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陶器の鳥と人の手(TETANPO工房見学レポ)

こんにちは。うえだといいます。

2022年の秋に、愛知県瀬戸市の石膏型職人さんと一緒に「TETANPO」という製品を作りました。


TETANPOは手を温めてくれる陶器の鳥さん。
中にあずきが入っていて、レンジで数秒加熱するとじんわりとした温かさが10分ほど持続します。

忙しい毎日の中に「何もしない時間」をつくる、ぼーっとするための道具が欲しくて、愛知県瀬戸市の型職人さんと共同で開発しました。

吉橋 賢一さん

先日、そんなTETANPOの開発パートナーであるヨシハシさんと、生産現場を見学してきたのでレポートしていきたいと思います!

吉橋さん製作の石膏型


ちなみに、TETANPOができるまでの道のりは大きく分けると、石膏型を作る工程窯に入れて焼く工程に分かれます。

ざっくり書き出すとこんな感じ

  1. 量産用の型を作る
    1. 粘土で原型を作る
    2. 試作用の型を作る
    3. 試作用の型に粘土を流し込んで成形
    4.焼成(焼き上がりを確認して修正箇所がなくなるまで試作を繰り返す)
    5. 量産用の石膏型を作るための型を作る
    6. 量産用の石膏型を作る

  2. 窯に入れて焼き上げる
    1. 型に泥を流し込んで成形する
    2. 窯に入れる準備をする
    3. 素焼きをする
    4. 釉薬を施す
    5. 本焼成

  3. 検品して仕上げをして梱包発送


今回は、型を使って成形する工程を見せていただきました!



ヨシハシさん
こちらがTETANPOの生産をお願いしている窯元さんです。それぞれ作業を担当している職人さんがいるので、見学させてもらいましょう。

うえだ
よろしくお願いします!楽しみ!


凹まない鳥さんをつくる

うえだ
吉橋さんが作った石膏型に泥を流し込んでいますね。

ヨシハシさん
そう。まず、型の中を泥でいっぱいにします。
しばらく放置すると石膏に触れている部分だけが水分を吸われて固まってくるんです。タイミングを見計らって泥を捨てると、固まった泥だけが残ってTETANPOの形が出来上がります。

うえだ
中が空洞になってるチョコレートのお菓子と似た感じですかね…。ちなみに石膏型から泥を捨てるまでどのくらい放置するんですか?

職人さん
放置時間はその日の天気や季節によって変わります。夏は石膏が水分をよく吸うから早く固まるけど、冬はその倍くらい時間かかったりする。
今日は、え〜っと…25分くらいですかね。

石膏に泥の水分が吸われて量が減っています

うえだ
「この時期は大体このぐらいの放置時間」といった目安というか決まりがあるんですか?

職人さん
その時の感覚だね〜。
雨で湿度が高い日とかは同じ時間で置いても厚みがつかないんです。他にも、朝の乾燥した石膏型と、夕方になって数回使った型だと、水分を吸うスピードが変わっているので乾燥時間も調整しないといけない。

うえだ
気候や時間によって感覚で調整しているんですね…!知らなかった…

ヨシハシさん
そろそろ泥の表面が固まった頃ですかね。
どうでしょうか?

職人さん
そろそろ良さそうだね。
TETANPOは少し変わった形をしていて、徳利や花瓶と違って泥を捨てる穴が小さいんです。なので、専用の器具を使って泥を逃すルートを確保してあげます。

職人さん
ちなみに捨てると言っても、この泥は回収して再利用しているんです。粘土屋さんに持って行ってもらって、別の工程で使われます。

うえだ
なるほど〜!

職人さん
TETANPOの型なんですけどさっきも言った通り、こんな感じで穴が小さいでしょ?なので出口に固まった泥がついちゃうと、上手く流し出せないんです。

うえだ
うおお…こう見るとほんとに小さいですね…!

うえだ
ところで、泥を捨てる時に何度か型の向きを変えてますよね。これにも何か理由があるんですか?

職人さん
TETANPOはひっくり返した時に、背中の穴より下に頭が来てしまうんよね。そうすると頭の方に泥が溜まっちゃって、全体が均等な厚みにならないんです。

うえだ
たしかにひっくり返すと、穴より先に頭が一番下に来ちゃいますね。

職人さん
この後に背中に穴を空ける作業があったりするので、ある程度の厚みが必要なんです。負荷がかかる作業をする時に薄い箇所があると、割れちゃったり歪んでしまったりするんですね。

うえだ
なるほど!
最初に試作した時は穴の周りが凹んだりヒビが入ったりしていましたもんね…。泥を流しこむ工程にも、綺麗に成形する工夫が必要なんですね。



職人さん
余分な泥を流してしばらくすると形が出来上がります。取り出してみますね!

うえだ
うぉぉ……かわいいいっっ……
でも、真ん中にピーッと、石膏型の跡がついてますね。

職人さん
これは後で表面を整える職人さんが削って滑らかにするんだけど、型から取り出してすぐはまだ完全に固まっていなくて握ると潰れちゃうから、ある程度の硬さになるまで乾かします。


うえだ
乾燥中は布を被せてあげるんですね〜
サウナみたい…

職人さん
今日は暑いから、一気に乾きすぎないようにね。
外側だけ乾いて内側が柔らかい状態だと形が崩れる原因になっちゃうので、なるべく外も中も均一に同じスピードで乾くようにしています。

うえだ
うお〜なるほど…

職人さん
そしてある程度乾燥させたら、
背中に専用の器具を使って20mmの穴を空けるんだけど、この時に薄かったり偏りがあると、形が崩れてしまうんですよ。

うえだ
それで泥を捨てる時、厚みが均一になるように気をつけていたんですね!



職人さん
こんな感じで背中の穴はどうでしょう…?
綺麗に空けられたと思うんだけど…

うえだ
すごい!めっちゃ綺麗や…
形も崩れていませんね!

職人さん
ありがとうございます。
ここからは型の跡を綺麗にして、表面を整えてくれる職人さんにバトンタッチしますね!


サラサラの鳥さんをつくる

職人さん
それでは、TETANPOさん達の表面を綺麗にしていきますね。最初に石膏型の跡が残っているので、専用の器具で削っていきます。

うえだ
うぉ〜!迷いなくゾリゾリ削っていますね。
職人技や…

職人さん
お腹の方も綺麗にしていきますね〜。

うえだ
綺麗に型の跡だけが削れていく…
しかしてっきり、TETANPOは型から出た時点でサラサラピカピカなんだと思っていました。

職人さん
最後に、濡らした布で全体を軽く拭いてあげます。こうすることでより表面がサラサラに仕上がるんです。

うえだ
少しでも凹凸があると、触り心地が格段に悪くなってしまいますもんね。大事な工程をありがとうございます…。

うえだ
ところで、使われている布は何か特殊な布なんですか?

職人さん
専用の布ってわけじゃないんですけど、
なるべくナイロン100%のものを選んでいます。
綿の布はケバだってしまうので、表面が荒れてしまうんです。

うえだ
うわ〜なるほど!

キレイさっぱり。気持ちよさそう…
型の跡が消えてサラサラになっています


吉橋さん
どの工程も見応えありますね〜。

うえだ
いや〜、現場を見ないと分からないことだらけでした…。ここからいよいよ1回目の焼成(素焼き)に移る感じでしょうか?

吉橋さん
その前に、TETANPOの水分が完全になくなるまで乾かします。

うえだ
か、乾燥時間って大体どれくらい…

吉橋さん
これも気温や条件によるけど、1〜2日くらいだね。

うえだ
1〜2日!!
思っていた以上に素焼きまで道のりは長い…

吉橋さん
直射日光が当たると乾燥スピードが早すぎて、ヒビ割れしちゃうかもしれないので、日陰でゆっくり乾かしていきます。完全に乾くと色が白っぽくなるんですよ。

うえだ
ほんとだ!
脱型した後と色が違いますね〜。
後ろから見たほっぺが可愛い…



吉橋さん
さて、今日見られる工程はここまでですね。
この後に素焼きして、釉薬をかけて、また窯に入れてと…多くの段階があります。
どの工程にも職人さんの技術が詰まっているので、また見学させてもらいましょう。

うえだ
TETANPOが出来上がるまでには、たくさんの職人さんの手にお世話になっているんですね。

吉橋さん
ちなみに本焼成が終わった後は、パッケージに入れる直前にヤスリで研磨する作業があるんです。焼き上がりの状態だと表面が少しザラザラしているので。

うえだ
TETANPOはとことん手触りにこだわってしまったので、どうしても手で仕上げる工程が多くなってしまうんですよね。本当に産地の方々には頭が上がりません!

吉橋さん
仕上げ、検品梱包の工程は話せば長くなると思うので、また機会があれば記事にしてみてください。

うえだ
発送されるまでの最終工程もめちゃくちゃ語れますもんね…。ぜひまた記事にさせてください!
今日は一日ありがとうございました!







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