読書記録『巖谷國士「旅と芸術 発見・驚異・夢想」』
埼玉県立美術館で開催された同名展覧会の図版集。
古今東西の、旅に関する絵画と写真を集めた一冊。
1世紀の古代イタリアで描かれたフレスコ画から、シュルレアリスムの画家が描いた超現実の世界、さらには旅行者から見た日本など。
この本は(画集ってこともあり)最初から通しで読んだことないけど、時間があるときに眺めて満足できる一冊。
さまざまな絵画や写真を見るのも楽しいのだけど、個人的に心を動かされたのは著者本人が書いた「後記」です。
地球上のあらゆる情報が行き渡ってしまった現在、もはや旅そのものの未知や驚異がなくなってしまったと言われることもある。
情報は過去のものであり、未知を既知に変えたものである。ネットや本などでいろいろ調べることによって、これまで未知だったものが既知になると。
しかし、旅は「既知を未知に変える体験」であると著者は言います。
あれこれ情報を仕入れて現地へ行ったところ、そんな情報は一瞬に吹きとんで、未知の何ががあらわれ、驚異に出会った体験は、おそらく誰にでもあるでしょう
コロナウィルスの影響で行動が制限されている今、あらゆる情報が手に入るにも関わらず、それでも旅に出たいと人たちはいっぱいいると思います。
この災厄を越えた世界は価値観が様変わりしてるかもしれません。ほとんどのことはオンラインで事足りるかもしれず、オフラインの体験はより濃い体験だけが求められ、それはつまり「既知を未知に変える体験」に他ならないのではと考えたり。
また再び「既知を未知に変える体験」に出会えるときが来るまで、この本を読みながら、様々な発見や驚異を夢想するのもいいかも。