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全ての季節が遺書だった


二度の冬、春、秋、そして三度の夏を過ごした。

夏夜の陽炎の中、暗闇のベンチでもう覚えていない会話をした。
オレンジジュースとエクレアから始まった三年。
蝋燭の灯りがわずかに象る、華の影。
贈った一輪の花を蝋燭に傾け、火が移り、灰にもならなかった。
その横で僕は灰になりゆく葉を喫った。

死ぬように春を待つ雪だるまを作った、冬。
飽きられる前に散りゆく、春。
砂浜に落ちる影が寄り添った、夏。
ベランダにココアの香りが残った、秋。

巡る四季のどこにも居て、もうどこにも居ない。

僕の血や髪や骨、肌や息だけが僕ではなく、
その四季に宿る僕の温度があなたを包み込んでいたら——
僕は幸せだ。

僕は幸せだったのだから。

あなたが居なくても、私が居なくても、僕が居なくても、季節は巡ってゆく。

この眼に焼きついて離れないあなたと過ごした季節のどれもが、生きる全てだった。

紙に滲んだインク、愛していますの文字。
抱きしめた陰で泣いていた。
僕の世界から音色がひとつ失われた。

僕の葬儀にあなたが来ないことを願っています。

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