仏壇屋のお仕事紹介『住職に怒られる』
今回紹介する仕事は『住職に怒られる』です。
「そんなのが仕事なの?」と思うかもしれません。私もそう思います。
仏壇屋の仕事は「仏教」を扱うので、各々の考え、やり方があります。「浄土真宗はこうだから」と思ってやると、「ワシの寺はそんなことはせん!」と怒られることがあります。
怒られつつ、学んでいきます。まあ、仏壇屋に限りませんが。
住職のセリフと共に怒られた内容を紹介していきます。
「お布施の額を言うな!」
これは仏壇屋で働くと一度は言われるセリフです。
お客さんに「お布施っていくら包んだらいいんやろか?」とよく聞かれます。私は答えます。「相場は三万くらいですかね」
すると怒られるんですな。
お布施というのは「気持ち」です。いくら包んでもいいんです。300円でもいいし、三万でもいいし、30万円でもいいです。
なので、私が「三万です」と言ってしまうと、貧乏な人は「三万も!?」と困りますし、大金持ちの人は「三万でいいんや。ラッキー」となってしまいます。住職も30万円もらえるはずが、三万だったらとっても残念でしょう。
なんでお布施の金額を言ったことがバレてしまうのかというと、そのお客さんが住職に言うんですね。「仏壇屋に三万でいいって言われた」と。
なので、お布施の金額を訊かれても絶対答えないことが大事です。
「お布施っていくら払えば……」
「気持ちです」
「それはわかってるけど、でも相場がわからん……」
「気持ちだからいくらでもいいです」
「ここだけの話、ちょっと教えてほし……」
「住職に直接訊いてください」
こんな感じであしらいます。冷たいようですが、怒られると面倒くさいので、これでいいんです。恨むなら値段を決めない仏教界を恨んでください。
「位牌が一ミリ高い!」
位牌作りのルールは「先祖の位牌より大きく作ってはいけない」です。
小さくするのがいいですが、同じ大きさでもいいんです。
しかし、やたらと位牌の大きさに厳しい真言の坊さんがいました。檀家さんの位牌は寺で注文を受けて、仏壇屋に注文してくるのですが、言ってくることがやたらと細かいんです。
「高さは20.4cm。それ以上でも以下でもダメ」
そんなバッチリ高さに合う位牌なんて既製品にはない。じゃあどうするのかというと、位牌の底をガリガリ削ったり、フェルトを貼ったりして、高さを調節、バッチリ20.4cmにします。
これが一ミリでも狂ってしまうと、「位牌が一ミリ高い!」と怒鳴りこんでくるのです。
こういう難しいことばっかり言ってるから、仏事離れが起こるんです。寛容な心を持ちましょう。
「紹介料が安いけど……他はもっとくれたで?」
お寺から紹介を受けて、仏壇が売れると紹介料を渡します。金額の10%が相場らしいですが、ウチは少なかったようです。社長がケチだからです。
「ウチは経営が厳しいからな!」と社長は言います。
冷静に考えて紹介料が5%のところと10%のところ、どっちに紹介するか、わかりそうなもんですが……
それはともかくあまりに紹介料が少ないと、文句を言ってくる人がたま~にですが、います。煩悩ハンパねえです。
仕方がないので、もうちょっと渡します。住職は大変うれしそうでした。
個人的に一般の人より坊さんの方が煩悩にまみれていると思います。なんのための修行?
「納品が早い!」or「納品が遅い!」
注文された品を納品するとき、あまり早く持って行くと怒られます。
「納品は早ければ早いほどいい」っていうのが普通だと思います。普通の会社はこの考えのせいで、やたらめったら短い納期を求められます。
そんな普通の感覚で、速攻お寺に納品すると怒られます。「早い! 使うの二週間先やぞ! 邪魔になる! 三日前でええねん」みたいなことを言われます。
こういう経験があるので、違う寺に同じように三日前に持っていきました。すると「アンタのところはこんなギリギリに持ってくるんかい」と怒られます。
持って行く時期くらいこっちで決めさせえ。
★★★
お寺というのは共通したルールや常識がありません。言わば、「住職がルール」なのです。だから住職ごとのルールをしっかり理解し、行動しないといけません。
要は大変メンドクサイ、ということです。
住職の煩悩が憎い。
働きたくないんです。