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Sarah Recordsについて vol.5 サラの思い出 by カジヒデキ

KKV Neighborhood #159 Column - 2023.1.6
サラの思い出 by カジヒデキ

SARAH 18 THE FIELD MICE : Sensitive / When Morning Comes To Town

 僕が初めて買ったSARAH RECORDS (以下サラ) のレコードは、SARAH6のTHE POPPYHEADS。ほぼ同時に、7のANOTHER SUNNY DAYと8のTHE SEA URCHINSを買った記憶あり。多分88年の春頃だったのかな。そもそもサラの存在を知ったのは、確か小出亜佐子さんのZINE 英国音楽からだったと思います。そして当時既にLOLLIPOP SONICのライブに足繁く通っていたので、小山田くんや周りの友人達からTHE SEA URCHINSの「Pristine Christine」がいかに名曲かとか、「サラのレコードは全部買いだよね」みたいな会話を日常的にしていたと思う。それで急いで渋谷のZESTに行って購入したのがPOPPYHEADS。もうそれ以前のものは廃盤で手に入らなかったのだ、、。じゃあ、どうして「Pristine Christine」が聴けたかと言うと、小出さんがカセットに録ってくれたんだ。あの頃、C86を始めネオアコ、ポストパンク、ギターポップ、インディーポップ、アノラックなどと呼ばれたバンドのレコードは、直ぐにソールドしたり、既に超レア盤化していたり、日本にほとんど入って来なかった物もあり、名前は知っているけど聴けないレコードが沢山ありました。小出さんはよく、細かく丁寧な解説付きのコンピ・カセットを僕に作ってくれて、Pristine〜もその中に入っていたのです。僕の偉大な師匠!他の友人たちとも、編集カセットテープの交換で沢山の情報を得た時代でした。

C86以降シーンに多大な影響を与えたThe Pastelsのスティーヴンと98年9月

 いずれにしても、当時サラのDIYな姿勢はとても新鮮でした!勿論それ以前にもポストカードとかクリエイションとか素晴らしいDIYレーベルは沢山あったけど、サラは丁度僕らの世代とか、インディーが日本で注目され始め
た時期とタイミングが合ったんでしょうね。サラは発足当初、7インチのみのリリースで限定1000枚というのが売り!ジャケットはハンドメイドで、必ずポスターが封入されている。レコードのラベルには、レーベルの拠点で
あるブリストルの風景が印刷され、ジャケットやポスターなどにもそれらの風景はよく使用されました。
「ブリストルというイギリスの地方都市から届く友達からの手紙」のような初期のサラのレコードにみんなが魅了され、DIY精神を含め大きな影響を受けた事は事実だったと思います。それこそ80年代後半のイギリスと言えば、
C86の流れで沢山のインディーレーベルがひしめき合い、その中でアラン・マッギーのクリエイションはどんどん注目を集め巨大化し、91年にはPRIMAL SCREAM、MY BLOODY VALENTINE、TEENAGE FUNCLUBのロック史に刻まれる歴史的な3大アルバムを産み出す事に!しかもその後のOASISに至っては!!
 僕自身、クリエイションもサラも、エルもサブウェイもグラスも、メジャー傘下のゴー・ディスクやブランコ・イ・ネグロなども、当時はみんな同列で聴いていたけど、気付けば同じインディーやオルタナティブなバンドでも、大メジャーとどインディーに二分するような流れは、90年、91年頃に生まれたんでしょうね。

 サラはスタートダッシュこそ素晴らしかったものの、マッドチェスターやインディーダンス、シューゲイザー、アシッドハウス、アシッドジャズなど次々とに生まれるイギリスの新しい音楽ムーブメントの中で、次第に苦戦し
ていきました。30〜40番台=90〜91年頃になると少しずつレーベルとしてのブレも生じ、7インチしか出さない筈が10インチやLPをリリースしたり、封入されていたポスターがポストカードになったり。。後々考えれば、小
さなインディーレーベルが制作費など資金を工面するのは大変な事ですし、全然OKな事ですが、当時は何か腑に落ちないものもあった。僕がサラから少し気持ちが離れるきっかけだったかもしれない。当時はあまりにもサラ
の情報は少なかった。。サラのドキュメンタリー映画『My Secret World』を見ると苦しい財政とかその辺の事も出てくるし、当時もっと知っていたらと悔しい気持ちになります。
 そしてインディーバンド青田買いの状況下で、サラが少しずつ失速し出した感じがあったのも事実だと思う。
ただ、80年代後半にインディーポップのクイーンとして燦然と輝いていたTALULAH GOSHのアメリア・フレッチャー。彼女が解散後に組んだバンドHEAVENLYが90年にサラと契約をする。それはインディーファンにとって物
凄く大きなインパクトでしたし、サラの信頼度を上げるのに一役買った出来事だったと思います。でも、僕自身は30番台になった頃には、「サラだったら何でも買う!」という気持ちは薄くなり始めていました。

 その頃、僕はBRIDGEというバンドを結成。90年9月にTHE SPRINGFIELDSのポールとリックが別に組んでいたCHOO CHOO TRAINというバンドが名前を変え、VELVET CRUSHとして初来日しフロントアクトをしました。名古屋にも一緒に行ったな!Brand New Skipと言うクアトロ企画のイベントの第1回目。90年10月には新宿の輸入レコード店の老舗VINYL JAPANさんが主催したSARAH NIGHT 2daysが新宿のアンティノックで開催され、THE FIELD MICEとST. CHRISTOPHERが来日。1日はBRIDGE、もう1日はROOFで共演。翌91年にはHEVENLYが初来日をし、共演はしなかったものの、終演後にアメリアさんにサインを貰ったり写真を一緒に撮ったりしたのもとても良い思い出!HEAVENLYのライブは最高だったなぁ。まだ持ち曲が少なくて、確か本編でやった「Cool Guitar Boy」をアンコールでも演奏した覚えが。タルーラの曲もやって欲しかったけど、確かやらなかったよね?

 91年の秋から僕はバンドと並行して渋谷のZESTでバイトを始め、95年7月まで働いたので、サラが終止符を打った95年までサラのレコードをお店で売ってたんだなと思うと、それも感慨深い。僕のバイト時代にサラのバンドで
良く売れたのは、HEVENLYやTARULAH GOSHのアルバム、THE SEA URCHINSやBLUEBOYのアルバム。勿論7インチも!HEAVENLYの7インチなどは200〜300枚位売れたんじゃないかな?小さなお店1店舗で。そんな時代!当時僕自身がお客さんに一番お勧めしていたのは、EVEN AS WE SPEAKのアルバム「Feral Pop Frenzy」と7インチ「Blue Eyes Deciving Me」(最高!)や「Beautiful Day」。THE ORCHIDSやFIELD MICEも大好きでしたし、良く売れました。

CHOO CHOO TRAIN / HIGH

 よくよく思い返すと、サラとは所属バンドとの共演や日本盤のコンピレーションにコメントを書いたり、実際に彼らのレコードを売ったり繋がりが深かった。僕自身90年代はBLURやPULP、PRIMALのようなメジャーなバンドも大好きでしたし、他にも新旧含め様々な音楽を吸収しまくった時代だったので、その中でINDIE POPやTWEE POPに固執し過ぎた(ように見えた)サラを、正直な話、カッコ良く思えなかった時があったのも事実でした。サラの後期に登場したBLUEBOYも94, 95年、あの頃は時代がマッチョ過ぎて、可哀想だったなと思う。もっと早く登場するか、ベルセバ以降に現れていたらもっと評価されたかもしれない。昨年末に見たSARAH RECORDSのドキュメンタリー映画『My Secret World』は本当に素晴らしい作品でした。この作品を見るとレーベル主宰のクレアとマットが、いかにあの時代の荒波に揉まれながら頑張り続けたか、差別が横行する音楽業界と戦いながら、自分たちの世界を守り、広めようと尽力を尽くしたかがとても良く分かる。物凄く泣きたい気持ちにもなるし、自分自身が当時思っていた事の間違えにも気づく。そして全てに共感し、サラのバンド全てを愛おしい気持ちにさせてくれる。後追いで好きになった10代〜30代の人達にも、僕のようなにリアルタイムでサラと歩んだ人達にも絶対に見て欲しい大傑作だ!
 やはり歴史は面白い。マットが言った「みんなブリストルには、きのこヘアーの若者がぞろぞろ歩いてると思っていたようだけど、実際ブリストルに来て活動するバンドなんか居なかった」と言うのが良かったな。
『A SCENE IN BETWEEN』という写真集があるけど、あの時代が大好きだ。サラは正にその直系のフォロワーと言える。いつかSARAH RECORDSの、同じような写真集が出ないかと思っている。もうあの頃には帰れないけど、見た事の無い写真やライブ映像を見ると、本当にワクワクする。当時のファッションも音楽も最高だ!その時代のその瞬間にしか出来ないからいいんだ。だからこそ、今は今のシーンが一番最高なんだとも思います。

 と言う事で、取り留めのない話になりましたが、サラの事を思うと、今この瞬間にやりたい事をこだわりを持って、思い存分やるのが一番良いと気づかせてくれる。SARAH RECORDSに夢中になった自分を愛おしく思います。

BLUE BOYS CLUB RADIO|episode11 WE LOVE SARAH RECORDS

THIS IS BLUE BOYS CLUB VOL.26~WE LOVE SARAH RECORDS selected by Hideki Kaji

THIS IS BLUE BOYS CLUB VOL.27~WE LOVE SARAH RECORDS selected by Kink


Space Kelly Japan Tour

KiliKiliVilla presents Space Kelly Japan Tour 2023
6年ぶりのアルバム『Come To My World : a tribute to SARAH』をリリースしたSpace Kellyの来日が決定!

ギター・ポップ・シーンで長く活動を続けているSpace Kellyが自身のルーツに立ち返り、UKインディー・シーン伝説のレーベルSARAH RECORDSに残された数々の名曲をカバー、このアルバムのツアーが決定!
バックメンバーにアルバムの共同プロデューサーであるMichael Garbschがギタリストとして同行、ベースにカジヒデキ、キーボードとパーカッションに松田CHABE岳二、ドラムにツナカワ (ante) を迎えたメンバーでのツアーを行います。
90年代中旬から20年以上にわたってヨーロッパのインディー・シーンで活動を続けてきたSpace Kellyが2020年のロックダウンの期間に自身のルーツを振り返った時に再発見したSARAH RECORDSの数々の音源。はじめてギターを手にした日をもう一度思い出しながら振り返った時に輝きだした珠玉の名曲の数々を中心にしたセットでの来日。

このツアー限定7インチの発売決定!
『Come To My World : a tribute to SARAH』のアンコールともいうべき7インチをツアー会場限定にて発売します。
Space Kelly / Come To My World : a tribute to SARAH plus
KKV-152VL
45 RPM
Side A : Caveman (The Orchids cover)
Side B : I’m in love with a girl who doesn’t know I exist (Another Sunny Day cover)

TOKYO
1月7日(土)新代田FEVER
open 17:30 start 18:00
with Pervenche、Strip Joint
前売 6,000円 当日7,000円 + 1D
https://eplus.jp/sf/detail/3762290001-P0030001

1月11日(水)新代田FEVER
open 18:30 start 19:00
with h-shallows+Tomohiro Makino、Three Berry Icecream
前売 5,000円 当日6,000円 + 1D
https://eplus.jp/sf/detail/3762300001-P0030001

KYOTO
1月13日(金)京都METRO
open 18:30 start 19:00
with BLUEVALLEY (rhythmbox unit set)、カジヒデキ(ソロ)松田CHABE岳二(ソロ)
DJ : DAWA (FLAKE RECORDS)
前売 5,000円 当日6,000円 + 1D
https://eplus.jp/sf/detail/3763440001-P0030001

OSAKA
1月14日(土)NOON+CAFE
open 17:30 start 18:00
with DEBONAIRE
DJ : NISHINO (O-LEVEL)、YO-KO、YOSHIDA
前売 5,000円 当日6,000円 + 1D
https://eplus.jp/spacekelly-jt2023o/

NAGOYA EXTRA SHOW
1月12日(木)K.D ハポン
Space Kelly accoustic duo live
open 18:30 start 19:00
with BLUEVALLEY (rhythmbox unit set)、松田CHABE岳二(ソロ)
DJ : 小野肇久(DREAMWAVES)
前売 3,000円 当日3,500円
メール予約のみ:kdjapon@gmail.com
この日のSpace KellyはKenとMichaelによるデュオ・セットになります。


My Secret World

『マイ・シークレット・ワールド My Secret World: The Story of Sarah Records』国内最後の上映が決定!
1月8日(日) シアター・イメージフォーラム 19:00〜
1月15日(日) 出町座 15:00〜
2月12日(日) シネ・ヌーヴォ 14:00〜

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