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1000年後に向けた音楽

豪華ゲストを迎えた4年振りのアルバム

2020年のベストアルバムにも挙げた、アヴァランチーズのWe Wil Always Love Youに関して記事にしたいと思う。
このアルバムは昨年の12月にリリースされた4年振りのサードアルバムとなる。前回のリリースが16年振りだった事を考えると早いスパンでのリリースとなった。
リリース前から豪華ゲストで話題になっていて私も楽しみにしていた。MGMT、ジョニー・マー、オロノ(スーパーオーガニズム)、ブラッド・オレンジ、カレンO(ヤーヤーヤーズ)、リヴァース・クオモ(ウィーザー)、などが客演している。日本からはコーネリアスも参加している。

25曲1時間超は近年のアルバムにしては少し長い気もしたが聴き始めるとあっという間の1時間だった。様々なサンプリングを駆使し音楽の幅を見せジャンルに捕らわれないアルバムは次の曲、次の曲とどんどん聴き進めたくなるワクワクする感覚があった。

このアルバムジャケットはゴールデンレコードプロジェクトのクリエイティブ・ディレクターのアン・ドルーヤンがフィーチャーされている。

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ゴールデンレコードプロジェクト

ゴールデンレコードプロジェクトとは、1977年に打ち上げられたアメリカのボイジャー探査機に搭載されたレコードで、地球外生命体や未来の人類に地球の生命や文化を解読されることを目的に収録された音や画像が記録されている。そのレコードは超高純度のウラン238という素材でコーティングされていて、ウラン238の半減期は45.1億年らしい。

当時のカーターアメリカ大統領のメッセージ

“われわれは宇宙に向けてメッセージを送りました。銀河には2000億個もの星があり、いくつかの星には生命が住み、宇宙旅行の技術を持った文明も存在するでしょう。もしもそれらの文明の一つがボイジャーを発見し、レコードの内容を理解することができれば、われわれのメッセージを受け取ってくれるでしょう。われわれはいつの日にか、現在直面している課題を解消し、銀河文明の一員となることを期待します。このレコードではわれわれの希望、われわれの決意、われわれの友好が、広大で畏怖すべき宇宙に向かって示されています。”

めちゃくちゃにロマンがある。様々な地球の音や音楽が収録されていて、ビートルズのHere Comes The Sunも収録予定だったが、EMIが許可しなかった為に収録されなかった。おい、、EMI何してんだよ。

ゴールデンレコードに記録された音源。日本の「鶴の巣篭り」という曲も収録されている。NASAのサウンドクラウドアカウントがある事にも驚いた。


ゴールデンレコードに記録された2人の物語

ゴールデンレコードの委員長だったカール・セーガンとアン・ドルーヤンはゴールデンレコードの制作中に恋に落ちる。そして、アンは自分の心音をレコードに録音する事にした。その心音はプロポーズされる前日のものだった。
アヴァランチーズのロビー・チャーターはNMEのインタビューでこのストーリーに着想を得たと言っている。

「1000年以上残るように設計されて、宇宙空間を漂っているんだ。いつか知的生命体が気づいて、地球の存在を学ぶというアイディアなんだよ。ゴールデン・ディスクをまとめている時に2人は恋に落ちて、彼女は自分の心音を収録させたんだ。それはプロポーズされる前日だったんだ。彼女は若い女性が熱狂的に恋に落ちている心音をゴールデン・ディスクで永遠に残したんだ。それが今も宇宙を漂っているんだ。これってすごく素敵なアイディアだと思ったんだよ」
 〜NMEインタビューより抜粋〜

当初はアンの音声をアルバムの冒頭に使用しようとしたが、許可が下りず写真のみをアルバムジャケットに使用したという裏話もあったらしい。

彼らのゴールデンレコードとも言える作品

タイトルの通りこのアルバムは永遠の愛がテーマとなっている。
アルバムの始まり、1曲目のGhost Storyはスーパーオーガニズムのオロノによるセリフでスタートし、居なくなってしまった人が残された誰かへ宛てた愛のメッセージに受けてとれる。
アルバムの前半から後半に進むにつれて、途中で挟まれるInterludeのような曲も作用し宇宙の暗闇、孤独をイメージさせるような構成に感じた。
スローでキラキラした曲もあれば、アッパーでダンサブルな曲もあり、サンプリングを多用し、様々な音や音楽が収録されている。
そして最後の曲がモールス信号のようなもので終わるというのも粋な演出で胸が熱くなった。。

聴く前は曲数とゲストの多さに圧倒されたが、聴き始めると1本の映画を観ているような気持ちになり聴き入ってしまう。このアルバムは正に彼らが未来に残したゴールデンレコードなのではないだろうか。


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