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2023.08.06 ビオトープへのお客様来訪と新顔の発見

ざっくり概要

初めて県外からのお客様を迎えた湿地ビオトープ。2年目の夏を迎え、水量も水草も豊富な環境で生き物観察をしました。そして待望の◯◯◯◯ゲンゴロウを発見!!

水昆LOVE小学生来たる


8月に入り、愛媛も暑い日が続いていますが、ビオトープに初の県外のお客様をお連れしました。なんと、埼玉からお越しの hinata さん親子です!

hinataさんは、水生昆虫をはじめとした生き物が大好きで、お父様の実家である徳島に帰省してから、愛媛大学の昆虫展に参加するためにいらしたそうです。5月にこのビオトープのことを知りご連絡を頂きました。

noteのサイトをみると、多くの生き物や採集旅行の記事が盛りだくさんで、純粋な「好き」のパワーをとっても感じることができます。hinataさんの訪問レポートはこちらの記事です。

また今回は、松山在住の友人Fさんと連れのKさんも初めて来てくれました。筆者も含めて総勢5名でビオトープでの生き物探索の始まりです!

まずはビオトープにて

今回のために木道(?)も設置した

まず最初に、周辺の紹介がてら、湿地ビオトープ、水田を簡単にご紹介しました。もうひとつメダカが沢山いるため池もご案内しようとしたのですが、アプローチが草刈りされていないため近づくことができませんでした。

一通りビオトープと水田をご紹介した後、まずはビオトープから調査(ガサガサ)をはじめることにしました。ビオトープ内は、水深20-30cmで多くの水草に覆われています。胴長を装備したhinataさん、hinataパパと、長靴を履いているKさんの3人で、タモ網を使った生き物の調査をして頂きました。

皆で調査中

Fさんは、虫網を使ってトンボ担当として、ヤンマ系(特にオニヤンマ)の捕獲を狙いました。

とにかく、このビオトープはアカハライモリミズカマキリが多いです。これは、イモリやミズカマキリを捕食する高次捕食者(タイコウチ、タガメ、コイやナマズなどの大型魚、カメ類、アメリカザリガニなど)がいないためかもしれません。

イモリは成体も幼体もウジャウジャいます

水草が豊富なせいか、ガムシの成虫もかなりの数を見つけました。ガムシはとにかく水草を大量に食べるので、コナギがわんさか生えているビオトープはピッタリの生息場所なのでしょう。

ガムシもとても多いです
コナギがたくさん、ガムシもたくさん。

今回クロゲンゴロウの成虫は、ビオトープでは1匹だけしか確認できませんでしたが、幼虫は何匹も見つかりました。秋には新成虫が続々現れるのを期待しています。

クロゲンゴロウの幼虫

ヤゴ類はハラビロトンボ、オオシオカラトンボ、ショウジョウトンボ、キイトトンボなどがいますが、特にギンヤンマのヤゴが多くいました。ギンヤンマのヤゴの緑はとてもキレイですね。

一度に何匹も入るギンヤンマヤゴ

水田でコガタノゲンゴロウが!

次に、田んぼに移動してみると、ここもガムシやミズカマキリが沢山いました。ビオトープではあまり見かけないヒメガムシ、コシマゲンゴロウ、ヒメゲンゴロウなどの中型種、マメガムシ、タマガムシなどの小型種もみつけました。

田んぼでも、クロゲンゴロウを見つけましたが、hinataくんが、ここではお初のコガタノゲンゴロウ を見つけてくれました!

田んぼでみつかったコガタノゲンゴロウとクロゲンゴロウ

近年愛媛ではコガタノゲンゴロウが希少種ながらも増加傾向にあると言われています。

(参考)

このビオトープや水田がある場所は標高300mを越えているので、飛翔能力の高いコガタノゲンゴロウでも、移動してくるのは難しいのではないかと考えていました。しかし、実際にこの場所で確認できたので、今後の定着に期待が持てます。

コガタノゲンゴロウは南方系のゲンゴロウのため、昨今の温暖化による高温に適応していると言われています。

このビオトープや水田には、直接山から水を流し込んでいるため、比較的水温が低めになっています。hinataパパが水温を計ってくれたところ、ビオトープの水温は約19〜25℃、水田は26℃オーバーでした。水深が浅め、水温が高めの水田の方に、より多く中型ゲンゴロウ・ガムシが生息していました。

ビオトープに意図的に高水温・低水深を踏まえた領域を設けることで、中型ゲンゴロウ・ガムシ類、そして高水温を好むコガタノゲンゴロウが生息しやすい場所が増やせるかもしれません。今後のテーマとして検討していきます。

クロゲンゴロウも、コガタノゲンゴロウも、共存して生息できるような環境にできると素晴らしいです。

4種類のカエルに出会う

ビオトープのもうひとつの顔でもあるカエル達も4種類見つけることができました。もっとも多くみかけるアマガエル、その次に見かけるツチガエル、時折見かけるニホンアカガエル、そして一番数が少ないトノサマガエルの4種類です。またしても、hinataさんが大きなトノサマガエルを見つけてくれました。さすが「持って」ます。

クワイの葉につくアマガエル
お腹をみせるツチガエル
大きなトノサマガエルと、若いニホンアカガエル

このビオトープには、もう一種類シュレーゲルアオガエルが生息しているはずですが、今回は見かけることはできませんでした。

お昼は里山の味覚を楽しむ

昼食は、地元のWさんが用意してくれた竹の器で、大豆出汁のうどん、イノシシ肉、Wさんお手製のしそジュースを頂きました。お腹がいっぱいになりすぎて、他にも用意してくれていたスイカなどが食べれずに終わってしまいました(汗)

ビオトープではマコモやクワイといった食用の水生植物も育てているので、そのうち、水田の米も含めてそれらを食する機会も作りたいです。

ビオトープの上に作った昼食会場
猪肉を焼く!
竹の器でうどんを頂く

2年目の夏を迎えて

昨年初めた湿地ビオトープの保全は、心配していた夏の渇水も台風などで雨がかなり降り、山からの安定した水量もあるため、今のところはなんとかなっているようです。

春に重機で陸生植物(セイタカアワダチソウなど)の根を掘り上げて、水深を深くしたため、環境にどのような影響があるかと心配していました。

結果的には、環境介入の目的だったセイタカアワダチソウの除去はうまくいき、狙い通りコナギ、ウリカワ、シャジクモなどの水生植物が繁茂する環境になりました。

2022年8月の様子。セイタカアワダチソウなどの陸生植物が多い
2023年7月の様子。セイタカアワダチソウは殆ど見えない

こうやって生まれた環境に、多くの生き物が住み着いてくれることも嬉しいですが、更にその生き物を観察しに子どもが訪れて楽しんでくれるのを見ると、想像以上にやりがいがある活動だと実感しました。

これから、秋に向けて新成虫が増えていくはずなので、秋にはどのような様相になっているのかが楽しみです。引き続き、ビオトープの保全と観察を続けていきます。

外来生物が少なく、除草剤や農薬も使わない、昔ながらの里山における在来水生生物の楽園をつくり、そこにどうやって里山の自然環境と人が持続的に維持・発展していけるようにするのか? 課題はまだ山積みですが、少しづつ取り組んでいきます。

今回、遠くから訪れてくれたhinataさん親子には本当に感謝しかありません。本当に来ていただいてありがとうございました。また徳島帰省の際には遊びに来てください!

新成虫が増える秋が楽しみ…

最後に、これらビオトープ周辺の草刈り、休憩スペースの設置、昼食の準備などを地元在住のWさんにして頂きました。当日は予定がありWさんは欠席でしたが、Wさん抜きではこのビオトープの維持管理は実現できません。改めて深く感謝いたします。

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