ランボー 怒りのスマホ購入
「このオプションをつけていただくとですね、なんと、毎月300円も安くなります」
こいつはさっきから何を言ってやがるんだ。俺は今話題のスマホを買いに来ただけだってのに。オプションって何だ?
「さらに今回はこの防水テレビを特別価格でお付けします」
なんだと? 防水テレビだと? どういうことだ? なんでスマホを買ったら防水テレビがついてくるんだ? 意味がわからない。しかし、これがあると風呂でテレビが見られるってわけか。畜生、欲しくなってきやがったぜ。
「こ、これは、月額いくらだ?」
「月々1000円になります」
ホーリーシット! 月額1000円で、風呂でテレビが見られるってわけか。買わない理由がない!
「それじゃ、頼む」
「かしこまりましたー」
これで、俺も風呂で退屈することはない。もう、すね毛を延々とむしることもなくなるはずだ。
この防水テレビと、スマホ。これがあれば、熱帯雨林のジャングルでだって問題なく使えるな……ってちょっと待て。
俺が買ったスマホって防水じゃなかったか? しかもテレビ機能だってついてる。
ガッデム! 防水テレビなんて必要ないじゃねえか! なんてことだ! こいつ、俺を騙そうって腹か!
「おい! やっぱりさっきの防水テレビはやめだ」
「お客様、申し訳ありません。さきほど2年契約で手続きしてしまいました。解約月以外に解約されますと、1万3800円がかかります」
「ど、どういうことだ? まだもらってもないぞ」
「申し訳ありません。今、解約されますと、解約料がかかってしまいます」
ジーザスクライスト! まだ一度も見てもさわってもない物をキャンセルするだけで1万3800円だと!? ふざけるな! この詐欺師め!
「こ、このサノバビ……」いかん、いかん。ついつい口が悪くなってしまうぜ。ここは日本だ。礼儀正しくいかないとな。「そ、それはあんまりじゃないか」
「申し訳ありません」
こいつ、さっきから謝ればそれでいいと思ってないか? 畜生、なめやがって。
「お前、そもそもなぜ防水テレビを勧めやがった? 俺がテレビ機能つき防水スマホを買ったのにも関わらずだ」
「こ、これは社内の規定でして、みなさまに一通り説明する必要があって……」
「こ、このマザーファッ……、そんなもの知るか! 防水スマホを買った奴に防水テレビを勧めてどうする? バカかお前は!」
「申し訳ありません」
畜生、こいつでは話にならん。「おい、責任者を出せ!」
「お客様、申し訳ありませんが、責任者は今日、お休みをいただいてまして……」
「今すぐ呼べ! このサノバビ……お、お前!」
「お客様、大声で怒鳴るのはやめてください。他のお客様に迷惑になりますので」
「そんなの関係ない! これは俺の地声だ! 早く出せ!」
「ちょっと、警察を……」
おい、それはマズい。俺は一度、警察と揉めて街を破壊したことがある。あれはやりすぎた。「ちょ、ちょっと待ってくれ。わかった。買うから。防水テレビ」
「そうですか。それでは手続きさせてもらいます」
ふー。今回は俺の負けだ。まあ、いいじゃないか。防水テレビ。画面もスマホよりちょっと大きいし……ってちょっと待て。
「おい、お前手続きはさっき終わったって……」
「手続きしますので、少々お待ちください」
ち、畜生! もう我慢の限界だ!
「お客様! やめてください!」「キャー」「け、警察を呼べ!」「や、やめろ!」
その後のことは覚えていないが、今、留置所にいるから、またやりすぎたんだろう。あんなキレたのはベトナム以来だ。まったくグレイトだぜ。
働きたくないんです。