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さよならの自叙伝

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自分の歩んだ歴史たちを浄化するための自叙伝
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同じ街の、同じ空の下で。

一緒にいると何故だか知らないけど、無条件でパァッと視界が明るくなるような気がする人がいる。 そういう人っていうのは無意識にポジティブな感覚で普段から生活していて、逆に普段からマイナス思考で生きている僕にとっては真逆の性質の人で、とても羨ましくなる。 下品な言い方をすると”アゲマン”とか”サゲマン”とかいう言葉で表現されるように、でも本当にそう、そういう人といるとまるで引き寄せられるように、前向きな感覚を持てるような気持ちになってくる。 僕が10年前、4年くらいの間一緒に過ご

君がくれた自転車

何年前の話になるかな。名古屋駅の近くの映画館で働いていた頃。一時期、直線距離にしておよそ5kmくらいを自転車で通勤していた。 その仕事先で仲良くなった3つ年下のバイトで働いていた子に、ダメだとわかっていながら恋心を抱いたのです。とても頭が良く、大学院に進んで弁護士資格をとるための勉強をしていた子で、試験にも1発合格してしまう程の努力家だった。この子の話は、他の記事でも少し記述したと思うのだけど、見事気持ちをぶつけて玉砕。少しの間冷却期間もありながら、いろんな人生の節目でお互

水瓶座の憂鬱

How to write about me今回は僕がものを書くようになった理由、自分にとって書くこととは、みたいなのを残しておこうと思う。 始めたのは小学生の終わり頃からかな。詩を書いたり空想の物語をB5ノートに書き溜めるようになって、中学の頃は家にいる時間、自分の手で文字を綴るようになった。高校生になる頃、音にのせて歌詞を書くようになり、バンド活動をしていた友達にお願いされて一曲だけ贈った。その曲は結局完成したのか、どうなったのか今も不明。 専門学校に行こう、となんとな

はなればなれのデュエット

紫陽花と蝉の声 数年前の5月31日。季節はまだ春と呼べるのに、その日はうんざりする程に暑い日だった。まだ梅雨入りさえしていない晴天で、空気は夏のような熱気を帯びていた。田舎まちの最果てへ向かう電車の途中の停車駅で、自動ドアが開いたホーム脇に紫陽花の花が見えた。その奥の青々と茂った木々のどこかからは、蝉の鳴き声が聞こえた。6月にもなっていないその時期にまさかもう紫陽花が咲いていて、蝉が鳴いているとはにわかには信じられなかったから、いつもより一際早く夏の訪れたその年の記憶は鮮明に