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『with you』


家で過ごす時間が長くて、今までどう家で過ごしてきたかなって振り返ると僕はほとんど、誰かと一緒に暮らしてきたことに気づいた。

付き合ってきた恋人や、上京生活から戻ってしばらくまた同居した家族。ひとりで暮らした時間なんて、ほんとはこれっぽっちしかなかったんじゃないかと思うくらい、「家」という場所ではほとんど誰かと過ごしてきた。

今だってそう。一緒に住んでいる同じ年の彼氏がいて、家事はほとんど任せっきりで何でもかんでもやってくれちゃう。そんな何もしない僕に文句を言いながらも、結局冗談めかした僕に言いくるめられて笑ってくれる、そんな人がいる。

世の中にはきっと自分の部屋でひとりきりで、発達したありとあらゆるコミュニケーションの手段で誰かとつながっている人のほうが多いのに、目の前に誰かがいてくれることは、幸せなこと。

でもね、僕は今この目の前に誰かがいてくれる幸せに、本当はもっと前にも気づいていたんだ。


東京に出て半年もしない頃に出来た彼氏が、慣れてきた一人暮らしの部屋に転がり込んできて、別れるまで丸3年一緒に住んだ。

すこし精神的にまいってしまって、暗黒時代に突入した僕のそばにいてくれて、喧嘩も何度かしたし、出て行くと言いながら戻って来て、元の鞘におさまったりもした。

多くを語ろうとすると長くなるから割愛するけれど、まだ18歳そこそこで誰かと長く付き合った経験もない自分にとって、一緒にいるだけで愛おしくて、これからもずっとこうだったらいいのに、って気持ちを教えてくれた大切な人だ。

彼と一緒にいる間にも、一緒いられて嬉しい、しあわせ、こんな時間がずっと続けばいいと思っていた。

終わりは実にあっけなくて、上京後に入った専門学校を一年で辞めた僕がやり直しを図って別の学校へ入ってうまくやっていた最初の夏休みに、実家に帰省している間に彼が家を出て行った。

一緒にいすぎたから、離れてみようって電話越しに聞いて。

それを僕は別れの言葉と受け取ったのだけれど、本当は、彼には別に思惑があって、その先には違う選択肢があったのかもしれない。今となってはな話だけれど。

実質、一つ上の彼とは兄弟みたいな関係で今も会うことがあるし、それはそれで良かったんだろうと思う。


それでもね。あの頃は、ただただしあわせだったんだ。

好きな人がいること、目の前で笑ってくれること。

同じゲームの話をすること、出かける予定を立てたこと。

近所のお店にご飯を食べに行くこと。

毎日毎日、そんな何気ないことを繰り返してただ一緒にいられるだけでしあわせだったんだ。


今、そう感じている相手は別の人だけど、あなたと一緒にいてしあわせだと思ったこと、変わらずに覚えているよ。

この生活って本当に想像もしてなかったし、価値観もまるで変わってしまってわけのわからない状態だけど、今ここにあるしあわせをしっかり感じて、生きていかなくっちゃ。今までだって同じだったんだ。そんな風に思った。


***


すこし肌寒い 春の訪れを感じる 桜のみち

窓から見える遠くのまちへ 流れる風のにおい

好きな曲をBGMに コーヒーを注ぐ朝

今日も 始まってく


同じ景色のなかで見つける思いは それぞれにあるけど

そのすべてが君といて やっと形になるものばかりでした


季節はやがて夏を過ぎて秋へ、冬へと移りゆく

僕の思いは その温もり保ったまま 変わらずいる

そんなふうに 続いていくのは 平凡かもしれないけどね

永 遠 でありたい


ねえ 僕らいつまでも一緒にいたくて 寄り添っているけど

いつの日かふたり すれ違う時がやって来てしまうのかな


もしもそうだとしたら わからずやな君のことだからきっと

ごめん、って言うのは僕のほうからで

その度に「愛しい」って思うんだろうね


ずっと一緒にいよう

ふたりで暮らそう

同じものを見よう

そう言って君を この腕に抱いて

君の背がここにあって...


同じ景色のなかで見つける思いは それぞれにあるけど

そのすべてが君といて やっと形になるものばかりでした

it's so precious time with you


***

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