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ファサードあれこれ

昨年一番と言っていいほどの驚きと感動は、エルメスビルのサイドファサードの全貌をついに見ることができたことかもしれない。

ソニービルの解体には複雑な思いが伴う。昭和の黄金時代の代名詞でもあったSONYが、カッコ良くて大好きだったwalkmanがvaioがcybershotがpreminiが、その思い出全てが文字通りバラバラにされ、忘れ去られるような、そんな気がしたからだ。アップル製品をデザインで選んだことはないが、SONY製品は間違いなくデザインが抜群で、その全てであった(恐ろしく使いにくかったな…サイバーショットよ)。

エルメスビルの話。20代の頃、このビルと汐留の電通ビル(ジャン・ヌーヴェル)を見るために東京に来た記憶がある。レンゾ・ピアノの建築には各国各地で出合うたびにそれぞれ全く違った形で魅了されており、この建築も例外ではなかった。銀座の一等地らしい狭小ファサードビルディングだが、内からも外からもガラスブロックの見事な質感と存在感に唸らされた。耐震構造が法隆寺の五重塔を参照しているというエピソードが、さらにその神格化を加速させたものだ。

竣工時レンゾ・ピアノは、遅かれ早かれソニービルの解体を予期していたのだろうか。そうだとしか思えないこの美しく完璧に計算されたサイドファサードを見るたびに、感嘆のため息が出る。時間や天候によって、一度として同じ景色はない。銀座のビルの中で、いや、東京全域においてさえも最も素晴らしい現代建築のひとつだと思う。

じっと秘めていたビル全体のポテンシャルを最大級に魅せるが如く、攻める企画が続く。

外からも、内からも。射し込む光が美しい。ガラスブロックのスケールにも敬意を表したサイトスペシフィックな作品だと思うが、レンゾ・ピアノの感想を聞いてみたい。

湊茉莉展「うつろひ、たゆたひといとなみ」会場:銀座メゾンエルメス フォーラム 会期:2019年3月28日(木)〜6月23日(日)  ファサードペインティング:3月21日(木)〜5月6日(月)


(余談)エルメスビル全貌拝見の感動に震えた数日後、これ見た時はなんて対照的なんだと愕然。 見えてるところだけの煌びやかさに欺かれている…(この界隈のあのビルもこのビルも…)


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