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日雇い派遣で出会った変なヤツ

日雇い派遣で電子機器工場に行ったときのこと。

8時間、延々と同じ作業を続ける地獄のような時間が終わり、スカッとした気持ちで外に出てみると、ビックリするほどのドシャ降りだった。

「イヤやなあ、もう」憂鬱になりつつも、駐輪場へ向かう。一応傘は持ってきていた。

屋根つきの駐輪場で自転車のカギを出そうと、カバンをごそごそとしていたら、うしろから怒鳴り声が聞こえてきた。

「おい! お前!」

誰か絡まれてんのかな? と思いつつ、無視しながらカギを探しているとまたうしろから声が聞こえた。

「おい! お前や! お前!」

おそるおそるうしろを振り返ってみると、ド金髪の見るからにヤバそうなヤツがこちらを向いていた。

コイツは皆が集まる休憩室でギャーギャーうるさく騒いでいたヤンキーだ。ヤバそうなヤツだなあ 関わらないでおこうと、そう思った。まさにそのヤンキーがこちらをガン見している。

「まさか自分に言ってるんじゃないよな……」と周りを見渡してみると、私とそのヤンキー、二人きりだ。

ヤバい。絡まれてんのは自分だった。

「おい! おい! 無視すんな!」

「はっ、はいっ!」

ついに返事をしてしまった。

「ちょっとこっち来てみい」

「はいっ」私はビクビクしつつ、その人に近づいていった。「な、なんでしょうか……?」

「オイ、さっき、向こうの方で雷なってたよな!?」

「えっ!? えっ!? (なってたっけ?)」

「ああん!? なってたよな!?」

「えっ!? は、はいっ!! なってました! なってました!」

「うん、なってたよな……」

「はい……(知らんけど)」

「…………………」

「…………………」

「…………………」

「…………………」

「ほな、お疲れさん」

「え? あ、お疲れ様です……」

そう言って彼はドシャ降りの中、傘も差さずに自転車を漕いで帰っていった。

この出来事に関しては解説を付けようがない。まったく意味がわからんからである。

あったことをそのまま書いてみた。

こんなステキな出会いが、この文を読んだすべての人にありますように。

#エッセイ #ヤンキー #日雇い #雷

働きたくないんです。