見出し画像

『シンク・オア・スイム』

うつ病を患い、会社を退職して引きこもりがちな生活を送っているベルトラン。子供たちからは軽蔑され、義姉夫婦からも嫌味を言われる日々をどうにかしたいと思っていたある日、地元の公営プールで「男子シンクロナイズド・スイミング」のメンバー募集を目にする。ベルトランはチーム入りを決意するが、そのメンバーは皆、家庭・仕事・将来に何かしらの不安を抱えた悩めるおじさん集団だった!元シンクロ選手のコーチのもと、トレーニングに励むおじさんたち。そして無謀にも、世界選手権で金メダルを目指すことになるのだが…!?
(Amazon primeの紹介文)

悩めるおじさんたちがシンクロに打ち込むフランス映画。

似たような題材でいうと日本では『ウォーターボーイズ』が有名だが、こちらはおじさんたちが中心人物の哀愁漂う作品。

コメディー調ではあるが、抱腹絶倒という感じではなく、クスリと笑えるシーンが随所に散りばめられている。
ネタバレになるので詳細は避けるが、コーチをプールに落とした後の展開と、主人公が義兄と殴り合うシーンが特に面白かった。


🏊‍♂️🥽🏊‍♂️🥽🏊‍♂️🥽🏊‍♂️🥽🏊‍♂️🥽🏊‍♂️🥽🏊‍♂️🥽🏊‍♂️🥽


さて、この映画は主人公が抗うつ剤を服用するシーンから始まる。

「悩めるおじさん」がテーマということもあって、登場人物はみな何かしらの精神的な病を抱えている。

ふと気になって調べてみると、フランスは華やかなイメージとは裏腹に、精神病の多い国でもあるらしい。
国民の4人に1人は何らかの心や精神の病気を抱えてると報告されていて、そしてそのうちの75%が25歳の若年層とのこと。
(https://shohgaisha.com/column/grown_up_detail?id=1772)

理由としては、冬が長く日照時間が短いといった高緯度地域特有の気候的要因や、根強く残る階級社会の影響といった社会的ストレスが挙げられている。

フランスに限らず、ヨーロッパは「うつ病だと診断されたことのある人」が意外と多いのだが、翻って日本はその比率が低い。

しかしその一方で、日本は自殺率が高くなっていて、適切な診断・処置を受ける前に最終手段を選んでしまう人が多いということを意味している。
この「うつ病率は低いものの、自殺率は高い」傾向は、韓国や中国といった東アジアの国で共通して見られる特徴で、精神疾患のケアの観点でアジアはまだまだ未熟であるということになるのだろう。

「うつ病だと診断されたことのある人」の割合が高いというのは、精神疾患を抱えた者が社会的にしっかりと認知され、適切なケアを受けているということを意味しているのだ。


……と、ちょっと堅苦しい話になってしまったが、『シンク・オア・スイム』は楽しい映画なので、ぜひ見てみてください。

画像1


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?