつだったよ。聴いた人がほかの作品と同じサウンドだと感じてほしくなかったからね。それともうひとつ心がけたのが、ライヴで演奏して楽しめるものにしたかったということ。新しさと自分たちが納得できるサウンドのバランスをとりながら、それを自然な感じにしようとした。なかなか難しかったよ」

加藤「97年の『Indoor Living』とか2000年前後のスーパーチャンクの作品は少し静かになった印象だったんです。ラウドさよりもギター2本のコンビネーションなどに意識を置かれていましたよね?」

マック「そうだね。僕らはこれまでたくさんのレコードを作ってきたけど、あの頃はキーボードを使ってみようと思って、毎日練習しながらいろんな方法で曲を書いてみたんだ。ときにはダイナミックに、ときには静かなイメージで、ラウドなパートと静かなパートを組み合わせたりしながらね。そのアイデアがうまくいった曲もあるけど、そうでもない部分もある。だけど、とにかくそれまでとは違ったことをやってみたかったんだ。 そのあとツアーでは日本にも行った※し、ツアー自体はとても良かったんだけど、911が起きたタイミングだったんだよね。なんだかとても奇妙なムードで、人々は音楽なんか聴きたくないって雰囲気だったし、僕らはそんななかでどうやって続けようかと思いながらワールド・ツアーをした。本当にストレンジな時期だったよ。キーボードを使っていることもあって、この時期の曲はいまあんまりライヴでやってないんだけど、これからはアレンジを変えてやってみたいと思ってる」
※ナンバーガールとの共演もはたした

加藤「いまはギターの入っている音楽は人気がないとよく言われていますよね。そうした時代のなかで、マックにはギターを弾くことに対するこだわり、意地みたいなものはありますか?」

マック「そうだね、説明するのが難しいけど、スーパーチャンクはギターで曲を書くし、ソロではシンセも使う。ソロを一緒にやっているメアリー・ラティモアはハーピストでもあるから、彼女とのレコーディングは初めてのことが多かった。自分にとっては新しい体験だし、いままでとは違ったことをやるのは楽しいよね」

加藤「マックは永遠のギター少年といった雰囲気があって、憧れています。」

マック「メコンズっていう70年代のイギリスのバンドがいて、2000年ぐらいに彼らのライヴを見たんだけど、とても楽しそうに演奏していた。ヨ・ラ・テンゴも大きな会場でライヴをやってるけど、昔から変わらない自分たちのスタイルで楽しそうにやってるよね。僕はそういうバンドたちにインスパイアされてきたんだ」

Photo by 佐藤祐紀

激動の時代、僕らはいつもどおりやるだけ

加藤「僕はマックのTwittterをフォローしているんですけど、マックはいつも何かに怒っていますよね(笑)。政治や女性の権利、ジェンダーについてのことなどさまざまな問題に言及しています。スーパーチャンクの音だけを聴くと、いわゆるパンクと思わないリスナーもいるかもしれないけど、マックはまさにパンク・イズ・アティチュードを体現していると思う。僕たちが日本で感じたり考えたりしていることと、マックの発言はすごくリンクしている気がするんです。住んでいる場所は違うけれど、時代が一緒だから同じ空気のなかにいるのかなと思えます」

マック「そうだね、政治的な不公平さとかについては、いつもなにがしかを感じてるよ。毎日クレイジーな出来事ばかりだから、人々はどう生きるべきかという問題を意識せざるをえないよね。子供を学校に連れて行って、仕事して、食事作って、さらにクレイジーな世界に向かってデモ行進もしないといけない(笑)。この不安な世の中をどう生きていくべきかって考えちゃうんだ」

加藤「マックはミュージシャンとして生活の中の音楽、生活者としての音楽というのを大切にしている気がするんです。自身のレーベル、マージを運営しているのもそうした態度の表れなのかなって」

マック「ミュージシャンでもありレーベルの人間でもあるのは、ちょっとおかしな感じなんだ。最初は自分のプロジェクトとして楽しめたんだけど、仕事となってくるとまったく別のものだし、どちらも良い部分と悪い部分がある。たとえば僕は音楽を聴いても〈このギターの音はどう作ってるんだろう〉とか〈プロデューサーはなにを考えてこのサウンドにしてるんだろう〉なんて考えてしまって、なかなか楽しめない、つい分析してしまうんだ。だから家にいる時はロックはほとんど聴かなくて、ジャズなんかを聴いてリラックスしてるよ(笑)」

与田「僕は彼の所属しているレーベルを運営しているんです。そこで訊きたいんですけど、マージは2000年以降に、アーケード・ファイアとかすごく大きなヒットを出していますよね。普通レーベルは初めのほうにヒットがあって、そこからなだらかに落ち着いていくものだと思うんです。マージが大きなブレイクを出し続けられる理由は、ご自身ではどうお考えですか?」

マック「特に秘訣や理由はなくて、マージは89年のスタートから少しずつ成長してきたと思う。最初の10年の間にはマグネティック・フィールズのアルバムがヒットした。世の中的にはそんなに大きなことではなかったけど、僕らにとってはとても意味のあることだった。次の10年ではアーケード・ファイアがヒットしたけど、そのときも大きな成功を機にやり方を変えることはしなかった。ずっと同じやり方でやってこられたんだ。アーケード・ファイアやスプーンみたいなビッグなバンドが、まだ僕らと仕事してくれているのは嬉しいよ」

与田「いまアメリカではCDやレコードが売れなくなっていると思うんですけど、マージはパッケージのセールスとストリーミングとの割合はどれくらいですか?」

Photo by 佐藤祐紀

マック「それはバンドによるね。デジタルに強いバンドもいれば、フィジカルに強いバンドもいるから。ファンの世代にもよる。昔からCDやレコードを買い慣れているファンが多いバンドは、まだフィジカルのセールスが良かったりする。ただ僕はロック・バンドはもっとデジタルで成功する道を探すべきだと思う。いまのストリーミング・サービスはメイン・ストリームのポップス、ヒップホップやダンス・ミュージックが中心だけど、マージでもフルーツ・バッツやヒス・ゴールデン・メッセンジャーというバンドでは大きなプレイリストにプッシュしていくプロモーションに力を入れていて、結果を出しはじめている。そういうことは僕らも試行錯誤している最中なんだ。でもフィジカルなのかデジタルなのかは、バンドによると思うね」

与田「数年前にNYのレコード・ショップ、アザー・ミュージックが閉店しましたよね。ショップが減っていることはレーベルに影響がありますか?」

マック「そこまででもないよ、NYの、特にマンハッタンは家賃も含めすべてがとても高いから入れ替わりも激しいんだ。その代わりラフ・トレードはブルックリンに巨大なショップを作ったし、まだマンハッタンで頑張っているお店もある。おもしろいのは大きなお店が閉店すると、かわりに小さな店がいくつかできることなんだ。だからレコード・ショップは減ってないと思うよ、いまアナログをリリースするレーベルも多いし、それぞれのショップが客さんに繋がろうと努力もしている。そういうお店からの情報はけっこう大事にしているね。ここしばらくは値段が高いカラー・ヴァイナルがとても人気があったんだけど、最近は普通の値段の黒いレコードが受けてきてる。そういう変化に気付くことがとても重要だよね。あとインストア・ライヴでその店のお客さんに直接会えたりするもの大事だと思う」

FEVERでの共演、その後

加藤「ツアーをいまでもやっていることについて教えて下さい。いちばんのモチヴェーションは?」

マック「もちろん楽しいからではある。でも僕らはそれほど大規模なツアーをやらないし、最近はヨーロッパにもさほど行ってない。なかなか収益があがらないし、赤字になってもしょうがないからね。家族もいるしさ。ツアーにはいろんなトラブルも付き物だしさ(笑)」

加藤「そこは僕らと変わらないんですね(笑)。スーパーチャンクはキャリアも長いし、ツアーもスムーズにこなせているのかと思ってました。」

マック「ライヴだけなら毎日楽しくできるよ(笑)。でもそれだけではないからね。物事をうまく進めるためには、その背景でいろいろな努力や工夫をしなきゃいけない。演奏するのは難しくないし、ただハッピーなんだけど(笑)」

加藤「ツアーに出て、その土地土地の若いバンドとやることも多いですか?」

マック「それはツアーによるんだ。前回のアメリカ・ツアーにはサポートでトーレスという女性シンガーに一緒に回ってもらったけど、毎日違うバンドがサポートしてくれることもあるしね」

加藤「実は今回、このツアーが発表されたとき、僕らの出演は決まっていなかったんです。だからスーパーチャンクが来るとTwitterで知り、そして〈なぜ僕らを出してくれないんだ〉と激怒した(笑)。そこで、主催の方に直談判して今回は出させてもらったんです。なので、共演できてとにかく嬉しい。マックに僕たちのライヴを絶対に観てほしいです!」

マック「もちろんだよ!」

このインタヴューのあとに行われたFEVERでのライヴでは、NOT WONKのライヴをステージ袖で微笑みながら観ているマックが目に入った。そして、東京のあとに開催された大阪公演の合間に彼はFLAKE RECORDSを訪れ、NOT WONKの7インチを購入していったという。実は、この日彼らはもうひとつ約束を交わしていた。それは、次回の来日では、加藤のホームタウンである北海道でも共演を果たそう、ということ。その実現も遠くはないのかもしれない。


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