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道恋10 旧菅平有料道路

長野県道4号は、昔は、菅平有料道路と呼ばれて有料区間だった道路である。この道の特徴的な逸話としては、ドリフトキング土屋圭市氏が地元にいた頃に、よく走り込んでいたコースだということである。土屋圭市氏の地元である東部町(現・東御市)から、真田町(現・上田市)へと伸びていて、菅平の名称が付けられてはいるけれども、そもそも菅平高原を走るわけではなく、割りと街中からは近いルートとなっている。国道18号を、標高の少し高い位置取りで並走している浅間サンラインから分岐するところは、小諸市道チェリーパークラインと同じである。菅平高原を通ることはないものの、それでも浅間連峰の麓を駆け抜けるルートであることには間違いなく、夜の上田市方面の夜景はとても雰囲気が好い。上田市・塩田平の夜景を横に見ながら車を駆れば、下界とは一線を画した走りの世界に没頭しているような気分になり、それが自己陶酔的な心地よさに繋がってきたりもする。人生うまくいかないとき、気分転換で走るのに、非常に適したルートであるかもしれない。もちろん、周辺には民家があるので、騒音や法定速度には気を付ける。山の深いところでは野生動物の横切るようなこともあるので、民家のないところであっても注意は必要である。珍しいところでは、子供のツキノワグマらしき影が、道を横切ろうとしている場面に遭遇したことがあった。シカやカモシカなどは見慣れてきたものの、やはり熊との遭遇となれば、一風変わったひとつの事件となってしまうものだ。

全体的な印象としては、ヘアピンというよりもS字コーナーの連続といったルートであり、勾配差も、アップ&ダウンが交互に連続することで、上りオンリー・下りオンリーという単調な感じにはなっていない。深くブレーキを踏みこむような箇所も少なく、それなりのスピードを維持しながら快適に走ることが出来る。過去には有料道路だったという経歴から、路面状況も非常によいので、先ほど触れたように、むしゃくしゃしたときなどに走るにはストレスなく没入できてよいだろう。くだって、曲がって、またのぼる、というコーナーが割りと多いため、コーナーからの立ち上がり加速を意識しだすと、格段に面白くなるようだ。いかに減速時間を短く、立ち上がりを早くといったことを考え始めると、俄然、愉しくなってくる。土屋圭市氏が走っていたという事実とは関係なしに、荷重移動が愉しくなってくるような、そんな縦G好きな人に向いている道であるようだ。コーナリングGもいいけれども、ブレーキングGもまた、癖になってしまうと好いものである。この道に関して、くねくね曲がりくねった峠道を想像すると、期待はすっかり裏切られてしまうに違いない。最初に訪れたときの私がそうだったように、土屋圭市氏が走っていた道という触れ書きの割りには拍子抜けだなぁという感想が立ち上ってくるかもしれない。実際、峠を越える道ではないわけであるから、峠好きな向きには不満が残る道となることであろう。何回か訪れてみると、ここが、どちらかと言うと、実戦を意識したレイアウトになっているのかもしれないと思い至るようになる。派手なテクニックを振り回すのではなく、基礎的なものを限界まで切り詰めてブラッシュアップしていくような、そんな感じの道かと思う。

真田本城から上田

真田本城から上田1

御屋敷公園までがルートとしては一区切りとなるが、その先に行けば、戦国真田氏の史跡をめぐる、歴史ファンには胸躍るルートが続いていく。道沿いに、戦国真田氏の重要拠点が次々と現れてくるので、ここから先は単なる観光客として立ち回ることになる。道の左手にある御屋敷公園は、そもそも真田氏の居館跡である。先に進んで右手に現れるのは、真田本城への入り口だ。砥石城や上田城へ移る以前の真田氏の拠点がこの真田本城であり、曲輪からは真田の町を一望できる。時間帯によっては、霧隠れのような靄が漂っていたり、夕陽が霞に反射していたりと、神秘的な光景に遭遇することも出来る山城である。さらに進めば、右手に真田山長谷寺の入り口が見えてくる。この寺院は、真田氏の菩提寺であり、幸隆(幸綱)、幸隆夫人、昌幸の墓所があり、並んで供養されている。そこを過ぎれば左手に、真田忍者の伝承もある山家神社へと向かう道がある。この山家神社の一隅には、真田氏が唯一認めているという真田神社が存在していて、真田三代四人が祭られている。真田ファンの中には、幸村好きの人が多いとは思うものの、幸村の活躍地は主に大阪でもあるので、上田エリアで真田詣でを愉しむのであれば、幸村以外の真田一族をぜひ視野に入れて欲しいと思う。足を伸ばせば、真田信綱・昌輝の兄弟が眠る信綱寺や、信幸夫人の小松姫が眠る芳泉寺も上田エリアの中にある。信幸(信之)の墓だけは、長野市松代まで足を伸ばさなくてはならないが、ここでは、賽銭が六文銭の形に並べられているという感動を味わうことが出来る。長谷寺では六文銭の形になっていなかったので、無用なこだわりかもしれないものの、先の参拝者には失礼ながら、少し形を整えさせてもらった。様式美は大事である。ちなみに、芳泉寺の小松姫の墓所の隣には、漫画「センゴク」の主人公・仙石権兵衛秀久の霊廟が、どうにも忘れられたようにたたずんでいる。「センゴク」のファンの方は、聖地巡りはしないのだろうかと思うとともに、小諸城址を訪れたついでにでも、ぜひ、ここを訪れて欲しいと思ったりもする。

山家 真田神社

旧菅平有料から上田


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