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ありtoきりぎりす

(今回は3,000文字と長いので、お時間がある際にお読みください!)

▼前提として

「イソップ物語」にでてくる寓話「ありときりぎりす」からキャリアを考えていきます。昔はアリのように「粛々と懸命に生きよう!」と言われることが多くそれが日本人の考え方にフィットしていると思っていましたが、最近はほりえもんを中心にもっと「人生を楽しんだほうがいいよ!」と唱える人が増えています。「生き方に正解なんてあるわけない」と思いますが、一方で生活ができなくなっては元も子もありません。あらゆる情報や教育の恐ろしさは一つの思想や考えを誰かに押し付けるということであり、得られた情報から自ら考えて自分らしい解(正解ではない、大事なのは納得解)を取捨選択できることが大事です。「AもBもCも正しいと思うけど、私はこういう理由でCの生き方をすることにした」と考えて決めることがよりよい人生につながっていくと私は考えています。

▼ありときりぎりす物語について
●前半部分
夏の間:キリギリス「歌ってばかりいる(遊んでいる)」アリ「せっせと働いている」という状態から
冬:キリギリス「食料がなくなる」「食べるものをくださいとお願いする」
●後半部分:数パターンあり
①美談:アリ「さあ遠慮なく食べてください」「元気になって次の夏も楽しい歌を聞かせてくださいね」
キリギリス「うれし涙をポロポロこぼしました」
②よくある話:アリ「なぜ夏の間食べ物を集めておかなかったんです?」
キリギリス「暇がなかったんです。歌ばかり歌っていましたから」
アリ「(笑って)夏の間歌ったなら、冬の間踊りなさい」
③こういうおちもあるみたい:キリギリス「歌うべき歌は歌いつくした」「私の亡骸を食べて生きのびればいい」

▼ここから学ぶことができる教訓として
「アリ」は冬に備えて準備していた法人/個人であり「キリギリス」は冬に備えて準備できなかった(遊んでたか問わない)法人/個人おいてみます。

▽法人として
●ストック:内部留保=現金及び現金同等物の期末残高
●フロー:不況期に強いビジネスモデル、利益率(筋肉質)の高い会社構造
と考えてみると、例として下記のような企業があげられます。

・私の考えるアリ:JACリクルートメント社:毎年決算説明資料で「不況期に備える」と言っていて現金が着実に積み上げ100億円(半年以上売上)もの現金を持ち数年間は売上がなくても持つような状態です。ちなみに社長はリクルート出身でリーマンショック教訓を胸に堅実な経営をされています。
・私の考えるキリギリス:レナウン(民事再生中)は2019年度現金および現金同等物33.2億円(前期差 -45.2億円)と大幅に減っており、かつEC拡大やファストファッション台頭、若者向ブランド育成不振となり必要なピースがない状態であったと考えられます。決して遊んでいたわけではなく一生懸命事業運営されていた結果だと思いますが、、現実は厳しいものですね。

日本企業は内部留保(現金)を貯めすぎているという批判でもっと投資に回して経済をよりよくすべきという意見もあります。私の専門はキャリアなので財務はそれほど詳しくないので浅い意見と思いますが、営業キャッシュフローがプラスならばもっと設備投資やM&Aそして社員や株主に還元を含めもっと使ってもいいのではと思います。一方で冬が怖いので現金で貯めて置きたいという気持ちもわかるのでどれくらいがいい塩梅なのでしょうか。

▽個人として
●ストック:貯金(もしくはキャッシュフローを産む資産)
●フロー:不況に強い会社選び、どこでも活躍できるキャリア、「貯蓄」=「収入」ー「支出」であること

人生には「アリ期」と「キリギリス期」があると思います。どちらが正解かというわけではなく今の自分そしてこれからの自分を考えたときに今は「どちらのスタンスで人生に対して望んでいるのか」が大事ではないかと考えています。私の個人的な過去の話をすると、20代はファイナンス的にはめちゃくちゃ「キリギリス期」で20代半ばで一度破綻しかけたので笑、一時的に「アリ期」にはいり数年間引き締めを行いある程度のストックを用意することができたおかげでなんとか現在の自分がいます。一方で、キャリア的にはずっと「アリ期」にいて常に冬が怖いので自己研鑽を重ねています。大学を卒業時は就職氷河期だったこともあり就職活動は厳しく社会人初期から強い危機感を持ち後ITバブル崩壊からの夏を謳歌してその後ナイフのような2008年のリーマンショックがあり、2011年の東日本大震災からの2020年と常に冬と夏は行ったり来たりしている状態を乗り越えてきたと言えます。

その上でみなさんにいくつかの質問をしたいです。
・会社ではなく世の中で通用するポータブルスキルをつけるために、目の前の仕事を本気でやりきれていますか?
・景気やマーケットがよかったため調子がいいことを自分の実力と勘違いしていませんでしたか?
・いつか冬が来ることを見越してちゃんと貯金していましたか?
・毎月の収支はプラスでちゃんと貯蓄できていますか?
・もし年収が上がったとしても無駄にいい家に住んだり買わなくていいものを買って浪費していませんか?
・毎月の収支が赤字でクレジットカード頼みであったりボーナスで戻す、貯金を切り崩す生活をしていませんか?

結論としては「キャリア論」「ファイナンス論」に関して色々な見方や考え方があるので、自分なりの考えを持って行動していけたらいいですね。

▼余談として
比較的に美談である「アリが食べ物を分けてあげる」という話に共感する人が多いかと思いますが現実世界ではどうなんでしょう?話を展開すると個人的には政府の対策はがそれに当たるんじゃないかと感じています。「厳しくなった法人=キリギリス」に対してお金をあげるという構図がとても重なって見えました。法人は夏を謳歌していたわけではないと思いますが、各中小企業が冬に対する準備ができていなかったのではと思ってしまいます。今回の対策で「真水(まみず)=GDP(付加価値)を直接増やす効果のある対策を測る概念」と言われる金額で39.5兆円程度と言われています。これは主に国債でまかなわれ私達の借金でいつか税金で返さなければなりません。貯めた食べ物(お金)を冬がきて厳しくなったキリギリス(売上の下がった法人)にあげるのではなく将来の食べ物を先に渡すということです。法人ばかりではなく個人にもですが。現在の日本の国家予算の30%以上は国債でまかなっており、今回はそれに追加して国債が発行され将来的な増税でなんとかするしかない状況になりそうです。ちなみに39.5兆円という規模は日本の1年間の税金60兆円の70%程度に相当します。ざっくり所得税20兆円/消費税20兆円/法人税13兆円/その他10兆円で、増税余地は消費税のみと思いますが今後はどうなるのでしょう?ちなみに2019年あれだけ騒がれて綿密な対策をしたの消費税の増税分が2兆円強ということでいかに多額の補正予算を組んでいるのかがわかります。会社によってはですが、「国から●万」「都から●万」「雇用調整金」「家賃補助6ヶ月分」と手厚いかつゆるい制度で支給され逆に儲かった会社もあると聞いています。「厳しい法人=キリギリス」の救済はどこまでやるべきなのか考えてものですね。