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プロ野球に昇降格制度は必要なのか?

みなさんこんにちは
新年も明けてはや3週間
各球団で新人合同自主トレが始まり、若手に期待を膨らませる季節となりました
そんな中、競技は異なりますがつい先日、サッカー元日本代表MFの本田圭佑氏のあるツイートが話題になりました。

ことの発端は日本ハムファイターズ監督の新庄剛志が12球団監督会議にて提案したとされるリーグシャッフル案。

毎度奇想天外な発言で物議を醸す新庄監督ですが、これに反応したのが前述の本田氏

Jリーグを始めとしたサッカーやBリーグなど他のスポーツにおいては昇降格制度はある程度周知されているからか、本田氏のツイートに対するリプ欄には肯定するようなツイートも複数見られました。
その一方でプロ野球の背景や仕組みを一切無視したような提案に対し、反対的な意見も多くあったのは事実。
そこで今回はプロ野球において昇降格制度を導入することがどんな影響を及ぼすのか考察していきたいと思います。

昇降格制度とは

そもそも昇格降格制度とは成績による2部制をとっているリーグが有している制度のことで、成績下位のチームが下のリーグに降格し、成績上位のチームが上のリーグに昇格することで、リーグのレベルを保つ、競争意識を高めるシステムとなっています。
なぜ昇降格の制度が存在するのか、ひとえにチーム数が多すぎることが原因なのではないかと考えられます。
昇降格制度を代表するリーグとして、日本のJリーグを例に挙げますが、2023シーズンよりJリーグはJ1からJ3まで総60チームが加盟しているリーグとなります。
60もあるチームが全て総当たりで1年間で戦うことはサッカーという競技特性上、肉体的にも、ピッチコンディション的にも、クラブの運営的にも不可能です。
でも各チームが均等に戦うという平等性は崩したくないし、リーグのレベルもある程度保ちたい、そこでピラミッド型の欧州型のモデルが参考となります。
チームをピラミッド型の階層にすることによって、そのカテゴリーに所属するための基準はチームの「強さ」と明確になります。
強ければ上のカテゴリーで戦うことができ、弱ければ下のカテゴリーに落ち続ける。
単純明快、実力社会そのものです。
本田氏はこのような実力によるリーグバランスの均衡こそがプロスポーツ界のあるべき姿だと主張している訳ですね。


独特の言い回しや発言で渦中の本田圭佑氏

昇降格制度によるメリット

本田氏の主張は一旦おいておいて、実際メリットとして何があるのかを考えていきたいと思います。
大きく2つのメリットがあると思われます。
1つ目はいわゆる消化試合の減少です。上位争いするチームは優勝争い、またはカテゴリーの昇格争いに加わり、下位チームは残留争いに巻き込まれることで、1つの勝敗の価値がより大きくなります。試合の価値が上がることにより、選手のモチベーション・パフォーマンス向上観客の増員が見込まれます。
2つ目は新規参入がしやすい点です。ピラミッド型の縦方向にカテゴリーを増やしていくということは、悪く言えば下位に行けば行くほどアマチュアのレベルに近づくということです。実力のあるアマチュアチームがプロ化しやすくなり、日本各地にプロチームが誕生しやすくなります。

昇降格制度のデメリット

次にデメリットです。
大きいデメリットとしてはまず戦力格差が広がります。
優勝や上位争いに絡める強い、富めるチームは半永久的に強く、一方で昇格したばかりのチームや財政的に小さい弱いチームは、ほぼ弱いままということです。
欧州リーグでは優勝するチームがほぼ決まっていますし、JリーグにおいてもJ1のチームは知っているけど、J2に関してはほぼ知らない、J3に至ってはそんな地域にJクラブが存在していることすら知らないといった方が多くいるかと思います。
そもそもチームが降格するということは以下のような階層でデメリットのループに嵌ります。

1.降格したことでファンが減る・メディアへの露出が減る
2.→収益が減る
3.→選手が離れる・上位チームに引き抜かれる
4.→チームが弱くなる
5.→勝てなくなり、さらにチームが弱くなる


一方で上位チームは収益を保ちながら、降格チームから主力や有望な若手を引き抜くことができるため、上位に居続けることができます。

私自身、某Jクラブでの勤務経験があったため、この辺の現状は少しだけ詳しいというか、リアルを見てきたので結構というか、割と悲惨です。

昇降格制度による影響は大きくこの辺りだと考えられます。


Jリーグ発足時は互いに盟主として君臨していたヴェルディとジェフも今やすっかりJ2が定位置に

プロ野球の特性に昇降格制度はマッチするのか

はっきり言って不向きだと考えます。
理由としては
・プロ野球球団のランニングコストがかかる
・戦力均衡が保てなくなる

この2つが大きいと考えられます。

まずプロ野球球団のランニングコストについて
そもそもサッカークラブは原則の登録人数は25人となっていますが、プロ野球の支配下登録人数は70人。そこに育成選手も加わるため、人件費だけで相当な差が生まれてきます。(ホークスは100人越えで昨年の総年俸は42億円)
一方でJリーグではヴィッセル神戸が昨季は総年俸が約39億円と最も金銭面では裕福なクラブでしたが、その約半分である20億をイニエスタが占めているので、あまり参考にはならなそうです。(現に2位の名古屋グランパスでは約13億円で、18位のサガン鳥栖に至っては約3.5億円)
加えて試合数も全く異なります。J1では年間34試合を戦いますが、プロ野球は年間143試合を戦います。その分の施設の管理費や運営スタッフの人件費、交通費諸々を考えるととてもではないですが健全な経営は難しくなりそうです。
事実Jクラブはカテゴリー問わず赤字クラブが存在していますし、野球でも同様の事態が起こることは想像に難くありません。


プロ野球に関しては不透明なところも多く存在するため、一概には言えませんが2020年度の赤字経営の球団は楽天のみとリーグ全体で比較すれば少ないと思われます。

次に戦力均衡について
昨今プロ野球界で問題提起される戦力均衡の問題が昇降格制度によってさらに拡大する恐れがあります。
先ほども述べましたが、昇降格制度によるデメリットとして上位チームと下位チームには圧倒的な差が生まれてしまいます。
その要因の1つとして挙げられるのが選手獲得です。
プロ野球の主な戦力補強のルートは
・ドラフト
・外国人補強
・トレード
・FA
・自由契約選手
・現役ドラフト

となっております。

中でも完全にアマチュアから新規選手として補強する手段はドラフトしかありません。日本のドラフトは1位選手を除きウェーバー制となっており、全球団が比較的平等に選手を獲得することができます。
一方でサッカーの選手獲得はJアカデミーからの昇格以外は、基本的にクラブ-選手(代理人)による開かれた場となっています。どんな選手でも条件が悪かろうが、上位カテゴリーのチームなら契約、いいオファーを出されても下位クラブなら断って進学や、海外への道を模索することだってあります。(もちろん所属チームとクラブとの関係性などもありますが)
プロ野球で例えるならばドラフト時に全ての選手がFA契約と同じような交渉をしなければならないと同じような感じです。
となってくるとやはり財政的な面で劣る下位カテゴリーのチームや地方のチームには不利に働いてしまい、FA選手や外国人選手に断られたり、ドラフトで指名しても拒否される可能性も出てきます。(まぁここは10数年以上前のパリーグなどでは行われていましたし、育成でも入団する選手が増えている昨今あまり影響がないかもしれませんが)

二度の指名拒否をした末巨人入りを果たした長野久義

If プロ野球で2部制を作るとしたら?

できるできないはさておいて、実際にプロ野球で2部制を導入した際にどのようになるのか考えてみます。
まずリーグを新設する方法としては大きく2つ
・新球団を設立し、リーグを増設する
・12球団を上位6チーム、下位6チームの2リーグにする

これがあるのかなと。

まず新球団案ですが、実際に新しいチームを1から作り上げるのか、それとも各地に存在する独立リーグの球団を編入させるまたは再編成するなどの手段が挙げられます。
ここでも出てくるのはやはり金銭的な問題でしょう。
近年日本では各地に独立球団、リーグが誕生してきています。
北は北海道のフロンティアリーグ、南は九州の九州アジアリーグ。長い歴史を持つ四国アイランドリーグルートインBCリーグ関西にも存在しています。
特にここ数年は一種のブームと呼べるほど球団が誕生しており、アマチュア選手が日本で野球を続ける環境は整いつつありますが、どの球団もその運営には苦労しています。
昨年はプロ選手も輩出した福井ネクサスエレファンツ滋賀GOブラックスが相次いで解散、活動休止となっており、プロを輩出した、新規参入したからといって経営が安泰なわけではありません。

実際はある程度NPBが保証したり、スポンサーの誘致を行うはずなので、なくなったりすることはなさそうですが厳しい道のりであることは間違い無いでしょう。

じゃあ既存球団を2リーグに分ける案を考えてみましょう。
まず分け方としはセ・パそれぞれの上位3チームを1部リーグ下位3チームを2部リーグに分けることになるでしょう。
その後は1部と2部でそれぞれ下位、上位2チーム程度が毎年入れ替わるようなシステムになることが予想されます。
1部の優勝チームがその年の年間王者になるので、日本シリーズやプレーオフは廃止となりますし、セ・パの括りがないため交流戦も廃止です。
その代わり1部リーグ5位のチームと2部リーグ2位のチームによる入れ替え戦が行われる可能性があると。
リーグ自体のレベルは高くなるかもしれませんが、試合数は減少するためNPBとしての収益は減少します。
実際問題としてプロ野球の試合数自体が多いため、どれだけリーグのレベルを上げようが、消化試合自体はあまり今と変わらない気はしますし、それこそ降格が決まったチームの応援なんて誰も行きませんからね。
2000年代の万年Bクラスだった横浜みたいになりかねないのではないかと。
(じゃあこれが昇降各制度ないせいかと言われれば違う気もしますが)

昇降格制度がないから…?


となってくると興行としてのプロ野球には一切のメリットがありません。

元々営利を求めて設立されている側面の強いプロ野球ですから、わざわざ理想論としてのあるべきスポーツの姿よりも、興行としてのスポーツの姿もありだとは思います。
私個人的にはかねてより、プロ野球はスポーツよりもエンタメ的なものだと思っていたので、そこはあまり気にしていませんでしたが。
(そもそもプロ選手なのに喫煙者多いとか、不摂生な生活してるとか、前時代的な取り組み何年も続いているような業界ってスポーツとしておかしいし、それに……etc)

閑話休題

最後は私の感想となってしまいましたが、いずれにせよ新たにリーグを作る、分けることは茨の道となりそうです。
本田氏はここも「何を変えてもマイナス面や痛みを伴う」と表現しています。
「実力が全てのスポーツ界」を作るためには「興行としてのスポーツ」はあまり重視していないのかもしれません。

感想のようなもの

結論から言えば現状、日本のプロ野球界において昇降格制度を導入する理由はないと思います。
本田氏のいうマイナスや痛みを経験してまで得るものが少ないように感じるからですし、そもそもマイネス面や痛みなんて経験しなくて良いのであれば経験しないほうがいいに決まってます。
痛みを経験した方がいいというのは勝者だから言えるのであって、Jリーグのチームだってどこも降格がない、上のカテゴリーで戦えるならそれがいいと選手やファンだって思うはずです。
ただ前述しましたがサッカーという特性上、2部、3部制を採用した方がメリットが大きい、Jリーグの目指す地域活性やサッカーの普及を達成できる可能性があるからこそ採用してると思うんですよね。
これは土壌というかそもそも別物なので、そこを一緒にしろってのは無理というか
、おかしな話なんです。
サッカーは世界で一番競技人口が多いから採用しろって言う方も残念ながら見受けられました。
お前らはなぜ競技人口でマウントとるんかと…
だったら早く日本語と日本食を辞めて、英会話か中国語の勉強を始めましょう。ヨーロッパ至上主義であれば今すぐにご飯食を辞めて3食パンに変えましょう。
それくらいおかしいことと私は思います。
本田氏もこんな醜い争いは望んでいなかったのでしょうが、影響力が強い分不用意な発言は控えるべきというか、元来独特な方なので仕方ないと言えばそれまでですが、その辺の分別はつけて欲しかったですね。

結論はともかくとして、ある意味でそれぞれのファンの固定概念、リーグや競技の在り方を考える機会になったことが最大のメリット?になったのかもしれません。少なくとも私はそう考えるようにします。

それではまた次回の更新にて

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