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エッセイ(サナギ)

 先日、家のポストに、サナギの殻が引っ付いていた。
 名前も知らない蝶が脱ぎ捨てたであろう、茶色いサナギ。

 ポストの下あたりに花壇があるのだが、
 以前、そこにイモムシの幼虫がいたので、それがサナギになったのだろう。

 考えてみれば、おかしな話である。

 幼虫なら幼虫で、蝶なら蝶で、
 生まれてから死ぬまで、同じ姿で一生を終えればいい。
 そっちのほうが効率がよさそうな気はする。

 でも、わざわざ、
 卵から生まれて、イモムシのときにモリモリはっぱを食べて、
 サナギの時にジーッとして、蝶になって空を飛び回る。
 そして子孫を残して死ぬ。

 とても不思議だ。

 ちなみに、サナギになることを『完全変態』というらしいが、
 サナギのときは全く動けないので、外敵に対しては無防備だし、
 中も、(なぜだか)ドロドロの液体になっているそうだ。

 そうして、苦難の時をへて、やがて美しい蝶へと変化を遂げる。

 そんな劇的な変化をして、一匹の蝶(イモムシ)は生を全うする。

 それを自分事として考えてみた場合、今の私は、どの状態だろうか。

 年齢的にも中年期の一歩手前(30代後半)、
 仕事上でも、ここ最近、試練に耐えるような、苦しい時期が続いている。

 そんなモラトリアムな状態で、ポストに引っ付いたサナギの殻を見たとき、なにかシンパシーを感じずにはいられなかった。

 そして、私も、はやく殻を脱ぎ捨てて、軽々と大空へ飛び出したい。

 そう思った。

 私も一生を終えるときになって初めて、今がどの状態だったか、答え合わせができるのだろう。

 いつか蝶になる日を夢見て、
 今日も目の前の一日を頑張ろうと思います。


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