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インドネシア グルメ


果物の王国

インドネシアに赴任して、最初に教えられたのは、「生ものは食べるな!」と云うことでした、勿論、バナナ、パパイヤ、マンゴ、ドリアン、マンゴスチン、ジャックフルーツ、ランブータン、ライチーなどなど無数にある果物は別です。
中でもドリアンは、果物の王様と云われ、最も高価な果物で冷蔵庫でよく冷やして食べるとアイスクリームのような食感で現地ではドリアン中毒になるぐらい入れ込む人も居ました。
ただし、臭いも強烈で「トイレの中で食べているようだ」という人も居ました。
冷蔵庫に入れると他の食材に臭いが移ってしまうので、ドリアン専用の冷蔵庫を買う人も居ます。
ドリアンのドリは棘という意味で、全体が鋭い棘で覆われていて、その木の下を通り抜ける時に上から落ちてきたドリアンに直撃されると大怪我をします。
一方、果物の女王はマンゴスチンで、紫がかった皮を割ると白い小さな実があり、甘酸っぱい懐かしい味がします。

日本料理、フレンチ、イタリアンなどは街中ではまず見つからず(35年前の話ですが、)一流ホテル、オフィスビルの中に在りました。
私の会社が入っていたビルには「竹葉亭」が入っていました。
日本に帰国する頃になって「アンガス ハウス」というステーキ屋が1軒店開きしたぐらいです。

特色のある中華料理

この国には、中国人が全人口の3%ぐらい住んでいました。
でも1億6千万人の3%ですから500万人ぐらいになります。
経済力があり、都市部に集中していましたから、首都のジャカルタには、会員制の高級店から、市場の2階にある薄汚い店まで色々ありました。
しかし中国人が良く行く店は、上下に関係なく料理の腕は本格的で美味しい店が多くありました。
取引先の社長に接待されるときは、会員制の高級店、
(「俺はここの会員だよ」という見栄もあります。)
仲間内でこっそり情報交換するならコタ(中華街)の市場の2階にある「日日飯店」(毎日レストラン位の意味)となります。
ルピア切り下げの情報も最初に聞いたのは、日日飯店の個室でした。

中華料理のメニューでインドネシアに来て始めて出てきた料理に、「ブルンダラー(鳩照り焼)」というのが在りました。勿論、食用に養殖された小鳩でサイズは大きめの雀ぐらい。
羽根をむしり、内臓を取って魚の開きのように平たくして、甘辛いタレをつけて焼きます。頭もついていて、まず頭を取って嘴をつまんで嘴以外は丸かじりします。味噌がやわらかくチュッと出てくるので其処を味わいます。因みに、ブルンは鳥、ダラーは血という意味です。

代理店の店員クラスと行く店は、中国人がやっているのは確かなのですが、雰囲気はインドネシア料理の屋台とあまり変わらないぐらいで中庭でベンチに腰掛けて食べます。
ここまで来ると、メニューも純粋な中華料理からやや離れて、エコールクニン(尾びれが黄色いという意味)の焼き魚などもあって、味は鯵の焼き物に似ていますが、どう見ても熱帯魚にしか見えません。
2センチぐらいの小さい牡蠣を卵とじにした料理はとても美味しく感心しましたが、このサイズから見て養殖ではなく天然物を使っていると思います。
しかしながら、都市下水が流れ込む、ジャカルタ港周辺の海水の色を考えると思わず「天然と云ってもなぁー」と心配になってきます。
部下のフセイン課長がよく言う「カラウ パナス ティダ アパアパ」(加熱すれば問題ない)を思い出して、うな垂れながら食べます。

場末に行くほど、インドネシアの食材で調理方法は中華料理という融合が進み、ごま油の代わりにヤシ油、豆板醤の変わりに、チャベー(現地産唐辛子)という進化が起きます。
東南アジアの街角で、アッここは中華街だと気がつく独特の匂いは良く熱した中華鍋で唐辛子をヤシ油でいためるときの、全く品が無いのに懐かしい匂いなのでした。

飯はナシ、魚はイカン、菓子はクエ。

私がインドネシア語を習い始めた頃、こんな風に単語を覚えました。不思議なくらい日本語で連想出来るインドネシア語の語彙がありました。ブルンと羽ばたく鳥、ダラーと流れる血、 クプクプ飛ぶ蝶々、疑問文は平常文の最後に「KA?」をつけるだけでOK等々。

まず、ナシ(ご飯)は、ナシゴレン(炒飯)、ナシプティー(白飯)、ナシラメス(混ぜご飯=白飯の上に煮物、揚げ物を並べてある)など在りますが、何しろお米はここの主食で一年に3回収穫できる国ですから、価格も日本の10分の一程度、国家財政が何度も破綻しましたが飢え死にする人など一人も居ません。しかしこの国のお米の流通の8割は中国系に握られているといいます。

食堂に入ると(おそらく日本人だけだと思いますが)、席に着くなり、卓上の皿、ナイフ、フォークを紙ナプキンでごしごし磨きます。
お店が気を悪くする風にも見えません。紙ナプキンがかなり黒くなるのを見ればやはりこれをやって良かったと思えます。

次にメニューを注文して、「サンバル アダカ?」(サンバル有りますか?)と云って出してもらいます。
日本ならさしずめ、塩、胡椒、醤油に相当する無料の卓上調味料になります。私に言わせればサンバルこそが、インドネシア料理の最も素晴らしい物の一つで、日本で言う沖アミのような小海老を塩付けにして醗酵させ、唐辛子や、得体の知れぬ液体を加え玉木屋の佃煮のような味に仕上げて有ります。これと白飯さえあれば、ほとんどほかの料理はいらないぐらいですが、後に来る日本人のためにも、そこそこのお料理を頼んで、お店の日本人感を良くしておかなければなりません。

アア! サンバルが無料だなんて!

イカンマス(金魚)

仕事で、車に乗ってバンドンに出張する途中で、良く「イカン マス」という看板が目に付きます。イカンは魚、マスは金ですから直訳すれば金魚ということになります。
助手席のフセイン課長にあれはどんなものか聞いてみると、ニカーと笑って、

「試してみますか?」
「勿論!」


ということになって、運転手のマルジュキ君に、一番いい店に止めろといいます。
街道から少し入った一軒家の横を水量豊かな川が流れていて、川から水を引き込んだ水深20センチ程度のプールがあります。
其処には数百匹の錦鯉が悠々と泳いでいます。
中には、1メートル近い大魚も居ます。これは鯉ではなく草魚の一種で、餌はプールの周りの雑草を刈り取って投げ込むだけですからコストは限りなくゼロに近いわけです。
最近日本で数百万円する錦鯉が話題になりましたが、見かけだけはあまり変わらない「イカンマス」は、一匹丸々料理して500円ほどでした。
料理方法は、一種類、直径1メートルほどの大鍋に油が煮えたぎっており、池から掬い上げたイカンマスを締めてから放り込みます。
お店は我々が運転手まで入れて3人なので60センチほどの中型のイカンマスにしました。
普段、マルジュキ君と我々は食事は同席しないのですが、60センチX胴回り30センチのイカンマスは2人では無理なので、今回は3人で挑戦します。

待つことしばし、それは大皿に乗って来ました。

各人の前には、小皿とナシプティー(白飯)、それに甘いソースに劇辛の唐辛子のみじん切りを入れた皿が出ます。
一斉に手でむしって、ソースにつけた身を食べるか、ご飯の上に乗せて一緒に食べます。
決して不味いわけではありませんが、一度で十分という感じです。 
草魚は成長が早く、30センチから60センチになるには約半年しか、掛からないそうです。秘密はプールの水深が浅く、成長するにつれて背びれが水面から出てしまい、じっとしていられなくて泳ぎ回る為、おなかがすいて餌を良く食べます。魚は食べた餌の量に比例して大きくなるそうです。

インドネシアのお菓子は、食紅などの着色剤を使い大量の砂糖を使って原色でとても甘いという印象です。私は一度も食べませんでした。

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