わんことご飯と生命力

再婚している母のところにチワワが4匹いる。

亡くなってしまった子を入れると6匹いたことになる。

昨日、老衰で末期の腎不全を患ってしまった長男犬の様子を見に行った。

ここ数年で白内障が進行して片目が見えなくなってしまっていたが、最近、体調を崩し始めてから、両目とも見えなくなってしまった。

それでも、彼は匂いと感覚で歩くことを止めない。できるだけ自分の力でトイレをするし、ご飯を食べようとする。

末期の腎不全を発症してから「あと2~3日ですね」と先生に余命宣告をされて2週間以上が経った。ほんとうに奇跡だと言われている。

(先生が言うには腎臓の数値的に、ご飯も喉を通らなくなるくらいの気持ち悪さがずっと続いているはずだと言われている。人だったらまずご飯を食べようとしないくらいの状態らしい。)

彼は以前にも容体を悪くして倒れている。その時も私はたまたま仕事が休みだったので駆け付けれた。もう起き上がるのもしんどいだろうに、私が来たとわかると体を起こして喜びを現わそうとしてくれる。その姿があまりにも健気でひたむきで一生懸命で、一瞬で涙が目元に溜まった。ぼたぼたと音がしそうなほど涙を落としながら彼を抱きしめたら「なんで泣いているのか?」と心配そうに眼をこちらに向けて(見えていないはずなのに)匂いを嗅いでくる。きっと人が泣いている、悲しみに暮れている空気を読んでいるんだと思った。今日が山だろうと言われた彼は次の日、驚くくらい元気になって朝ご飯を食べたらしい。

今回も同じように、私が駆け付けたときはぐったりしていたが、声を聴くなりふらふらと立ち上がり、挨拶をしてくれた。またも一気に涙腺が崩壊する私。「あぁもうだめだ」力なくベットに横たわる彼の瞳は以前よりもずっと弱弱しくて、いよいよお別れの覚悟をしないといけないんだと思った。

15才。大往生と言われている。でも、納得したくない。まだ別れたくない。

そんな私たちの思いを感じてか、またもや周りの湿っぽい空気を感じてか、はたまた意地なのか、彼は峠を越えた今も立ち上がり、自分でトイレに行き、ご飯もできるだけ食べようとする。

気分屋でわがままでプライドが高くて、甘えん坊な「坊ちゃん」と呼ばれるにふさわしい性格のわんこ。

でも痛いときも泣かない、いちばん我慢強い性格で、極力人に頼らず自分で意思を示そうとする賢い子。

こんなに一生懸命、生きようとする姿が美しくないわけがなくて、私は初めて本当の生命力というものを見せられている気分です。

ただ、どんなに奇跡を期待しても彼の体がこれ以上よくなることはないし、今後は尿毒症の発作などができるだけ起きないように薬で和らげながら、ゆっくりと最期まで見守るしかできないそうです。

まだ、彼がいなくなることは想像が出来なさ過ぎて、このまま、ずっといれるような錯覚に陥るけど、それはおそらく無理な願いで。

現実逃避をしないで、ちゃんとお見送りできるように、心の準備をしながら時間を作って彼に会いに行こうと思います。

一緒に生活をしていたこともあるので、ヨロヨロになっても、彼の反応が人間のように見えてしまう。

泣いている私たちを見て彼は「まだまだ残して行けないな」と踏ん張っているんでしょうね。都合のいい解釈と解っていますが、そう思いたいです。

彼をたくさん抱きしめて、お別れの時まで、いっぱい可愛がろうと思います。


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