暗号通貨(仮想通貨)プロジェクト観察記

暗号通貨界隈が大変盛り上がりを見せている2021年,2017年のICOバブルと同様に実態のないプロジェクトが跋扈し,無知な消費者が食い物にされるという負の一面も相変わらず発生している.

何せよこの界隈は魔界だ.通貨やトークンの大幅値上がりによる一攫千金,億万長者誕生を毎日のように目にする一方で,その裏では無知な人から金銭を搾り取る悪い人たちがウヨウヨし,物言わぬ屍が積み上がっている.そういう人たちに騙されないためにはコンピュータサイエンス,経済,金融,哲学,社会,心理,国際情勢などあらゆる観点で暗号通貨界隈を学び,本質を見抜く選球眼を培うことが大事だ.

さて,今回は最近立ち上がったと思われるプロジェクト「幕末スワップRYOMAコイン(トークン)」(以下,RYOMA)をケーススタディに,暗号通貨・トークンそのものやそれを活用したプロジェクトを評価してみようと思う.

本題にはいる前に,本noteは以下の前提に立っていることをここに明記したい.
・本noteの執筆の目的は以下に限定する.
 ー思考の言語化を通じた,筆者の暗号通貨プロジェクト評価手法の醸成
 ー筆者と読者でのインタラクティブなコミュニケーションによる,
  筆者や読者のさらなる暗号通貨リテラシー向上.
・本noteはRYOMA及び,その他暗号資産,トークンをはじめとした各種財への投資を進めたり,その意思決定に助言を与えるものでは決してない.万が一本noteを参考に,何らかの意思決定をとったとしても,筆者はその結果に責任を負わない.
・今回ケーススタディ対象にRYOMAを取り上げる理由は以下のとおりである.他意はない.

 ー日本語文献,日本語対応のコミュニティができつつあるため言語の壁
  無しでプロジェクトを俯瞰できること.
 ー立ち上がってまもないプロジェクトを観察対象とすることで長期的な
  観察ができそうであること.
  (RYOMAは2021年5月16日時点で私が知る最も生まれたての
   プロジェクト)
・筆者は本プロジェクトに賛成の立場,反対の立場いずれも持たない.

RYOMAの紹介は,非一次情報情報の提供による誤解を避けるため割愛させていただく.気になる方はぜひ上記リンクを踏んでご自身の目でプロジェクトを見ていただくことをお勧めする.

それではこのプロジェクトについて,筆者の思いつく疑問,懸念,観点などを思いつく限り箇条書きでリストアップしていこうと思う.ここに記載されたことはどの暗号通貨プロジェクトを評価する際にも用いることが可能な観点であり,それを知っておくことは有用だと思われる.

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■このプロジェクトはどんな価値があり,実態をもつのか.
暗号通貨に限らず,資金を調達し事業を展開する者はその事業が社会の何らかの痛みを解決し(価値を生み出し),それが実世界に実装できることを示す必要がある.
例えば,貴方の住んでいる町にパン屋がなく,一方で人々はパンを欲していた場合,その町にパン屋を開店し人々にパンを届けることは一つの痛みの解決となる.
そして,それが絵に書いた餅ではない証拠に,どういうことを,どういう時間軸で実行し,ゴール(パンの提供)に至るかを現実的に示し,それを実行するのが発案者の役目であり責任だ.資金を提供する人(投資家,銀行etc)はそのプロジェクトの真偽を判断し,投資に値すると判断できた場合にのみ,適切な資金を融資・出資するのが一般的だ.

さて,このRYOMAではどんな痛みを解決するのだろうか,それはどれくらいの資金で,いつまでに,どうやって行われるのだろうか,競合がいる場合はその競合じゃなくて自分じゃないといけない決定的な違いはあるのだろうか.

■そもそも事業者は誰なのか

大事なお金を預ける相手が誰なのか,それは信用できる人間なのかというのは資金提供側の最も大きな関心事だ.事業者が資金調達をする場合,一般的には自分の身元を明かす.事業者(個人でも集団でも)にはどんな経歴の人がいるのか,どんなスキルセットがあるのか,どんな役割分担を持つのかという情報は,事業の実現と成功の判断において欠かせないからだ.

例えば私が匿名で経歴や技能も示さずに「空飛ぶ車を来月中に実現するから1億円くれ」といったときに,その提案に乗る人は皆無だろう.実現性が全く見えず,1億を渡しても有効に使われるとは到底思えないからだ.
しかし,先のパン屋の例の続きで,一度パン屋を成功させた事業者が「私はA町にパン屋を開業し年間20%の営業利益を上げている.A町と同様のパン不足という悩みを抱えるB町にもパン屋を開業したい.だからその資金を年利5%で貸して欲しい.」と言えば,提案に乗ってくれる人が現れるかもしれない.

さて,このRYOMAでは一体誰が事業者なのだろうか.公式サイトを見る限りそれらしき情報は全くない.

■トークンの総発行量とその分配割合が不明.

暗号通貨プロジェクトには独自トークンの発行がつきものであり,RYOMAでも龍馬トークンが発行されるらしい.
※本noteではRYOMAがプリセールで販売するトークンを龍馬トークンと表記することとする.ちなみに,公式サイトをみても名称が一意ではない.

この龍馬トークンは”プレセール”と称した販売でETHを支払うことで手に入れることができる.
ところでプリセールでは合計1億枚の龍馬トークンが販売されるようだが,これは龍馬トークン全体のどれくらいの割合を占めているのか全く不明である.

もし,龍馬トークンの総発行料が100億枚で,99億枚を事業者が保有していた場合,プリセールで販売される龍馬トークンは全体のたった1%ということになる.今後,分散取引所に上場予定とロードマップに示されているため,上場した瞬間事業者が99%の龍馬トークンを売り捌き,その後蒸発する可能性も否定できない.


...
ダメだ,こんな調子で以下のようなことを無限に続きが書けそうではあるが,虚無さを感じて力尽きてしまった.続きに興味がある方は是非,「いいね」など反応を示してくれると大変幸いである.

■プリセールはどうやら特定のフォームに個人情報や支払うETHなどを記入する仕組みを取っている.なぜスマートコントラクトを使わず,人力作業と不確実性を伴うプロセスをとっているのか.

■なぜ参加者はこの非効率的な手続きに何の疑問も持たないのだろうか.それに加え「運営も大変」「しっかりやってくれている」などと言いなぜ運営主体を信頼できるという結論になるのだろうか.

■なぜ出資者は本プロジェクトでのクローズドなコミュニティ(LINEオープンチャット)で本プロジェクトに対する批判的な意見を全否定しにかかるのか.(なぜ客観的事実の追求や検証より主観的なあるべき理想を全面に押し出し,そうなっているはずだと思い込めるのか)

■なぜ,ETH提供者側が利用するウォレットは「セーフパル,メタマスク,トラストウォレット」に限定されるのか.

■なぜ参加者は「ユニスワップ」が何かも知らないのに,このようなプロジェクトに安くはない金銭を投じることができるのか

■事業目的が「独自のマイニングプール構築,運営」とあるが,既存のマイニングプールとは何が違うのか.独自性は何で,このドメインを攻める上での勝算ポイントはどこにあるのか.

■なぜ分散型取引上に上場した後の価格を「20円」と設定できるのか.仮に20円の価格が維持されるとしても,その根拠,トークンの価値の根源は何なのか.(トークンのロックアップと購入上限は需給に影響を与える微々たる要素でしかないのではないか.しかも総発行量と分配が示されてない.)

■なぜ参加者の多くで販売価格=価値という等式が成り立っているのだろうか.私が本質的価値がない0円のゴミを片手に「このすごい,儲かる,売り切れ確実のナントカを売ります.売値は100円です」といえば,そういう人はそれを100円の価値があるものと認定してくれるんだろうか.

■初期プリセール(1龍馬トークン=五円)に参加した人は,トークンの価格が今後少なくとも4倍になるために自分の投資金額も4倍になると思っているようだが,その根拠は何か.

■プリセールで予定販売数量を満たした客観的な証拠がないのになぜ「完売」扱いにしているんだろうか.

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