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コロナ時代の市民参加型民主主義プラットフォームの実践(2021-01-14 情報モラル啓発セミナー in 兵庫講演)

これは何?

「企業が情報を取り扱い際に求められる考え方とその行動(情報モラル)についてシンポジウムやセミナーの開催、教材提供等により、啓発を行っています」(情報モラル啓発事業ホームページより)という、中小企業庁委託事業として開催されているセミナーでの講演を、いつものとおりUDトークで文字起こしして、(60分の講演だから長いけど)読みやすいように一部編集したものです。

講演スタート

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自己紹介とシビックテックについて

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私が所属していますコード・フォー・ジャパン(Code for Japan)という団体、そのビジョンは「ともに考え、ともにつくる」であります。

Code for Japanについて

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「ともに考え、ともにつくる社会」をビジョンに、行政もそうですけれども、市民、あるいは企業・大学、NPO、様々な方々が地域課題の解決に取り組んでいらっしゃいますが、そうした方々と一緒に課題解決していくための場を作ったり、あるいはサポートしてですね、データあるいはICTを活用すると、そういったプロジェクトをいくつか立ち上げています。

そういったことを「シビックテック」という言い方をしており、この言葉自体は、東日本大震災以降ですね、活動として始まっておりますけれども、それが今回のコロナ、今も進行中でありますが、この状況で、幾ばくかの貢献が出来てるんじゃないかと思っております。

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こうしたシビックテックあるいはCode for ●●というのは日本だけではなくて、スライド左にあります通り、Code for Allネットワークということで世界各国で取り組みがあります。そして、Code for Japanという言い方をしておりますが、各地域も活動があり、それをCode for Japanがまとめてるっていう意味ではなくて、日本各地の活動、ブリゲード(Brigade)という言い方をしますが、連携しようという形でやっています。そして、関西でもいくつかCode for があります。

ブリゲードとしてのCode for OSAKA

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そのブリゲードの例として、私はCode for OSAKAというNPO法人の理事もやっていまして、大阪でシビックテック活動をしています。Code for OSAKAにはいわゆるITエンジニアと言われてる会社員でありますとか、行政職員でありますとか大学の先生とかですね、あと地域の団体でいろいろ活動されてる方、だいたい400人ぐらいが集まっているコミュニティとして活動しております。また、地元大阪ということで、今回のコロナ禍の中で大阪府がいろんな企業さんとも、事業連携を進めておりますけれども、その中の一つとしても参加させていただいています。例えば大阪府のコロナ対策サイトの運営をしています。これは、陽性が確認された人数推移であるとか、いろいろなお知らせをホームページで情報発信をしています。こうしたシビックテック活動が全国にあるということです。

コロナ禍におけるシビックテック

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そうしたシビックテックの活動が大きく活躍する場が増えてきておりまして、いくつかご紹介すると、例えば東京都のコロナウイルス対策サイト、こうした情報発信の最初になったものです。行政のホームページって、なかなかわかりにくかったりしますよね。Code for Japanが都の委託を受けて、スライドにコントリビューターという言い方をしておりますけれども、ボランタリーに集まっていただいた様々な専門的な知見を持った方々とも一緒に作り上げて、今までの行政ではなかなかなかったような、例えばグラフを使ったりして、わかりやすく情報発信をするサイトを構築させていただきました。

もう1つの特徴としては、これを使って「東京都はこうだよね」ではなくて、作ったソースコードをですね、広く使っていただけるようにしました。それによって、現在全ての都道府県、あるいは個別の市町村、いくつか海外にも展開されておりますけれども、データはそれぞれの地域のデータを入れることで、東京都と同じようなサイトが速やかに立ち上げることができる。それによって、コロナ関係の情報を必要とする方々に、行政からの正しい情報をお届けできるようにしたいということが、全国で始まっているわけであります。

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この他にも、例えばコロナ禍で非常に大変な状況に置かれている方々に対する支援策があります。政府・自治体以外にも、民間でもいろいろ取り組みが進んでおりますけれども、それを横断的に集めて、わかりやすいサイトの作成をさせていただいたりとかですね、全国各地で、飲食店等厳しい状況に置かれていらっしゃいますけれども、テイクアウトが大変進みました。

そういったときに、自分たちの住んでいる地域でどのようなお店がテイクアウト対応してるかをお知らせするために、スライドでは千葉県流山市の事例を出しておりますけれども、スマホで簡単にアクセスできるアプリを作ってですね、そこに情報を集める、あるいはそれを全国にも展開するという活動をしたりしています。

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こうしたITを活用した取り組みだけではなくてですね、実際に苦労されてる人たちが集まってですね、自分たちで取り組みを進めようということも始めています。このスライドでご紹介しています「シビックテックチャレンジカップ」というのは、学生の就職活動、今までであれば東京にあるいは大阪の本社まで移動してということがありましたけれども、コロナ禍で移動が難しくなった。そこでプロジェクトをやろうと、声を上げてくれたのはですね、地方に住んでいる、Code for Japanでインターンシップをしていただいている学生です。

学生は、インターン先でいろいろ経験をしたりとかですね、自分のスキルを磨いたりとかキャリアアップに繋げるといった活動ができなくなっているので自分たちで腕試しをするコンテストを開催して、学生みずから企業にご説明に行って協賛をしてくださいとか、協賛していただく企業さんと参加する学生と、オンラインでミーティングをしていろいろ教えていただいたりとかの取り組みを通じて、最終的にはいろんなサービスをプロトタイプを作るコンテストを開催しました。

やっぱり学生すごいなと思うのは、その中から会社も自分で立ち上げてですね、サービスをこの世に出していこうというふうに取り組んでいる学生さんたちもいて、こうした自分でいろいろやってみたいということをいろんな人たちと連携をしてですね、形にしてまさにこれが「ともに考え、ともにつくる」であると思っています。

今日お話すること

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本セミナーの開催趣旨の中にですね、「市民による市民のための情報社会構築するために私達一人一人がどう考えてどう行動すべきかを一緒に考えましょう」とありました。私のお話の前に、ご講演された平さんのお話はですね、情報リテラシーをどう築いていくかということを、いろんな事例、あるいは理論的なことも含めてですね、幅広い形でお話いただきましたけれども、私の方からですね、企業の情報資産とかですね、レピュテーションとか、そういったことをどう守っていくかっていう側面ではなくて、そういうモラルを持って、どうそれをどう活用していくんだと、言ってみれば「攻め」の部分のことについてお話します。また、私はあくまで実践者としてですね、実例をベースに取り組んでいる実例でお話をさせていただきたいと思います。

3つのキーワード

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そのときのキーワードは三つでありまして、一つは「コロナ時代の民主主義」、二つ目が、これは私どもの造語でありますが、「DIY都市」という言葉をご紹介したいと思います。最後に今回のご案内の中にも記載しました、こうしたキーワードを元にですね、現在実践しているDecidimというオンラインでいろんな意見交換をするような仕組みがありますので、その事例をご説明したいと思います。

コロナ時代の民主主義

では、「コロナ時代の民主主義」ですが、これは平さんのお話の中でですね、いろいろSNSの功罪といったものがお話ありましたので、私からは簡単に追加のような形でですね、こうしたものがあるよというお話をするにとどめさせていただきます。

コロナ禍でですね、オンライン、今日のセミナーもそうでありますけれども、いろんな活動が始まっています。そうした中でですね、目立つものとして、注目をしていますのはオンライン上でいろいろ社会参加をしよう、例えば政治参加をするとか、自分の意見を申し立てるみたいな、強い意味での活動もあれば、みんな集まって意見を持ち寄りましょうというようなものまで様々ありますけれども、そうした取り組みがすごく活発になってきたなと思っています。

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事例としては、左側はChange.orgという活動で、意見を言いたいというキャンペーンを立てて、その賛同者を集めるようなサイトが運営されていてですね、あの数多くのそうした意見のプロジェクトが集まっているような状況があります。

右側は、日本政府の取り組みで、今「行政のデジタル化」という言葉がニュースで出てくるようになってきていると思いますけれども、今までの行政が、デジタル対応できてなかったということの反省の上に、広く国民からアイディアを募って、それを踏まえてですね政策を進めていくために、政府が自分でサイトを作って、「デジタル改革アイディアボックス」ということでどうした分野で何に困っていますかとかですね、どうしたらいいでしょうということに対してアイディアをもらうとともに、そのサイト上で「自分のところではこうなんだ」とかですね、ユーザー同士ですね、意見交換するような取り組みも始まっております。

DIY都市

デジタル社会の目指す方向性

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この二つ目のキーワードの前提として、こうしたデジタル改革の話にも繋がっていますけれども、今、急速に政府の方で検討が進んでいるのが、デジタル社会の目指す方向性ということで、この年末に方針が決定されています。今後、こうした方針に従って、順次政策がいろいろ出てくるというようなタイミングです。

スーパーシティ

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その中でですね、キーワードのDIY都市の方にだんだん寄せていきますと、「スーパーシティ」といった、これは数年前から言葉として出てきているものでありますけれども、ポイントとしてはですね、生活全般にまたがるような複数分野において、AIとかビッグデータとか、先端的な技術を活用して圧倒的に今までとは違う便利な世の中にしていきましょうということであります。

その際に、もちろん個人情報をきちんと守るということが前提でありますけれども、いろんなデータを連携させてですね、新しいサービスを生み出していくそれによって便利にしていくということが目指されています。どうしても国の規制が、まだそういう新しい世の中に対応していないものがあります。それについては同時・一体的・包括的にとにかく今までの規制を見直していく、そういったことを実現する都市として、スーパーシティというのが必要じゃないかというのが我が国で言われているわけであります。

スーパーシティの背景

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そうした背景には、シンガポールでありますとか中国でありますとか、ヨーロッパの都市において、スーパーシティという言い方ではなく「スマートシティ」という言葉を聞かれた方いらっしゃるかもしれませんけれども、AI・ビッグデータを活用してどんどん都市の形を変えていく、そこで暮らす人たちの生活が変わっていくという国際的な動きが進んでおります。それがいいかどうかもちろんありますけれども、そうした中で、我が国では、そういった状況にどうキャッチアップしていくのか、ということが問題意識としてあろうかと思います。

スーパーシティ区域の指定基準における「住民等の意向の反映・確認」

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スーパーシティーと言われる区域を指定をして、そこで大胆な規制緩和とか投資を進める際に、基準が、この10月に、決定されていて、その中には、住民等の意向を反映ししたのかということが求められているわけであります。つまり住民合意というかどうか別にしてですね、そこに関係する人たちの意見をきちんと踏まえて、先ほど来申し上げているような意味でのスーパーシティを進めているのかということが求められているわけであります。

意向の確認方法

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政府の文書によると、どういう課題があって、それに対して、住民の意見をよく聞いて、必要であれば、その自治体の議会が議決をするとか、場合によっては住民投票を行うということも想定されており、そうしたプロセスをきちんと経てくださいということを言っているわけであります。

スーパーシティ区域の指定に関する公募

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そうした考え方に基づいて、スーパーシティに名乗りを上げる地域を募集しますというお知らせが始まっておりまして、締め切りが3月末という中で、コロナ禍でどのようにするのか結構難しい問題じゃないかと思いますけれども、住民説明をしましたかとか、そうしたことを記載するような欄があります。ここに何かしらの「住民説明会なことをしました」って書くのかもしれませんが、果たしてそれが住民等の意向をどう把握できたのかっていうのが、やや心配ではないかなと思ってくるわけです。

どんな地域に住みたいのか?から考える

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と申しますのは、先ほど来から申し上げている、「先端的な技術を使って圧倒的に世の中良くして暮らしを良くしていきましょう」、これは「別にそういった暮らしはもういいよ」という方であれば別でありますが、別にそうなることは悪くはないよと思われる方もいらっしゃるかもしれません。

しかしながら、もともとどんな地域、どんなまちに住みたいのかっていうのは、やはり住民自身がですね、考える必要があると思っていまして、「スーパーシティー」というと、どうしても何かすごい技術がやってきて暮らしがよくなるみたいな、どうしても受身の発想になってしまう言葉だなと思います。

DIY都市を作ろう

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なので、私どもCode for Japanでは最近この「DIY都市」という言い方をするようになっています。

DIY都市が大切にしたいこと

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この「DIY都市」というのは、「まちづくりは自分たちでしよう」と、古くから言われていることを改めて申しあげてるものでもあって、そこで大切にしたいのは、誰もがオープンに参加できる、あるいはいろんな方々が住むところですので、関係する世代いろんな世代の方々が集まってみんなでする、ということです。

スーパーシティみたいな話になるとですね、「こういう大きな投資をします」とか「こうしたサービスを作ります」みたいに、大きな話・与えられる話にどうしてもなってしまいます。そうではなくて、まずは小さく始めて、それが本当にうまくかどうかしっかりみんなで確かめながら進んでいこうというふうに思います。

また、日本オリジナルのものを生み出すことも、もちろん重要でありますけれども、やはりグローバルに参考にすべき事例はあると思います。そうしたものを、グローバルに求めた上で、その実践はその地元地元に応じた実践のやり方があるんじゃないかということ、最後にコロナ禍のこうした状況は、今後も続くと思いますし、オンライン・オフラインを、別に区別する必要はなくて、これを上手に使おうということです。

DIY都市は、様々な立場の人が、同じ方向を向くための環境

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いろんな世代の方々、いろんな人たちが集まろうというとき、まちづくりは、どうしてもやはり難しいと思います。市民であればですね、どうしたいんだっていろんなご意見ある方がいらっしゃると思います。

そうしたことを前提にすると、例えば市役所の職員さんであれば、市民の人たちを巻き込んで合意形成をしてやっていきたいと言っても、では、どうやって声をかけたらいいのかって悩んでいる自治体さんはたくさんいらっしゃいます。また、本日お聞きの企業の皆さんからしても、自分たちでこうした技術を作っていこうとか、こうしたサービスを市民の人たちに使っていただこうと思ったとしても、市民の人たちもいろいろ、自治体もいろいろスタンスがあるという中で、どういうふうに関係を作っていけばいいのか、もっと言えばサービスを売り込むというか、そのサービスがきちんとそのマーケットに定着していくためには、いろいろな苦労があるような状況だと思います。

そうしたときに、DIY都市という考え方は、冒頭にご説明したCode for Japanの活動の言い方であれば「ともに考え、ともにつくる」を実現するため、Decidimというものをツールとして活用しようと思っているわけです。

Decidim

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Decidimは、いわゆる熟議を行うためのプラットフォームとして開発されたものであります。特徴として、あくまでWebページではありますけれども、熟議を行うときにはですね、それまでやってきたオフラインの良さもきっちり埋め込んだ形で、両者のループを作っていこうというところに特徴があります。

スライドにいくつか特徴を書きました。まずオープンに情報を公開しよう、言い合いではなく積み重ねる議論可能とする、などと書いてますが、どうしてもコメントで掛け合ったりいわゆる荒らしが出たりすることはありえます。なので、そういうことも起こりうるということを前提に、どうしたらむしろ意見を前向きにみんな持っていくようにするかということを考えているものとも言えます。何かしら反対というような意見だとしたとしてもですね、そこで議論されているテーマをもっと前に進めるための建設的な議論であるというふうに思っていくための仕掛けを埋め込もうと、いう形で開発されているものであります。

30を超える自治体で利用

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先ほど海外で始まったと言いましたが、世界各地30を超える都市で利用されております。

バルセロナのDecidim

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有名なところで申し上げると、スペインのバルセロナ市が有名であります。Decidimバルセロナ、Webページを日本語翻訳したものなので、ややわかりにくい日本語かも知れませんけれども、下にポイントをまとめましたが、バルセロナ市が自治体行動計画を作る際に、いろんな提案をしてくださいというのをDecidimで募集をしました。そうしたらですね、このサイトは登録制であるんですけれども、12万人、バルセロナ市の人口の約8%弱が参加するような規模のものになっています。そこで提案された1万件強の提案のうち、10%強の1467件が実際に計画に採用された実績があります。またこうしたあのプラットフォームを立ち上げて以降ですね、数多くの提案が寄せられているというような状況であります。

ヘルシンキのDecidim

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また、こちらはヘルシンキの例ですが、こうしたちょっとなんていうんでしょうね、北欧スタイルなのか、ちょっとキャッチーな感じのサイトに仕上がったりとかしていますね。ページに、1 2 3 4とあって、最初ブレーンストーミングというふうに書いてあったり、アイディアを募集するといったフェーズがあります。今ちょうどあの進行中のサイトでありますので、ご関心ある方は、Googleであれば翻訳ですね、割と綺麗な日本語になるので雰囲気わかると思いますけれども、現在は、Co-creationということでいろんなアイディアを重ね合いましょうということをしていきます。

その上でですね、提案をよりブラッシュアップした上で、この提案、私も賛成だとか、こっちがいいね、というように投票した上で、4にはImplementation、2022年って書いてますが、これはいわゆる社会実装を進めていくフェーズです。そして、こうした活動の状況とかですね、どういった提案がある、どういった意見がやりとりされているといったようなことを随時このサイトでオープンにしていく取り組みとして始まっています。

Decidimが備える機能

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その際、意見をいろいろまとめて前に進めていくための機能として、Decidimには、戦略を作ったりとかですね、それに対して住民が自分で計画を立案するようなページを作れたりとか、もちろん討論ができるといった機能が備わっています。あと日本でも注目をされているのは、こういったところなのかもしれませんが、いわゆる参加型予算編成、予算を行政が作るときにですね、いろんな意見を集めていくのは当然でありますが、それをオンラインでスムーズに意見を集約して予算に反映させていくというような機能も盛り込まれています。といったようにですね、これは各地で実践されている機能からのフィードバックを随時盛り込んでいってですね、使い勝手を良くしたりとかそういったことをしているツールであります。

オンライン・オフラインの融合?

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改めてオンラインとオフラインを融合することのメリットとして考えられているのは、ここのページでご説明しているものでありますけれども、やはりオンラインであれば、今日も結局オンラインでありますが、北は北海道からもご視聴いただいていると伺っておりますけれども、いろんな方々が参加できる空間はオンラインの良さであろうかと思います。それによって多様な人の意見が反映できるということが期待されるわけであります。

加古川市の事例でもそうだったんでありますが、いろんな意見がたくさん出てきます。一度文字になったものを、サイト上で見ることによって、意見がいろいろ出てくる。そして、全体像を俯瞰する、デジタルであるのでコピペしたりとかですね、上手く組み合わせたりとかすることで、整理もしやすくなっているなということがあります。

また、オンラインが使いにくい人はどうするかってのもありますが、スマホ対応していたりとかですね、使いやすいインターフェースになっているということで、どうしても役所に対して意見を言うんだったら難しいことをやらないといけないのかなと思わされがちですが、そうしたスタンスじゃなくて、先ほどのヘルシンキのDecidimのように、気軽に参加してくださいということをインターフェイスとして用意しているということも特徴であろうかと思います。

一方で、こうした特徴は、オフラインでやることの価値を下げるものではないと言われていることでもあります。もちろんデジタルが苦手な方はオフラインで、例えばバルセロナもそうですが、ワークショップをヘルシンキの場合もそうですが重ねています。リアルに集まるワークショップも頻繁に行うことは、今の状況でどこまでできるかっていうことはありますが、そうしたことがもともとビルドインされている仕組みであります。

そうするとリアルに会って、より突っ込んだ議論ができる。来ていただいた方を通じてですね、積極的に意見が出ないにしても、その人たちがどう考えてるかっていうことをじっくり考えることができるっていうメリットをお互い生かすということがここでは必要とされてるのじゃないかなと思います。

日本でも導入が始まりつつある

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ここまでは諸外国での取り組みの一端をご説明したわけでありますが、日本においても導入が始まりつつあるというのがこの2ヶ月です。発表されている渋谷であるとか横浜のように、これからDecidimを使って意見を集約していって、実際にまち作りに生かしていくというようなことが進みつつあるような状況であります。

兵庫県加古川市が日本初導入

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そうした中で、Code for Japanとして兵庫県加古川市さんと連携して、Decidimを日本で初めて導入したという事例をベースに、こうした取り組みがどういったものなのか、今後どういうものが必要とされるのかということを、後に続く方々にも、参考になればとご説明をしていきたいと思います。

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このサイトは、10月30日に立ち上がったものであります。つい先日は開催地神戸の地元紙である神戸新聞さんにも取り上げていただいています。

Decidim活用に関する加古川市の考え方

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Decidimというこういうオンラインで意見を集める仕組みをなぜ使おうかと思ったかについては、市長さんのお話があって、そこでおっしゃってたのは、やはりコロナ禍であるので、オンラインをどう活用するかをしっかり考えるべきタイミングであったということ。そして、これはどこの自治体もそうでありますけれどもツイッターやフェイスブックといった、SNS、加古川市ももちろんやってらっしゃいます。であるけれども、そこでつながっている方々とはもちろんコミュニケーションよくできてるんだけれども、加古川市、あるいは市政に関心を持っている人がアプローチしてくれてるわけなので、そうじゃない方々にどう繋がっていくかっていうことが非常に問題意識としておありだったということです。

もともとは、意見を集めて行政として方針を決定する取り組みとして、いわゆるパブリックコメントというものがありますけれども、Decidimはあくまでそういった取り組みを加速するものとして使ってみて、パブリックコメント、あるいは従来型のSNSとは違う、いろんな声が拾っていくことができるのだろうか、ということを試してみたいと思ったから、というふうにおっしゃっていました。

今年度の加古川Decidimの取り組み一覧

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今年度の取り組みとしてパブリックコメント自体はですね、今ちょうどまさに始まってるところでして、今日ご紹介したスーパーシティーとはちょっと違う言葉と申し上げましたが、いわゆるスマートシティーをですね、加古川市さんも推進していて、それをどう進めていくのかという構想を策定するために、Decidimも活用していろいろな方々の意見を集めていこうというような活動を10月以降進めてきました。

スライドでは、オンラインとオフラインという区分で分けて、10月、立ち上げて以降、まずはスマートシティーで、こういうのあったらいいなというアイディアを広く集めるというフェーズから始め、それを12月まで集めた上で、次は構想の文書として取りまとめをして、それをもう1回Decidimに戻して、ご意見いただく第二フェーズと言われるようなものをしました。従来からやっているパブリックコメントに先立って、アイディアをいただく、あるいは意見をもう1回もらうという中に、オフラインとして、地元の高校の皆さんと意見交換するワークショップでありますとか、このスマートシティ構想に関心がある市民を始めとする様々な方々にお集まりいただいて、オフラインのワークショップを組み合わせています。

県立加古川東高校におけるDecidim活用

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オフラインの取り組みで、まず申し上げますと、地元の加古川東高校でSTEAM教育の一環で、オンラインで意見を収集する仕組みがあるということだったりとかスマートシティを加古川市が推進しているということを、生徒さんが勉強されて、そこで取り上げられているテーマは様々ありますが、例えば子育てとか、にぎわいあるまちづくり、高齢者に優しいまちづくり、などテーマにわかれて、政策提案をする授業がありました。

高校生の皆さんが自分たちで考えたテーマで集まってですね、意見交換をして、スライドに写っているように付箋紙も活用しながら、意見を取りまとめていくというようなことをしました。

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そして、ちょうどこの年末にですね、授業で考えたものも含めてですね、いくつかのアイディアを市長さんにご提案をするというような活動も続けています。

市民参加によるオフラインワークショップの開催

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もう一つは、市民の方々、30人ぐらいの方に集まっていただいて、スマートシティーが目指す加古川市の姿をテーマにしたワークショップを開催しました。

そうするとですね、事前にDecidimに上がっている構想のアイデアに対していろいろ意見をやりとりしながら参加いただいた方も、Decidimには参加してなかった方も、このオフラインのワークショップにはいらっしゃっていて、すでにDecidimでいろいろ意見を書いたんだけど、そのときに言ったのはこういうことだっていうことをワークショップでもお話されてる方もいらっしゃいました。

ワークショップでもまとめた意見をですね、もう一度Decidimにも掲載をして、あのときの話で、もうちょっと補足するとかですね、そのとき考えたアイディアをもとにもうちょっと考えてみました、というコメントも出てきており、オフラインの続きを行うようなこともありました。

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印象的であったのは、このワークショップのアンケートをしたらですね、加古川市は、住民の意見を聞いて、スマートシティを進めていると伺っていたんですけれども、こういうワークショップの機会は、まだまだ必要とされてるんだろうなということがうかがえるものでありました。満足度100%って珍しいなって思ったんですが、自由記述の感想欄に、市民同士がディスカッションできたよかった、とか、一番下にある「市民から課題意識を聞くことができてよかった」というのは、当日参加した市役所の職員さんの意見でありますけれども、まちづくりをしたいと思って役所に入った人たちも、もっと住民さんの意見を聞きたいんだっていうのが、こうした1回のワークショップでありますけれども、やはりそういうことが重要だと再認識されたのも印象的でありました。

また、Decidimに対して概ね皆さん評価いただいてるみたいでありまして、これからいろいろな取り組みを進めていこうという段階であるところで、先ほど少し申し上げたように、Decidimにはいろんな機能があるわけですけれども、今後も実施した方がいいものを挙げていただくと、提案機能、つまり市民の方々が自分で提案するような機能はあった方がいいんじゃないかとか、いくつか加古川Decidimでも実際に起こっていることでありますけれども、市民同士が、まちづくりについて議論する場というのはやはり必要ではないかという意見が多く集まりました。

データで見る加古川市版Decidim

概況

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現状の利用状況として、登録者をはじめとする各数値はご覧のとおりです。例えば、登録者については、加古川市、すでにSNSがあると申し上げましたけれども、つながっているのはだいたい1000ユーザーぐらいみたいです。人口は26万人の、いわゆる、阪神地域のベットタウンの一つということでありますが、そういう人口規模の中での200人弱ぐらいとなっています。200人の意見でどうなんだっていう考え方はありえますが、私どもはご説明してきた経過を踏まえると、あんまりその数の問題じゃないのかもしれないなと思い始めています。

ただし、考えるべきは、こうした数字を見て、裏を返せばですね、200人弱の方々で行われることが、10倍の2000人、あるいは2万人となったときにはまた違った様相を見せるだろうということです。ご説明したバルセロナの事例では、参加者12万人と、さらに多いわけですので、また違うことがあるんだろうなと思ってますが、立ち上がりとして、こういう状況で感じたことがありました。

また、コメントは合計300弱、一つのテーマに対して最大40弱のコメントが出ています。そして、加古川東高校の皆さんが参加していただいたっていうこともあって、10代の参加者率が4割を占めるプラットホームになっています。加古川市の50歳以上の人口割合が40%を超えているということで、そういった意味では構成比が逆転してるような構成になっているのが特徴だなと思っています。

また日本初ということもあったと思いますし、加古川市はベッドタウンと申し上げましたが、通勤・通学で会社や学校に通う、市外在住だけども加古川市に関係ある方もいらっしゃるので、市内と市外の割合が4対6というようなバランスになっています。また行政のWebサイトもだんだんスマホ対応を進んでおりますけれども、スマホ経由でアクセスする方の方が大分多いということも特徴であると思います。

コメント数の多いもの

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そこで、コメントの多いものをご覧いただくと、やはり住民に身近なテーマについてはコメントがたくさん集まるという傾向が見て取れます。

登録者数・コメント数の推移

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登録者の推移を、累積でグラフにしてみました。立ち上がりのとこから増加して、イベントがあり、ちょっとでこぼこしますけれどもなだらかに増えていっているのを、ご覧いただけます。

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コメントの方が特徴的でありまして、公開から11月末までですね、アイデアを集めるというフェーズをしておりました。やはり最初はちょっといろいろみんな書いてみるんだけど、だんだんなだらかになっていったのが、オフラインのワークショップをしたことを契機に、もう1回この角度がちょっと急になったりとかですね、やはりそのオンラインとオフラインの組み合わせの中でのいろんなアクションによって、そこでの議論が活性化するといったことも興味深かったです。

時間帯別コメント数

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また、コメントいただいてる時間が、どういった時間帯になるのかなと思ったら、土日祝日は朝にじっくり書いてる方もいらっしゃる一方で、平日はもともと皆さん平日に、いろいろ仕事されてる中でですね、万遍ない時間帯でそれぞれコメントする。中でも、若干夜の方がお仕事終わられてからアクセスしコメントいただいてるのかなと思いますが、想像よりも日中帯でもアクセス・コメントをされてるということがわかりました。

ユーザーの地域属性と閲覧時間の関係

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これは、Googleアナリティクスで取っているので、正確性がどこまであるかありますが、先ほど登録者の市内市外割合が4対6と申し上げました。そうしたときに、どういった地域からアクセスされているか、もちろんそれ以上の個人情報は取れないところなので、統計的な処理を行ったアクセスデータで見てみると、横軸は累計の期間中のユーザーの数で、右に行くほどを見ているとなりますが、縦軸はエンゲージメント時間と専門用語になってますが、簡単に言ってしまえば閲覧時間だと思ってください。ページをどれだけ見ているかということで統計処理された数字でありますが、両者で散布図で見ると、加古川市がユーザーとして多いのはある種当然でありますが、閲覧時間は全体の平均値よりやや低いという状況です。

一方、加古川市役所からのアクセスも取れるわけですけれども、当然、「中の人」として参加していますが、当然ユーザー数としてはそれほど多くはないにしても、やはりそこでいろいろな意見をいただいたら、それにコメントをつけるということを頻繁にされていたので、閲覧時間は長くなるっていうので、一定の傾向はちゃんと出ているようです。こうした点を検証した上で、加古川市周辺の、尼崎とか、三木といったように、黄色で塗っているところが周辺の地域です。クラスター分析をすると、4つにわかれて、尼崎は、ユーザーが少ないんだけどもじっくり見ている人がいるとか、姫路だったり神戸は比較的たくさんアクセスがあるんだけども、平均ぐらいの閲覧時間になっています。

また、隣接する市として意識していると言われている明石市からは、少ないだなというようなこともわかります。これは、あるいは加古川東高校へ明石市から通学されている学生さんを示しているのかもしれませんが、そういった地域によっても多少色が出てくるんだなというのがわかりました。

データで見るオンラインとオフラインの融合

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以上データから見ると、オンライン・オフラインの特徴が出たものかなあと思っています。まずは加古川市とそれ以外の方々が4対6という参加者割合で、多様な意見が反映されているプラットフォームではないかということです。そして、気軽に参加できる点については、市長が「忙しい人たちがスマホでもいいからちょっと市はどういうことをしてるのかなと気になってくれるページであってほしい」とおっしゃってましたけれども、平日の時間帯にあまり偏りなくですね、夜に多少多いとしてもですね、日中・短時間でもアクセスが頻繁にあるというようなサイトであるかについては、一定そういった使われ方をしているということはわかったのではないかなと思います。

もう一方のオフラインの取り組みについては、満足度が高いワークショップができたということと、それによってオンラインの議論が再活性、コメントが増えたというのがありましたけれども、そうしたオフラインと掛け合わせすることが非常に効果が高いということもわかったと思います。

印象的なやりとり

ちょっと文字が小さいですが、中身そのものを見ていただくというよりも、こうした意見があったということを、いくつかご参考までにご紹介します。

(おそらく)在校生の主張と感想

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高校生が多数参加したということもあって、自分たちの身近な学習内容とか、入試の取り組みが今後どうなるかといった質問的なものというか自分にとってどうなるのかなということからスタートした意見が出ていました。そして、事務局の市役所の中の人が回答したところ、

なるほど!
わかりました
すごい時代ですね。

とか

わかりました!
ありがとうございます。
国や地域と連携して考えられているのですね
頑張ってください🚩

感想もついていて、なるほど高校生らしいなと思いました。回答に対して、ちゃんとレスをつけるって、面白いなって、思いました。在校生が自分たちに身近な事柄に対して主張を書いて、フィードバックがあったからそれに対して素直にちょっと心が動いたというかですね、オンラインでのやりとりに対してポジティブに捉えていただいたんじゃないかなと思いました。

GIGAスクールの推進に関するやりとり・基本方針への反映

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次は、一番コメントが多かったのが教育のことだと、少し触れましたけども、GIGAスクールについて、今回の構想の中に入っています。それに対して39件コメントが出ていてですね、そこでいろんな方々がデジタル化することに対して、具体的にはタブレットを配るとかそういった話になったときにですね、ブルーライトの影響がどうなのかというのご懸念をたくさん寄せられていました。同じ日に次々とコメントが寄せられています。

そうしたこともあって、アイデア収集フェーズの次に作成した構想の基本方針案に、ブルーライトに対しても配慮するような環境整備をしようということを盛り込み、皆さんからいただいた意見が反映されたような形にもなっています。

役所目線と市民目線

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他には、Decidimを通じたコミュニケーションが、役所の人に対するインパクトもやはりあるのではないかと思っていまして、それが高齢者に優しいまちづくりに関するやりとりに現れています。

ある方からコメントがあったときに、高齢者はあくまでサービスの提供先、優しいまちづくりをしてあげるんだ、ではなくて、コメントでは高齢者のフレイル対策、各地で行われていますが、そこには高齢者が社会参加するということも、そのフレイル対策の一つであるとされています。つまり、高齢者は、やさしいまちづくりをしてもらうための提供先ではなくて、自らも社会参加をすることによって、まちづくりを推進する側にもなり、またそれによって自分たちも健康になるということであります。

もちろん、コメント書いた方が社会参加の主体なんですと、明確にそこまで言ってるわけじゃないかもしれませんが、具体的にどのようなまちを目指すかは意見がわかれるけれども、その中で社会参加のことも考えてくださいという意見であってですね、この点は、役所の人は頭では分かっていても、やはり住民さんからそういうふうに言われると、やはり参考になる意見が出ているんじゃないかなと思いました。

カタカナ言葉に関する市民感覚とその受容

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これが最後ですが、「スマートシティ」とかですね、ちょっとカタカナすぎて市民側から感覚として遠いという意見が実際に出てきています。

印象として、スマートシティアーキテクトという言葉になったことで、距離感を感じました。
言葉だけが先行しすぎて、私達市民一人一人の大切な情報を使っているという意識を忘れてしまう、ということのないようにしてほしいです。

最初のアイデア収集フェーズでは「スマートシティ人材」という言い方になっていたところを、政府での議論などを踏まえて「アーキテクト」という言葉を出してきたものです。

こうしたやりとりがあったので、私も参加して、ちょっとコメントを出させていただきましたけれども、どういう趣旨なのか、背景情報も含めて整理・説明をしました。

こうした意見をわざわざ言っていただける方、実際このご意見に対して、「いいね!」も5つついているんですよね。そうしたら、同じ方から、

よく、市役所や国から届く情報を見て、分かりにくいなぁと感じていましたが、こうして自分の意見を文字にして初めて、文字だけで情報を伝えることの難しさを実感しました。そして、このシステムのおかげで市役所の方や他の市民の方々との距離が一気に近づけた気がします。

と返信をいただきました。こうして自分の意見をわからないということも含めて文字にしてみたら、文字だけで情報を伝えるやっぱり自分がわからないってこともそうですし、回答をもらってそれを理解するということも含めて、文字だけのやりとりってやはり難しい、ということも正直におっしゃっていただいたっていうのはすごく印象的です。

また、ありがたいなと思ったのは、「このシステムのおかげでや市役所の方や他の市民の方々との距離を一気に近づけた気がします」とコメントされている、独特の文章の書き方なのかもしれませんけれども、少し伝わったんじゃないかなというふうに思ってですね、すごく嬉しくなった次第であります。

やはり、どうしてもこうしたものは、行政のような組織はですね、「目指すべきところ」といった方針そのものを作る存在ですが、その際にやはり市民の人たちの感覚、先ほど高齢者のところもありましたが、そういった感覚と、そうした感覚を持つ方々のですね、意識を変える、という「上から目線」ではなくてですね、「わかります」というふうに共感していただくような取り組みがすごく大切なんだろうと思います。

それがここではコメントをやりとりするということで、行っていますけれども、こうしたことはオンラインだけに限らず、広く行われるべきだなというのは改めて思った次第であります。

Decidimに対する現時点での所感

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オフラインとオンラインの組み合わせの妙

以上ご紹介したDecidimを使った実践に関して、現時点考えていることを改めてまとめさせていただきますと、まず、オフラインとオンラインを組み合わせることの妙、といったようなものをしっかり設計する必要があるということです。

今回の場合は、加古川東高校という予期せぬというかですね、地元の高校の先生が、すごく関心を持っていただいて、授業でも使ってみようと思っていただいたことに現れていると思いますが、このようなオフラインでの想定してなかったようなイベントが発生したり、オフラインのワークショップ後にコメントがオンラインで増えて、議論が再活性するようなことも目の当たりにしたことです。

これは今200人弱の規模の取り組みでありますけれども、他の都市でもこうしたオンラインでの意見交換・参加型民主主義といった取り組みが進むときには、こうした仕掛けというか、参加する人たち同士がどのように相互作用していくかが重要なポイントだと思いました。

「いいね!」ボタンとコメント

2点目は、「いいね!」ボタンは、他のSNSでもありますが、Decidimでの「いいね!」ボタンの使い方がちょっと分かりにくいのではないかなと思われることです。先ほどの「スマートシティって言葉が自分には遠い」というコメントには「いいね!」がたくさんついていて、この相対的に多いことは、そうだなと思ってる方がいらっしゃると受け止めましたが、やはりそれをもう少し何か使いやすくする、あるいはコメントを書くのは難しいと思うときに使っていただく意味がわかりやすく伝わる必要があると思いました。

自分と同じようなこと言ってる意見がもしあれば、「私もこうなんです」って書くだけでなく、「いいね!」をすることで、いわゆる声なき声みたいなことを、リアクションとして出していただくような仕掛けとして、おそらく「いいね!」があるんですけれども、なかなかそれが増えないというのは、何かしらの工夫というかデザインが必要なんじゃないかなと感じています。忙しい中で市民がちょっと見て、コメントはしないまでもリアクションをするという、市長も当初おっしゃっていたことをどう実現していくか、引き続き、市役所の方ともディスカッションしたり、参加している皆さんにも伺ってみたいなと思っている次第です。

いわゆる「荒らし」について

最後に、こうしたオンラインのツールを使うとですね、いわゆる「荒らし」が起こるんじゃないかというのは、Decidimを活用することを発表した以降、いろんな方々から聞かれました。

現状は、全く起こってないということでありますが、おそらくそれはいくつかのポイントがあって、アカウント登録の際に、住民IDを登録させるというようなことができる仕組みになっていて、諸外国の事例ではやってるとこもあるんですが、加古川市の場合はそれはしていません。していませんが、一応ニックネームでですね、投稿できるようにしていますが、非公開情報として実名と住所書いてくださいと書いています。実際の情報をその通り書いてらっしゃる方もいらっしゃるますが、そうでない方もいらっしゃいます。

けれども、そういう登録するときの何かしらの仕掛けを作っておくことが、形式的には、いわゆる荒らしを心理的にもブレーキかける仕組みになってるっていう面、もう一つは、仮に荒らしが来ても、これDecidimのすごいというか、そうなんだなと思ったのは、Decidimはオープンであるべきなので、投稿者が自分の投稿を消すとか(投稿直後の5分間はできますが)、管理者が削除することができない仕組みになっています。
※「自分の投稿を消す」というのは、一部のコンポーネント(「提案」)についてであり、「ディベート」では削除は誰でもできないものでした。訂正します(2021年2月9日追記)。

そうした荒らしみたいなことが仮に起こったとしても、それはそのままのものを見せるということが重要だというスタンスで作り上げているプラットフォームだと思っていますし、私ども、仮にそういう何か物が出てきたとしてもですね、「悪貨が良貨を駆逐する」ではなくて、「良貨が悪貨を駆逐する」ようなコミュニティをつくるべきだと思っています。

そもそも、もちろんそういう強い反対意見とか、そうじゃないいわゆる荒らし的なものあったとしても、それは何かしらの意見表明でありますから、その中から何か汲み取れるものがあるんじゃないかとかですね、その中に本当におっしゃりたいことが何なのかっていうことを、きちんと整理をしていく。むしろ、そういったことをするためにこうしたDecidimというものがあるんだと思います。そして、そうしたスタンスで臨めば、いわゆる荒らしに対しても、私はそんなに怖くないというか、あの望んでいるわけではもちろんないですが、そうした場にならないようにすることもできるんじゃないかなと思っています。

まとめ・今日お話したこと

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最後にまとめであります。今日お話ししたことはですね、コロナ時代のスマートシティ、あるいはスーパーシティーと言われる生活を良くするようなまちづくりが始まる中において、情報モラル・リテラシーという今回のセミナーの開催趣旨の「攻め」な部分、つまり実践的な部分についてお話をしたものであります。

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情報と民主主義というテーマのセミナーでありましたので、最後は古典的にアテネのペリクレスという、その時代の政治家が戦争を通じて亡くなった方を追悼する集会のときに演説をしてですね、我々の国の民主主義はこういうものである、と述べた有名な演説があります。

その中の一節に「われらの政体は他国の制度を追従するものではない。ひとの理想を追うのではなく、ひとをしてはわが範を習わしめるものである」、アテネが当時確立した民主主義が最善であるということを広く訴えた演説の一節です。民主主義が全ていいというふうに言えるかどうかは、いろいろ議論があるところでありますが、そうした制度を考えるとき、よその国はどうとか、他のまちではこうだってはなくてですね、あくまでDIY都市という言い方に引きつけて申し上げれば、自分たちが関心がある、あるいは実際に暮らしているまちをどうしていくか、それを民主主義というのは、意見を交わしていってですね、よりよい答えを見つけていくという営みであって、今もこれからも変わることはないと思います。

それはオンライン時代では、いろいろ弊害もあります、今回のテーマで言えば情報モラルを持たなきゃいけないということもありますけれども、それはあくまで自分たちの実践の中にそういうモラル的なもの、あるいはそういったリテラシーと言われているものが培われていくものではないかと思っています。Code for Japan、あるいはCode for OSAKAとしても、そうした街の人たちと一緒になって、社会をこれからも作っていきたいなと思って、ささやかながらでありますけれども、現在行っている活動についてご紹介させていただきました。ちょうど時間になりましたので、私のお話は以上とさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。

質疑応答

講演後、主催者がsli.doを使って集めたご質問にコメントしました。

(質問)満足度100%はすごいですね。

オフラインでのワークショップが純粋によかったというふうに思っていただいたんじゃないかなと思います。こうした取り組みはですね、今年度は1回だけだという予定ですし、今ちょっとコロナ禍なのでなかなか開催は難しいですけれども、市民の方も、そうした機会、もっと自分たちのまちのことを考える時間は必要なんだな、と考えている、むしろそういうふうにしてほしいという意見が満足度100%という形で現れたのではないかなと思った次第です。

(質問)まちづくりワークショップは、開催した直後には刺激もあり意味があると思いますが、継続して成果を上げていくための工夫があれば教えてください。

おっしゃる通りだと思います。これが先ほどお話した中であれば、お答えとしては継続していくための仕掛けとしてオンラインとオフラインを組み合わせて、気軽に参加できるということが大切です。また、オフラインで交わされた議論は、そのとき参加した人にしか共有されないようですと、だんだん関わる人が減っていくと、あれどうなったっけな?ってなるものだと思います。Decidimの場合、それはオフラインで開催された場合、参加してない人たちにも共有しようということで、今回の場合で言えば、ワークショップでできあがったシートをDecidimでも共有をしてですね、皆さんにも見ていただいて、それに対して参加していなかった人がコメントをするというようなこともありました。

そういったことを地道に続けていくことしかないという、工夫というより、もうやることやるしかないみたいなことであります。そうしたやり方をより工夫というかですね、やりやすくなるようなツールとしては、一定このオフラインとオンラインを組み合わせるDecidimのようなプラットフォームがあるっていうのは一つのお答えになるかなと思います。

(質問)Decidimは若い人たちの政治参加意識を高めるツールとしても素晴らしいと思います。多くの自治体が取り組むための第一歩それぞれの住民が働きかける必要がありますね!

そうですね、例えば総務省の来年度の予算案にもですね、こうしたことを加速するための新しい政策を準備されているというふうに伺っておりますので、そうしたものがあると自治体に伝わればですね、じゃあやってみようというふうに思われるのかなと思います。

Code for Japanに寄せられているお問い合わせでは、いろんな使われ方を想定されています。今回の加古川市のような計画を作るだけじゃなくて、よりもうちょっとローカルに、地域の方々とのこれまでの意見交換の形をもっとオンラインでできないかというようなご相談もありますので、できるかなと思います。

(質問)高校生の主張、私も印象的だなと思います。今後多くの主張などが増えると仮定した時、コメントを入れる人も人口ピラミッドに比例し、より少ない人口世代の声が埋もれがちになるのかもと感じました。こういう場合、東さんであればどのようにそういった人々の声を吸い上げていきますか?

そうですね、高校の話は授業の中に組み込んだところが妙であります。新しい何かツールを使えば可能でしょうという答えではなくて、あくまでやはり今までの仕組みの中をよりうまく使うという考え方がいいんじゃないかなと思います。

より少ない人口構成で若者が参加する仕組みがないと言うのであれば、それが可能になる仕組みを作るってことも答えかもしれませんが、それでもなお例えば学校とかですね、それぞれのサークルでもいいかもしれません、そうした既存の仕組みがあると思います。実際に、京都ではそういうサークル活動から始まって政治に参加する活動を進めるNPO法人つくる学生さんも出てきたりもします。

このように自分たちが作る手もありますし、その際、既存のWebページでそういうサークルを作って発信するもあれば、NPO法人化したり、あるいは会社にする方々もいてそうした声を上げていく活動をしています。であれば、既存の仕組みをちゃんとお伝えして、それをアシストするということも重要なのかなと思いました。



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