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MOOSインタビュー

KKV Neighborhood #172 Interview - 2023.06.20
インタビュー、構成 by ushi (number two)

東京を拠点に活動するパンクバンドMOOSが2023年6月下旬に1stアルバムLPをリリースする。
ここに記録された13曲はMOOSの4人がそれぞれに、身をもって丁寧に実践した現代の暮らしの姿の一端が刻まれているように思うのです。綺麗事を並べるだけではどうにもならないこの世、遠くからは見えづらい小さくとも確かな今を暮らす人の姿、その一つ一つを、この4人が集まり見つけた言葉と音で目の前にぶちあげる。手のひらから溢れそうに掲げられたそれを受け取ったそれぞれの目に浮かぶのは、一体なんだろう。
誰かが生きるその姿が湧き立つ瞬間と、その確かな存在を目の当たりにすると、僕の魂は強烈に震えだすのです。
MOOSの今作とここに至るまでの歩みについて話を聞きました。良かったら読んでみてください。

うし:では、改めてLP発売おめでとうございます!今日はインタビューよろしくお願いします。初めにメンバー皆さん揃っているので自己紹介をお願いします。担当パートと他に所属しているバンドがあれば簡単に。

MOOS一同:よろしくお願いします!

松田耕太郎(以下耕太郎):松田耕太郎です。MOOSではドラムをやっていて、他に所属しているバンドは、スガナミさんとThiiird Placeというバンドもやっていますし、あとはRUN RUN RUNSというバンドとか、Meat Mountainというバンドとか、いろいろ、、自分でも把握しきれない。。。他にもサポートでやっていたり、どのバンドがサポートなのかとか自分でも把握しきれてないです。笑

スガナミユウ(以下スガナミ):スガナミです。MOOSではギターをやっていて、他に耕太郎君とThiiird Placeというバンドをやっているのと、ベースのK君とOCHA∞MEというバンドをやっていて、あとは下北沢にあるLIVEHAUSというライブハウスを運営している中の一人です。

KOJI ROJO(以下ROJO):ボーカルのKOJI ROJOです。今活動的にやっているバンドはこれだけで、LIVEHAUSの運営を少し手伝ったりもしています。よろしくお願いします。

今泉K(以下K):今泉Kです。ベースをやっています。他にやってるのはスガナミさんとOCHA∞MEというバンドをやっているのと、MEGA Xというバンドをやっています。

うし:ありがとうございます!ではまずMOOS結成のきっかけから聞いていきたいのですが。

スガナミ:はい。結成は2021年だと思う。

ROJO:2021年の2月くらい。

スガナミ:2021年はコロナパンデミックの真っ只中で、かなり激動の生活で、みんなね。コロナ禍で。いろんな感情が渦巻く中で生活していて。そんな時にROJOと「新しいバンドやるか。」みたいな話になって。最初は自分がやってみたかったスカパンクをやりたくて、十代とか二十代とか若い頃にやりたくても巡り合わせでやらなかった音楽をやりたくて。

ROJO:パンクバンドがやりたかったんですよ、あの時。コロナ禍でいろんなことに向き合っていて、「もう一回ゼロからやり直すんだ」って話をスガナミ君として。

スガナミ:自分たちのパンクというか、パンクじゃなくてもいいかもしれないんだけど、なんか、誰もが嫌な気持ちにならない空間を自分たちで作ったほうが良いんじゃないかって。それはLIVEHAUSも含めてだけど。とにかく「やってみよう」となったときに、とりあえずスタジオに「K君を誘ってやってみよう」と話して。それで、K君に電話して。で、ドラムがやっぱ必要だってなって。最初はROJOがドラム叩くかという話もあったんだけど。

K:最初のスタジオはROJOさんドラム叩いてましたよね。

ROJO:そっか。そうだ、思い出した!

スガナミ:でも、やっぱりROJOがボーカルがいいかもって話になったのかな?ちょっと忘れっちゃったけど、とにかくドラムが必要だってなった時にK君が「耕太郎君が良いんじゃないか」って。

K:あの時、スガナミさんがドラムを叩ける優しい人いないかなって。笑

スガナミ:基本的に優しい人と一緒に居たいというのが近年のマインドで。

K:それなら、耕太郎君じゃないっすか!って。

ROJO:ネガティブなことを言わない人と一緒に過ごしたいよねって話をしてた気がする。この四人が集まって実際そうなったね。

スガナミ:うん。それで、ギターでどんどん曲ができていたんだけど、実際バンドで合わせてみないとちゃんと形になるのかわかんない曲ばかりで。そんな時に耕太郎君を誘ったらスタジオに来てくれて。最初に合わせたときにすぐ曲が完成して。「もうこれでオッケー!」って。笑 それで「すぐに録音しよう」ってなって、それから前作のテープを録音して。だから、ライブをする前に録音して。

ROJO:あれ?初ライブっていつでしたっけ?

K:2021年の5月に初ライブやってますね。結成から3か月くらいでやってます。

スガナミ:そう、録音の予定とライブの予定を同時に立てた。

うし:その短期間で10曲入りのカセットを完成させてるのすごいな!カセットは一日で全部録ったんですか?

スガナミ:一日で録った。B面は全部A面の曲のリミックスになっていて、いろんな楽器をいろんな人に入れてもらったりとかもその日の一日の中で録ってる。だから20曲を一日で。

うし:それはすごすぎますね!笑 K君はMOOSに誘われた時はどんな心境だったの?

K:そうっすね、「おー、まじかぁ。」っていうのはありました。スガナミさんが「パンクバンドやる」って言って。ROJOさんは違うバンドで前に一回対バンしたことあって。多分、下北沢Threeでやっていた頃のBlock Party。もう、すごいハードコアで。「かっこ良いけど、おっかねー」って。笑 ちょっと怖いイメージがあって、なんか一緒にバンドやったら、思ったことバーン!っと来る感じなのかなと思ってたんですけど、会ってみたらすごい優しかった。あと、スガナミさんがパンクバンドやりたいって言ったのが、それは絶対におもしろくなるんじゃないかなって楽しみでした。OCHA∞MEだと歌うのが僕だったりスガナミさんではないので、歌詞も雰囲気もちょっと違うんですけど。「これはスガナミさん、フィルターなしの感じでやるのかなー」って。

うし:楽しみだったんだね。

K:楽しみだなと思いながら、大丈夫かなって。ハードコアやったことなかったんで、、でも最初スカパンクって言ってた、、、

ROJO:言ってた。

K:スカパンクもやったことなかったですけど。

ROJO:でも、スカパンクいっぱい聴いたよね、みんなで。

スガナミ:わたしは勉強で2000曲聴いたから。

K:スカパンク選りすぐりの20選みたいなプレイリストができたり。

うし:楽しそう!

ROJO:最終的に音質が悪ければ本物だ!みたいな間違った解釈になったよね。

スガナミ:勉強の中で見出した答え的には、Operation Ivyが活動を開始した1987年から、3rd wave skaが商業的にヒットする前の1994年までの間に製作されたDEMO音源や7inchの中で、音質が悪く勢いを感じさせるものが良いのではと考えて、その感じで聴き進めていたら、マイナーで地味な曲ばかりを好きになってしまって。
結局、スカパンクの曲はほぼ作れずに今に至る。

うし:耕太郎君は誘われた時はどうだった?

耕太郎:単純に、嬉しかったですね。K君に誘ってもらえたのが嬉しくて。K君大好きなんで。それでメンバーを聞くとROJOさんとスガナミさんがいるって言うし。ROJOさんは、前に僕がフジロッ久と別のバンドで対バンしたとき、森川さん(当時フジロッ久に在籍、現Teenage Slang Session)に「ROJOって知ってる?」って言われて、「顔が似てるんだよね」って。笑 それから、、なんか、、、意識はしてました。

一同:笑

耕太郎:でも、スタジオで会うまでROJOさんには会ったことなくて。初めてMOOSのスタジオで何年かを経て会う、と。それも含めて楽しみでした。それで、ROJOさんがドラム叩いていた練習音源は聴かせてもらってて、それも「ヤバいな」って思っていて。それで、スタジオに一緒に入ってみたら十代の時にバンドをやっていた時の初期衝動みたいなものが沸々と湧いてきて、すごく楽しかった。

うし:めちゃめちゃ良いねー。

ROJO:最初3人の時は演奏ができてなさ過ぎて。スガナミ君をギター初心者って言ったら失礼だけど、、ギターでバンドはほぼやってなくて、ドラムとギターがあまりにひどかったから、その練習音源を耕太郎君に渡して。耕太郎君が入ってカチッとしてくれた。

うし:バンド名は耕太郎君が入ってこの4人が集まった時には決まってたんですか?

スガナミ:バンド名はいつ決めたんだっけ?

ROJO:みんなでけっこう案を出し合ったよね。

K:MOOS!!!!って曲ができたのがけっこう最初の頃でしたよね。

ROJO:バンド名はスガナミ君ですよね。

K:Opinionという言葉を入れたいって。

スガナミ:そうでした、意見っていう言葉をバンド名に使いたくて。My Own Opinionsから頭文字取ったんだろうなー。確か。それでMOOSで検索してみたら、ドイツ語で苔という意味で。それもすごく良いなーって。

うし:良いバンド名ですね。

スガナミ:あと緑のイメージ。メインカラーがあるバンドもいいかなと思って。苔で緑で、ビジュアルも想像しやすくて、すごく良いんじゃないかなって、当初は。それでMOOSって曲も作ろうって。

うし:最初の頃の曲作りは、スガナミさんとROJO君で?

ROJO:ほぼ全部スガナミ君じゃない?

スガナミ:基本、ギターだけで作ったやつをボイスメモに録って、それをみんなに送っておいてスタジオで楽器を合わせながらROJOがボーカルを乗せてみて、それを持ち帰ってROJOが歌詞を考えてくるっていう感じで作ってた。

K:ギターがジャカジャカやってるボイスメモに合わせてました。

スガナミ:徐々に、叫ぶだけじゃなくて歌にメロディーがある曲もできていくんだけど、それはもう歌詞も一緒に作って歌ったものをみんなに送ってスタジオでアレンジするパターン。大体、叫んでいる曲はROJOが歌詞を書いていて、歌ものはわたしが歌詞を書いてるのが多いかも。

ROJO:確かに、そうだね。

うし:MOOSは1曲1曲にメッセージとして明確なテーマがあるように受け取れるのですが、その曲作りの仕方は結成の当初から構想していたものなのか、活動の中で見つけた方法なのでしょうか?そして、そのトピックはどういったタイミングで曲になったりするのでしょうか?

ROJO:初期の曲はスガナミ君のギターのリフだけある状態から始まってるから、スタジオ入った後にメンバーみんなで「最近なんかモヤモヤした事とか、違和感あったことある?」みたいな話をして、会話の中から「次のテーマはこれにしよう。」と決めていった感じですね。僕が歌詞を書いているうるさい曲は全部、翌週までにテーマに沿った言葉を考えてきてメンバーに見てもらって作っていましたね。初期は全部そうでしたよね?最近もたまに「ある事柄についてこういう考えなんだけど、どう思う?」とかの連絡はしてる。

スガナミ:一個の物事に対してみんなで話したことを歌詞にすることがすごく多かった。確かに当初から1曲1曲にテーマがあるね。

ROJO:そうだね、なんでだろうね。

スガナミ:パンクバンドやるんだったら、っていうのがあったのかもね。

ROJO:最初の頃は歌詞が書けないって言ってたかもしれない。それで「テーマが欲しい」みたいな。その時にスガナミ君とかみんなで話したり、例えば”マジョリティとマイノリティの話”をしながらみんなでお酒を飲んだりすると、「あぁ、これで言いたいことは決まったから、あとは大丈夫。歌詞書いてきます」っていうやり取りが多いかな。

うし:なるほど。会話の中からヒントを得てるんですね。耕太郎君やK君がそういったテーマのきっかけを作ったりもありましたか?何か今の自分にも活かされている気付きなんかもあったりしたら教えてほしいです。

K:きっかけになったかはわかりませんが、前作に収録されている「Minority Report」という曲をライブでやっていた頃「自分達は全くマイノリティじゃないですね」みたいな話をMCでした記憶はあります。全員日本に住む日本人のシス男性だし、マイノリティ側としての意見って違和感を感じて。同じくらいのタイミングで多分他のメンバーも同じように思っていたんじゃないかと思います。
MOOSの活動がきっかけで実生活にも活かされている事は、その日の自分の言動について、誰かを傷付けたりしてなかったか、配慮を欠いてなかったか、何度も振り返って確認するようになりました。歌詞に襟を正される事はとても多いです。

うし:今作の作詞はどういった割り振りになっているのでしょう?

スガナミ:作詞的には「聞く」、「なにを」、「Making life, Search right」は、わたしが書いてます。あと「Little Voice, Many Voice」、「Obrigada, Obrigado」この二曲はわたしが最初にタイトルだけ付けて、それ以外の歌詞はROJOが書いています。

うし:なるほど。歌詞についてはまた後ほど聞きたいと思っているのですが、K君はどんな感じで曲作りに向き合っていますか?ベースラインが印象的だったりもするんだけど。

K:曲作りは、スガナミさんが持ってきたギターを聴いてベースのアレンジを考えるって感じです。スタジオで合わせてその場でバーっと。ほぼ全部その場で決めてます。

スガナミ:K君が持ってきた曲もある。「キーワードを見つけて、スローガンを掲げる」という曲はK君がベースでリフを持ってきて。みんなで演奏を合わせて、ROJOが歌詞をつけて。

ROJO:ベースラインが特徴あるから、その局面局面によっては僕のボーカルとベースラインがツインボーカルのように機能を果たしている瞬間があるかもね。

うし:あとはドラムも特徴的で、耳を惹かれるリズムパターンがところどころにあるんだけど、それは自分の中で考えて「こんな感じでどう?」とかその場で合わせて出来ていくのか、みんなで意見を出し合ったり、全体のイメージを話し合って決まっていったのでしょうか?

耕太郎:大体、丸投げされてる感じですね。

ROJO:何も言ったことない。笑

スガナミ:各楽器のアレンジについて誰も何も言った事ないね。笑

K:指示をするようなことは一度もないですね。

うし:それけっこうすごいかもな。

耕太郎:好き勝手やらせてもらってます。

ROJO:嘘偽りない超ピュアな気持ちで普通に褒め合ってるよね。「いやー、ドラムいいわー」みたいに。笑

スガナミ:持ってきた新曲をせーので一回合わせたあとに、「もう明日ライブできる!」みたいな。笑

ケイ君:それ良くありますね。笑

スガナミ:耕太郎君が叩いてみて、「耕太郎君の今やったその感じいいね」ってなって、「じゃ、この感じで作ろう」みたいな感じで、スタジオで一気に作っちゃう。

耕太郎:そういうこともありますね。お互いに影響し合って曲ができていく感じがします。

うし:今作で言うと”No Machismo"のドラムとかすごく好きなんだけど。なんか参考にしたりとか?

耕太郎:特にない。。笑 持ってきてくれた曲を聴いてみて「こういうの鳴ってたらかっこ良さそう」っていうので叩いてる感じです。参考にしたとかはないです。

Rojo:確かMinutemenをイメージしてっていうので作った気がするんだけど。スタジオで。

耕太郎:そうですね、でも参考にはしてないです。

一同:笑

スガナミ:曲作りに関してはBig BoysとMinutemenやSSTがキーになってる。特にBig Boysが。結局スカパンク案が頓挫して、バンドの軸となる音楽性をどうしようと考えていたときに、丁度Big Boysを聴き直していて、最後の方のアルバムとかってすごい色んな曲があって、色んなことやってて、「すごく面白いなぁ」と思って。「MOOSはこういうバンドを目指したらいいんじゃないかな」って。それこそ、ホーンが入った曲があったりとか。それがきっかけでカセットのサイドBでやったリミックスをやろうと思った。

Rojo:僕の場合はBig Boysが好き、で止まっちゃってるんだけど、スガナミ君はBig Boysが影響を受けたバンドも好きじゃないですか。だからBig Boysとルーツが似てるというか。それがすごく爽やかだなって。

うし:MOOSの曲からはそのBig BoysやMinutemenがキーになっているというのは納得で、楽曲からもその要素は感じられます。ルーツとなる部分もスガナミさんはSoulもJazzも好きだったりルーツミュージックが好きなのも、そこに共通する部分はありそうですね。あとはROJO君のボーカルスタイルがかなり特徴的で、それがすごく80年代D.C.のレボリューションサマーを感じたりします。

スガナミ:すごくチャレンジャーというか、ROJOは自然にやってるんだと思うんだけど、面白い感じで歌を乗せてくるから、初めて聞くときは「ヤバッ!」って、なんかもうニヤニヤしちゃう。笑

うし:確かに自分の作った曲を練習で合わせてみて、初めてこの歌いまわしで出てくると「マジで!?」ってなりそうですね。笑

ROJO:基本的に僕は作曲をしないので、言いたいことを歌詞にすると言葉が字余りになるんですよ。MARJINAL(インドネシアのパンクバンド)とかを聴いていると、彼らってAメロやってBメロやってサビやって2番でAメロやってBメロやってサビやって、もう一回Aメロに戻ったりするじゃないですか。あれはたぶん言いたいことを言い切るために曲の構成を延ばしてるんだと思うんですね。すごくパンク的だと思います。一方で、MOOSって最初っから最後まで曲の構成が決まってることが多いから、字余る中で詰め切らなきゃいけないみたいな。そういう歪さからこういうボーカルになってるような気がします。

スガナミ:ゴツゴツした感触、音楽的におさまらないのがすごく良い。

うし:スガナミさんのギターとしてのバンドの向き合い方も聞いてみたいのですが、MOOSでのギタープレイで意識していることはありますか?カセットから今作での音の出し方もだいぶ変わっているように感じました。

スガナミ:今でこそMOOSと、OCHA∞MEでもギターを弾いているけど、それまでは人前でギターをメインで弾いてきた経験がないから、ほんとイチからというか、アンプの鳴らし方からという感じでした。難しことをやっても追いつかないので、今でもそうですが、エフェクターは無しでアンプ直で、出来るだけシンプルなセッティングにしてるのですが、それこそ今回サウンドをラウドに底上げするために、レコーディングでは、マーシャルとJCを2台同時に繋いで鳴らしてこれまでのMOOSの軽さとは印象を変えられるように自分なりにギターに向き合いました。

うし:今作のLPを作るまでにライブを経てきていると思うんですが、それぞれの印象に残っているライブとかがあれば聞きたいです。

耕太郎:Discharming manとの対バンですね。

スガナミ:あぁ、北海道。Pigsty。

耕太郎:あの日一日がすごい日で、Discharming manの蛯名さんって自分の中でレジェンドというか、そういう存在なので。

うし:その日は誰が企画した日だったの?

スガナミ:ハナマツ君(FUN MOLE RECORDS, Release Your Emotion)が呼んでくれて。

うし:さすが良いブッキングしますね。

耕太郎:あの日はもう忘れられないですね。

スガナミ:Discharming manの出番が自分たちMOOSの前で、ライブがもうとにかく半端なくて。Discharming manって今世の中で起きていることとか社会問題との向き合い方をダイレクトに歌詞にしていて、オルタナのバンドでああいう風にやるバンドって見たことなくて、しかも日本語で。それで音楽としての表現力もめっちゃ高いから、説得力がまた格段に増して聴こえて。すごいもの観たなって。まじでビビりました。

ROJO:現行の日本のバンドの中でも演奏と雰囲気がすごいから、音楽的に完成度の一番高い状態で生活の歌をやってるのがDischarming manなんじゃないかって思います。

K:歌詞的にも共鳴する部分があって、楽曲が素晴らしくて、あの感じで社会的なこと、自分の内面とか、自分の置かれている状況みたいなことを直球で歌うじゃないですか。これやられてMOOSこのあとどうすりゃいいんだって思いました。笑

スガナミ:ライブ前に、とにかく自分たちがやれることをやろうって話したよね。

うし:MOOSの目指しているものと同じようなものを感じたんですか?

スガナミ:歌詞に関しては、伝え方とかはまた違うんだろうけど、何を歌にするかっていうことに関しては、すごくシンパシーを感じた。

うし:MOOSとして何を歌にするかについて具体的にあれば聞きたいです。

ROJO:時々に、胸を痛める様々なことが起こってしまったり、自分たちの価値観がアップデートされたことで気が付くことができたり、そんなことをメンバー全員で会話をしながら歌にしています。メンバーに歌詞を共有することで、大幅に修正することはこれまで無かったけれど、製作過程のなかでこういう言葉を使おうと思っている、みたいなやりとりは頻度高くやっています。

うし:では、スガナミさんの印象的なライブをお願いします。

スガナミ:えっとね、アルカシルカとやった時。2回ぐらい一緒にやってるんだけど。アルカシルカとライブできたのもすごくデカかった。アルカシルカの1stアルバムはずっと聴いていたのだけど、東京にA PAGE OF PUNK (現Few)がアルカシルカを呼んだりしている時もなかなかタイミングが合わずにライブに行けなくて。一緒にやらせてもらう機会まで観たことなかったんだけど、すごく衝撃を受けた。しかもその時、新編成でバンド初心者の方もいて、そういう状況の中でも、ガタガタの感じでも、”やる”っていうのが、すごくかっこいいなって思ったし、あとは歌詞。それと、みんなの雰囲気っていうか、すごく人間っぽいというか、”人間がやってる”って感じがして。ステージ降りても変わらないし、そこがすごく良かった。自分の場合は誤解されたらやだなって事はなるべく歌詞にしないようにしてるんだけど、でも、アルカシルカは物事のいろいろな側面を歌にするから、聴き手の捉え方も様々だろうし、彼ら自身もそれに捉われずに自由に歌詞を書いているように見えて、それがすごく良いなと思うし。そこでハッと気付かされることも多くて、刺激的な言葉も優しい言葉も使うし、それがすごいなって思った。あとはネオポゴタウンの運営とかも含めて、生活の中でやってるバンドっていうか、活動の仕方もおもしろいなぁって思った。

うし:ROJO君は?

ROJO:アルカシルカとDischarming manかなぁ、衝撃的だったのは。元々の友達、それこそNUMBERTWOもそうだし、DiegoとかLife Is Water BandとかFewとかTHE GUAYSも、みんなに影響受けるし、一緒にやると毎回背筋が伸びるんですけど、MOOS始めて出会えたバンドということでその二組が衝撃的だったですかねぇ。2人が言ったとおりかな。あと、Discharming man蛯名さんが打ち上げか何かで言ってくださったことで「今わたしたちはたまたま同じようなところに居る」みたいなことを言ってくださっていて、それは音楽を介した生活との距離感とか伝えたいメッセージの距離感とか言わなければならない事とかが、おこがましいですけれど共鳴できた人だなと思いました。

うし:K君は?

K:対バンとか共演で言ったら、その二つかなぁって僕も思います。MOOSでのライブで関して言うと、印象的だったのは松本(長野県)のライブ。普段、ライブで「MOOSどうやって盛り上がる?」と思ってて、MCもちゃんと毎回一曲ずつやったりしてるので、ライブを通してあんまりフロアが盛り上がるビジョンが確立できてないんですけど、松本はその感じでやってすごい盛り上がったので、「あぁ、こういう事もあるんだな」って。それがかなり「このまま続けても大丈夫だ」って思えて良かったです。元気もらえました。

スガナミ:確かに。Give me little more.(松本のバー・イベントスペース)自体すごく良かったしね。

うし:僕も自分が観たMOOSのライブでは松本がすごく印象に残っていて。これは触れたくなかったら大丈夫なんだけど、耕太郎君のお父さんの件もあったから。

一同:そうだね。

耕太郎 : 直前に急逝してしまって。

スガナミ:それをMCでも伝えたもんね。

うし:そう。あの光景と語ってくれたことがすごく印象に残ってる。

スガナミ:耕太郎君、松本来れないんだろうって思っていたからね。

耕太郎:ほんと直前だったので。

スガナミ:来れなくて当然だし。

うし:それでも行くという選択をして。

耕太郎:亡くなってすぐの事だったのでもちろん松本に行くかは凄く悩んだんですが、母親から「きっと(亡くなったお父さんも)見に来てくれるよ」って背中押してくれたのもあったし、父からしたら「自分が死んだせいで息子のライブが飛ぶの嫌だな」って思うような気がしたので行くことに決めて。
とにかく自分の存在や、やってる事を全肯定してくれるような両親なんですよね。ライブのMCでも話したんですが、両親の協力の元で、実家にある蔵で「蔵フェス」っていう、自分の好きなバンド何組か呼んでスタジオライブする、っていうイベントをやってたんですけど、父も友達のライブ見て踊ってたりしてて、
で、Give me little more.の感じがすごく蔵と通ずる感じがあって、ライブ中、蔵でバンドの演奏に体揺らしてる父の姿を思い出して泣きそうになってました。
ライブ自体もすごく良いライブできたかなと思うし、今となっては行って良かったなと心から思います。

スガナミ:Give me little more.を運営しているニイミ君がやっているバンドTANGINGUGUNとも一緒にできて良かったし、その後にこっちの9 Party(下北沢LIVEHAUSで毎月9日に開催されているイベント)で一緒にやれたのも良かった。

耕太郎:松本の夜もやばかったですよね。あのスタジオ。

スガナミ:岡沢じゅん君たちのところね。

うし:Give me little more.のあとにマーズモースタジオ(松本の岡沢じゅん君が運営しているスタジオ)で深夜にかけてライブもありましたもんね。

スガナミ:あれも最高だったなぁ。やっぱり、少ないけど東京以外でライブする機会があったのがすごい良かった。

ROJO:松本はさ、さっき盛り上がったって言ってたものの、ある一人のオーディエンスがいたという事じゃないですか。

スガナミ:一緒に対バンをしたあの子ね。

Rojo:そうそうそう。Big Boysのライブとかで、基本的にBig Boysのライブってあんまり盛り上がってるイメージなくて、でも床で転げまわってる人とかがいて。変なんですけどそれって。その一人の熱狂が、なんとなくすべてを肯定する瞬間があって。そういうのいいよね。

うし:すごく良いですね。
ちょっと今作の音源の話に戻したいのですが、前作のカセットアルバムは音の感じとかもDIYな雰囲気で楽曲の感じも多岐にわたっていて「こんな曲できたからとにかくやってみよう」という良い意味での勢いも感じたんですが、今作は音の作り方とか、ゆっくりな曲も含めて曲の出来上がり方も変わってきているのかなと思っていて、今作はこのアルバムに収録された曲たちの並びはどういった経緯で出来上がったのでしょうか?

スガナミ:ライブをやりだすようになって、「こういう曲やりたいな」っていうのがその都度あって。それを作っていって、曲自体は20数曲あって。それで「アルバム作ろう」ってなった時にみんなで話していて、何でもかんでも全部入れるのか絞るのかって話になって。絞ろうって話になったんだよね。

ROJO:両A面アルバムを作りたかったんですよ。FaithとVoidのスプリットってそれぞれの独立した作品を表と裏に収録してるじゃないですか。そのイメージで2枚分のメッセージを「外に向けた話」と「自分たちの内面的な部分」とで、それぞれテーマのあるものを一枚ずつ作ろうって話になって。それでその時に、内面的な曲が足りないねって話してINSIDEっていう曲が出来たりとか。そういう話をして何曲か足したりしたんですよね。それで最後、アルバムを流れで聴いてみた時に、「この並びじゃないね」ってなって、「外向け」と「内面」のまとまった並びをバラしたんだよね。

スガナミ:MOOSの曲はいろいろあって。例えば、いろんなカバーを一個にまとめてみた曲とか、それはサウンドチェック用に作っていたり。リハができない時のサウンドチェックも面白い方が良いなと思って。サウンドチェックの曲もその曲のほかに2曲ぐらいあったりして、そういうのは今回省いて。あとは曲のテーマや内容的に甘いんじゃないかって曲とか、テーマとか歌詞が今この瞬間に合ってない曲とかを削っていて、例えば、テープに収録したEnd Of The War, But Racism Continuesという曲があるんだけど、その曲の意図は、仮に戦争が終わっても、差別は続いているよね、戦争も差別も繰り返されているよね、という意味なんだけど、ロシア政府によるウクライナ侵攻があって、タイトルにEnd Of The Warと付けているのもあり、ライブでこの曲をやる際にMCでかなり注釈が必要になってきたので、今回は外したり。

うし:なるほど。やっていく中で世の中とか日常、自分の考え方が変わっていくっていうのもありますよね。カセットアルバムから再録された3曲MOOS!!、土壌、GATEWAYはMOOSの根幹を体現するメッセージを持ってるんだろうなというのは感じました。

スガナミ:うんうん、結果そうなったね。

うし:音的な話なんですが、前作カセットは手作り感の残る良さがあったと思うのですが、K君がミックスしたんだよね?

K:そうですね。録音はアユさん(猪爪東風)にしてもらってミックスだけ自分がやったんですけど、いろいろ試した結果、けっこう何の色も付けずに音量のバランスだけを整えて出す感じになりました。あの時はみんなそういうシンプルなものを作ろうというモードでしたね。
※カセットB面のリミックスは猪爪がミックスを担当。

うし:今作は聴いた初感、めちゃくちゃ出音がどっしりして迫力あるものになっていて、すごく作り込んだのかなと思いました。今回録音の仕方も前作とは違ったものになっていると思うのですが、その辺の話も聞かせてもらえますか?

スガナミ:テープは軽めの音で作ったから、今回は軽くない音源を作りたいなと思って。それこそSSTで言うなら、初期minutemenから fIREHOSEへの変化みたいなイメージで。その時、誰に録ってもらおうかって話しているときに、現行でラウドな音楽を自分でやってる人に録ってもらうのが良いんじゃないかっていうので、「Studio REIMEIのシンマ君(VINCE;NT、SAGOSAID)に録ってほしい」という話になって、お願いしたんだよね。それで、シンマ君に「オルタナティヴな音で録りたい、仕上がりもオルタナティヴにしたい」って最初に伝えて。それに目がけてやってくれたと思う。

ROJO:後付けになってしまうんですけど、MOOSの本質は”歌詞と歌”であって、ミキシングで奇をてらう必要があまりないなと思ったんです。ラウドな音楽の中でもクラシックな音の置き方をしてるんじゃないかなと僕は思ったんです。聴こえてくる音として今オルタナティブな音楽に携わる人が作る音でストレートにいくとこの音だよね、と。だからシンマさんのやってたミックスに少なくとも僕はなんの口出しもしてない。ボーカルの音量の上げ下げくらい。みんなそうだよね。

K:そうですね。基本的にはシンマさんがぶちあがる音で作ってほしい、という要望をしたと思うんですよ。

うし:一つ一つの音の分離も良くて、すごく良い録音だなって思いました。

耕太郎:録り音の時点ですごく良い音だった。

ROJO:そうだね、良すぎてそのままでも良かったぐらい。

スガナミ:演奏自体は13曲で3時間くらいで録り終わった。

うし:えっ!今作も一日で録り終わったんですか?

ROJO:歌だけ二日に分けましたけど。

スガナミ:声が枯れちゃって録れない部分を二日目に回して。今回はシンマ君に録ってもらって良かったね。

一同:そうだね。

うし:アルバムの内容的な部分にも触れたいんですが、オルタナティブソウルパンクバンドと謳ってるんですが、そこに何か意味が込められたりするんですか?

スガナミ:わたしが勝手に付けたんだよね、インフォメーション書くときに。笑

ROJO:そうなんすね。笑

スガナミ:レコード屋のバイヤーの方が盤を売りやすいイメージを持てるようにと思って書いたんだけど、でも、Big BoysとかMinutemenの内包している音楽の幅みたいなことはあるかも。ギターのコードとかもファンクやソウルなんかの響きがあるものにしてるから。

うし:パンクの中でもいろんなバックボーンがありますよって事なんですね。
冒頭曲のINSIDEがBig BoysのWhich Way To Goをベースに日本語歌詞を付けているんですが、この曲を選んだきっかけと、日本語詞もタイトルのイメージを崩さずに書いたのかなと感じたのですが、どういった背景で日本語詞をつけたのでしょうか。

スガナミ:この曲を選んだきっかけは、Big BoysかMinutemenのカバーをもともとやりたいなって思っていて、それがあるとどういうバンドか観る人がイメージしやすいかなって。それでBig Boysを聴いていて、Which Way To GoってBig Boysの中では異色の曲なんだけど、すごく良い曲で。Which Way To Goっていう言葉自体も今の混乱している状況とか表しているなと思って。それで最初はサビ以外を日本語詞にしてやっていたんだけど、録音するときにサビのメロディーと歌詞も変えようってなって曲名もINSIDEにしたんだよね。

ROJO:そうですね。Big Boysの歌詞はそんなに難しい英語で書かれてはいないんですけど、僕は歌詞の本質を捉えられていない気がしていて、言葉としては「私は太陽の下に座っている 雨が降るのを待っている」とか「それでも私は歌おうとする。それでも、同じ古い言葉が出てくる」そして「どこに行けばいいのかわからない」といったような歌詞なんですが。でも、そうストレートに捉えた意味では歌っていない気もしていて、Which Way To Goの歌詞の解釈を「動け、どこにでもいいから一歩踏み出せ」ということとして捉えて、そこから逆算して歌詞を書いていきました。これまで自分がやってきたバンドではずっと”外向けの問題を外のもの”として捉えて歌詞を書いていたんですけど、このバンドでは”自分の内面が伴ってなければ歌詞にしてはいけない”という自戒があって。そうしたときに、自分の内面を振り返ってみて、その内面が様々混乱状態にあるけれども、「でも一歩踏み出さなきゃいけないんだ」という自分たちの気持ちを歌詞にした感じです。

うし:アルバムを通して自分が直面した出来事について自分たちなりに考えて生まれた言葉が並んでると思うのですが、メンバーそれぞれの中で特別に気に入っている曲や言葉があれば教えて欲しいです。

K:僕は”Making life, Search right”ですね。”弱いままでいきれるように”という歌詞なんですけど、「強くなくていいって言い切れるように」っていうところがあって。自分のやってるMEGA Xというバンドでやってる曲も同じようなテーマの曲があったりして、自分の中でしっくりくる歌詞でした。この曲はスガナミさんの作った曲ですよね。

スガナミ:「弱いままで生きれるように」というテーマで、新自由主義、自己責任論、資本主義について考えた曲です。私は、何年か前まで ”元気を出そう” というようなメッセージを歌詞の中で使うことがあったんだけど、他者に元気を出そうと歌いかけることが、どれだけマジョリティ的押し付けかを考えていなかった。遅ればせながらこの何年かで、沢山の社会問題、マイノリティの方々の状況、自分を含む男性の特権性などを知り、自分なりに向き合う中で、考え方が転換され書いた歌詞です。

ROJO:僕は”聞く”が好きで、MCでもよく言うんですが、自分は昔はもっとうるさくてもっと喋るやつだったんですよ。なんですけど、最近はライブハウスに行っても全然喋らないで、すっと帰っちゃったりしていて。なんでかというと、頭でっかちになってしまっていたり、ある時から怒るというのを選択肢から外したんですよ。その時に、喋ることがないというモードになってしまって、発言の責任を意識しすぎて、喋るのも怖いし。いろんな価値観があって。誤解されたりもするし。”聞く”という曲の歌詞は短い歌詞の中で「”聞く”ってことは一つのスタンスなんだな」と思って、すごく感動しました。スガナミ君の歌詞なんですけど。自分はうるさくて会話を遮ってしまうから、「まず聞く」って。学んだ曲。

うし:マンスプレイニングやトーンポリシングとかも僕らの周りで話題に挙がっていましたからね。

スガナミ:そうですね。まさしくそういうテーマの曲。

うし:スガナミさんはどうでうですか?

スガナミ:自分は、”GATEWAY”。すごく初期にできた曲で、これは音楽性自体もそれこそソウルパンクといったようなMOOSのイメージの土台みたいなものをこれで作れたかなって思えた曲。それで、歌詞は「自分はマジョリティ 声の大きい男性」っていうところから始まっていて、そこがすごく重要なポイントで。私たち4人は、日本国籍のシス男性で、日本で生きている中で、属性として特権的な立場にいる人たちが集まっていて、「パンクをやりたい」って標榜してバンドをやるときに「今のこの時代に男性4人で何を歌うんだ」っていうのが問われるというか。自分自身も人のライブを観ていて、そう思うことも増えたし。その時に、ROJOがこの歌詞を持ってきて「これだな」って思えたんだよね。どうしてもニッチな音楽のジャンルというかコミュニティの中にいると、「自分たちは社会の中のマイノリティなんじゃないか」という気持ちになりがちなんだけど、実際私たちはすごく特権を持って生きているし。これまでのパンクは外に対してメッセージを発するイメージが強くて、わかりやすく言うと”反戦”とか”反核”とか。自分ももちろんそういうことも考えて歌にしているけれど、パワーや権力という意味での『力』とか。そういったものは、私たちが関わる小さなコミュニティや家族という枠組みの中にも存在していて、そして、その力は、属性や局面によっては自分自身にもあり、他人事ではないよねっていう、そこに向き合っていく。そこからまた”外に向けても歌う”という事をGATEWAYができた時に形にできたんじゃないかって思えた曲。

ROJO:確かGATEWAY作っていた時は僕がドラムのまだ三人で、「女性がメンバーにいた方が良くない?」って話もしていて、それは何でかっていうと、さっき言ってくれたように「男性4人でバンドやってるのってどうなんだろう」って話もして、だけどそこに女性が入ってくれたとしてもまた違う課題があって乗り越えなくてはいけないなって議論をしたよね。女性だ、男性だ、と会話しているのも、今は違うと思っています。

うし:”聞く”と”GATEWAY”はすごく芯の部分で繋がってる気がしました。

スガナミ:二曲とも男性特権からキーワードを得ているので、それって自分たちのことでもあるよね、という曲なのかもしれないね。

うし:そうですね。お互いを感化できる曲作りができているのもすごく良いですね。耕太郎君はどうですか?

耕太郎:鳩とNo.9かな、曲としては。ROJOさんの歌いまわしがめっちゃカッコ良いなって。好きですね。歌詞についてだと”なにを”の内容が、いつも自分の中にある気がする。考えさせられるというか、”なにを選ぶか”ってあんまりMOOSをやる前はそんなに向き合えていなかったと思う。MOOSやり始めてからいろいろ考えるようになった。

うし:具体的なところだと何を選ぶかについて意識するようになったものって何かありますか?

耕太郎:例えば差別的な発言のあった会社の商品とか、酷い労働環境で搾取してるような会社の商品は買わないようにしようと意識するようになったっていうのもあるんですけど、すごく私的で身近なところで言うと、最近、健康診断で脂質異常と指摘されたり、昔からアトピー持ちな事から、何かを食べようかなと思う時に"なにを"が頭の中に流れてきます。

スガナミ:MOOSは、MCを必ずみんなでやるから。

うし:それがMOOSのライブの特徴ですよね。特定の人だけが喋るんじゃないっていうのと、ライブで一曲一曲について丁寧に言及するという選択が。

スガナミ:人の話すのを聞いていて、解釈がそれぞれ違って良いって思っていて。その曲に関して何か考えて話すっていうのがすごく重要だなって思う。

うし:正解というか答えを掲示しているわけではないですもんね。曲のメッセージの伝わり方の何かの手掛かりになれば。

ROJO:ちょっと話が逸れるんですけど、昔から思っていたのがバンドのインタビューとかでメンバーの誰が話してもそのインタビューが成立するバンドになりたいと思っていて、「MOOSはできるかも」と。MOOSで主に歌詞を書いているのは僕やスガナミ君ですが、例えばこの場に僕やスガナミ君がいなくても、耕太郎君かK君に全曲解説してもらおうとか、それでも辿る先は一緒というか、入り口はそれぞれの考え方があるから違うんだけど、話が落ち着く先は一緒みたいな。すごく良いバンドだなって。

K:MCで曲についてをメンバーそれぞれがライブで一回は話すって、最初僕と耕太郎君は「どうしよう」って。笑 一週間くらい風呂場とかで「あーーー!」って。笑

ROJO:やってるじゃん、MEGA Xで。

ケイ:全然内容が違いますよ!笑

耕太郎:僕はMCすること自体、他ではあまりないですから。

うし:でも、それで曲に向き合っていろんな解釈ができたんじゃない?

耕太郎:そうですね。

K:自分で喋ることによって歌詞とかもちゃんと自分に落ちてくる。

うし:そうだよね。それでは、そろそろ閉めたいと思うのですが、レコ初が6月25日、日曜日にありますが、その日の出演バンド・DJとの巡り合わせなども聞いてみたいです。

スガナミ:レコ発は共演に、Hello Hawk、T.V.not january、GAKUDAMA、そしてDJにonepunkをお招きしました。Hello Hawk、T.V.not january、DJ onepunkはMOOSの活動のずっと前から長い合流がある人たちで、それぞれが自分たちのペースで独自の活動を続けているひとたちで、MOOSで一緒にやれることがすごく嬉しい、答え合わせみたいな感じで。そこに加えて、GAKUDAMAは新しい出会いとしてお誘いさせて頂いて、GAKUDAMAはすごく雑食な音楽を演るので、イベントとしても、MOOSとしても刺激を貰えたらと思っています。

うし:楽しみです。最後に何かあればお願いします。

ROJO:最初はコロナ開けたら解散しようって話をしてたよね。結成した瞬間は。

K:言ってた。

スガナミ:ライブもせずにテープだけ出すって。

ROJO:バンドじゃなくても、それぞれMy Own Opinions(自分自身の意見)という活動ができていたら良いよねって。それはライブじゃなくてもできるし。あとは、コロナ禍の方が言うべきことがあるだろうってことだったんですけど、今はやめる理由がないですね。生きていれば言いたいことも出てきて、議論の土台みたいなものですねMOOSは。それが、他の誰かの議論の土台になれたら良いなと思います。

耕太郎:締まった。

うし:ありがとうございました!

MOOS一同:ありがとうございました!


MOOS / MOOS


MOOS / Album
自主制作盤
MOOS-002
¥3,000 (税抜)
LP record 45rpm / mp3 DLcode封入
発売日 : 6月下旬 (プレスとの兼ね合いで調整中)

MOOS | ALBUM 
Music & Arranged by MOOS
Lyrics by ROJO, スガナミユウ
Produced by MOOS

Side-A
1 INSIDE
2 No Machismo
3 キーワードを見つけて、スローガンを掲げる
4 なにを
5 聞く
6 MOOS!!!!

Side-B
1 Little voice, Many voice
2 土壌
3 Cheap trip
4 obrigada, obrigado
5 鳩とNo.9
6 GATEWAY
7 Making life, Search right

アルバム特設サイトはこちら

MOOS 1st LP release party


MOOS 1st LP release party at LIVE HAUS
2023.06.25 (SUN)
12:00 open start
ADV : ¥2,300 (+1drink)
DOOR : ¥2,800 (+1drink)

LIVE : MOOS、GAKUDAMA、Hello Hawk、T.V.not january
DJ : onepunk
予約
myownopinionsmoos@gmail.com

9 PARTY at LIVE HAUS
2023.07.09 (Sun)
open start 17:30
ADV / DOOR ¥2,300 (+1drink)
RELEASE LIVE : MOOS
LIVE : Few、NINJA BOYZ、SILENCE HOLDER、WAR/ZIT
and more..
DJ : mizuki、ushi


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MOOS 1stカセット発売中!
1曲1分にも満たないlofiかつlowなPUNKサウンドを基調にしながら、SOULインストからNew wave、Dubまで、様々に音楽性を拡げ現在進行形のメッセージを放つ『MOOS』が考えるひとつの音楽の在り方を体験してみてほしい。
例えば、A面ではSSTに影響を受けたような曲(M-6.土壌)が、B面ではキャプテン・ビーフハートのようなアバンギャルドなアプローチになっていたり(M-12.どぜう)、A面ではThe Make-Upに影響を受けたようなSoul PUNKが(M-9. Gateway)、B面ではmove on upのようなホーンセクションを配したインスト曲になっていたり(M-19. Gateway part.2)、一筋縄ではいかない多面的なアプローチを試みている。






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