【政策参与のおはなし(その8)】デジタル時代にあった公共サービスをともにつくる(2021-10-27 滋賀県町村会自治体DX戦略会議設立総会・記念講演)
これは何?
全国初の町村会主導型の自治体DX推進の枠組みとして、滋賀県町村会自治体DX戦略会議の設立総会で、講演をしたものです。例によってUDトークで文字起こしをし、編集を加えています(時間が押したので省略して説明したところを、文意が伝わりやすくするようにしています)。
聞き手は、以下の方々です。
・6町長(日野町、竜王町、愛荘町、豊郷町、甲良町、多賀町)
・6町の担当課職員
・滋賀県町村会の方々
・滋賀県、全国町村会の方々など来賓
※そのうちページがなくなるでしょうけど、ニュースへのリンク
記念講演スタート
町村会の自治体DX戦略会議設立総会、誠におめでとうございます。
私自身、今年の4月から日野町さんにお世話になっておりまして、これを機会に改めていろいろな面から支えていきたいと思っております。
本日は、「デジタル時代にあった公共サービスをともにつくる」というお題をいただきましたので、それに沿ってお話を進めていきたいと思います。
政策参与のおはなし
日野町政策参与というご紹介ありましたが、割愛しますけれども、こういうブログの記事を書いておりますので、ぜひご覧いただければと思います。
7本あるので、今日のこのお話も、実はちょうど今、文字起こしをしてくれるスマホアプリ・UDトークを使って記事にしようかなと思っています。
関連する記事
その中に関連する記事があります。読んでいただくと同じような話が出てくると思いますけれども、あわせてご覧いただければと思います。
お話するテーマ
お話するテーマは3つです。
まずは、所属しているCode for Japanと何ですかっていうことと、「シビックテック」についてぜひ知っていただきたいと思います。
2つ目、3つ目は本日いただきましたお題であります「デジタル時代にあった公共サービス」、あるいはそれを「ともにつくる」ということについてお話しできればと思います。
シビックテックについて
まずシビックテックからお話していきますと、この言葉を聞いたことある方がいらっしゃればなと思いますが、国のデジタル関係の文書の中にも登場するようになってまいりました。
日本においては、2011年東日本大震災の際からなので、ちょうど10年ということでありますが、この言葉は、見方がいろいろあるので結構難しい概念なんですけど、一言で言えば、市民とテクノロジーの相互関係です。
市民の活用するテクノロジーそのもの、これがシビックテックと聞いて理解しやすい言い方だと思いますけれども、市民がそのようないろんなテクノロジーを活用して地域課題を解決する、あるいはそうした際に、行政だけでなくて、市民とか企業とか、NPO、大学いろんな方々と連携をして地域課題を解決するような活動を指す言葉です。
あるいは、さらに進んで、そういったものを可能にするような「仕掛けそのもの」、これは行政が仕掛けを作る場合もあるでしょうし、企業なり、地域だったりありますけれども、そうしたことを可能にするための仕掛けそのものと言えます。
Code for Japanの紹介
では、そうしたシビックテックとは、どんなことをするかということで説明をしますと、私どもCode for Japanは「ともに考え、ともにつくる」をモットーに、シビックテックを推進するために活動している団体であります。
Code for Japanの行動指針
行動指針として3つ掲げています。まず、あらゆる境界、いろいろ皆さん立場が違ったりしますよね、また考え方が違ったりとかですね、属性的なものが違うのは認めた上で、その境界越えていきたいということ。
また、真ん中の「Open-source minded」、みんなオープンに行こうぜっていうことで、そういった心持ちを持つということであります。であればこそ、あらゆる境界を越えていこうという考え方にもつながります。
そして、3つ目が「The first penguin, agile flippers」。ペンギンが海に飛び込もうとしてじっと海面を見てるような動画ご覧になったことある方いらっしゃるかもしれません。
最初の1羽が飛び込むと、2番目3番目とフォローがついてきて、やがて大きなうねりになるということが人間社会でも見られる訳です。まして今日のようなデジタル化を進めて地域を良くしていきましょう、というときの最初の1人になろういということを行動指針に挙げています。
シビックテックアプローチ
そうした行動指針に基づいて、「ともに考え、ともにつくる社会」を目指すのが、我々なのですが、その際に2つの考え方があります。
まず、左図のシビックテックアプローチと呼ぶものです。行政の皆さんに対してこのようなお話をすると、どう思われるかありますが、市民と行政が対面関係になってるケースが多かったと思います。行政は公共サービスを提供する、市民はそれに対してこうしてほしいとかですね、あるいは苦情と言った形で、皆さん日頃、役場で対面してるような姿はそういったものがあるのではないかと思います。
しかしながら、私どもはそうではなくて、先ほど申し上げたシビックテックの考え方から申し上げると、行政も市民も地域課題をともに解決する主体であります。したがって、市民も行政だけでなく、先ほど申し上げたとおり、企業であったりとか、大学であったり、NPOなどの第三のセクターの方々と一緒にテクノロジーを活用して課題に一緒に向き合っていこうと、これが「ともにつくる社会」であります。
もう一つはシビックテック・エコシステムであります。解決したい課題に対して、それに関心がある人を集めてコミュニティを作っていく。そして、プロジェクトとしてそれに参画していく場を作っていく。そうした場では、オープンに繋がって社会をアップデートするといったやり方を広げていきたいと思っています。
世界と国内のシビックテック
そうした活動、つまりはシビックテック活動ですが、先ほど日本では2011年、Code for Japan自体は2013年に設立された団体でありますけれども、日本だけではなくて全世界で活動されています。日本だけでも80数箇所、滋賀県にもいくつかそういう活動をしている皆さんいらっしゃいますけれども、とりわけ関西では全国的にも活発だと言われております。
Code for Japanが進めてきたプロジェクト
今日はすべてをご説明する時間がありませんが、ご覧のとおりCode for Japanではそれらを推進していくためのいくつかプロジェクトをやっていまして。
東京都新型コロナウイルス感染症対策サイト
特に今日の行政のデジタル化、あるいはDXと言われてるものに関係するものとして2つご紹介いたしますと、まず左側、東京都の新型コロナウイルス感染症対策サイトがあります。1年半以上前になりますが、2020年の3月の第一波のときに、当時都庁で情報発信をしっかりして都民の行動変容をしていくとか、様々な情報が出回って、皆さん戸惑っていたところでした。
それに対して、毎日の陽性確認者の状況や、感染予防対策そのものをタイムリーかつわかりやすい形でお届けしようと、ホームページを開設しようとした訳です。
皆さんもホームページを作ろうとなったときにお気づきになると思いますが、どのようなページを作るか仕様を決め、契約手続きをどうしようみたいなことって結構大変で、結果的に、作ろうとなったところから時間だけが過ぎてしまいますよね。そうすると、感染状況がどんどん悪化するといった恐れがあった訳です。他方、今回のケースでは、私どもは東京都と一緒に3日でサイトを立ち上げました。それが可能だったのは、多くのコントリビューターによる改善提案があったからであり、現在もそうした活動が継続されています。
また、このようにタイムリーに正しい情報を正しくお伝えして行動を変えていただくという裏側に、東京都がこの際立ち上げたサイトを作るためのソースコードを公開しました。こうしたサイトは滋賀県さんでも取り組んでいただきましたけれども、その結果、都庁のデータを自分たちのデータに入れ替えることで、全国の自治体が同じようなサイトをすぐ立ち上げて同様の情報を届けることを手助けをしたことも重要です。
その際に、各地のシビックテック活動をしてる人たちが参考とするため、養成確認者数の情報など、データをどのような形で提供すればいいのか、ということに関して総務省さんと連携をして通知も出していただきました。
そういったことが相まって、サイトが全国各地で立ち上がったという話であります。コロナ禍でこうしたことが可能にできる日本でありますので、これからのデジタル化もこうしたアプローチはすごく大切なことじゃないかなと思います。
参加型合意形成プラットフォーム・Decidim
また右側ですね、滋賀県さんの取り組みでもあるのでご紹介しようと思います。私は今特に注力しているのは参加型行政の確立であります。
そうしたとき、スペインのバルセロナ発で、先程都庁のケースで申し上げたような誰でも使えるプログラム、オープンソースと言われているものでありますが、オンラインで意見を言ったりとか、合意形成を進めていくとか、いろんなプロセスあると思いますけれども、そうした参加型行政を進めていくプラットホームを日本で導入を始めています。
日本初のケースは、兵庫県加古川市さんだったんですが、滋賀県さんでもCO 2ネットゼロ推進というテーマでサイトを立ち上げ、CO2ネットゼロ社会づくり推進計画を策定する際に、県民、あるいは現に活動されてる団体さんの意見を取り入れよういうことで、Decidimを活用したサイト運営のお手伝いもさせていただいています。
デジタル時代にあった公共サービス
デジタル時代「のユーザーに合った」公共サービスに読み替える
以上が、Code for Japanがどのようなことをしているのか、というお話をさせていただきましたが、次に、「デジタル時代にあった公共サービス」ということをお話するとき、「では、それはどういうものがあるの?」ということを多分知りたがるのではないかと思います。
今日はそれをお話するものではなくて、このお題をいただいたときに、私は「デジタル時代のユーザーに合った公共サービス」と読み替えた上で、「デジタル時代」は、じゃあ何なんだと言われれば、それは今いる住民、あるいは将来生まれてくる住民にとって必要な公共サービスって何だろうって考えることが重要であるかと思っています。
ゆっくりだが、確実に進むユーザーの変化
今年の情報通信白書の中にそうしたことが垣間見れるデータがありますので、ご紹介いたしますと、スマホ普及率ということがよく数字として取り上げられると思いますけれども、私が注目しているのは、そのトレンド変化です。
青い線がスマホの普及率、世帯保有率となっていますけれども、ちょうど2016年、インターネットを使うときのメインのデバイスがスマホに転換したと言われている年であります。
皆さん方、2016年というとついこの間のような感覚かもしれません、当時は自分の周りや例えば親御さんはスマホは使わないだろうとか、パソコン使っていたなとか、もし思い出したら、もちろんそういった面もあると思うんですけども、こうしたグラフを合わせて考えると、皆さん方の前提知識を変える必要があるかもしれないという転換点に、今当たってるとお考えいただく必要があるのではないかと思います。
また、右側の4つのグラフ、例えば左上のスマホの利用状況を年齢別で見ると、60歳以上で81%、他の年代は80後半から90%超まで来ています。この60歳代以上が80%を超えているのは思ったよりも高いなって私は思いますし、先ほど申し上げた変化という意味では、この数年間で、すごく上がってきている訳です。
それは当然でありまして、40代50代の方が今後60代以上に移行していく姿がもう見えているということをぜひ気づいていただきたいと思います。また、20代30代の方は、すでにほとんどがスマホになっている。私は40代なのでスマホがない時代、初めて携帯電話を使い始めたのは25年ぐらい前ですけれども、20代あるいはもっと若い世代がこれから生きていく世界を考えたとき、スマホが、iPhoneなのかAndroidなのか、あるいはそもそもスマホなのかその次の何か別にしてですね、前提が変わっていることを前提にしないと、公共サービスは成り立たないと思う訳です。
情報通信白書は、毎年公表されていて、最新のものだけじゃなくてですね、過年度のものもご覧いただくと、この数字がちょっとずつ変わってることと、また、こういったグラフを見たときに皆さんが何を見るかが大事です。例えば「テレビを見ている人は多いな」、それもいいと思います。やはり60代のパターンが皆さんが興味があるデータであれば、それをベースにすることも重要だと思いますし、おそらくは人それぞれの意見がありますので、そういった議論をぜひしていただければと思います。
ユーザーは多様 〜デジタル活用支援員としての気付き〜
こういうことを申し上げるのは、ちょうど今、大阪府内各地で高齢者向けにスマホ教室をやっています。おじいちゃんおばあちゃんと接しているとですね、よく分かってきたことがあります。
「高齢者はスマホを使いません」、そんなことないんです。使えない方もいらっしゃるんだけど、持ってますし、普通に使ってます。「高齢者」とひとくくりに考えることはよくないです。当たり前のことなんですが、意外にそういう議論をしてしまいがちです。
スマホ教室で、ひととおり説明した後、相談時間を設けます。「どうしたらええの?」とお話になるので聞いてみるとですね、例えば、
ということをおっしゃいます。
スマホを見ると、要らないアプリをいっぱい入れてるみたいな話で、どんなアプリが入っているのかなと見せてもらうとですね、その方が何をしたいか結構分かって良かったんですね。
「○○を買いたいから」とか「これはよく使ってるんだよね」みたいな話を一緒に話をしながら、これどういうふうに使こてんの?とか、これいつ入れたん?みたいな話をしていると気がついたのは、皆さん方、行政でいろんなスマホのアプリを導入されようとしてると思いますけれども、それをおじいちゃんおばあちゃん皆さん使おうとしてるんですが、その先にそれをどう使ったらいいとかですね、そういうところがなかなか届いていないということです。
したがって「スマホを使えないから別のもの」、「大変だから例えば紙がいいんじゃないか」っていう考え方ではなくて「スマホアプリをどうしたら使ってもらえるのか?」ということに、それぞれ担当している職員お一人お一人がですね、しっかり考える必要があります。
もっとも、このスマホ教室を行う「デジタル活用支援員」というはそのために用意された仕組みだと思いますが、「おじいちゃんどうしたの?」って聞いてもなかなかうまく説明できないんですよね。スマホ教室では2時間ぐらいかけてスマホの使い方を一通り説明しますが、話が盛り上がるのが個別相談のときなんです。スマホを使ったサービスをやるとしても、そうしたことを前提に細かく対応してできる「相談する仕組み」が必要なんだなっていうのを思った次第です。
最後に「リテラシーとコンピテンシー」と書いてますが、こういったときに「自分はITのことは、よう分からんから」ってよく皆さん思うかもしれませんが、そういう「知っているかどうか」という知識の多寡、すなわち「リテラシー」と考えるのではなくて、「コンピテンシー」、今回のケースであれば何か新しいものを取り組もう、知らないことがあったときにどうするかという問題です。
それは、「相談しよう」とか「自分で調べてみよう」といった心の動きみたいなものがすごく重要で「知ってるか知らないか」が重要なことではないんです。
高齢者の方々は「スマホを使いたいけど、よく分からない」と諦めて心を閉ざしてしまっている方がいらっしゃるかもしれません。そうしたときにご家族なのか、ちなみに日野町では公民館でスマホ教室をやってますけれども、民間や地域コミュニティの中で、相談できるハブになる人を見つけて、そういう人たちを支援をするということが必要かもしれません。
これからデジタル化が起こったとき、先程のとおり、それはスマホなのか何なのか分かりませんけれども、高齢者のみなさんにとってはこれまでとは違うものに遭遇する訳です。そうしたとき、どうアプローチしたらいいか、そのヒントは現場に埋もれていると実感していています。
デジタル時代のユーザーは、2つの要素
そういったエピソードベース、経験を踏まえて私が考える「デジタル時代のユーザーにあった」というのは2つの要素があると思います。
1つは、住民に対する公共サービス、これは皆さんもおっしゃってるものかと思います。
もう1つ重要なのは、職員にとっての公共サービスも考えることです。
今日のご挨拶の中でも、住民サービスの向上と業務の効率化をセットでお話あったと思いますが、重要なのは、その双方の組み合わせ方であります。
例えばRPAを入れて便利にしようといったツールの話をするのではなくて、RPAでも別に構わないんですが、それをどう使うか、住民に対する公共サービスの向上とどう融合させるかという考え方、そこでの知恵の勝負になろうかと思います。
すべての人に必要なサービスを届ける
そこで、住民に対する公共サービスであれば、前提として「すべての人に必要なサービスを届ける」であります。
行政の仕組みであれば、例えば「住民」単位とか、「世帯」単位ですとか「地域コミュニティ」に対していろんな政策の届け方があると思いますが、それが現状はバラバラだから、サービスのやり方が違うようになっている、ということがないでしょうか。そういったことがもしあるとしたら、そういった前提は外す必要があります。
多様な形態を包摂することを前提にして、それを住民をベースに考えてお一人お一人に届けるのか、どれでもいいということにはなりませんが、それらの組み合わせだと考える。
よく事例で持ち出されるのは、地デジ化と同じだという話です。みなさんも当時ご苦労されたのではないでしょうか。いついつまでにTVを買い替えたり、TVアンテナをちゃんとチェックするなり、様々な機会で周知されたり、地デジ移行に向かって官民挙げていろいろな努力をされてきました。
デジタル時代のユーザーに合った公共サービスを考えて作っていくというのは、そうしたことをもう1回やっていくということでありまして、誰も取り残さないっていうのはそうした文脈で語られていることです。
そして、その過程においてですね、もし今まで見直しができなかった制度があるのであれば、それを見直す必要があるということで、これまでの前提を問い直す、これはデジタルの話というよりも、今日のお話の中にもありました地方自治の話であります。国が用意している制度を、うまく使って、これは鵜呑みにするというのではなくて、換骨奪胎してですね、自分たちの町に合ったように乗りこなして、全ての人に必要なサービスを届けきるということであります。
職員にとっての公共サービス
もう1点の観点が、私も4月以来、特に注力しているところでありますが、そういったことを考えるためにも、役場としてできること、まさに最初にできることは、役場の職員さん、あるいは組織に対してであります。
なぜならば、皆さん方のそれぞれの町もそうだと思いますが、一番何予算を使ってますか。これは人件費ですよね。
その予算は、議会が承認する、すなわち町として皆でこれでいこうと決めているものです。その決定の最大の支出先が人に関するものであれば、その町としての「役場組織」あるいは「職員」が町にとって最大の財産であると思います。これは決して何か機械的なものとみなすのではなくて、文字通り人が最大の財産であります。
根性論を前提としない
そうしたときに、デジタル時代のユーザーである職員にとっての公共サービスを考えたときには、まず言いたいのは「根性論を前提としない」ということであります。
職員さんをいろいろ見てるんと、「なんでこんなことしてるんだろう?」っていう小さな疑問が、チリも積もればなんとやらじゃないですが、負荷がかかってるということです。
これは、上の立場の方もそうですが、ぜひ現場で仕事に精励しているその職員さん自身も「これには負荷がかかっている。しんどい。」といった何でもいいんですけども、それを「しんどいです」で済ませるのではなくてですね、それをどうするっていうことに意識を持つ必要があるということです。
ともすれば、これまで「それは若いときは頑張らなあかん」みたいな話で、根性論ベースで言うんではなくて、「こう変えたら良くなるな」という話を組織を挙げてやっていかないといけないということだと思います。
デジタルの特徴を活かす
そうしたときに、デジタルが持つ特徴は、人に優しい使い方ができるということです。
簡単な例で言えば、今、私はステージの上からお話していますよね。ステージには立派なスクリーンがあって、皆さんそちらに投影されている画面をご覧になっていますよね。もちろんお手元に今日のスライドは印刷したものをお配りいただいてもいますが、やや照明を落とした会場の中では、多くの方がスクリーンを見ていただいてることが示しているとおり、こういう形態のお話を、ある一定以上の方がそれぞれ見やすくするには、私が一人ひとりに向かってお話するのでもなく、一人ひとりが印刷された紙をただ見るということでもなくて、正面のスクリーンを見て私の話を聞いていただくように仕向ける仕組みになっています。何かをする形態とそれを受け取る形態がセットになるっていうのがこういったデジタルツールがいろいろ便利だなと感じる点です。
そうしたことは、既に役場のあちこちに転がってるわけです。
それをうまく使うということが重要でありまして、何もデジタル時代といっても、何か新しいことをしないといけないっていうわけじゃなくて、もう既にあるものを十分活用すればすごく便利できるということであります。
支援者を支援する
もう一つは人への投資という意味で、ぜひお考えいただきたいのは、役場の仕事には、いろんな方々を支援する仕事が多いと思います。また、コロナ禍ですごくリアルになったのは、窓口もそうですし、ワクチンをどう接種したいいんだなんかもそうですけれども、対人であることを、どう変更したらいいかということが問題になったことでもありますが、その裏返しで、対人で行うサービスが大事である、価値があるとかっていうのを再度明らかにしたとということだと思います。
そうしたときに、町民さんや事業者さんの支援をするような仕事をしてる方、職員をどう支援するか、実態としては、そうした方々は、対人サービスをしながら、終わったら全部事務作業をたくさんしないといけないところがあります。
そういうことでいいんですか?ということでありまして、「支援をする人」の負担、特に作業負担をどう減らして、本来の支援業務に当たっていただくかといった観点も、本当はその職員さん自身から上がってくる声があるとけどいいんですけれども、なかなか声を上げにくいっていうことがあるんであれば、「あなたたちがやってる仕事には価値があるので、こうしよう」という支援をしていただきたいと思います。
日野町での実践
以上のことを、日野町の事例を使ってご説明をさせていただきますと、日野町に着任させていただいてから、ずっとワクチンの話がありました。たまたまワクチンを話題にしてるということで、事例の1つとして見ていただいたらいいと思います。
ワクチンメーターということで、ワクチンの日々の更新、今日もさきほど更新したところですが、接種実績の速報と、接種率がどうなってるか日々更新しているものです。
また、もう1つは、皆様方もそれぞれで取り組まれてると思いますが、独自の予約システムも用意しています。こうしたものを用意するときに、心がけたことは、こうしたツールを導入することが目的ではなくて、そこで得られるデータからユーザーがどう行動・意図を持っているかを考えること、そしてそこからどういうサービスを提供したらいいか、そういったことを考えて検証するサイクルを作るためということです。
その観点から、現在のホットトピックスであったワクチンに関するもので準備したわけです。
それを先ほどの対住民と対職員という意味で見たときには、どう考えられるかっていうのをご説明していきましょう。
住民にとってワクチンメータの意味
まず住民さんです。このそれぞれのコンテンツ、例えばワクチンの接種状況を日々更新するようにしているとご説明しました。滋賀県さんも定期的に更新されてると思うんですが、日野町は接種が終わると直ちに更新するようにしました。
そうすると、役場のホームページでワクチンメータ開設後、この5ヶ月でずっとアクセス数がナンバーワンのコンテンツになっています。
このことをどう考えるか。役場からすると「町民さんは見ている」といういうのが毎日すぐ伝わります。かつ、時間帯別のアクセスログを見ると、更新したらすぐアクセスがあることも分かります。
そうすると、役場が提供しているものを受け取っている人がいるということを目の当たりにするわけです。であれば、毎日きちんと更新するということを続けていくことが、町民さんとの信頼関係の醸成に繋がる、そういった話ではないかと考えられないでしょうか。つまりは、一見冷たいと思われがちなデジタルですが、むしろこうした取り組みが、デジタルを通じた信頼関係の醸成と考えられるかどうかというのが重要だと思います。
またワクチン接種の予約システムについては、0から立ち上げたんですけれども、先日無事に1回目の接種の受付終わったんですけれども、この間の3ヶ月で1万アクセスがありました。
このアクセス数そのものは、多いか少ないかもちろんありますが、私どもが重視していたのは、開設したときにアクセスログで見えるユーザーの動きやコールセンターでのやりとりを見て、予約ページの中で使いにくいといった声があったので、それをすぐ直したりしていました。
具体的には、日程を選択するためのカレンダーが並んでいるところのページ送りのボタンがスマホでは押しにくいのではないか、そういったことなんですけども、そうしたユーザーがどういったことをしてるかっていうのを、ログのようなデータであるとか、お問い合わせいただいた内容、これも重要なデータであります。そうしたデータから一体何を求めてるかっていうのを考え、すぐサービスを変化させることができること、これもデジタル化の効用であります。
職員にとってワクチンメータの意味
一方でこうしたものを設置した裏側で何をしていたかというと、先ほど紹介したシステムのログがとれるわけですね。このスライドにある予約システムのアクセス数に山になってるところがあります。これは、皆さんもご経験あったと思いますが、年齢層ごとに予約を受け付けをしていくと、その受付開始初日に、アクセスが集中する傾向があります。
そしてこの山が多少変化するんですね。予約システムで受け付けるようになったのは、高齢者の年代の次の60代前半の方々だったと思いますが、以降年代が下がるにしたがい、アクセス数がちょっとずつ増えるんですね。他の方法、コールセンターや自動応答もあるんですが、予約システムを選択される方々が増えるということがわかりました。
そこでアクセスログを見てると、スライドの下にあるように、数字の224が見えますが、これはリアルタイムにアクセス数が分かります。また、224の下に緑とオレンジの棒グラフが、スマホでのアクセスなのかPCでのアクセスなのかを示しています。
200人単位でアクセスがあって、その9割がスマホだったということです。
我々も想定はしていたんですけど、やはり実数としてリアルに見える、もちろん目の前にはいないにしても町民さんがスマホ片手に予約画面を見ている姿を想像すると、それが224人いらっしゃるんだなってのは結構なプレッシャーだと思います。そういった方々が実数として見ることができる粒度はできるだけ具体的にすることが大事だと思います。
そして、そうしたリアルタイムの状況をリアルタイムに共有する。画面では小さいですが、予約開始の1分後である8時46分に「今80人予約ができてます」というようにLoGoチャットを使って役場関係者に共有しています。
また、同様に予約システムを一緒に開発した事業者さんとも同様にSlackを使ってリアルタイムに予約確定数とアクセス数を共有して、システムの稼働状況を確認していました。
このように、全体でどれぐらい利用されているのかのデータをリアルタイムで取得して、かつチャットツールも使ってリアルタイムに共有する、こうしたことを可能にするツールをうまく組み合わせて、しっかり使うということです。
またそうしたデータを見る、とにかく細かく見ていくということと、それを組み合わせて情報共有を行うことは、その次の予約受付開始するときに、体制を見直すかどうかの意思決定でもあるということです。また、さきほど情報通信白書でご紹介したように、スマホを使う人がどのくらいいるのかという全体感はわかっていますが、日野町ではどうなのかということをリアルに体感できる訳です。それは、来年度に向けてホームページのリニューアルを考えていますが、町民さんはどういう形態で役場のホームページを見るんだろう、ということを考えられるわけでもあります。そのエビデンスが取れたので、それを前提にしたホームページ設計を考えなければならないようになる訳です。
様々な予約システムサービスの関係を考慮して、誰一人取り残さない
また、予約そのものの方法としては、Web、自動応答電話、コールセンターを併用しています。それぞれ予約完了までにかかる時間で見て分かるとおり、特徴があると思います。
また、実際利用件数ベースでいえば、自動応答電話はほとんど利用がありませんでした。ただし、何時何分に予約完了したかというログを取れるようにしたので、それを見ますと、深夜、例えば23時過ぎとかですね、明け方にもお電話されている方いらっしゃいます。もちろんその時間もWebから予約できるんですが、こちらを選ばれたことに注目すべきだと思います。
つまりは、役場はワクチン接種の予約を受け付けることにした訳です。いろいろな状況の方がいらっしゃるでしょう。単純にツールとしてスマホとかインターネットが得意とかそうではないかという分類だけでなく、コールセンターは夜間は開設していないため、自動応答電話がベストかどうかはありますが、それを使わないといけない方にも眼差しを向けるということ、こういう考え方が行政には必要だと思います。そして、そういった方が実際にサービスを使うということを前提にサービスを設計するということでもあります。
また、データの話を続けてますと、予約完了にかかる時間は、Webで3分、自動応答5分、コールセンター6分が平均です。その差が大きいか小さいかという議論もできますけれども、その時間は、住民さんと役場がコミュニケーションをしてる時間だと考えたときに、3分間で何できるかっていうことを考える必要もあります。つまり、コールセンターはその倍情報提供ができるたり相手方の状況を理解することができる時間です。その6分間を大切にするというような考えでツール間の評価をすることも必要でしょう。
あるいはWebの3分ということ自体で考えてみても、役場のページはだいたい皆さん1分ぐらいしか見てないです。それより3倍見ているというのは、役場にとっては大きいのではかなというふうに考えたりもしています。
ここでの議論は、今回のワクチン接種で実際に実施したいろいろなツールを使ってサービスを提供したことから、サービス相互の関係も検討することや、自動応答電話のように、ごく少数の方ではあるがニーズが確かにある方にどのように対応できるか、ということがお分かりいただけたかと思います。誰一人取り残さない、ということの具体的なことは、こういうことではないかと思います。
そのためのデータマネジメントと横展開
そういったことを考えるために、考えるべきポイントは他にもありまして、左側は、データマネジメントの設計です。これは町長が県の首長会議でワクチンメータの更新のためにどうやっているかお話したので、ここでは割愛しますけれども、ここで重要なのは、右側のとおり、ワクチンメータはたまたまそれを必要とする時期だったので導入してるものであって、ワクチン接種が終わったらもう使わないというものではないということです。むしろ、ワクチンメータは終わるけれども、そこで使ったやり方を他の仕組みにも導入するということであります。
そういう意味で、税務課さんから相談があったので、さっそく使えるなと思っているのは、毎年2月から1ヶ月程度やっている申告相談の場面です。各役場でもされていると思いますが、通常の体制では応えきれないほどたくさんお越しいただいているかと思います。そのため順番待ちになりますよね。
そうすると、実際の現場では、「あと何分待ったらいいねん」「名簿を確認しますね、えっと今何番だからあと何分くらいはかかりますかね」みたいなことを結構やっている。そうしたやりとりをしなくても、またコロナ禍でもあるので、極力役場で待たなくてもいいようにできないだろうかという観点です。
見た目は違いますが、これはワクチンメーターをリアルタイムで更新しているものと全く同じ仕組みでできますので、むしろ、ワクチンメーターを作るときから、できるだけそうした汎用的な仕組みを構築して、役場のいろいろな業務に展開するよう仕掛けていくということです。そして、そうしておくと、役場の皆さんも「そういうやり方があったのか」と理解しやすいのではないかと考えています。
また、今まで申し上げていたことは、人件費はかかっていますが、ツールには全てお金がかかっていません。全部無料で使える範囲で構築しています。デジタル時代は、そうしたいろいろなサービスを作る費用が極限まで安くなっていることがあります。逆に言うと、無料でできる範囲でも十分できるので、いきなり大きなお金を使わなくても済む。むしろ、使わなくて済む間にやり方をしっかり覚えて、サービスを充実する場合に、お金をしっかり使っていくことに対して、中身と効果が理解できている訳ですから、評価できるわけです。
ですので、無料でできる間にしこたまノウハウを貯めるということが簡単にできるようになった、と言えると思います。そして、このメリットはすごく評価されるべきことじゃないかなと思います。
第三者によるフィードバックを受けて次に備える
今まで申し上げたのは、でも独りよがりなことかもしれません。ですので、一番重要なのは第三者のフィードバックであります。例えば、今日こういった形でお話をして、皆さんの反応を見ることも重要なことです。
京都工芸繊維大学の研究室と共同で今回のワクチン接種事務のように、不確実な要素がたくさんある中でどのように意思決定をしてサービスを作っていくか、サービスデザインと呼ばれる観点から専門家に見ていただき役場の特徴、「現場対応力」や「改善力」を明らかにしていただこうとしています。
こうした調査の効用は他にもあって、皆さん方、人に喋って初めて分かったっていう経験はないでしょうか?意外と人から評価してもらうと、自分たちの強みが初めて分かったりします。例えば、引継ぎのときに「これはこうしてこうして、云々」みたいな話で細部に渡って説明をして引き継きをすることがあると思うんですが、それは第三者、この場合は前任者よりは習熟していない、あるいは初めて聞くという方かもしれません。ともかくも聞いてもらって、「あ、こういったところを工夫している」ということだったりですね、あるいは「別のこういうやり方があるんじゃないか」とか、人から言われて気づくことってないでしょうか。
少し俯瞰して考えてみると、役場組織で異動はつきものですが、本来であれば、そういった違う視点で見る人、つまりは後任が仕事を見直してくれる、ということを全庁的にするために人事異動という仕組みだと捉えることができそうです。すると日本の行政組織は元々はそういう仕組みを前提にして運営されているとも言えるのではないか。
であれば、そうした仕組みが最も活きてくるのは、これからデジタル時代に向けてどんどん新しいサービスを生み出していくときに、組織や人がそれまで持ってる経験や視点をうまく組み合わせて目指すといった観点です。一見時代遅れのように言われる人事制度も、こう考えるとヒントが詰まってるんじゃないかなと思います。
ともにつくる
最後の「ともにつくる」であります。お時間も迫ってきましたので手短になりますが、今私よく考えるのは住民や民間の方々が参加して作る公共サービスって何だろうということで、あります。
民間・住民の参加による公共サービス
今日のお話は、スマホアプリを使って同時に文字起こしをしていると冒頭申し上げましたが、その含意は、行政サービスも1から行政で作る時代はおそらく終わりつつあるということです。
なぜなら皆さんのお手元にあるスマホで、例えば気象情報、先日来、気象状況が変化が激しい時期がありましたが、役場が用意した防災アプリも、もちろん必要ですし活用することは大切です。しかし、例えばヤフー防災とかNHKの防災ニュースアプリを使われる方も多いと思います。これは、民間が用意した優れたユーザーインターフェース、つまりは「使いやすい」アプリを活用しない手はないわけでありまして、むしろ考えるべきは、そうした優れた民間サービスに行政サービスをどう乗せるか、そういう場合の利用を考える時代になったということです。
また、今回の政府や自治体のデジタルに関する推進計画によく登場するEBPMであります。これは行政の職員だけが考えるんじゃなくて、いろんな人たちの知恵を使おうという言い方の方がよりいいと思っています。
その「知恵」という意味でご説明すれば、日野町で公共交通の再編プロジェクトを3年計画で実施しています。その際に住民さんあるいは事業者さんに参加していただいて政策立案をしてきたいと、EBPMの観点でも思っていまして、その肝が人流データであります。
このコロナ禍で人流データをよく見る機会が増えたと思いますが、それは、ただ人出が多い・少ないを表現するものだけでなく、データを作る過程に着目すると、もしかしたらこうは考えてないかもしれないけれども、自分たちの行動がベースにあって、それを統計処理をすることであのような表現ができているデータの集合である訳です。
例えば、日野町では、工業団地周辺で朝の通勤渋滞が起こっているんですが、これはもちろん渋滞に巻き込まれている当事者は分かっていることだとして、それがどういった箇所にどれぐらいの規模で起こってるのか、調査をかければ結構お金かかると思うんですけれども、そのような方法でなくとも人流データを活用することで、比較的精度高く分かるという状況が確認できています。
そういうことを町民さんに分かりやすくお示ししていくことで、一人ひとりの行動が全体にどう関わっていくかをご説明するだけでなく、「皆さんの行動が変わると、町全体でこうなる」ということもご説明できるようになります。そのエビデンスを元に政策を立案する。これは、広い意味で町民が政策立案に参加していると言えます。これが広い意味でのEBPMではないかと思います。
ともにつくるための仕事のデザイン
そうしたことを可能にするのは、「仕事のデザインを問い直す」ということでありまして、ここで言ってる「デザイン」は「かっこいい」という意味ではなくて、それを可能にしてるような仕組みだったりとか、仕掛けだったりとか、これはシビックテックの説明の中にあった意味にも関わるようなところです。そうした意味でのデザインを問い直すことでありまして、行政組織を構成するプロセス・人の問い直し、それがそのまま組織の見直しが必要ということであります。
自治体DXにおける連携
「仕事のデザイン」、組織のあり方という意味では、今回の町村会の皆さんの取り組みをもう少し見方を変えて考えることができると思います。総務省さんが用意した「自治体DX推進手順書」の中で「連携」が隠れキーワードになっていると思っていて、今回の取り組みがどのような位置づけになるのか、すごく特徴的であることだと思います。ですので、その価値をしっかり発信していく必要があるんじゃないかなと思います。
基礎自治体レベルの広域連携の重要性
手順書の中では、都道府県が主体となって行われる事例が中心になっていて、基礎自治体での広域連携というパターンは、事例集の中にひっそりと出ています。事例集にあるので重要なテーマではありますが、本体にしっかり位置づけられていないほどまだまだレアケースなのだということでしょう。もちろん、滋賀県さんも今日はお越しいただき、ご挨拶のとおり協力いただくということでありますが、基礎自治体同士が連携をしてやっていくということは、ポイントであります。
というのも、ちょうどこの事例集に取り上げられているCode for Japanがコーディネートしている兵庫県内の基礎自治体である、神戸市・豊岡市・加古川市・三田市・宝塚市・芦屋市では、毎週定例でWebで集まっていろいろな意見交換を始めています。
ひとりぼっちなDX担当?
基礎自治体で連携が重要だと言っているのは、職員さんからするとですね、今日、こうして「町村会で連携してやっていこう!」となっていますが、それぞれの役場では担当としては1人ぼっちかもしれません。今がステップ0です。しかし、手順書では「連携」はステップ2とだいぶ先にあるんです。
ステップ0から始めようとなったときから、既に連携が重要になっているはずでありまして、いわばクリスマスパーティーのように盛り上げるけれども、誰も来ないということじゃなくてですね、みんなで楽しむパーティーは、準備するときからみんなで準備しようということが重要であろうかと思います。
福島県会津地域を例に
参考になると思うが、福島県会津地域でして、ここではいろんな規模の中13の市町村が集まって共同のプロジェクトを始めているんですけれども、そうした基礎自治体レベルでの広域連携の仕組みである点と、ぜひ滋賀県さんにもお取り組みいただきたいのは、福島県では地方振興局がすごく力を入れてらっしゃる点が特徴だと思います。
滋賀県の中にもすでに様々な取り組みを予定していると思いますが、より現場に近い方々が一緒に汗を流すことが、すごく重要でありまして、ぜひ、福島の事例も参考にいただければと思います。
「まあ、座りなよ」から
今日は、いろいろなお話をさせていただきましたが、私は、日野町政策参与としてもそうですし、Code for Japanとして各地の自治体の皆さんとお仕事するときにも、まず話を聞くということを大切にしています。
日野町では、私の机があるので、その隣に丸イスですが用意していただいてどなたでも来てちょっと座ってお話しましょうと言っています。堀江町長もよく座りに来ていただくんですけれども、職員の皆さんもそれぞれ思いを持って仕事をしていて、何かこう変えてみようとか、変えなくてもいいこともよくあるんですけれども、どういった思いを持ってるかっていうのをまず喋ってみる、今日はそういうお話もしましたが、すごく重要だと思います。他の町の皆様方も、私がいるとき来ていただいたら、じっくりお話を伺いたいなと思います。
学び直しと学び合い
というのも、日野町では、今こういったお互いに話す機会を増やしています。私と一緒に仕事をしている総務・企画・財政担当の現場の職員さんとの意見交換もそうですし、先輩職員と若手のオフサイトミーティング、それを知って女性職員でも開催しています。また、管理職でもやってみようっていうように、役場の中で自発的にオフサイトミーティングが頻繁に行われるようになっています。
そこで語られてる話から言えることとしては、町村会さんの今回の取り組みも連絡会議も重要だと思いますが、より実質的な対話なり実践の場をつくることが重要ではないかと思います。
といいますのも、自治体では全国各地で行われるようになってきたことでもでもあります。実践をするための体験型セミナーをはじめCode for Japanでも支援しておりますので、ぜひご参考にしてください。
また、今日もこの後、お話いただきます総務省さんもそうですが、自治体職員有志との意見交換の場に自治体DX推進手順書の担当の方に来ていただいて、いろいろな意見交換するようになってきています。今までであれば、国あるいは県、市町村というのが何か階層的な感じがあったかもしれませんが、オンラインの時代ではそこはより平等でありまして、むしろ国が手順書作ってから、その現場で何が起こっているかを自治体側から直接話を聞いたり、総務省さんが何を考えてやっているかを自治体職員と話し合うことが容易にできるようになっています。
先日、町村会事務局さんもこの右側に「縁側雑談」と書いていますが、今日の取り組みについて他の自治体の皆さんにも情報発信をいただいているところであります。
われわれは中小企業である
最後のスライドです。DXは、企業の皆さんも取り組んでおりますけれども、そうした観点では、役場は中小企業であると考えてみましょう。
これは先日の経済財政白書にも書かれてることでありますが、我が国でDXと言われてるときに、大企業は一部取り込み中で含めて6割を超えているところまで来ました。DXという言葉が言われるようになってからを考えるとこれは結構大きな変化だと思いますが、翻って中小企業を見たときには、「内容を知らない」という回答がまだまだ多くあります。
幸いにして自治体にとっては、総務省さんが旗を振り始めて、みんな知るようにはなったと思いますが、「予定なし」はおそらくないと思いますが、「検討中」という4割弱ぐらいのところではないかと思います。
そうしたときに、よく記事になったりしている大企業の取り組みを参考にするのではなくて、我々自身でできること、我が町のDXこそが大切です。
総務省さんは「自治体DX」という言葉で表現していますが、それをそのまま大きな主語として考えるのではなく、あくまでも「我が町にとって何か」っていうことを問い続けることが重要であります。
その意味では、町長の皆さんにおかれては、先ほど申し上げた最大の財産である、わが町あるいは役場組織・職員さんの良さを活かすことに注力いただきたいですし、本日お越しの幹部の皆様は、ぜひ自分もやってみてください。
部下にやらせることも重要なんですが、「私もちょっとやってみたいから教えて」と言ってみて、やってみることが重要であります。
民間企業でも、今、「リバースメンタリング」ということが言われています。そもそもベテランと若手では得意領域が違う訳で、上役だから何でも教える立場ではなくて、得意な人に聞くという点では、上も下もありません。であれば、役場組織、とりわけ町役場においては、経験豊かな幹部の皆さんが現場を切り盛りするというのがやはり見受けられるんですが、そうした方々が率先して教えを請う姿勢を示していくことも重要であると思います。
最後にスタッフの皆さんは、今まで通りきちんと仕事をするということと、それでもなお少し背伸びをしてみましょう。そうすることで、いろんなことをできるようになります。全国各地の自治体職員さんが、DXの名の下に様々トライしていることはそういうことであります。
また、本日ご来賓として来ていただいた皆さんは、設立総会にお越しいただいた訳ですので、どこかの時点で巻き込まれると思います。それぞれの得意領域でぜひご協力をいただきたいと思います。
そうしたことが総体として、大きな主語である自治体DXではなく、それぞれ6町の良さを活かしたDXが進む肝じゃないかなと考える次第です。
以上が私の考えるデジタル時代に合った、今日はデジタル時代のユーザーに合ったと申し上げました。繰り返しになりますが、ユーザーというのは、住民あるいは職員皆さん方、それぞれに合った公共サービスを一緒に作っていこうではありませんかというお話でありました。ご清聴ありがとうございました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?