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SMシーンのある一般小説集⑥ 密約/田中雅美

 作者は女性です。
 最初、ジュニア小説の分野で人気を得て、確か、二年くらい前だったと思うのですが、光文社文庫に「暴虐の夜」というハードサスペンスを書き下ろして、まったくの新境地を開き、あっと言わせました。
 しかし、残念ながら物足りなかった、私には。
 ポルノとしてもサスペンス小説としても・・。
 したがって、その後シリーズとして発表されてきた同じく書き下ろしの
 ・嗜虐の檻
 ・悪虐の宴
 ・淫逆の爪
の三作は読んでいませんでした。


 上、四冊はいずれも文庫のために書き下ろした、中・長編なのですが、実は今回の「密約」というのは、短編集です。

 収録されているのは、八編ですが、いずれも淫蕩な女性が活き活きと書かれ、短編らしい落とし所も心得られた、佳作揃いです。
 女性が書いているだけに「女は怖い」と思わされる結末が多く、登場人物の色分けも見事です。

>「ねぇ、穴なの!やられたいのはわたしの穴なんです。ああ、指を入れて!穴 の中、かき混ぜて!お願い!」(爛漫の肌)

 生理前になると欲求が急激に強くなり、元々の「恋人」であった「部長」と婚約したばかりのその部下との3Pを嫉妬に狂った部長によって強要されながら、それを受入れ、乱れる女。
 部長はふたりの結婚後もも3人で時々こうしたプレイをすることを提案、そのかわり部下である婚約者の「引き」はまかせておけという「密約」。
 しかしその夜、生理が始まって今度は急激に欲望が萎えて、必要以上に冷静にそして客観的になった女は・・・(密約)

 この他、館さんばりの姉弟の近親相姦ものや、セーラー服の女子高生と中年のおじさんのお話、老人とその養女夫妻になぶりものにされる女、夫の美しく若い義母に服従する女など。
 
 光文社文庫 8月新刊 500円。

2023年10月
kindle版が手に入ったので読み直しましたが、短編って悪くない。
ポルノとしては物足りないけど、女というものに男は戸惑う生き物なのかとわからされる作品群^^
読みやすいし、あの当時も長編よりこちらがヨシとしたには理由もあったのでしょう。

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