見出し画像

永遠の街

あの子が突然いなくなった。

昨日までそこに存在していたのに、保存されたデータが消えたように、なんの痕跡もなくいなくなってしまった。

私はなんとなく、心に穴が空いたような、でもその正体が何なのかわからないような、非常に曖昧な足取りのまま歩き始めた。

どうして歩き始めたのかもわからないけれど、あの子がいなくなってしまった、と本能が理解した時

私は静かな涙を流しながら、足だけが意思を持って動き始めたんだ。

コンクリートの地面は無言のまま私を見送って

過去の息吹を含んだ風が頬を撫でた。

今まで過ぎてきた景色はどれも見覚えがあったのに、いつしか流れる景色は私の知らないものへと変わり

歩く歩数とあの子にたどり着けない不安がいつしか比例し始めた。


もうこんな所まできちゃったな。


オレンジが紫に呑まれて星が生まれる頃。

木々が枯れ、全ての生命が消え去り、地面が硝子へと変化した頃。

私は世界の果てへとたどり着いてしまった。

そしてそこにあの子がいた。

星屑が散りばめられた海を、硝子の砂浜で1人見つめてる。


迎えにきたよ。

もう誰もいない、誰も知らない永遠の街に。


どうしてこんな所まで来てしまったの?


月の光にガラスが反射して、きらきらと地面が輝いた。


どうしてだろう。きっと何もかも、忘れたかったのかもしれないね。



いつかの日/永遠の街

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?