第2回勝手に月評 -出張版!代々木上原~下北沢 建築巡り-

こんばんは!M2の笠瀬です。
どうしても記憶が鮮明なうちに書きたくなったので夜分遅くに失礼します。

本日は出張版gpz!
午前中は「杭とトンガリ」、そして午後には「BONUS TRACK」を見学させていただきました!
ここでは設計段階でのお話や、実際に訪れてみた感想などを交えながら、学生の視点で感じたことを綴ってみたいと思いますのでお付き合いください。

□杭とトンガリ

こちらの建築は商店街に面する貸し店舗で、鋼管杭の基礎により土を地表面に表している作品です。今回は設計者である能作さんから直接お話を聞くことができました!
興味深いお話の中からいくつかポイントを絞って書かせていただきます。

-土と雨、そして建築

作品を説明していただく中で「土中環境を整える」という言葉を何度も耳にしました。都市部の生活では土を目にする機会は少なく、能作さんは「都市部の土は乾燥している」という言い方をされており、降った雨を時間をかけて海へ流すという土本来の機能が薄れていることへの問題について考えさせられました。
私も含め、多くの人は「都市部ではあまり土が見られない」という事実で完結させているように思います。洪水の際に下水の処理能力を超えてしまうという問題は私たちの生活にとって切実であるにも関わらず、関心の外にあることが多いのではないでしょうか。
この作品は土を表し「雨水を土に返す」ことと丁寧に向き合う大切さを感じさせてくれました。

と同時に、この作品を支えるエレメントたちとの出会いもありました。
デザイン的な部分とのせめぎ合いの末、ちょこんと出された軒。そして、それにより雨だれから守られる壁。軒から滴る雨水を受ける割栗石と、それにより防がれる跳ね返りによる土汚れ。
デザインの神髄ともいえるであろう現象を可視化してくれた、そんな雨の日でした。あいにくのお天気に気分が沈む朝でしたが、逆に、雨の日に見学できた私たちはラッキーだったのではないでしょうか。

鋼管杭により土がみえる
雨落ち部分の様子

-貸し店舗ということ

不特定多数の人がアクセスすることや搬入を考慮すると、浮いていて大丈夫なのか、地面からどのくらい浮かせるのか、という議論。排煙窓を確保するためのトップライトと、どんなテナントにも対応できるように設置された日射制御のためのルーバー。内装設計の際に足場を組まなくていいよう、デザインされたトンガリ屋根の内側。
貸し店舗にすることにより追加される「想定しておかなければいけない要素」は多く、その中で建築家は、あらゆる可能性の追求と、付加の余白を残すこと、基盤をつくりつつレールを敷くことの3つをバランスよく行うべきなのではないかと感じました。

集合写真(杭とトンガリにて)

□BONUS TRACK

こちらは小田急線の地下化によって生まれた鉄道跡地に計画された「下北線路街」の一角にある、兼用住宅と商業施設です。
今回は、現在ツバメアーキテクツでご活躍されており、門脇研OBでもある箱﨑さんの解説のもと、下北線路街を散策しました。こちらもポイントを絞って書かせていただきます。

-自由と放棄の違い

場所のみ提供してあとは利用者に全部任せる、というのは放棄である。
建築に携わっている人とそれ以外の人では、「自由」を提示されたときに考えること・できることに差が生まれてしまうというのは、大学、大学院と学ぶ中で度々感じており、うわべだけの自由を提供することはある意味で職務放棄のような気がします。

今回見学する中で、テナント側や訪れたお客さんが思い思いに過ごすための細かい工夫がいたるところにみられ、それらはすべて、使われ方をある程度想定したうえで仕掛けられたものたちであることを教えていただきました。
ここは人が集うスペースがあるからタープをかけられる機構をつけておく、テナント側が好きなように庇をかけられるように構造のみ設置しておく、映像を投影する使われ方を想定して空間をデザインするなど、ルールやフレームをつくり、あとはお任せするような。ある程度の骨組みを用意しそこに付加していけるような。
意識の高い人が集まる街であり、みんなでつくっていくという下北らしさを加速させるような空間に触れ、設計の段階で使われ方を解像度高く想像し、余白を残していくことが利用者に「自由」を提供するうえで重要であることに改めて気づかされました。

心地よい空間とそれを支える様々な仕掛け

-気づかれない優先順位

下北線路街の見学一連を通して、「この空間はなにが優先されるべきなのか」が常に考えられている印象を受けました。外観をスッキリさせるために大きなサッシとその納まりに力を入れたり、仕上げを簡素にしつつも隣と若干変えることで空間にムラをつくったり、建物のボリュームを小さくすることで賃料収入は低くなってしまうものの、イニシャルコストを抑え、かつ、借りるハードルを下げたり、共用部を充実させることで小さいテナントの席数を確保したり、、、全体を俯瞰したうえでどこを優先するか、どこを重視するか、どこを抑えるか。この決定を丁寧に行うことが、限られた予算の中で最大限の効果を生むことに直結するような気がしました。


箱﨑さんに解説を受けている様子
下北線路街(BONUS TRACKへ向かう途中)

今回見学させていただいた2つの建築はどちらもテナントであり、共通する部分も多かったように思います。設計が終わって完結するわけではないということ、建築ができるまでどのように使われるかわからないということ、それに対してどのように解くのか、1日を通して様々なお話を聞けたことはとても貴重であり楽しかったです。ありがとうございました。

□番外編

-vinsanteでのランチ

お昼は坂さんが設計された紙管のフレンチ&イタリアンレストランでランチをしました!
このころには雨もやみ、紙と木による温かみのある空間と美味しいお料理で優雅な時間を過ごしました。

-ツバメアーキテクツの事務所見学

特別に事務所の中も見させていただきました!
北側斜線という制約から南北のスキップフロアにすることで、プライベートとパブリックの領域が緩やかにつくられ、それを吹抜けがつないでいるといった空間構成。上下に空間を広げることで開放的かつ分節された空間となっており、素敵な空間でした。
(1週間前、個人的に地下1階のドーナツ屋さんを訪れましたが、ドーナツも絶品です!)

□さいごに、

長々と書いてしまいましたが、盛りだくさんの充実した出張版gpzは無事終わりました!
目と耳から吸収したたくさんの情報を、再度学生間で議論することで消化し、建築を見る目と批評し言語化する能力を身につけられたらと思います。

これからも試行錯誤しながら活動を続け、noteという媒体を通して様子を発信していきますので、今後ともよろしくお願いいたします。

ここまで読んでいただきありがとうございました!

M2 笠瀬

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