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このマンガが(俺の中で)すごい!2018上半期


はじめに断っておきますが、わたしの普段の一人称は「俺」ではないのでご留意下さい。ついでに「わたし」でもありませんがこっ恥ずかしいので文章ではコレで。

この記事では、昨日紹介した『明日ちゃんのセーラー服』以外の最近読んだ超面白かったマンガを3作一気に紹介したいと思います。

実は今日紹介する3作のうち2作はある人から薦めてもらった作品なので偉そうなことは言えませんが、とにかく面白かったので自分なりに感想や見どころを書きます。薦めてくれて本当にありがとうございました!(多分マンガの好みがかなり近い)

※紹介順=好きな順ではありません。というか順位はつけられません…


1. 『ちひろさん』 安田弘之

現在1巻が、Amazonの女性マンガカテゴリで1位になっています。スゴい!

『ちひろさん』とは、某2次元アイドルコンテンツの緑のあk…天使のことではなく、ある海辺の町の小さな弁当屋で働く元風俗嬢の"ちひろさん"とその周りの人々の暮らしを描いた基本ほのぼのな心温まる漫画のこと。

2話までこちら↓から試し読み出来ます。

"基本"ほのぼのと断ったのは、主人公であるちひろさんは一般人と比べてかなり変わった性格の人だから。普段はとても愛想良く他人と交流していますが、その心の奥には独りで生きることをどうしようもなく好む一匹狼の性が在ります。

ちひろさんは、みんなでワイワイ明るく楽しく過ごすのが好きな人を馬鹿にしているわけではありません。そういった社会の大多数の人々を受け入れながらも、それでも何故か秘密基地(空きビルのベランダ)で一人佇んでビールを嗜むほうを選択してしまう。

この漫画を読んで、あなたはちひろさんの生き方に憧れるかもしれません。わたしも憧れます。それでも、やっぱり完全にちひろさんのように割り切って生きることは難しい。

そんな人の最適解はきっと、完全に彼女を目指すのではなく、心の何処かでちひろさんという存在を覚えておくことなんだと思います。他者に肯定されなくてもいいんだ、自分が好きな自分になることがいちばん大切なんだと、SNS全盛、コミュニケーション過多の現代社会で疲れてしまったときに言い聞かせることで救われる人はいるはず。


…と、なんだか思弁的、啓蒙的な話になってしまいましたが、この漫画の魅力はちひろさんのカリスマ性以外にももちろんあります!

まず安田さんの書き込みが少なめの独特な画風が良い。ストーリーの暗い面とコミカルな面の両方の魅力を十二分に引き出していると思います。

(1巻1話より)

それから海沿いの町という地理設定も好きです。

この7巻の表紙のような、海沿いの堤防の上に立つ非常にエモいシーンがしばしば登場します。

(1巻1話より)

そして、なんと言ってもちひろさん以外にも登場するキャラクターが全員魅力的!ここでいう"魅力的"とは、カリスマ性があるということではなく、むしろみんな凡庸な一般市民だから魅力的なんです。

例えば2話から登場するメガネの女子高生"オカジ"は、マジメな優等生ながらもある悩みを抱えています。そんな中、ちひろさんという変わった女性の噂を聞きつけ、彼女に強烈に惹かれていきます。

言わばこの作品のちひろさん以外のキャラは、わたしたち読者を作中に反映させたような存在です。彼らはちひろさんにどうしようもなく惹きつけられながらも、ときに叱責され、ときに励まされ、ときにちひろさんを救う。

決して成れない"あちら側"に憧れつつも、人間らしく右往左往する"こちら側"のキャラクターたちにわたしたちは自然と自己を投影し、愛おしくなってしまうのです。

泣いて、笑って、感動して、そして自分の生き方を考えさせられる"面白い"マンガ、それが『ちひろさん』だと思います。是非。


ちなみに『ちひろさん』の風俗嬢時代を描いた『ちひろ』という上下巻の前作も、興味を持った方は読んだほうがいいと思います。こちらはかなりダーク。





2.『子供はわかってあげない』 田島列島

2015年のマンガ大賞第2位にも選ばれた『子供はわかってあげない』は、全2巻のほのぼのボーイミーツガール漫画。表紙のパンダは本編とは全く関係ありません。

高校2年生の夏休み。それは人生のなかでもとびっきり特別な時間。

女子水泳部員のサクタさんと、家が書道教室を営む幽霊書道部員のモジ君は、ひょんなことから知り合い、そしてひと夏のこじんまりとした事件に巻き込まれます。

というわけで、いちおう話の大筋はとある事件に巻き込まれて解決する、という体なのですが、別にガチな推理モノでも何でもなく、見どころはそこではありません。

とにかくキャラ同士の絡みが面白いんです。ここで言う面白いとは「爆笑できる」という意味です。

漫画を読んでいてこんなに笑ったのはいつぶりだろう、というくらい、ずっとゲラゲラ笑いながら読んでいました。

この面白さのひとつの要因が主人公のサクタさん。一応ボーイミーツガールのヒロイン役ですが、例えるなら『ゆゆ式』のゆずこや、『日常』のゆっこのように慌ただしく馬鹿ばっかりやっているけど憎めないキャラクター。

(1巻2話より)

ヒロイン感があまり無く、ギャグマンガの主人公のような立ち位置なのがとても良いんです。

対する男主人公のモジ君も、ガツガツしたイケメンでも無ければ、ラノベにいそうな無気力系男子でもなく、いい意味でこちらのストレスになりません。

丸みが特徴的な画風も相まって、この2人を中心に、物語はのんびりと進んでいきます。

他の登場人物もなかなかの曲者揃い。頼れるのか頼れないのかハッキリしないモジ君のお兄さん(お姉さん)や、

(1巻4話より)

ギャグセンスがいちいち古いサクタさんのお母さんなど、

(1巻6話より)

一癖も二癖もある、でも優しいキャラクターたちに支えられながら2人は成長していきます。

特にこのサクタ母は自分のお気に入りのキャラクターです。まさか「OK牧場〜」で涙を流す日が来るとは思ってもいませんでした。

決して笑えるだけでなく、物語の最後にはじんわりと温かい感動が味わえます。おちゃらけているように見えて、やっぱり歳並みに悩んでいるサクタさんが本当に愛おしい。

そして、『子供はわかってあげない』という変なタイトルにも、読み終えると素晴らしいタイトルセンスだなぁと感動させられます。(いや正直、自分は読んでも意味がわからず、Amazonレビューに納得できる解説が書かれていて「そういうことだったのか!なるほど〜」と思ったんですけどね)

たった2巻に、青春、親子愛、友情、超能力に新興宗教など色んな要素が詰め込まれています。

久しぶりに爆笑したいひと、のんびりとした青春を感じたいひとなどにぜひ読んでほしい作品です。

1話はこちらのサイトから試し読み出来るようです!




3. 『たそがれたかこ』 入江喜和

45歳バツイチ、高齢の母と暮らす更年期の女性が主人公のマンガ」

これだけ聞いて、読んでみたいと思う人は少ないと思います。やっぱり可愛い女の子や、カッコよくて強いヒーローが主人公のマンガのほうが読みたいでしょう。わたしだってそうです。

それでも、読み始めるとグングン話に惹き込まれ、全10巻を一気に読み切ってしまいました。まさか自分が45歳更年期女性を描いたマンガにここまでハマるとは思ってもいませんでした。

(1巻1話より)

更年期の女性とだけ言うと、全く感情移入できないキャラのように思われるかもしれませんが、読み薦めるうちに自分でも驚くほど"たかこ"と一緒に泣いたり喜んだりしていました。

たかこは小さい頃から人の輪に入るのが苦手で、結婚して子供を産んでもそれは治らずにここまで希望もなく生きてきました。

人生も折り返しを迎え、毎日を生きるのに精一杯であるたかこの心理描写は完全に理解できなくともなかなかに身につまされるものがあります。

同居する耳が遠い母親の「かまってちゃん」な性格にも悩まされ、母が寝入ったあとの晩酒くらいしか愉しみがないたかこに、ある日突然2つの大きな出会いが訪れます。

ひとつは、近所にオープンしたばかりの居酒屋の店主を務める、コミュ力抜群・容姿端麗なモテ男おじちゃん美馬さん」。

たかことは正反対の性格、別世界の住人ながら、そのフレンドリーさに徐々にたかこは打ち解けていきます。

…と、ここでありがちな漫画ではたかこと美馬が次第に惹かれ合い、年増カップルへの茨道を突き進んでいくところですが、たかこは美馬に恋をしません。美馬も、若手ビッチ舞台女優の子猫ちゃんに熱を上げています。

たかこが恋するのは別の出会いのほう。

若手バンド「ナスティインコ」のギターボーカリスト、谷在家(ヤザイケ)にたかこはひょんなことから熱烈に惹かれることになるのです。

40を過ぎて、まだ20代のバンドマンに年甲斐もなく恋をするたかこは、読者からすれば滑稽に映ります。

でも本当に大好きなものに浸っているときは、誰だって傍から見ればキモチわるく映っているのではないでしょうか。"好き"という気持ちに年齢は関係ありません。

好きに歳は関係なく、そして「好き」は人を若くします。

谷在家のことを考えているときのたかこは圧倒的に「若く」見える。単純な見た目だけでなく、毎日の過ごし方、モノの考え方まで大きく変わっていきます。


と、ここまでなら単なる「好きなものを年甲斐なく愛そう!」というわかり易い話なのですが、それだけで10巻ものボリュームにはなりません。

人生はそう上手くはいかない。生活に彩りが生まれ始めたたかこの前には、辛い運命が待ち構えています。ここのパートが本当に過酷で、雰囲気的に近いのは『3月のライオン』のいじめ編のような長く続く辛さ。(いじめではありませんが)

この試練の中で、たかこは自分の「好き」とどう向き合っていくのか。これがこの物語の焦点になってきます。

途中からずっとボロ泣きしながらページをめくっていました。大人だけど精神的に幼いところもあり、それでもやっぱり大人として必至に生きていくたかこの1年を一緒に追ううちに、最初に抱いた負のイメージが嘘のような、これまで漫画で出会ったキャラクター達のなかでも大切な存在のひとりとなっていきました。

この感慨は読み終えた人にしか伝わらないと思いますが、とにかく年齢に関係なくおすすめしたい漫画です。

なんとこちらから1巻が全て無料で読めるそうです!↓

最後にひとつだけ言わせて下さい、一花は本当に可愛く、美しく、強い子だと。




というわけで、『ちひろさん』『子供はわかってあげない』『たそがれたかこ』の3つを紹介しました。これに前回の『明日ちゃんのセーラー服』を加えて、わたしの「このマンガがスゴい!2018上半期」としたいと思います。

どれか一つでも興味を持ってくれたら嬉しいです……が、どれも本当に面白いので出来れば全部読んでほしい!

そして、似た雰囲気の作品があれば教えていただけると幸いです。

あなたも、わたしも、これから更に多くの好きな漫画に出会えますように。

それではまた。


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