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【政策参与のおはなし(その12)】DX推進室発足にあたって(2022年4月12日DX推進室協議メモ)

これは何?

日野町では2022年度(令和4年度)の組織改正で、企画振興課内にデジタル・トランスフォーメーション(DX)推進室を設置し、庁内各課からの兼務職員でプロジェクト型の組織を立ち上げました。私個人としては、参与として委嘱いただいて2年目にあたりますが、日野町役場を主語にした場合、(1年目の参与設置に続いて)推進体制を整えたということだと理解しています。

また、こうした編成になったことはいろいろな検討があったものと思いますが(※参与は予算編成や組織についての権限を有していませんのであくまで観察者視点です)、公共交通活性化プロジェクト「わたむき自動車プロジェクト」を担当する公共交通推進室が前例としてあります。

DXあるあるの「トップ直轄組織」とか「出島」というDXだけを特出しにしたような取り組みではなくて、あくまで日野町組織の中にある「成功事例」を横展開するものだという意思の現れでしょう。

以下では、年度はじめのメンバーキックオフMTGでお配りしたメモの項目立てを活用して、昨年度取り組んだこととこれから取り組むことについてご紹介するものです。

日野町のDX(デジタル・トランスフォーメーション)とは?

DXは総合計画の実現のための取り組み

最初の主監課長会議や、議会本会議での答弁でも申し上げてきたとおり、日野町のDXは巷間言われる「基幹系システムの標準化」を中心とした「自治体DX」と呼ばれるものとは違うアプローチを取るものだと申し上げています。

敷衍すると、「狭義の自治体DX」とは別の意味で、国が言っている「自治体DX」とされるもの(あるいはこれらを総称したもの=システム標準化そのものとは区別されている事柄、例えば国が「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」で取り上げている事柄を含むものです)が日野町のDXだとすると、多様であるはずの自治体を一緒くたにするような考え方を自治体側が採用することのおかしさを、もっと自覚的であるべきだと考えています(地方創生の「地方」ってなんやねん、というものに近いですが、それとも違います、念の為)。

デジタル(の導入)ではなくて「総合計画の実現」(=日野町のトランスフォーメーション)にウエイトがある

こうしたとき、同じくよく言われるようになってきた「DXは、Xつまりトランスフォーメーションに意味がある」ということを、どう理解したらいいか。

端的に言えば、昨年度今後10年間の計画として町民の思いが込められて策定されたものを実現すること、その実現が「トランスフォーメーション」ということです。そのためにデジタルがあることを、DXだと考えている訳です。
国が「自治体DX」という言葉を生み出す前に、日野町ではすでに総合計画でわが町をどのようにしていく(=トランスフォーメーションですよね)ことを宣言しているということです。

もっと言えば、総合計画は「時代の変化に対応し だれもが輝き ともに創るまち"日野"」と謳っています。この「時代の変化に対応」することが、トランスフォーメーションであると言えます。

トランスフォーメーションは、「持続可能性」「多様性」「共創」に分解される

それを今年度であれば、町長が各方面で説明している施政方針である「持続可能性」「多様性」「共創」という考え方で取り組む必要があるということになります。総合計画と毎年の方針の関係は、ここで明確に結び付けられていると理解しています。

デジタル(の導入)がトランスフォーメーションになることの意味

とはいえ、こういう違いを説明するのは多少ややこしい言い方が必要になるので、各自治体でもデジタルの導入という手段が目的化しがちなのだと思います。

また、「デジタルはしょせん手段だから」という言い方をするとき、その先の話まですることをあまり聞かない(そこで思考停止している感があります)ので、スマホの普及を例に説明してみましょう。

このとき、デジタルはスマホがもたらした「特性」にあって、スマホというデバイスに着目するのではないことに注意する必要があります。言い換えれば、スマホの導入は手段であって、なぜスマホ(という特性)の採用なのか、ということです。

スマホがもたらした特性とは、

  • カメラ、インターネット、アプリ、EC、SNS等のソフトウェアの統合的提供

  • それに付随するサービスエコシステム(例えば、佐川急便とクロネコヤマトが同じスマホの中で共存していること等)が広がっていること

共通するのは、ハードウェア側ではなく、サービス提供側視点でもない「ユーザー視点」であるということです。そして、行政サービスも同様のアナロジーで展開できる可能性が高いのではないか、という期待が込められていると思います。

それが、

  • 町民がスマホによって得られた便利な体験と行政サービスの落差

  • 役場側業務の煩雑さ(いっそスマホで業務できると楽では?等)

について考えることにつながっています。

しかし、重要なことは、例として上げた佐川とヤマトの話であれば、以前は電話で再配達依頼をしていました。特性としての電話を使っていたことがスマホの中に移行しているということと、もう1つは今も電話で対応できます。ユーザー視点で言えば、スマホ・電話でも同じことができるということが大切だとということです。ユーザーに合わせたサービスの提供がデジタルによって多様になったということでもあります。

DX推進室のスタンスとして大切にしたいこと

そうしたDXを進めるDX推進室が、その行動様式として大切にしたいことを整理しましょう。

取り組みを公開する(共創の第一歩)

  • すべての施策・行政サービスで考えるべきものであってDX推進室だけがやるものではない(庁内的にそう思われてもいけない)

  • DX推進室単独の事業としないように、うまく所属(とそれに紐づく町民・事業者)をまきこむ

  • 所属の課題解決にもなるように施策を作る(例:公民館の活性化)

町民にとってのDXは、すなわち役場にとってのDXでもある

「職員の持続可能な働き方・活き活きと安心して仕事ができる環境が町民のためになる」という視点を持ってその業務を見つめ直すことでもあります。

小さく始める/一点集中

何かをとにかく早く始めるのが吉です。形にしないと実感を伴った変革はできないと思います。それは始めたら形にしていく一点集中でとにかくやる。同様にユーザーである町民・事業者にわかる形でお示しする必要があります。それは小さなことでも気がついてもらえるはずです。

データで検証できるようにする

でも、手当り次第ではよくない(アジャイルは行き当たりばったりではない)ので、定量的なデータによって検証ができることが重要です。また、定量化できないもの、たとえば「なんだか仕事が楽になった」「なんかいい感じだと思う」といった定性的な要素も、ユーザー視点では同じく大切にする意味がわかると思います。

例えば、ワクチン接種のWeb予約においても、1・2回目のときと3回目の予約で町民さんの行動が変容しています。コールセンターへの電話が殺到した1・2回目を経て、3回目のときには、その殺到度合いが少なくなりました(そもそもの予約数が少ないとかではなく、日野町はワクチンメーターでも示されているとおり、接種率は国や県に比べて上回って推移しています)。それが体感としても役場で感じられるとともに、より重要なことは、こうしたオンラインによる役場とのコミュニケーションに町民さんがなじんできた(それが、周囲の人の協力などによって入力できたという声も聞かれました)ことは、今後の同種のサービスを展開する際の重要な気づきであると思います。

昨年度からの取り組み

次に取り上げるのは、昨年度から始めている事柄が、どのような意味を持っていて今年度どうしていくかです。

わたむき自動車プロジェクト(公共交通推進室)

言うまでもなく町のDXのリーディングプロジェクトであり、先日の関西広域連合の行政デジタル化推進シンポジウムにも事例紹介のお声がかかるなど、デジタル・データ・デザインの3Dの観点で進めるこのプロジェクトは、注目されてくると思います。そして今後実証実験が重ねられ、公共交通のあり方を示していく中で町内外の協力が得られていくことが期待できます。

職員研修(総務課)

これまで実施していた研修に加えて、いくつか独自の研修を実施してきました。昨年度は、国や他自治体研修と合同でRESAS研修等を実施し、とりわけ仮説構築の方法を学び、現行の施策体系が十分なものになっているのかを考えることを行ってきました。

今年度は、昨年度以降さまざまな事例ができてきたので、庁内事例を共有する場として勉強会的に実施するのがよさそうです。

また、豊岡市の「モグモグ会(ランチタイム勉強会)」のように、他自治体で勉強会が実施されており、積極的に参加するのもよいと思いますし、参加する代わりに日野町の取り組みもしゃべってみて意見をいただくことも大切でしょう。

そして、共有する際には、記事的なものを作るのもよさそうです。私であれば「政策参与のおはなし」ですが、職員発の記事が出てくるといいと思います。

ワクチンメーター(福祉保健課)

現在も運用しているワクチンメーターは、GoogleとTableauを活用したわかりやすい事例でしょう。

今後は、職員で自走できる部分を増やして他の業務でも活かせることに着手していきたいと思います。

確定申告整理券表示(税務課)

ワクチンメーターの横展開事例であることもそうですが、何より職員の発意で取り組んだこととして特筆されるものです。

会場前にモニターを設置した他、整理券裏にQRコードを印刷して会場外からでも確認できるように

ワクチンメータより先に進んでいることとしては、町民さんとの接点(整理券を渡してそれを見て効率的に行動してもらえているか)をリアルに評価できるメリットが挙げられます。

番号表示のデータを対応状況の検証にもできるの図

また、発券番号のデータが蓄積することで、対応速度の可視化(と、そもそもの来庁時間のコントロールができているかどうか)ができるようになることにつながり、そこから今後の来庁予約・混雑予測への展開も期待できるところです。

そして、さらなる横展開としては、住民課の発券機データの活用もすれば以上の成果をより通年でより多くの町民さんに提供できると思います。

Web予約システム(福祉保健課・税務課)

官民連携により、汎用的な予約システムとしてアジャイル開発をしてきて、その効果と課題について理解が進んできたと思います。

次の展開を考えるとき、政府が進めるオンライン化と平仄を合わせていく本番、つまり今年度であれば申請管理システムとうまく連携できるかが待っていると思います。事業所管課がこれまでリードしてきた取り組みですが、全庁・町民のDX両面に関わる観点からDX推進室がどのように関わっていくかが大切だと思います。

フレンドマートでのワクチン接種Web予約の代行

また、フレンドマートさんの全面協力のもと、両課が連携してワクチン予約代行の試行も実施しました。そこで町民さんの様子もよく理解でき、今後のオンラインのサービスをどう設計するか考えるヒントをたくさんいただいたと思います。現在進めている窓口サービスの検証も含めて、そうした実際のユーザーからニーズをしっかり考える方法も根付いて欲しいと思います。

メタバース首長会議(総務課・企画振興課)

VRヘッドセットを複数台使える環境にある自治体は少数でしょう。総務課でも他自治体とメタバース上で打ち合わせをするなど習熟してきました。

越境自治体技術革新研究会設立総会での堀江町長と私

今後、越境自治体技術革新研究会として、北海道森町・福島県西会津町・鹿児島県肝付町と連携しながら、Chromebook実証、庁内ネットワーク調査、メタバース活用(合同文化祭)など、カッティングエッジなことを楽しくやっていければと思います。

オープンデータ(総務課・企画振興課)

滋賀県の枠組みでオープンデータ公開は達成したところで、まずはスタートが切れたと思います。

今年度デジタル庁がオープンデータ政策を変える(量から質、推奨データセットの変更)が見込まれる中、庁内業務との連携や、従前作成している業務用データの効率化を視野に取り組む必要があります。

(例)予算資料
町民や事業者(とくに議会)が分析しやすくするように加工前のデータを公開するほか、グラフ化による「わかりやすさ」も考慮する

その他相談業務

子ども支援課の保育ICT導入(登降園のデジタル化、保護者との情報共有のアプリ導入)など、相談に対応してきたところです。

今後も予算執行に際して積極的に相談に乗る体制を周知して、頼られるDX推進室になってほしいと思います。

今年度からの取り組み

ホームページ更新(企画振興課)

ターゲットとするホームページ閲覧者の期待に沿う形にリニューアルするものであり、DX推進室の今年度の骨格になる話だと思っています。

効率的・効果的な情報提供だけでなく、町民との信頼関係構築や庁内業務の整理でもある視点を大切にしたいと思います。

スマホ教室(企画振興課・生涯学習課)

町負担ゼロの総務省事業に参画することで町内で面的に展開できることが保証される他、そこで得られた町民ニーズからさらに町独自予算で深堀りしていく体制になっています。参加いただく町民さんや、関係者のニーズをよく把握して、公民館や自治会の課題解決にもなるといったアプローチが出てくるといいなと思います。

また、PTAが子ども向けスマホ教室やっているといった話も伺います。次のロボコンも同様なのですが、全世代対応型でデジタルの体験を通じて、世代間交流が進むことがこれらの事業の大きな目的です。

さらには、役場側には、防災アプリ、ぐるりん日野なび、ホームページ、予約システムなどこうした先に対応するアプリやサービスがありますが、そのあり方を検討する必要もあります。

近江日野商人ロボットコンテスト(生涯学習課・企画振興課)

先般、コンテストのイメージを高めるため、教育長・教育次長に体験していただきました。滋賀県初の高専設立が目指されている中で、こうしたロボコンを県内初で取り組むことはその機運醸成にもなると思います。

また、町民・事業者でこうしたことに関心のある方々と連携することで子ども発の様々な効果が出てくると思います。

プロトタイプ制作

Chromebook実証実験(議会事務局・総務課)

これまで議会改革特別委員会で議論されてきた議員活動のデジタル化の取り組みと連携するものです。

これまでから賛否はもちろんいただく中で、これはある意味では議会を挙げてしっかり議論をしてきているのが日野町の特徴であるとも言えます。その上で議会自らがChromebookとGoogle Workspaceを活用した実証実験を行うことは、役場にとっても業務を見直し一層議会(とその先の町民)と情報共有を進める取り組みになると思います。

デジタルアーカイブ(生涯学習課)

昨年度、日野曳山保存会さんによって日野祭の古写真等のデジタルアーカイブが構築されました。

これからはその活用を検討するとともに、メタバース案件との接続も考慮にいれながら、大学との連携等取り組みを模索していきます。それが検討が始まる文化財保存活用地域計画策定にも資するものだと思います。

ドローン活用(総務課)

ドローン公務員こと神戸市役所職員の宇都宮さんのお力も借りながらドローン撮影からデータ活用を研究していきます。

鎌掛屏風岩や浸水想定区域の空撮をするなど、現地調査を進め、各方面の方にも活用可能性について伺っていきたいと思います。

その他

基幹系システムの標準化(狭義の自治体DXへの対応)

これまでの町村会の枠組みでの検討に加えて、日野町には越境自治体技術革新研究会をうまく使うことができる強みがあります(森町・肝付町は攻めてる自治体です)。

来年度に向けて考えることも考える

今すぐはできないが、「できたらいいな」ということを発信していくこと=協力者を得ていくサイクルを作り出すことも重要です。そのための情報発信と地域間連携があります。

とりわけ日野町と隣接する自治体からも連携のお声がけをいただくようになってきています。小規模自治体だと人的リソースの不足が深刻ですが、お互いの取り組みをうまくパクリあって一緒に考えていくことがいいと思います。

制度のDX

細いところですが、こうした活動を実践していく際に現状と乖離するローカルルールが出てくると思います。これまでの趣旨を十分踏まえながら制度の見直しも進めることが大切です。

例えばホームページのリニューアルに際して、既存のホームページ運営委員の役割をどう考え、よりプロアクティブ(主体的)なものにするか、DX推進室と情報化推進員の整理なども検討していく必要があると思います。

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