秋夜のしじま
夜に秋を感じる。
目に残る青さ、忙しない音、湿気に混じるにおい。
確かにあった感覚が感じられなくなりつつある。
少しずつ夏を忘れ始めている。
少しずつ冬への渇望が和らいでいく。
何かを失っても、何かを得ても。
その時その時の瞬間は、
いつかは忘れてしまうんだろう。
ならば世間に身を委ねられたら。
目の前の景色に素直になれば、
いつかは幸せになれるのだろうか。
心の中に違和感を残す。
頭の中では理解できているのに。
体は思うようには動かないらしい。
自分と世の中の繋がりが、
世の中と誰かの繋がりが、
軽薄に。単色に。モノクロに。
心を殺すことが少しうまくなってしまった。
けれど、心を殺すことが悪いことではない。
そんな自分もいることを認めてあげる強さを。
そして、何かを忘れてしまっても、
自分たちもいなくなるわけだから。
見たい景色のために生きてればいい。
世の中とうまく付き合ってけばいい。
そろそろ春への期待が膨らむ。
冬になれば、温かさを渇望するのだろう。
春はそんなに楽しい季節ではないというのに。
夜に秋を感じる。
肌寒さに合わない暖色が広がる。
音楽が恋しくなる静けさ。
空気の澄む匂い。
心が安らぐには程よい季節かもしれない。
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