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RIOTはLOVEから始まる。KONCOS『Music Is Love』リリパをレポート

KKV Neighborhood #89 Live Report - 2021.5.20
KONCOS〈Music Is Love Release Party〉(2020年4月3日、東京・渋谷WWW)
report by 松島広人AIZ

2021年4月3日、4年8ヶ月ぶりのアルバム『Music Is Love』のリリースを記念したワンマンライブ〈KONCOS “Music is Love” Release Party〉が開催された。『Music Is Love』収録曲からこの日はじめて披露された新曲に至るまで、計20曲以上に渡る楽曲が披露され、KONCOSというバンドの集大成となる内容と断言できるものだった。

バンドの空気感を表現するに相応しい春を存分に感じさせる暖かい陽気の中、渋谷WWWへと足を運ぶ。何か決定的なモノを奪われたような感覚に苛まれる日々は続くものの、この日ばかりはスペイン坂を歩く足取りは軽快だった。

入場するとすぐにDJ TOMMY(Boy)が会場を彩っている。盤石の布陣だ。TOMMYは同日に渋谷PARCOで行われていたイベントとのダブルブッキングで、序盤から最高潮のテンションを見せる。渋谷の片隅で「FASHION&MUSIC」を体現し続けてきた“遊び人”ならではの選曲が、沈んでいた気分を浮上させてくれた。

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そしてKONCOSのステージが幕を開ける。今回の会場となるWWWは本来500人超のスケール感ながら、この日は人数制限での開催。さらに昨今の情勢を受けて「会話・発声・歓声・モッシュ」などの行為は全面禁止。空間全体に課せられた制約と、KONCOSはどうやって向き合うのだろうか?と始まるまでは不安な気持ちもあったものの、蓋を開けてみればそれは只の杞憂に終わった。KONCOSが取った選択肢は、シンプルに「音楽を突き詰める」というアプローチの徹底で、結果的にそれがバンドのピュアな魅力を伝える結果に繋がっていた。

この日は特別にグランドピアノがステージへ持ち込まれ、生楽器にしか演出できないイノセントな力強さを感じさせる見事なサウンドに仕上がっていた。“Everyday”“Sing”“All This Love”と立て続けに新作の前半パートを彩るアンセムが披露されつつ、彼らの定番曲でもある“The Starry Night”“Citrus”を交えて新たな表情を見せる。KONCOSが生粋のライブバンドだという事実を、改めて耳と目、五感全体で再確認することができた。何てパワフルで、何て美しい音楽なんだろう。

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そして中盤からは、クラブ・カルチャーやハウス・ミュージックをこよなく愛するTA-1氏の嗜好が全面に押し出され、よりマッシブな雰囲気へ。スリーピースの極めてシンプルな編成で、鳴っている音はおよそ5つか6つ程度。それだけなのに、信じられないほど自然に身体が動き出す。声は出せないけど、全力で踊れる。バンドは魔法だ。説明のつかない不思議なアクションを観る者に喚起させる。

KONCOSというアクトを象徴するようなダンス・ナンバー“Parallel World”を聴いたのはこの日で何度目だろう。何十回も聴いたはずなのに、ウイルス対策が徹底された空間で聴くと、同曲の不思議な構造を改めて再発見できる。カッティングリフのような鍵盤、ストリングスのようなギター。個々のパートが、いわゆる「普通のポップス」とは真逆の役割を演出していることに気づけた。

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アクトの勢いは更に加速し、スウィートなメロディが特徴的なナンバー“feelin”に始まり、ハウス・ミュージックを最小のバンド編成で再構築した“Bongo Song”~“Whistle Song”で最高潮を迎える。力強いビートや目まぐるしく推移する3人のパート、赤を貴重とした鮮烈なライティング。そのすべてが、歓声を奪われたことすら忘れさせる魅力に満ちていた。

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ダンサブルなパートを終えると、続けて披露されたのは初期楽曲のリアレンジや佐藤寛のソロワークスのカバーといった、良質なポップスの数々。しなやかで優しいメロディが、童謡のようなムードを感じさせる。グランドピアノが持つ何にも代えがたい「倍音の魔法」を存分に活かした、心地よい一時だった。

終盤には前作『Colors & Scales』(2016)の1曲目“Palette”も久々に披露され、ステージの第二幕が始まるような心憎い演出も。大名曲の“月待つ島まで”から新たなアンセム“I Like It”、そして永遠のクラシック“今日からスタート”が披露され、ライブは幕を閉じた。

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後半に差し掛かるブレイクタイム、「生活と音楽だよ」とTA-1氏はMCで言い放った。身動きが取れない社会に突入して久しい今、それでも音楽を続けるという強い決意を感じさせる語気。RIOTはLOVEから始まるのかもしれない。

KONCOSは「違い」を否定しない。鍵盤は足で弾いてもいいし、ステージに子どもが上がってきても構わない。何をやっても間違いじゃないということを表現している。それが生きるために必要な、何よりかけがえのないことで、その包容力こそが愛なんだろうと思う。

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【SET LIST】
Intro~Everyday
Sing
All This Love
The Starry Night
Magic
Citrus
Never Been Better
Parallel World
Eisbahn
Nites Like This
Feelin'
Bongo Song
Whistle Song
青いベル(Gt.佐藤寛 ソロ曲のカバー)
三日月とプレアデス
新曲
ムスカリンリン
Palette
月待つ島まで
I Like It
今日からスタート


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