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同じ街の、同じ空の下で。

一緒にいると何故だか知らないけど、無条件でパァッと視界が明るくなるような気がする人がいる。
そういう人っていうのは無意識にポジティブな感覚で普段から生活していて、逆に普段からマイナス思考で生きている僕にとっては真逆の性質の人で、とても羨ましくなる。
下品な言い方をすると”アゲマン”とか”サゲマン”とかいう言葉で表現されるように、でも本当にそう、そういう人といるとまるで引き寄せられるように、前向きな感覚を持てるような気持ちになってくる。

僕が10年前、4年くらいの間一緒に過ごした彼もそういうタイプの人で、一緒にいて楽しい気持ちになれる子だった。外国人の血が入っているので元々気質的にもそういう感じだったのかもしれないけれど僕にとってはそういうタイプの人と一緒にいることが自分自身の嫌だなって思う部分を補ってくれるようで、とても救われた。困難に直面した時も持ち前の明るさと心の強さで彼はいつも、乗り切って行くのを見せつけてくれた。

僕はもう引っ越して遠くに来てしまったけど、あの頃一緒に暮らした街で
もしも手を離さずに一緒にいることを選んだのなら、
僕は今とはまた別の、人間になっていたかもしれない。
ほんの4年の間だけど、あの頃の僕は彼に影響されるかのように前向きで、
見えない未来に対しても肯定的で、なんだってできるような気がしていることを信じて行動した。
それが正しくても間違いでもそんなの関係ないくらい「明日」より先のことを信じたいと思っていた。
そうした感謝をうまく伝えることさえできずに二人の関係は変わってしまったけど、それでも、それでも、あの時の僕はまだあの街にいて、片隅に取り残されているような気がする。


***


『リフレイン』

新しい世界に馴染めるか不安で 周りを見渡す
同じような顔をして 誰もが 立ち竦んでいる

声をかけるのも 覚束ない仕草で
勇気がないのは 僕だけじゃなく
きっと あの子も あの人も同じ

桜散った後も 少しの間 春は続いているよ

君と暮らした この空の下
あの頃と なにも変わらない僕
同じ街にいる 同じ気持ちのまま
少しも君を忘れる事なく

肩を並べた 公園のベンチは
誰か別のふたりが座ってる
あの日の君と僕もあんなに
幸せそうに笑っていたのかな

窓の外は暗く 降り続く雨の音
まるで僕の 心の中に似ていると
ひとりで 物思いに耽る

風が温くなる頃 この景色も次の色に染まるんだろう

約束しても 果たせなかった事が
数えきれない程 あるね
過ぎた季節と 君といた時間は
他に代えられないと思い知る

待ち合わせには 必ず五分
遅れてやって来てた君だから
いつものように 振り向けばそこに
君がいてくれるような気がした

言い出せなかった
もう少し一緒に歩いてみようって...

君と暮らした この空の下
あの頃と なにも変わらない僕
もう会えないと わかっていても
この想いは色褪せる事なく

どこか遠くで 生きている君を
想いながら 叶わぬ夢を見る
いつか再び 出会えたのなら
またふたり 笑い合えますように


***


あの空の下に取り残された僕は、そのままで良いから、
今この街にいる僕は、また新たな未来を見つけていかなきゃいけない。
それはわかっている。わかっているんだけど、
ほんの少しね、また立ち止まっちゃったんだ。


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