日本の防衛コングロマリッドは白日夢。その1


日経で防衛専業メーカーの可能性についた記事が掲載されています。

ぼくが2005年に東京財団の委託による政策提言を発表してから幾星霜です。やっと大手経済メディアがこういう記事を書くようになったかとある意味感慨深いです。

東京財団委託政策提言
「国営防衛装備調達株式会社を設立せよ」
http://nippon.zaidan.info/seikabutsu/2005/01023/pdf/0001.pdf



日の丸「防衛専業」企業は可能か 装備品輸出の選択肢
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM030RQ0T00C23A1000000/

>望まれるのが、現在は事実上自衛隊に限定されている販路を国外にも求める「防衛装備輸出」となる。

>米欧各国が盛んに防衛装備を輸出するのは、単に防衛企業が収益拡大を目指しているためだけではない。通常、輸出時には、企業の属する国の軍が輸出装備品の使い方を輸入国の軍部隊に教えるため、運用に詳しい軍人を一定期間派遣する。それが輸出国にとっては、相手国の軍と人的パイプをつくり、軍事インテリジェンス面での協力網を広げる好機となる。

まあ、こういうことをやっていないので外国の軍隊との交流がなく、俺様、唯我独尊状態が続いているので防衛省、自衛隊、産業界も世界の現実が見えていないわけです。

>国内防衛企業の間では輸出拡大の機運はそれほど高まっていないようにもみえる。そもそも日本では「防衛大手」と呼ばれる企業でも、全体の売上高に占める防衛部門の比率は4%程度にすぎない「防衛兼業」なのが実態で、比率90%という企業もある米欧とは事情が異なる。
>これまで日本の防衛各社は「武器商人」というレッテルを貼られることを嫌い、自社の防衛部門の存在を強調してこなかった。それ故、政府がどんなに輸出拡大の旗を振っても、本気でついていこうとする企業が増えない。

これをぼくは長年指摘してきたのですが、日経は無視して来たじゃないですか。それで潜水艦が売れるとか飛行艇が売れるとか、MRJが売れるとか提灯記事を書いてきた。


>この状況を打破する策として「防衛兼業」各社がそれぞれ有する防衛部門を切り離し、それらを何社かの防衛「専業企業」に集約し、輸出に前向きな当事者をつくるというやり方がある。実はこの案は、以前から日本政府内部で一つのアイデアとして存在していた。ただ、ここにも壁があった。

>「各防衛企業が長年育て、守ってきた防衛装備品の技術や特許、専門人材を供出し、他社と合弁する以上、新設専業企業が確実に利益を出せることが不可欠となる」(経産省関係者)。ただ、百戦錬磨の米欧各社がうごめく国際防衛市場で、経験のほとんどない日本勢が販路を開拓するのは決して容易なことではない。

それを否定はしませんが、実は自分たちは大層なものを作っているという「誤解」がメーカーの経営陣にもあるわけです。実は性能、品質も劣悪で値段だけは高いということを世界の市場をみていないから、理解ができない。
誤った認識を元もしてまともな判断ができるわけがない。多くの経営者が自分が火中の栗を拾うのを恐れて問題を先送りにしています。まともに可能性なんて議論はしていません。

経営者がまともに考えているならば、事業統合も輸出も嫌だ、性能品質に問題があり、価格もクソ高い防衛装備品をこの先延々と防衛省に売りつけて売上を確保できるとは思わないわけです。
であれば事業から撤退が一番合理的です。

防衛省にしても事業統廃合しないならば、買わないよ、という選択もあるわけですが、そうなると責任がでてくるので何もやって来ませんでした。

>そこでまずは、政府主導で「必ず利益を出せそうな案件」を獲得するのと同時に、規模は小さくても専業企業を設け、利益をあげる「成功例」をつくることが求められる。その際、日本が防衛装備品を輸出するのは、国内防衛産業の再興や、インテリジェンス面での協力を輸出先の国と強めるという「大目的」のためであることを絶えず意識し続けることが必要となる。

そもそも官の側にも業界にも防衛産業の何たるかを理解している人たちがいない。例外は商社でしょうが、商社は防衛産業の業界団体でも邪魔者扱いされています。
「素人」が武士の商法でやってうまくいくはずがありません。恐らくこの記者はぼくの書いた政策提言を読んでいないと思います。

■本日の市ヶ谷の噂■
防衛医大の教授会の議事録の改竄の黒幕は別宮慎也防衛医大副校長。四ノ宮成祥校長、小林靖副校長はその走狗。言うまでもないが教授会の議事録は公文書であり、これを偽造することは公文書偽造で刑事犯罪である。なお該当会議の録音が存在している、との噂。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?