第1回勝手に月評 -新建築2022.1月号-

こんにちは、M1の笠瀬です。

今回は新建築1月号を対象として行われたgpzの様子をお伝えします。
まず、前回のnoteの更新から時間が空いてしまったためgpzについて軽く紹介させていただきます。gpzとは「月評ゼミ」の略で、学生が各自新建築を読み込み、作品を自分の言葉で批評するというものです。ここでは、「言語化することは創作する時に役立つ」という先生の教えに基づき、自身の責任で建築を批評することを通して、言葉にする練習を行っています。

批評とは

今年度一発目のgpzということで、作品批評の前に先生から「批評」について教えていただきました。
批評には文芸・文学批評と建築批評があり、前者はプロが行うものであるのに対し、後者はプロが存在せず建築家や歴史家のレビューであるというお話がありました。この理由としては建築に価値が定まっていないことが関係しており、建築批評はPeer to Peer、つまり対等なプロフェッショナルがお互いに高め合うものなのです。

では実際に批評をするにあたり重要なことはなにか。
先生は「建築家が考えてもいなかったことを考えられたら勝ち」と言っていました。作品を見た時の直感は大事であるが、一方で疑うべきでもあり、多少気持ち悪く感じるものでもそれにはまだ見ぬ価値があるかもしれないとのことでした。
今までなんとなく知っている気になっていた「批評」という言葉が明確となり、新しい価値はどのように見出せるのか考えさせられました。

美術館のあり方

[八戸市美術館]西澤徹夫建築事務所 PRINT AND BUILD 森純平
お互いの活動が可視化される巨大な一室空間「ジャイアントルーム」と、専門的に深く学び、違う専門性に偶然出会うことができる「個室群」の2種類の空間からなる美術館です。
通常は閉じられがちな美術館ですが、ここではジャイアントルームでの学びの様子が様々な方向から見えるようになっていて新しさを感じました。展示を見に行くという固定観念に縛られることなく誰もがのびのびと活動できる空間となっていて、“もの”から“こと”へ展示の対象がシフトしているようにも捉えられ、市の美術館のあり方として共感できる作品でした。
 
[大阪中之島美術館]遠藤克彦建築研究所 大阪市都市整備局
内部は立体的なパッサージュで構成しており、入場者だけでなく幅広い世代の人が誰でも気軽に自由に訪れることのできる、賑わいのあるオープンかつ立体的な美術館です。
こちらは従来の美術館の空間構成に近く、八戸市美術館とは相反するような作品でした。豊かなランドスケープで多様な人を受け入れてくれそうな反面、内部空間は少し人のスケールを越えているようにも感じ、実際の人々の活動がどのように行われているか気になるところです。

ガラスの重さ

[ラ・サマリテーヌ]妹島和世+西沢立衛/SANAA
パリ中心部に建つ1870年創業の百貨店、ラ・サマリテーヌの改修プロジェクトであり、歴史的建造物であるポンヌフ棟の改修に加えリヴォリ棟を新築しています。リヴォリ棟のファサードは、解体した旧館の窓のリズムを取り入れた波型のガラスで、リヴォリ通りの対面の街並みを映し出します。
この波板ガラスは透明度が高く、繊細で明るいものとなっていて、日本らしさが感じられます。ヨーロッパはガラスがよく使われますが、このガラスの持っている日本らしさはパリにとって異質なものになっているのではないでしょうか。
 
[同志社香里中学校・高等学校 メディアセンター 繋真館]
大阪府寝屋川市に建つ中学校・高等学校の中庭に,メディアセンター(図書館)を新築するプロジェクトで、屋上は周辺の普通教室棟や礼拝堂などと接続しており、閲覧室と屋上は生徒や教職員の動線となっています。
こちらの作品で使用されているガラスはラ・サマリテーヌとは異なり、ガラスの重さを感じました。おそらく環境負荷を考慮するためガラスが緑っぽくなっているのではないかと思われますが、この作品と通して、意匠面と環境面双方を同時に考える難しさを感じました。
 

最後に

私は昨年度からgpzに参加しているのですが、毎月議論が盛り上がるものとそうではないものがあり、その差はなにか気になっていました。好みやかっこよさと議論の深さは必ずしも一致するわけではなく、意外と第一印象がよくないもののほうが議論としておもしろかったりします。
その理由はなぜか、今回のgpzを通してクリエーターの立場で建築を見るからなのではないかと思いました。批評するにはどこに着目して如何に価値を見出すかが重要であり、なぜ好きではないのか、なぜかっこよく感じないのかをつくる立場から考えなおし理論を考え共有する、この流れが議論の深さを決定するのではないかと思った次第です。

今年度も多くの作品に触れ、多角的な視点を持って議論していきます。
そしてnoteでは議論の様子に加え構成員の考えも発信できたらなと思っていますので今後ともよろしくお願いいたします。

最後までお付き合いいただきありがとうございました!

M1笠瀬

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