見出し画像

SDGsの勉強会で陥りがちな「やった感」と空虚さを超えよう

SDGsのことをもっと知りたい、学びたい、という声にお応えすべく、勉強会を開催しました。どのようなアウトプットがあったかを紹介しながら、「やった感」だけが残り、何も進まない勉強会にならないようにするためにはどうしたらよいか。自戒をこめて考えを整理しました。

SDGsをツールに「アクション」をイメージできるか
 勉強会に参加した動機を伺うと、世の中の問題をもっと知りたいから、という意見がありました。SDGsのゴールそれぞれについて、今世界で起こっている問題を紹介すると、その要望にお応えすることができます。例えばゴール1の「貧困をなくそう」では、今世界の何割の児童が1日1ドル以下で生活してる、とか。多くの生き物が絶滅していっているとか。そうした問題を知ることは、もちろん大事なことですが、その問題をふまえてアクションを起こす方向に意識は向くでしょうか。

 そこで、各ゴールについて、自分たちの身近な環境に置き換えるとどんな問題があるか、を話してもらいました。そうすると、「シングルマザーが生活困難になっている」という話題に。では、具体的にその当事者の方と話しているかというと、そうではない。これは、単に聞いた話であり、上で書いていたような何割の児童が貧困状態にあるか、という問題を知ったこととあまり変わりがありません。そこで、ゴールを変えながら問題意識を尋ねていくと、教育のところで話題が広がりました。

日頃の不満や悩みが「課題」になるか
ある市では、児童の置かれている環境に応じてタブレットやwifiルーターが支給されているが、そのお隣の市では、ようやく先日学校にて共有で使用するタブレットにアクセスしたばかりだ、アクセスできるオンラインコンテンツが学校によって違う、という不満や悩みが出てきました。そうした状況が明らかになると、公正になる方法は何か、そこは教育長や学校に頑張ってもらうしかないのかなということで、私たちは学校や教育委員会に陳情に行くことが「アクション」なのかな、というところに行きつきました。

 問題とは、なんらかの目標達成が阻害されている様、課題とは、何らかの目標達成を阻害する問題を解決するためのアクションと仮定します。農村における学習環境の質が都会より劣っていることが問題だとしたら、学習の質の向上のために○○をすることが、課題になります。○○を「いつでもどこでもタブレットで学習できる環境をつくること」とすると、いつでもどこでもタブレットで学習できることが学習の質の向上につながるのかを検討しなければなりません。本当にそのことが喫緊の課題であれば、学習の質とは何か、農村は都会より劣っているのか、学力の向上とはテストなどの点数が上がることなのか、色々確認すべきことがでてきます。今回のワークショップでは、この部分まで検討することはしなかったのですが、本来は、課題を明瞭にして、その課題が本当に問題解決につながるかを吟味しなければなりません。また、問題自体の問いなおしも必要です。
 日頃、不満に思っている度合いが強いほど、そうしたプロセスを経て改善しようという動機に繋がりますが、不満に思っていないならば、問題と課題を吟味する動機が湧いてこないですし、ましてや行動にもつながらない可能性があります。

日頃の不満や悩みを大切に
そうすると、世の中の出来事に対し、不満を抱いたり、なんでやねんと思う批判的精神がないとSDGsなるものの達成のために行動を起こすことには繋がらないのかもしれません。ですので、SDGsとか、社会問題を解決するための人づくりという文脈では、こうなっているのは私が悪いからなんだ、と不満を内側に包み込んでしまわないように解放させることが必要で、それが個人の意見ではなく、複数の意見であるかどうかを知ることが最初のステップなのかもしれません。そこから、問題と課題の検討に入り、より重要な課題を抽出する。そして実際にアクションを起こす。その結果をふりかえる、そうした連続性が大切なのはいうまでもありません。一方、SDGsの中には自分では不満・悩みに感じない分野もあるかもしれません。その場合のアクション創成のプロセスは別稿で。

「やった感」をまとわせるだけのSDGs勉強会は、ただ空虚で虚しいだけです。次回は課題を明確にするところまで、ワークショップを進めたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?