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THE GUAYS x 安孫子真哉――『あきらめることをあきらめたんだ』LP発売記念対談

KKV Neighborhood #67 Interview - 2021.02.12
by ハヤシック(Killerpass)

フレンドシップス!!
かつて、この言葉がこんなにも嘘偽りなく似合ってしまうバンドがいただろうか。結成から約10年、渾身の3rdアルバム『あきらめることをあきらめたんだ』を発売したTHE GUAYS。ひたすら眩しい輝きを放つこの名盤に、元気や勇気を貰った人も少なくないのではないでしょうか。筆者もその一人ですが、なんかもう聴いてるうちにドンドン高揚してしまい、衝動的に思ってしまいました。「お、俺もなんかやりてえ…」。

という訳で(笑)。 誰もやらないんだったら俺にやらせてくれと頼みこみ、安孫子さんの協力の下メンバーへのインタビューを慣行しました。緊急事態宣言中という事もありZOOMでのインタビューでしたが、久しぶりに皆さんの顔をみて話して、この人達だからこの音を鳴らせるんだよなって改めて痛感しました。音から人柄がドバドバ溢れ出してきてる。あぁ、パンクロックって、優しいから好きなんだ。

今、彼らの真骨頂であるライブを観る事が容易ではない状況が続いています。だけど、この先何日何か月何年かかったとしても、きっとTHE GUAYSは僕や君の街に音を鳴らしに来てくれますよ。だって、あきらめることをあきらめてるんですから。その日を心待ちにしながら、このインタビューを楽しんで頂けたら幸いです。

まだまだこれからだよなキャプテン。いこうぜ、THE GUAYS!

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――前作『After my vacant』から約3年振り、待望のアルバムリリースおめでとうございます。中々こういう状況(コロナ禍)で家族や好きな人と会えなかったりしんどい事が多い中、友達が凄く良いアルバムを作って届けてくれたのは自分自身とても励みになりました。本当に素晴らしい作品をありがとうございます。

安孫子「僕も林君と一緒ですよ本当に。こんな状況になるなんて誰も予想してなかったから、どうやって皆次のバンド活動の一手を打つんだろうっていう混乱の最中にアルバムが出たっていう感じで。バンドにとっては不運なタイミングなんだと思うけど。ツアーも出来ない、普段のライブも出来ない。皆の在り所…ライブ活動が中心だと思うから。でもその中でも特別に嬉しいニュースだった、嬉しいリリースだったって事と、そして俺も滅茶苦茶励まされて。あの、もう…死ぬほど聴いてます!」

一同(笑)

安孫子「俺も独立して新規就農して慌ただしくてあんまり人と会わない生活だったし、人と電話とかメールでしかやりとりしなくて。毎日の作業とか仕事は楽しいけど、物足りないものが何かあるとしたらやっぱり結局はこう…なんだろうな、人と対面しているっていう感覚とか、それが頭では分かってるんだけどやっぱり物足りなく感じてるものがあったりした。で、その中のコロナ禍だったりもして。うん、結局でも孤独とか独りぼっちだとか寂しさっていう気持ちって、何やってても付き纏うっていうのはやっぱりそう。THE GUAYSのアルバムはすごい温かい言葉をいっぱい投げかけてくれている様で〈結局一人だろ?〉っていう事を突き付けてる感じもした。だからこそ人との思い出とか出会ってきた事とかに未来を感じてる。やっぱり結局人と人って支えあってんじゃね?っていう事を強烈に突き付けられている感じが凄いして。バンドにとっちゃ不運なタイミングかもしれないけど、俺にとっちゃ良いタイミングで聴けたなって感じがしました。

あとやっぱり色んな社会問題とかある中で…〈THE GUAYS国〉があるとして、メンバーの4人一人一人がその国を良くしようとか、自分はその国の一つの役割なんだっていう自覚が物凄い伝わってきた。人と一緒に作っていったり組んでいくって本当こういう事だよなって。自分も農作業とかレーベルをチーム戦でしてるけど、皆が自分たちの背負ってるものに対して献身的にやってるっていう。それはバンドだけじゃなくて自分の生活だったりにも全部繋がってて、そういうのが凄い突き刺さった。だからTHE GUAYSのムードを大事にしてほしいなって思ったし、凄い大事な事を見せられている感じがしました。一人一人めちゃくちゃ葛藤があったり色んな苦しみはあると思うんだけど、THE GUAYSって看板背負った時に4人の充実してる感じが凄い伝わってきて…めちゃくちゃ感動しました」

――僕も全く同じで、このタイミングで聴けたっていうのが凄く響きました。味気なくて、いつ腐ってもおかしくない生活の中で、皆さんの音と言葉に滅茶苦茶元気を頂きましたよ。感謝の気持ちでいっぱいです。
では皆さんに聞いていきたいんですけど、アルバムの制作はいつ頃から取り掛かりました?個人的には前回のツアー(約1年、35本に及ぶロングツアー)の流れを凄く感じる作品になってるなと思いました。

安孫子「俺はこれまでTHE GUAYSのライブを結構観てて、逆に曲作りいつやってたのかな?って感じかな。アルバム出るまでの間(期間が)ちょっと空いたけど、前作後にライブで披露した新曲が“After My Vacant”ってめちゃくちゃアンセミックで大好きな曲なんだけどそれは今回入ってなかったし。前回の流れというより俺のイメージは最近のモードに良い感じに更新されてしまった。ライブで聴いてる曲ももちろん何曲かあるけど、ズバッと清々しく変わったって印象があるかな」
ヒロシ(ギター/ヴォーカル)「2018年のツアーが終わるか直前位か、半分半ば位かな。音楽的な話になっちゃうけど、THE GUAYSはレギュラーチューニングでずっと音楽を作っていて。ツアーやってる中で声がキツくなってきて、半音下げにしようってなったんですよ。そっから全員の中で(歌の)キーと半音下げで作る自分たちの音楽が凄くフィットしているのが分かって。そっからもっとメロディアスな曲が出来る様になったっていうのが凄いデカいなと思っていて。それで“After My Vacant”という曲を作って、そこからの楽曲は手探りでやっていく中で音楽がドンドン変わっていったんじゃないかな」
安孫子「俺も感想で思っていたので、今作以前の闘魂注入一直線から結構歌い切る感じに変化してきたのって単純にバンドが求めてた(曲の)キーとか、歌いやすさだったんだなって凄い腑に落ちた。大声を出すだけじゃなくなって」
ヒロシ「それはツアーを経て得たものって感じがします」
キャプテン・リョウスケ(ヴォーカル/ギター)「プラスアルファ、(前作の)レコーディングをレギュラーチューニングで歌入れしたけど、めちゃくちゃ苦しかったんよ。聴き直したら、これ、歌えてないなみたいな所が自分らの中でかなり目立ってきて。歌頑張るってのと、曲のキーの見直しが2ndアルバム『After my vacant』の気付き。そっからの一つの進歩でもあって。そこでツアーで半音下げでチャレンジして、ヒロシの話に繋がるって感じかな。後、出来るだけ新しい曲を入れたかったのもありますね。今の自分たちに一番近い曲を」
安孫子「唄歌うのが気持ち良いなあっていうのが強くなったって事かな」

――ハードなライブスケジュールを経て、自分達にフィットする感触を掴んだっていう感じですかね。

キャプテン「そうやね。それと2ndアルバムでメロディーがある曲を録音して思ったって感じ」

――レコーディングの内容について聞きたいんですけれど、コロナ禍の状況でスケジュールは予定通りにいきましたか?

ゆっきー(ドラムス/ヴォーカル)「2019年の冬位から〈そろそろ出したいな〉と話はしていて、2020年の年明け位から始めて春から夏には出せるようにと。それに合わせて週2必ず入っているスタジオの時間を毎回4、5時間位詰め詰めにして、レコーディングに向けて頑張っていた時にコロナの怪しい不穏な雰囲気になっていきました。なので具体的な日程を決められず練習をしながら様子を見ていました。2月位でコロナが広がってきて、3月後半位からは…そして4月7日の緊急事態宣言で、これ無理や、やりたいけど全く目処が立たんってなってそこからスタジオが閉まってバンドの身動きが取れなくなってしまった。毎日曲の事ばっかり考えていたのに、一気にモチベーションが落ちて、その上1ヶ月近くはメンバーにも会えないし、全く人に会わない生活で…ただ仕事の通勤電車の往復だけで、あとはずっと一人で家に籠もっていました。そうしていると、この先もうみんなに会えないんじゃないかという位の恐怖もありました。

ようやく5月位に(緊急事態宣言が)明けてから、いつになるか分らんけどとりあえず動き出さな何も始まらないしなっていうのでスタジオに入り出したけど、レコーディングという目標があるのにいつ出来るのか、遠すぎて向かっていくのが凄い難しい、気持ちをそこに向けるのが難しくて、あと生活するだけでも物凄く苦しかった。なんとか自分を奮い立たせる為にもスタジオには行って、ようやく6月にレコーディングを開始出来た時は、本当に嬉しかったです」

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――年明け位からの予定が伸びて伸びて、やっと6月から実際にレコーディングを開始したって事ですかね。

キャプテン「そうやね。今の話の補足で、4月末に一回レコーディングの日程が決まってたけど緊急事態宣言で出来ないとなり、再度5月に日程を組んだけど、それはスタジオが閉まっていての練習不足と俺らのモチベーションで〈これは今やったらマズいな〉ってなって。それで最終的に6月の末に移動したって感じかな」
安孫子「その頃ってコロナがこんなに…今も(2021年1月中旬)緊急事態宣言が発令されてて。でもその頃って、ここを耐えれば元通りになるだろうって希望は怪しかったけどまだあったって事だよな」

――人によると思いますが、自分は希望を持っていました。バンドで組んでいたイベントを3月から7月に延期したので。結局出来ませんでしたが、この時期を耐えれば…というのは思っていました。

安孫子「そうだよね。それを踏まえ質問してもいいかな。アルバム出したのにまさかライブ活動が出来ないって、どう受け止めているんだろうっていう」
キャプテン「ぶっちゃけアルバムを作ってる時はツアーの事も薄っすらはあったんですけど、状況が読めなさ過ぎてそこまで頭が回ってなかったのが一個あったのと、今回はアルバムを作る事に完全に集中してましたね。このタイミングで、不運でもあるんやけど絶対作品を残しとかなあかんなっていうのがどちらかというとかなり強くて。

作ってる最中も1ヶ月後のライブが出来るかどうか怪しいっていう状況で、スケジュールを先に組むよりも突発的にレコ発とかをブッコんでもいいんかなと思ってました。感染のリスク等を考えるとやっぱり東京から地方も行き辛い状況だったし、各地のハコ(ライブハウス)含め人や環境、準備が整ってないとツアーは行けないかなと思ってたんで。僕らは(前作の)ツアーをしたおかげでこのアルバムも出来たと思っているから、これは自分たちのエゴだけど、行きづらい状況を考えてたらめちゃくちゃそれが辛かった。それでも毎日更新されているし、良くしようとしてる人がいるから、今じゃなくてもどっかのタイミングでツアーは出来るはずだと信じてます」

――ユウシさんはこのライブが出来ない状況はどう思いますか?

安孫子「ライブやるために上京したもんね」
ユウシ(ベース/ヴォーカル)「はい(笑)。でもやっぱライブやりたいけど(状況を考えると)どうなんやろうな?って思っちゃう自分もいるし。みんなライブしていいよって雰囲気でも無いっていうか。皆が皆オッケーやったらいいんやけど、誰かがそうじゃない思いやったらどうなんやろって思っちゃったりするし。やっぱり「ライブ来てくださいよ!」って友達とかに100%元気に誘えへん…自分の中で少し引っかかってるのも嫌やなって思っちゃってますね。でも音源は作れて、記録としてちゃんと残せたのは凄い良かったなって思います」

――自分もバンドマンの視点でいくと、今やれる事の一つは音源作りなのかなって思いますね。

ヒロシ「こういう状況になってアルバムを作る、6月にレコーディングするってなり、そこに向けて音楽をずっと集中して作っていく中で音楽を作る楽しさみたいなのはより強く実感出来た所があって。緊急事態宣言の中で凄い自分の音楽と向き合ったから出来たものもあるなと思っていて。人には中々会えへんけど、曲は未来に飛ばせるっていうか。安孫子さんが昔、下地さん(DiSGUSTEENS,Killerpass,SUSPENDED GIRLS,WORTHWHILE WAY)にもらったミックステープの写真をTwitterに挙げてたじゃないですか。そのテープに書かれてる文章が、〈オス、テープを作りましたよ。なんかPOP PUNKのKilled By Deathみたいになってしまった。でもアルバムを出さずに消えていった様なバンドが極東の30歳男子(大工)の心を未だ掴まえて離さないんですよね。このテープに入っているバンドはもうほとんどの人の記憶に残ってないんだろうけど、僕の心に生き続けています。僕もミリオンセラーを出せなくてもいいんで、顔も見た事ないどこかの誰かがずっと聴き続けてくれる様な作品を作る事が…〉で切れちゃってるんですけど(笑)」


一同(笑)。

ヒロシ「これ2014年位のツイートなんですけど、それがめっちゃ頭に残ってて。だから今作る音楽ってこういう感覚に近いっていうか。誰かが聴き続けてくれるだろうとか、見つけてくれるだろうみたいな気持ちで曲作ったりするっていうのが今出来る事かなって」

――(今の状況の中で)ベストと思うチューニングに自分を持ってった感じなんですかね。今作のレコーディングとミックス、マスタリング全てPEACE MUSICの中村宗一郎氏が担当されていますが、一緒にやる事になった経緯について聞かせて頂けたら。

キャプテン「プロデューサーのイーグル・タカ(GEZAN)、レーベルの十三月も含めみんなで決めました。色んなエンジニアさんの候補がいる中で一度やった事のある(7インチシングル『GOO!CHOKI!PUNCH』!のエンジニアを担当)中村さんが一番ヒットして。イーグルがめっちゃ押してたのもあり、一回会って話してみることになって。僕らはちょっと怖い印象とかもあったりしたから(笑)。上手く出来るかなみたいな感じやったけど、実際打ち合わせ行って話してみたらイメージも伝わって良い感じに出来そうな手応えがあったんで、中村さんに決めました。

――実際にレコーディングをやってみてどうでしたか?

ユウシ「めっちゃ楽しかったし仲良くなれました」
安孫子「レコーディングの時のメンバーのツイート良かったなあ。その時にユウシが入って2作目のアルバムで、失礼かもしれないけど素っ裸で言うと〈あ、ユウシもTHE GUAYSになった!〉って思った。正真正銘の4人。前作のツアー、全感覚祭とか色んなモンを経て…正直普通じゃ考えられないとんでもない行動をしてるじゃん、THE GUAYSとか十三月のみんなって。でもその中でユウシがそこに飛び込んでってから、まあコイツだったら大丈夫だろうなって感じもありつつ、多分想像もしてなかったバンド活動だと思うの。それが、バコーンってTHE GUAYSのピースがすげえハマってんだなっていうのがレコーディング中の皆のちょっとしたツイートとかでもより伝わってきて。あ、もう次の作品バッチリだろうっていうのは凄いあった。ユウシも本当に皆を盛り上げてるんだなっていうのが」
ヒロシ「ユウシめちゃめちゃ調子良かったですからね」

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――あとイーグル・タカのプロデュースって、何をやってたんだろうっていうのが気になってました(笑)。

一同(笑)。

ユウシ「タカくんはレコーディング中ずっと盛り上げ役をやってくれてて、それがめちゃめちゃ良かったですね。メンバーだけだと変な階段踏み外したらずーっと悪い方向に集中しちゃう、沈んでいっちゃう所をタカくんがずっと盛り上げてくれてるから全然暗くならずに最後まで楽しいまま行けたんで」
ゆっきー「タカくんもギタリストなので、キャプテンやヒロシがギターのことで悩んだ時には新しいアイディアを出してくれました。中村さんに〈これだったらどうですか?、それやったらエフェクトこうですか?〉ってどんどん聞いてくれたりして。メンバーとは違う発想を入れてくれたのが凄く良くて、技術的に自分たちだけでは分からない事とか細かい違いを指摘してくれた。そのギタリスト3人を〈なんか、良いなぁ…こういうの良いよなぁ…〉って微笑ましく見ていました」
キャプテン「タカもそうやねんけど、中村さんも含めチームで作ったって感じかな。タカと中村さんが積極的に制作に入ってきてくれて、それが間違ってなかったというか、上手くハマった所があった。中村さんの経験から気づいた所もあって。アレンジの面でも面白い面が結構ある。中村さんが「このままでいいんじゃない」って言ってそのままいった所もあるし。THE GUAYSだけじゃなくて、集まった6人が良いアルバムを作ろうっていう一つの目標に向かえたことが大きかった。今回、4日間連続で朝から晩までレコーディングに入ったんだけど、それも音楽以外のことが入ってくる要素が全くなくて、そこだけに集中出来た本当に幸せな時間でしたね」

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――エンジニア、プロデューサー含め6人で作り上げたアルバムという事ですね。今作は10曲で32分、凄くドラマチックに展開していきますが、全体のイメージとしてとても軽快な作品に仕上がっています。初めて聴いた時、ラストの“いってらっしゃいを背中に”で明るく終わって、「あぁ、もう一回聴きたいな」と思って直ぐに再生ボタンをもう一度押しました。何回もリピートしたくなる中毒性を持っています。

キャプテン「ありがとう。実はアルバムは12曲録音したんよ。曲順も俺達(THE GUAYS)は違う風にやりたかってんけど、そこもイーグルが一緒に考えてくれた。まず12曲入れると40分になるというので、長いかもってなって、安孫子さんが言ってた"After My Vacant"って曲も入れてたんだけど…。俺らの中で30分位でおさめたいイメージがあって曲を削った。曲順も、イーグルが最後にあの曲っていうのをゴリ押しで(笑)。〈絶対これがいいと〉(笑)。メンバー間ではもうちょっとエモーショナルな感じで終わらせるイメージがあったし、〈この曲を削るのか…〉てなる曲もあった。凄い葛藤はしたけど、最後元気な曲で終わって、もう一回再生したくなる気持ちもこの曲順だったら確かに出るし、一番全部の曲の良さが立たせれる様に結果的になった。曲順っていうのは結構重点がある事だと思っていて、30分ていう長さも含め、そこもめちゃめちゃ考えてハマった感じはしますね」
安孫子「前作出て、"After My Vacant"はそれ以降最初に作り上げた核になる曲のようなイメージがあったんだけど。だから最初曲順発表になった時に〈曲名変わったんかな?〉って思った位絶対入るもんかなと思ってて。聴き終わってから入ってない事に気付いた(笑)。最初は("After My Vacant"が)何曲目の曲順なんだろ、曲名なんて変わったんだろって再生ボタン押す時は思ってた。で、再生押してもう…なんだろ…まあとんでもない良い感情だったんすよ俺は!とんでもなく気分良かったんすよ俺は!」

一同(笑)。

安孫子「感動したり、でもクスりとも笑っちゃえる様な感情もあったり。終わってから("After My Vacantが")入ってなかったなと気付いて。でも凄い腑に落ちるっていうか。今THE GUAYSがこういう風に出したかったんだなって腑に落ちて、本当によかった」

――まだキラーチューンが潜んでいるという事で、今後どこで日の目を浴びるか楽しみです。ではアルバムの内容について触れていきます。1曲目はまさに今のTHE GUAYS節が炸裂した爽快なキラーチューン"行進"で幕を開けます。個人的にはこの曲が今作を作るにあたって一つの核にあったのかなと思いました。

キャプテン「アルバムの中で一番古い曲やな。出来た時は凄い新しい風が入ったなっていう感じがあった。基本パワーコードとかしか使われへんけど、色んなコードを使ってみたりした事と、ユッキーのコーラスを散りばめたり、色んな挑戦もしていて。結構あの頃(2018年頃)に作った曲にしてはテンポが遅いかな。そう思って久しぶりに今回のアルバム聴いてみたけど、俺らの曲速いなBPM(笑)。全体的にちゃんとドライブしてる、良い意味で。それはそれで良い発見やってんけど。核かどうかは分からへんけど、新しい所へ行こうとして出来た曲ではあるかなって感じですね。前作のツアー中に出来た曲で、凄い覚えてる。郡山のライブ終わって仙台に向かう時に、桜が綺麗で出来た歌詞やった。その時、春だったし気持ち的にも何かしら新しい音楽への挑戦もしたかったんやと思う。それでスタジオ入って合わせて、色んな展開が出来て面白かった。今作のキッカケにはなった曲ではあるかな」
安孫子「俺も最初"行進"から始まって、トータル満喫し終えてまず思ったのは…彩りは凄い変わってったなーって、やっぱり感じれて。キャプテンの曲は今まで以上に自分達や聴き手を鼓舞するだけじゃなくてさらに温かい眼差しを持ちながら、でもまだガツンとやってくんだぜっていう今までのTHE GUAYSを押し出して進化する事を約束してくれる様な感じで。で今回ヒロシくんとほぼ半々だもんね?ヒロシくんの曲がまた寄り添ったでも一味違う曲達でTHE GUAYSの音楽や心象の幅を想像以上にドカンっと広がってきて。またTHE GUAYSが音楽でトライしていく可能性をまだまだ見せてくれたし、その中で4人のピースがズバズバとハマっていって。そんな予感をさせる中"sings!"のMVが投下されて、マジで悶絶しました。もう最高過ぎて。最初から最後までもう完璧過ぎて、まさか俺…まあゆっきー歌う曲あるとは聞いてたけど、のっけからだと思ってなくて。そっから今度全員ボーカルになるっていうのが死ぬ程鳥肌立って。いやマジ…ヤバかったっす。超名曲でした!

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――"sings!"は今作リリース以前のライブではキャプテンがメインで歌っていたと思うんですが、ゆっきーさんが歌う事になった経緯を教えてもらえたら。

キャプテン「この曲を作っている時、歌詞に〈あたし〉っていう一人称のイメージが凄いあって。だけどあんまり私生活で自分の事を〈わたし〉とは言わないんで、何か違和感があった。自分が歌うのも全然良かったんやけど、感覚的に(歌うのは)ゆっきーなんじゃないか?って初めから思っていて。それで、レコーディング前に〈(ゆっきーに)ボーカル一回やってみたら?〉って言ったんやけど、正直凄い難しかったよね」
ゆっきー(静かに頷く)
キャプテン「キーもちょっと低かったし、中々歌い慣れていない部分もあって難しくて、迷った部分もあってんけど、とりあえず一回レコーディングにチャレンジしたら、見事にハマったって感じ。結構ギリギリで変えたから、最悪レコーディングは上手く歌いきれんかったら俺がやるのも考えてた。だけど、歌詞の内容も含めて、ユッキーに歌ってもらうつもりで作った訳じゃないけど、自分の中でハマった部分が凄いあって、やってみたらそれが成功したって感じですね」

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――ライブではキャプテンが歌いつつも、ゆっきーさんに歌ってもらおうという構想がずっとあったって事ですね。

キャプテン「そう、なんとなく感覚として。でもやっぱり今まで自分が歌う曲は自分で作ってキーとか分かってるけど、人に歌ってもらうっていうので作った事なかったから。どうなるかなと思ってたけど、レコーディングマジックがあの曲は凄いあると思う」
安孫子「そこからどのようにみんなで(歌を)回そうってなったの?」
キャプテン「あれ結構ノリやな(笑)。スタジオでノリで決めたら綺麗にハマったって感じやな。〈一人で歌う〉っていうのがテーマとしてあったから、それやったら全員のパートがあった方が良いんじゃないかな、むしろ俺が歌う部分はあんま無くていいなと思って、ユウシとヒロシにもその部分を振り分けてやったらユウシの所もめっちゃハマったんすよね何故か」

――ゆっきーさんは歌ってみてどうでした?

ゆっきー「コーラスは今までも結構やっていて、前作では叫ぶ感じのコーラスで、今回ほぼ全曲自分のコーラスが入ってる上で"sings!"はメインで歌う事になりました。驚きと恥ずかしさと、でもなんだか嬉しいって気持ちでした。〈歌う〉という事にまだ慣れていないし表現することは難しいなと思うこともあるんですが、私は昔からメロコアが好きでずっと聴いてきたバンドの曲は凄くコーラスが映えていて、よく口ずさんでいました。でもどのバンドもメンバー全員が男の人ばかりで…今回自分が歌ってみて、男の人の声も良いけど、女の人の声が入ることで曲が柔らかくなったり、ちょっと明るくなったり、また違った表現が出来ているのかも?って。自分が1曲歌っているのが(アルバムの中で)凄く印象的になったんじゃないかなとは思っています」

――正直思ってもみなかった角度過ぎて、滅茶苦茶ヤラれました。キュートな歌声に一発でハート撃ち抜かれましたよ。あとユウシさんの歌声が聴けたのもほっこりしました。

ユウシ「俺2020年、THE GUAYSのほかのメンバーより一本だけライブ多いんですよ。(イーグル)タカくんに東高円寺U.F.O CLUBで内々でライブするからユウシ出たら?って言われて。それで俺一人で弾き語りをやりました。THE GUAYSの曲とかユーミン(荒井由美)、前一緒にやってたバンドの曲とかやりましたね」
キャプテン「あのライブでユウシ歌えるんやっていうのはめっちゃ思った、実は。しかもシャウト系じゃなくてちゃんとメロディーがある曲を歌ってたから。〈結構いい声やん〉って思って、そこは頭にあったんじゃないかな」

――アップと同時にかなり話題になった"sings!"のMVなんですが、監督は『kocorono』他多数の名作ドキュメンタリー映画を手掛けている川口潤氏。ドラマ仕立てのハートウォーミングな内容になっています。MVのアイデアはTHE GUAYS側から出したんですか?

キャプテン「結構川口監督主体やった気がする。俺らは海に行きたいってだけ言ってた」

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――監督が曲を聴いて、MVの内容を決めていった感じですかね?

キャプテン「そう、アイデアを何個か持ってきてくれて。そこから十三月で話して、色々付け足されていって。ゆっきーが歌うから、(ゆっきーの)幼少時代のエピソードとかを入れたら面白いんじゃないかなってなって。それで川口監督が結構ノリノリで今回のアイデアを持ってきてくれたかな」
安孫子「幼少時代のエピソードってどういう所に垣間見えるの?」
ゆっきー「私は一人っ子で、親は仕事で母親が帰って来るのも19時半位だったので、小学校の時から一人でご飯を作って食べてました。放課後は友達と遊んで、友達の門限の時間になったら、自分の家の前で一人バドミントンしたりボールの壁当てをして遊んでいて、中学生になってから音楽を好きになって、バンドに出会って、どんどん魅了されていって…そして今に繋がっていて。そういうエピソードが実はあのMVで見れるんですよ」
安孫子「前々からゆっきーが実はバンドやってる事をご家族に認知されてないとか、知られない様にやっていたって言ってたけど、お母さんが地元のCD屋さんに買いに行ってくれたってツイートあったじゃん。いやなんか…この時が来てくれて本当良かったって、俺も凄い嬉しかった。うん」
ゆっきー「バンドを10年やってきたけど、最初からずっと反対されていたし上京したことへも自分勝手な事をしていると何度も言われ続けてきました。去年のレコーディング中もいつも通り色々と言われ凹んでました。なので何も言わないように、むしろ隠すようにしていました。日常生活のスタジオだとかライブするとかも一切自分から言った事がなかったですね」
安孫子「(CDを)聴いて、お母さんから何か言葉頂いたの?」
ゆっきー「良かったよって言ってくれました。本当にここまでやってきて良かったなっていうか…自分は間違った事をしているのかな、そんなに自分勝手な事をして家族に皆んなに迷惑を掛けているのかなって思いながらずっとやってきて。(バンドに対して)やるぞー!という気持ちに100%なれないときも今まで正直ありました。これでいいのかな…と迷いながら、でもやりたい!という葛藤の連続でした。でもこうして続けてこれた事は凄い事だなって、まさかこんな事が起きるなんて夢にも思わなかったです。〈緊張するけどお店にCD並んでるの見てみたい〉ってわざわざ買いに行ってくれて泣いてしまったし、そんな母に感謝しています」
安孫子「メンバーみんなも安心っていうか、凄い心に留められる出来事だったんじゃないかな。ユウシも地元の新聞に取り上げてもらってね(ユウシの地元、三重県伊賀市の伊賀タウン情報新聞『YOU』の2020年12月26日号に特集記事が掲載されています」
ユウシ「あれは地元のTSUTAYAで地元のアーティストを押してるコーナーがあって、そこに地元やから置いてほしいなと思って直接連絡したら、店長が短大の時の後輩やって。〈ユウシさん頑張ってるんですね、置かせてもらいます〉みたいな感じで言ってくれて。それで地元にCDを置いてたらたまたま『YOU』の人が目に留めてくれて、インタビューしてみたいっていうのがTHE GUAYSのメールにきて。それで載る事になりましたね」
安孫子「俺もバンドやってたからなんとなく分かるんだけど、色んな事突っ張ってバンドやってるけど、多くの人にやっぱり…身近に家族とか親族とかいたりしてさ、そことの闘いもあったりするから。俺も山形の田舎から東京来てさ、何やってんだみたいな感じだったのが…第三者とかが取り上げてくれた事が、安心させてくれる一つの事になるからさ。そういうのも本当にありがたいよね。何気にそういう葛藤とか個人個人のせめぎ合いってあんまり皆言わないけど、赤裸々に言っちゃうとそういうのって本当助かるんだよね、頑張ってやっている証拠みたいになって。THE GUAYSも皆いい歳になってきたしね(笑)」

――自分も含め30半ばですからね(笑)。今作で印象的だった事の一つとして、ヒロシさんの作る曲が増えたっていう所がトピックになっていると思います。個人的には今までの勢いのあるTHE GUAYSの良さを崩す事無く、楽曲の幅が広がって凄く表情が豊かになったなっていう感想を抱きました。THE GUAYSと言えば明るいイメージが目立っていたと思うんですけれど、そこにヒロシさんが作る曲によって「影」や「哀愁」というワードが加わって、より「明」の部分にも深みを感じる様になりました。キャプテンのブログ"ストレートパンチ”によるとヒロシさんが“Start Again”をスタジオに持ってきた事がアルバムを作るキッカケの一つだった、というニュアンスの文章も書かれています。

ヒロシ 「“Start Again”は僕が2019年に入院してた時の曲で…」
安孫子「あーー!!(凄い勢いで)なるほど!!ゴメンゴメン、そうだ!!気付いてなかった!!」

一同(笑)。

ヒロシ「そのタイミングで色々なんか…自分的にも、親だったり友達が病気になって、凄い〈死〉みたいなものが近くなった時があって。そのままコロナ禍に突入して人に会えなくなったりとか、結構地続きで続いてる感じがして。“Start Again”は僕が2週間位入院してて、皆会いに来てくれたりもしたけど、夜は21時消灯とかで孤独やし。そういう中で記憶みたいな、良い思い出や仲間の事とかを思い出す事によって、前に進めるという曲っていうか。ある意味STAY HOMEとかに近い感覚で曲作ったのはあって。そっから(“Start Again”を作ってから)自分が変わっていった感じはありますね」
安孫子「そうだゴメン、そう連なってるんだね…そうかあ、うわー読み解くの甘かったわ俺!」

一同(笑)。

安孫子「うわ悔しいなあ」
ヒロシ「だから自分に関わってくれている人とかに対しての感謝だったりする曲って感じが凄いします」

――ユウシさんはヒロシさんの曲が増えてきて、バンドとしての変化みたいなのは感じましたか?

ユウシ「そこまで感じないですけど、加入当初と比べると曲調は変わったんかなって思います。いつもヒロシが持ってくる曲は難しいからキャプテンと俺が大体目合わせて〈いける?いける?〉みたいな感じの顔をして、〈いや、分からへんな〉みたいなやりとりがよくありますね(笑)」

――キャプテン的にも今まで培ってきた信頼があって、ヒロシさんの曲の比重が増えていったんですかね?

キャプテン「普通に良いなあ、良い曲やなあって思うから。正直(ソングライターが)俺一人やったらアルバム出来るまでに絶対時間かかるし。やっぱり曲作れる人は俺1人じゃない方が広がる。だからその辺今回は、Hüsker Düみたいなイメージかもしれん」
安孫子「あぁ、なるほどね!なるほどね、そうだね!」
ヒロシ「Hüsker Düはめちゃめちゃ聴いてましたね」
キャプテン「競い合ってじゃないけど、良い感じの刺激があるっすね、もう一人曲作る人がいるってのは。〈うわぁ、エエ曲書いてきたな、くそー。俺も頑張ろ〉みたいなのはある」

――それが凄く良い化学反応を起こしていますよね。個人的にはヒロシさんの作る楽曲の哀愁感に、JAWBREAKERの息吹を感じました。

ヒロシ「あぁ、めちゃめちゃ聴いてました。僕の中でJAWBREAKERとかMEGA CITY FOUR、FIFTEENとかは結構存在としてデカくて。皆そうやと思うけど」
安孫子「皆っていうか、スゲー狭い世界の中だと思うけど(笑)」

一同(笑)。

ヒロシ「(制作中は)そういうのばっか聴いてましたね。あとDYKE DRAMAとか。凄いなんかこう…所謂EMOに入る直前の音楽っていうのが」
安孫子「俺もその辺大好物だよ」
ヒロシ「そうですよね。だからそこがギリギリのラインっていうか。そこが一番美味しいというか僕が一番ピーンと来る所で。そういう音楽に影響受けまくってますね」

――メンバーそれぞれ、レコーディング中等にどんな音楽を聴いてましたか?

ゆっきー「ヒロシと一緒でDYKE DRAMAやHüsker Dü、あとBad Movesっていう女の人がボーカルの現行のバンドを。コーラスとか歌を歌うにあたって参考にしたり。あとWeakerthansかな。ドラムの面で言うと、今までのTHE GUAYSの曲だと8ビートでガーっと疾走する曲が多かったけど、今回はそういう明るい曲だけじゃなく、ヒロシが作るテンポがゆっくりで聴かせるような語りかけるような曲に対して、リズムキープは結構自分の課題になっていて。自分が今まで聴いてこなかった所というか、勢いだけじゃあかん、逆に勢い入れたらあかんっていうのが本当に難しかった。それでちょっと落ち着いた曲をたくさん聴いて…落ち着いててもモタって聞こえない、むしろ丁度良い、気持ち良く聞けるテンポ、詰込み過ぎずちょっと抜くとこは抜くように、それでも寂しくなって(オカズを)入れちゃったりはするんですけど。そういうドラムの事を考えつつ、コーラスの事を考えつつ、イメージしながらインプットしてました」
ユウシ「俺はなんやろ…T字路sとか聴いてましたよ」

――レコーディングに影響は与えてるんですか?

ユウシ「うーん、どうですかね…」
安孫子「生き様に?ユウシ生き様系だもんね」
ユウシ「そうですね…俺、生き様系って初めて聞きましたよ(笑)」

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一同(笑)。

キャプテン「俺は今考えたら、2019年のDESCENDENTSのツアーを見て、聴きなおして、もう一回曲作りとかに関しては学ぶ所が多かったかも。そっからまた色んな熱が出てきて。あともう一回聴き直したっていったらTHE MUFFS。ボーカルのキムが亡くなってしまったっていうのがあって、本当にショックで一時期THE MUFFSしか聴けない時期があった。一番最後のアルバム『No Holiday』を聴いて凄い気持ちになって。あと安孫子さんとはやしっくと伊香保温泉に遊びに行った時に70年代のPOWER POPドライブで色んなバンドを教えてもらって、そっから掘ったり。あの後SEVENTEEN(ALARMの前身バンド)の音源を直ぐ見つけて買ったんです!それでPOWER POPのアルペジオの感じとか、Shivversとかのコード感とかを結構意識したり。Weakerthansもテンポ感をユッキーに聴いてもらったとかもあったし。まあまあ…パンクですね(笑)」
ヒロシ「僕はレコーディング中ひたすら聴いてたのが、THE CLASHの“STAY FREE”」
安孫子「あぁ、感じる感じる!めちゃ感じますわ!あと映画『ルード・ボーイ』の…」
ヒロシ「そうそう!あの(ミック・ジョーンズが)歌うシーンあるじゃないですか」
安孫子「あれとかね、シンクロする」
ヒロシ「あれのミック・ジョーンズの表情はマジでエモやなと思ってて」
安孫子「そうだよね。〈随分センチメンタルな曲歌うじゃねえか〉みたいな会話だよね」
ヒロシ「そうですね!あれはめちゃめちゃ聴いてました」
安孫子「やっぱ皆パンクっていってもちょっとひねってたり変わったバンドが好きだね」
ヒロシ「ZERO BOYSとかめちゃめちゃ好きですね」
安孫子「THE GUAYSって出会った当初からそうなんだけど、ストレートと見せかけてめちゃくちゃ曲展開とか凝るじゃん。ストレートに聴かせてるけど一曲一曲しっかり展開していったりさ、仕掛け作ったり…丁寧にストーリーを作ってるって感じがするんだよね。初期の作品とかは〈いきなりこう来るか!〉って飛び道具アレンジに思えたんだけど(笑)。前作から含め…やっぱり今作かな。今作は曲展開やフレージングや息遣いとかもいちいち必然性をしっかりと感じられてグッとくるっていうか、一曲一曲の中の。音楽マニアがパンクロックに向かってるっていう所があって。パンクの土台が常にあって…やっぱりパンクって色々あるなあっていう。パンクも進化して成長してるなっていう。(THE GUAYSと)話してるとまざまざと思い知らされて、パンクってやっぱすげえなってなりました」

――自分も今作を聴いて、やはりTHE GUAYSはパンクロックが核にあるなと再確認しました。

安孫子「ユウシ違ったけどな(笑)」
ユウシ「生き様系ですから僕は(笑)」

――3人はパンクでユウシさんだけ生き様系って事で(笑)。今作は2月10日にLPでリリースされますが、レコード化はどういった経緯で決まりましたか?

キャプテン「その…ゴリ押しで(笑)。十三月でLPの12ヶ月連続リリースっていう企画があって、上手くそこで一緒に出来るってなった。人生でどれだけアルバムを作れるかわからないのに、このアルバムをLPで出せないと絶対後悔すると思ってたので、出せることになり本当に良かった」

――LPへの想いがあったら教えてください。

ヒロシ「僕はレコード屋で働いてるんですけど、今自分の手元に入ってくるレコードってやっぱり以前に所有したもんばっかりで。レコードは永遠に巡り巡って色んな人の手元に行く媒体だと思うし、音楽の媒体で一番〈旅〉してるのがレコードやと思うんで。それは何て言うんですかね…自分の分身をそのまま色んな人が持ち続けるみたいな感じに近いっていうか。それが出来るっていうのは本当に、ロマンでしかないなっていう感じです」
安孫子「本当そうだね、レコードって死ぬ程旅してるよな」
ヒロシ「大事にするやつ、しないやついるやろうけど(笑)。まあ色んな人の手に渡っていくのは凄い良いなあって。それに参加出来るっていうのが嬉しいですね」

――個人的にもこのアルバムを、針を落として聴くのがとても楽しみです。ゆっきーさんもレコードプレーヤーを買っていましたよね?

ゆっきー「去年の誕生日プレゼントにヒロシからプレーヤーを貰って。ずっと欲しいとは思っていたけど、手を出すには自分にはまだ早いって何故か抑えてしまっていて、CDをひたすら買っていこうって感じで音楽を聴いてたんですけど、ヒロシにプレーヤーを貰ってレコードを買いに行った時に、なんか昔初めてCD買いに行った時とか、音楽やパンクが凄い好きになって〈このバンドのアルバムめっちゃ揃えよう!〉っていう衝動やワクワクを思い出しました。やっぱ手にする物が全然違って凄くワクワクしたのと、柔らかみのある音がとても心地良くて、ブツブツなるあの音には〈おぉ!〉てビビリながら(笑)。初心者の感想ですが、温かみがあるなって思いました」

――アルバムについて一人ずつ感想等コメントをお願いします。

ユウシ「ベース結構ノリノリなんで一杯聴いてほしいのと、このコロナ禍の中で結構タイトルも良いアルバムなんで色んな人に聴いてほしいですね。今の時代に」
ヒロシ「この2020年に『あきらめることをあきらめたんだ』は普遍的な事を歌ってるアルバムやと思うし、多分20年後聴いても自分に響く音楽を作れたなって凄い思うし。自分にとって無くちゃならないものをちゃんと音楽にして、THE GUAYSで表現出来た音源やから、長く聴いてほしいですね」
ゆっきー「今この状況に、凄いしんどい、でも奮い立たせて。しんどいながら奮い立たせながらっていう繰り返しをしてようやく出来た、表に出せた音楽なので自分で聴いても励まされています。本当に作れて良かったと思うので…〈小さな希望を集めた〉というような感じのこのアルバムを沢山の人に聴いてもらえたら嬉しいです」
キャプテン「2020年に出せたのも運命的だったなって思うし、色んなタイミングが重なって、それが上手くフィットした。2ndから3rdまでにバンド内でも、個人でも色んな山があり、それが曲に変わり、ライブでチャレンジし、一緒の時間を過ごし、一人一人が立って、安孫子さんの言うように上手くピースがハマって出来たアルバム。何十年後も聴けて、愛せるなと思うんで、レコードみたいに色んな人の所へ旅して欲しいです。あとやっぱパンクバンドの3rdアルバムは、個人的に好きな名盤が多すぎて、3rdで良いアルバム作れんかったら最悪やと思ってたから、僕はそこも出来たと信じてる。THE GUAYSっていったらこのアルバムでしょって言える、まずはそんな1枚になればと思います」

――そしてこのアルバムを引っ提げ、遂に2/12(金)の新代田FEVERからツアーがスタートします。(2/12のライブは延期となりました)

キャプテン「この状況で本当に(ツアーが)出来るかどうか分かんないけど、誘われて向こう(ツアー先)の準備が整っているのであれば、出来るだけ俺達は色んな所へ行きたいなと思ってる。タイミングみてレコ発やって、このアルバムの日を作って、祝って送り出したい。そして、ツアーをしながらまた次に走って行けたらと思う。やっぱり出来るだけ俺達はツアーしたいので、いつでもライブを出来るよう磨いときます」
ヒロシ「色々毎日状況が変わって、気持ちが上がったり下がったりで。(ツアーが)ホンマに出来るんかなって思ったりとか。東京のガイドラインとかが日に日に変わったりすると思うから。そういうのを全部守りつつ、安全にライブが出来る状態で自分達が出来る全てををぶつけるだけかなと。やっぱり自分でいるためにはライブをしないとシンドイっていうか…次の繋ぎとめる気持ちみたいなのはライブする事によってドンドン繋いでいったものやから。完全にやれる状況になったら、見に来てくれたり、応援してくれる人に対してちゃんと届けれる様に頑張りたいです」
ユウシ「毎日本当変わっていくんで。でも(ライブを)やるってなったらもう楽しくやりたいっすね。やるっきゃないになると思う」
ゆっきー「全国的にもコロナの感染者数が増えている中で、安全に出来るのかという不安はあって、それはこの状況で〈やっていいんやろうか?〉っていう気持ちが一番あったので、完全によしやってやろう!って気持ちになれないのなら辞めておいた方が良いんじゃないという決断を去年はしました。でもアルバムを出してやっぱり色んな人に聴いてもらいたい、生で観てもらいたいっていう気持ちを大切にしたいので、状況をみてレコ発をしたいです。それと、音楽を届けたいっていうのもあるんですが、色んな人に直接会いたいなって物凄く思って。バンドメンバーにさえ会う事が難しかったので、人との繋がりの大切さをとても実感、体感しました。みんなに凄く会いたい、色んな所に行きたい。安全第一で行きたいです」

――“Friendships”という曲はまさに各地に散らばっている友達とか、今後ツアーで出会うであろう人に向けてだったり、そういう仲間への想いを綴った曲なんじゃないかなと思うんですけれど。一ファンとして、またTHE GUAYSの皆さんに会いたいですよ本当に。

安孫子「今まで当たり前のようにやれていた活動が本当はあったはずで。それを考えてしまったら本当に切ないよね。今バンドやってる人達はかつてない挑戦を今強いられてるよね。でも相変わらず各々のベスト尽くすしかないからさ。楽曲や音源制作の期間だって割り切って考えるのも良いだろうし、色んな事をインプットをする期間っていうのも良いし、別の挑戦する期間っていうのも良いし。でも何かしらの好きな事…こういう音楽やバンドを愛し続けるっていう事をある意味誓ってやっててさ、目の前に目標を色々と作りながら、そこに向かうパワーで生きてきてるから。だから、逆に言えば腕の見せ所かもしんねえよ。そういう世の中かもしんねえ」
キャプテン「今までライブとかレコーディングとかやってきて、歳重ねて色んな経験をしてきたけど、やっぱ今でも俺はスタジオ楽しくて。THE GUAYS楽しくて。高校生の時に生まれて初めてスタジオ入って、曲合わせた時の様な気持ちって、やっぱ忘れないじゃないですか。それは未だにあって。ライブは今までと感じ方がすごく変わって、やるのも見るのも。バンドメンバーの鳴らす音や、爆音、お客さんの良い顔ライブハウスがこんな最高なもんだっけって改めて敏感に感じるというか。だから作品を作るぐらい、もちろん今までも大切にしてきたけど、正直、ライブ一本一本がもっともっと大切に感じるようになった。それもかなり大きいモチベーションにはなってる。だから、落ち込んでる暇はないなー、ステージに立つやつは元気でいなきゃって思う」
安孫子「もしかしたら色々なフレッシュに立ち返られるような機会かも知れないしね。俺もライブ全然観れてないから、〈ライブ観たらどんな気持ちになるんだろう〉って考えるよ。この溜めに溜めさせられたTHE GUAYSのライブを観たら、このアルバムの曲を生で聴いたらどうなっちゃうんだろうっていうワクワクはやっぱり一緒に沸き起こるから」
ヒロシ「あとは(演奏する)場所がずっとそこに居てくれるか。そこが難しいっすね。どう返したら(還元するのが)いいのかが…ライブ出来へんし。中々答えは出ないですけど」
安孫子「どうなっちゃうんだろうっていうのはずっと付き纏ってしまう。片手にはそれを持たざるを得ないのは仕方ないけど、もう片手ではドキドキを探しまくるしか…そうやって生きていくしかねえもんな」

――本当に難しい事ばかりですが、THE GUAYSは状況をみながらライブをやっていくという選択をしたので、凄く良いツアーになってほしいなって思います。前回のツアーでは、ツアー前キャプテンが昂りすぎて2日間寝てないというブログが残っている位(笑)、ツアーにかけてると思うので。

一同(笑)。

ヒロシ 小学生やん(笑)。

――では今後決まっている予定を教えてください。

キャプテン「2月12日に新代田FEVERでワンマン、人数は50人位限定でレコ発をやります(延期)。2月26日に堺FANDANGOでワンマン、翌日が2月27日広島県の福山MUSIC FACTORY、3月6日にいわきclub sonicでレコ発ライブをやります。その先はまだ未定かな。あと年内にあまりライブが出来ない状況であれば、なにか録音はしたいなって。今回中村さんとやって凄い楽しかったので1人信用できるエンジニアさんが出来たっていう所はこれからのTHE GUAYSで強くなっていくんかなって思ったんで、今年も何か残したいなって感じですね」

ーー最後にみなさん一言ずつお願いします。

ゆっきー 「自分の事を大事にして、心も身体も健康に、楽しく過ごしたいです」

ゆっきーの近況
おうちでゆっくりころころ過ごすようにしています。音楽聴いて踊っちゃったりもしています。

ゆっきー

ユウシ「いっぱい寝て、いっぱいよく食べましょう。元気で皆会いましょう」

ユウシの近況
去年の一月にジムをフィットネス系キックボクシングジムからガチンコキックボクシングジムに移動。10年ぶりに試合に出ることを目標に頑張っています!!

ユウシ

ヒロシ「今、嫌なニュースが目につく事が多いから、色んなモノとの距離感を適度に大切にして、一番自分の事を大事にしてください」

ヒロシの近況
緊急事態宣言中に自分を鼓舞する為にTHE GERMSのオリジナル盤 1st pressを買いました。もう道を歩いていたらたまたま出会ってしまったので仕方ないです。音は今まで聴いていたのとは別格でダービー・クラッシュに会えたような気がします。

ヒロシ

キャプテン「本当に心も身体も健康を祈ってます。色んな状況の人がいると思うんで想像の範囲でしか掬い切れないですけど、僕たちはバンド活動を出来る状況がある限りやっていくので、またどこかで会えたらなって思います」

キャプテンの近況
色んな人に会う頻度が少なくなり、外に出る機会も減って少しでも外に出ようと思い、散歩を良くします。冷たい空気が身体に入ってくる瞬間が好きです。

キャプテン

安孫子「さっきヒロシ君が普遍的なものが出来たと思うって言っていたのすごく納得出来て。〈いってらっしゃい〉とか〈おかえり〉とか、そういう言葉の本来の持ち味というか大事さをすごく感じさせてくれている。さっき林君も“Friendships”に触れてたけど、俺も最近友達の事で滅茶苦茶落ち込んでて。その中で〈次に会うために〉っていう事を言われると、本当そういう事だよなってすごく心に入ってきた。普遍的って未来に今の自分が持っていきたい感情って事だと思うから。本当に出るべくしてこの時期に出たんじゃないのかなって、今日みんなと話してて改めて思っちゃったかもしれない。ライブで対面出来ないTHE GUAYSには申し訳ないけど、今の時期に聴かせてもらって本当に良かったってなおさら思ったよ。まさか〈また元気に会おうや〉、〈また出来る日まで〉なんて…そんな会話するなんて思ってもいなかったのにさ、今こんな会話しなきゃなんないって何なんだよって悔しくもなるけど。でもこういう言葉交わしながら出会った者同士、出会える者同士繋がりあって、また音楽を体験させてもらうしかねえなってつくづく思いました今日は」

安孫子真哉の近況
白菜とサニーレタスの収穫と高所恐怖症ではありますがビニールハウスの破れている場所の補修に天井登ったりしてます。

安孫子 真哉


林隆司( ハヤシック)の近況
昨年よりランニングチーム〈Rock'n'Roll Or Run〉を始動。毎日の様にランニング日記を更新するも、全方向から無視される日々を送っています。
今年の目標はフルマラソン完走!

林 隆司


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