「沛然」の読み方は何でしょう?
昨日に引き続き、今日も漢字の話をします。
突然ですが、問題です。
沛然
この漢字、なんと読むかわかりますか?
ほとんどの方が分からないと思います。
正解は………
おっと、正解を出すのはまだ早いですね。
ちょっとずつヒントを出しながら、説明していこうと思います。
ところで、「肺(ハイ)」と「柿(かき)」って何か変だと思いませんか?
え、違和感に気づかないって?
わかりました。違和感の正体を一緒に考えていきましょう。
「熟柿」
質問ばかりで恐縮ですが、この漢字の読み方はわかりますか?
意味は読んで字の如く、「熟した柿」という意味です。
これは「じゅくし」と読みます。
つまり、「柿」の音読みは「シ」になるということです。
ただ、これは簡単に推理ができます。
なぜなら、「柿」のつくりが「市」だからです。
「市」は「シ」って読むでしょ?
「柿」の音読みが「シ」であるということは連想しやすいと思います。
では、話を戻します。
「肺」の音読みはなんでしょう?
これは簡単。正解は「ハイ」です。それ以外の読み方はありません。
(余談ですが、「肺(ハイ)」や「脳(ノウ)」や「胃(イ)」などは全て音読みで、これらの漢字に訓読みは存在しません)
なぜ「肺」のつくりは「市」なのに、「シ」と読まないのでしょうか?
「市」が含まれる常用漢字には、他に「姉」があります。
これは「シ」と読みますね。
読みに注目すると、「姉」「柿」と「肺」は異なるグループの漢字なんです。
実はこれには理由があって、それを説明する前に、もう1つ問題を出します。
「杮」
この漢字の訓読みはなんでしょう?
よく見てください。「かき」ではありませんよ。
ただ、これは有名な雑学なので、知っている人もいるかもしれませんね。
正解は……
こけら
です。
劇場が新築・改築した後に初めて実施される興行を意味する、「こけら落とし」なんかで使われます。
そもそも「こけら」とは屋根の上に残った木屑を表す言葉で、「こけらを落とす」すなわち建築工事が終了したということを意味します。
だから、改築後初の催しを「こけら落とし」というのです。
さて、「柿(かき)」と「杮(こけら)」ですが、違う漢字です。
わかりやすく書くと、こう。
左が「かき」で右が「こけら」。つくりが違います。
「かき」のつくりは「市(なべぶたの下に巾)」ですが、「こけら」の場合は縦画が貫いているのです。
そして、この「杮(こけら)」の音読みは「ハイ」。
もうわかりましたね。
もともとは、「肺」のつくりは「市(シ)」じゃなかったんです。
本当は「杮(こけら)」のつくりと同じで、縦画が1本だけだったはずなのです。
しかし、誤ったまま書き残されてしまったのか、ややこしいから一緒にしちゃえってなったのか経緯は不明ですが、今では「肺」も「姉」も「柿」も同じつくりになってしまっています。
それでは、お待たせしました。最初の問題に戻りましょう。
沛然
「沛」の字をよく見たら、つくりが「市(シ)」ではないことがわかると思います。
長い縦画バージョンですね。
ということで正解は、
ハイゼン
でした。
意味は「雨が激しく降る様子」です。
以上、漢字の秘密でした。
漢字って面白いでしょ?
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