見出し画像

Appleの20年分の財務諸表を読み解く

時価総額300兆円超、世界最高のブランド価値を持つと言われているAppleですが、約25年前は倒産寸前でした。当時のDellのCEOは「私なら会社を畳んで株主に金を返す」とまで言ったそうです。

しかしこの20年間で、AppleはiPodやiPhoneなど大ヒット商品を生み出し、営業利益率30%、年間純利益10兆円を超える超高収益企業へと成長しました。本記事では、過去20年間の決算から、Appleがどのようにして成長してきたかを見ていきます。

※特に断りのない場合は、Appleの会計に従い年度は9月終わりです。また、断りのない場合、データはForm 10-kから取得しています。

PL編

20年間の売上成長概説: 売上63倍、営業利益率30%、iPhone主導の成長と近年の多角化

売上高推移

まずここ20年の売上推移をざっくりと見ていきます。グラフの通り、売上、営業利益ともにここ20年間で大幅に成長しました。2003年度に比べ、2022年度の売上は63倍の約4000億ドル、営業利益も0.4%から30%に伸びています。あとで詳しく考察しますが、営業利益率30%は同業他社、例えばSamsungの2022年度の営業利益率14%と比べても驚異的に高い数字です。
iPodやiPhoneが同社の成長を牽引してきたことは有名ですが、実際に製品別の売上推移はどうなっているでしょうか?

製品別売上高推移

※近年のiPhoneの売上額が大きすぎてグラフが読みづらいので、logスケールで表示しています。
※Apple Storeのデータは2015年度以降10-kで公表されていないようです。

2000年代前半はiPodの売上が急速に成長しましたが、意外にも2006年度を除いてMacの方が売上が大きかったようです。ただし、この頃のMacの伸びはiPodの影響が大きいと見られており、iPodがこの時期のAppleの成長を牽引してきたと言っても過言では無いようです。

また、Apple Storeもこの時期の成長や同社のブランド価値向上に大きく貢献していると考えられます。公開当初は失敗すると予想されていましたが、2004年に売上10億ドルを達成し、これは小売業界で過去最速の記録となりました。

2007年度以降は明らかにiPhoneがAppleの売上を牽引してきたことがわかります。iPadも発売から急速に売上を拡大しましたが、意外と2012年度に売上はピークとなっています。

2007年に発表されたiPhoneは、わずか3年後には主力商品だったMacの売上を追い抜き、2022年度には年間で約2050億ドル(約26兆円)を売り上げました。次の図の通り、携帯電話の出荷台数シェアではSamsungがわずかにリードしていますが、その単価や収益の高さから売上シェアは世界の半分弱、営業利益シェアは約8割をiPhoneが占めているそうです。

携帯電話の出荷台数、売上、営業利益シェア(引用: https://www.counterpointresearch.com/global-handset-market-operating-profits-q2-2022/)
製品別売上高割合推移

Appleの売上の大部分がiPhoneであることは間違いありませんが、上のグラフのように、iPhoneの売上高割合は2015年の66%をピークに減少傾向にあり、最近は50%付近まで落ちています。近年では、Services(App Store, iCloud等)やWearables, Home and Accessories(Apple Watch, AirPods等)が着実に成長しているようです。

ここまででは、過去20年の売上高推移を概観しました。ここからはいくつかの期間について、増収(または減収)要因をより詳細に見ていき、最後に最新のPLを詳しく見ていきます。

2005年度: 売上高前年度比+68%、営業利益は+372% 過去20年で最高の成長率

ここから先は

9,486字 / 22画像

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?