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古舘伊知郎が歌った幻の名曲をカバー!FPM田中知之プロデュースでアナログレコードを作ってみた

かつて、古舘伊知郎が出した歌のレコードをご存知だろうか?初代タイガーマスクが引退前の1年間、入場に使用していた曲で、タイガーが引退したことによって姿を消してしまった曲だ。90年代に一度だけ『プロレスQ』というコンピレーション CDに収録されたものの、すでに廃盤。プロレスファンでさえもこの曲を憶えている人は少ないと思う。

作詞は「およげ!たいやきくん」で大ヒットを飛ばした高田ひろお、作曲は五木ひろしや石野真子、最近では純烈の曲を手がける幸耕作(のちにジャンボ鶴田の「明日があるさ」も作曲)というのも名曲の証。なんとか復刻できないものか、自分でカバーしてみたい、と僕はずっと考えていたのだった。

去年の夏、そんな話をラジオ番組で披露したところ、「その夢かなえましょうよ!」と言ってくれたのが、FPMの名で知られるDJ・音楽プロデューサーの田中知之さんである。記憶に新しい東京オリンピックの開会式の音楽監督が、楽曲プロデュースを直々に名乗り出てくれるという奇跡の状況には「迷わず行けよ」の選択肢しかない。そんないきさつから49歳でまさかの歌手デビューが決定。2023年にプロレスレコードの新作「燃えろ!吠えろ!タイガーマスク」が誕生したのである。

田中さんによると、今回のカバーでは原曲の発売時期である1982年に英国で流行した「ファンカラティーナ」というラテンとファンクを融合させたサウンドを採用したそうだ。佐山サトルがタイガーマスクになる前にサミー・リーとして英国を席巻したことを考えると、ぴったりのアレンジである。さらに、ギターでは、古舘さんの長男である古舘佑太郎さんに参加してもらって「本物の古舘ゲノム」を注入、チャラン・ポ・ランタンの小春さんが華のあるコーラスで参加、これ以上ない最高のジャケットは五木田智央さんが提供してくれた。原曲と同じく7インチのアナログレコード(EP盤)という形態も僕のこだわりである。

ちなみに、プロレスの実況アナウンサーが歌のレコードを出すのは、昭和の時代に活躍した倉持隆夫さんと松永二三男さん、古舘さんに続いて僕が4人目だが、彼らと異なるのは僕が無名であることと、プロレスもレコードも全盛期はとっくに過ぎ去っているということだ。令和の現在、こんな発掘作業にどれほどの需要があるのかはわからないが、B面には田中さんとの出会いやレコーディングの様子を自ら第三者目線で実況するバージョンを収録したので、ぜひとも聞いてもらいたい。

レコードの一般発売はわずか100枚。のちのち希少価値が出ることになれば最高だ。このEP盤は古舘さんが歩いた道を徹底的に模倣し、そして古舘伊知郎を愛で殺そうとする男による記録(レコード)なのである。


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そして、レコードプレーヤーを持ってないという方に向けて配信もやっています。サブスク含めてお聴きください。


※『ヘドバン vol.39』に掲載された「昭和のプロレス・レコード大百科」を加筆したものです。
※文中一部敬称略です。



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