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太陽の塔みたい

わたしの父は、わたしを変なものに喩える。

ホタルイカみたいだな。
クリオネみたいだな。
ナマハゲみたいだな。
太陽の塔みたいだな。

たいてい酔っ払った時に言ってくるし、いつも変なことばかり言うから、聞き流している。
意味不明すぎて、親戚も「どう言うこと?」という顔をする。


「〇〇みたい。」のシリーズの中でも特に「太陽の塔みたい」と言われる頻度が高い。

ある日、謎すぎて母に聞いてみた。
「娘をあの変な建造物に例えるなんて、どうかしてるよー。なんなの?」

すると母は、大阪万博の話をしてくれた。
父が幼いころ、家族に連れられて大阪万博に行って、そこで太陽の塔を見たそうな。
「5歳ぐらいの時だよね。ちっちゃかったから印象に残っているんじゃない?あの頃、みんな初めて太陽の塔を見てびっくりしたのよ、なんじゃこりゃ〜⁉︎って。」
わたしは、小さかった父と大きくて"なんじゃこりゃ"な太陽の塔が対峙した瞬間に思いを馳せた。
きっと、あんぐり口を開けて見上げたんだろうな。



「父にとって、わたしは太陽の塔なんだ。」
気難しくて傷つきやすいのに大胆に突っ走って、引っ込み思案なのにわがままで、怠惰なのにやる気はあって。たしかに、わたしは"なんじゃこりゃ"な存在かもしれない。でも父にとっては、大きく青空にそびえ立っているように見えていたのか。

意味不明だったけど、そこには深い愛情が感じられた。まっさらな心で太陽の塔を見上げたときの気持ちを、わたしにくれてありがとう。

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