神経質過ぎる日本人
私は日雇い派遣で色んな工場で検品の仕事をしてきました。
その度、毎回思います。
「こんな細かい検品、必要あるんかいな?」と。
たしかに精密機械とか高級品だと小さい傷でも致命傷になりますが、ほとんどは小さい傷が入っていても気にならないと思います。
たとえば缶の検品。
缶なんていくら傷が入っていても、飲む人は気にしません。「おい! 自販機でコーヒー買ったら缶に傷入ってたぞ!」なんてキレる人がどれだけいると言うのでしょうか。
なのに、虫メガネで見ないとわからないような傷がひとつでも入っていると「はい、廃棄」。
私たち消費者は虫メガネなんて常備しておりません。見える傷ですら気にしないのに、虫メガネでしか見えない傷なんて誰が気にするんでしょうか。
さすがに異物混入とかささくれ立った傷とかはダメですが、細かい傷は放置でいいと思います。
そんな細かい傷は誰のために見つけるのかというと、「納入先の企業のため」。
納入先の企業に気に入られたいがため、文句を言われないために傷アリの缶を排除する。
その納入先の企業も、次の企業に気に入られたいがために一生懸命検品する。
納入先企業も「消費者に傷アリのモノを提供できない」と厳しい検品基準を要求する。
そして、フジテレビの入社面接並みのしつこい検品の果てにその缶は我々消費者に届きます。
私たちは缶に入ったジュースを飲みます。
「うわー、今日もホリエモン、ツイッターでええこと言ってるわー、あージュース美味しっ、はい、ご馳走さん」
てな感じで缶には一瞥もしません。
企業は「消費者のため」としきりに言いますが、その神経質過ぎる検品が廻りまわって消費者のためになっていないような気がします。
厳しい品質要求でたくさんの企業が余計な仕事をかかえています。ただでさえ人手不足なのに、仕事が増える。長時間労働になる。労働環境が悪くなる。
今の仕事でも、蛍光灯に照らして10秒くらい見つめないと発見できない傷があるとやり直しです。時間がかかりますし、ゴミが増えます。
こんなことが日本企業全体で行われています。日本の生産率の低さはこの検品も一因だと思います。検品に時間をかけ過ぎです。
メイド・イン・ジャパンは高品質ですが、人手不足が進む中、以前と変わらぬ厳しい基準を要求されるとどうも手が回りません。
ちなみに私は元仏壇屋ですが、100万円以上もする仏壇でも傷が入っていることは多々あります。
そんなのいちいち気にしません。(店側が)
「店長、ここにそこそこ大きい傷がありますけど」と私。
「大丈夫。意外と見てないから」と店長。
そして、納品。
なんの苦情もありません。
位牌の文字を彫ると、失敗して傷が入ります。
「店長、ここに傷を入れてしまいました」と私。
「大丈夫。意外と見てないから」と店長。
そして、納品。
なんの苦情もありません。
「傷が入っていた」という苦情は私が勤めていた二年間、一度もありませんでした。「戸が勝手に開く」は何度かありました。それはその家の呪縛霊に文句を言ってください。
「仏を扱う」仏壇や位牌でさえ、コレなのです。缶の傷なんか誰も気にしません。
厳しい品質基準、厳しい検品、ちょっと見直す時期に来ていると思いませんか?
働きたくないんです。