仏壇から出てきたイヤなものランキング トップ3
仏壇の中には色んなものが入っています。
仏壇を処分するとなると、それらのものを一度あけて見ないといけません。
何十年にも渡ってご安置された仏壇。何代ものその家の人が「捨てるに捨てられない」ものを入れてきました。
なので、ワケのわからんものが沢山出てきます。
そのなかでも、嫌だったものを元仏壇屋の私がランキングにして紹介します。
3位 へその緒
「仏壇の中のものあるある」では「へそくり」と双璧をなすものが「へその緒」です。「捨てるに捨てられないもの」の代表でもあります。なので結構な確率で出てきます。
「生命の神秘」「子供との大切なつながり」
とか、言うとる場合ではありません。
カラッカラです。初めて見たときは本気でゴミの塊かと思いました。
木箱に入っている場合は良いのですが、問題はティッシュに包まれただけのへその緒です。
一応、見ますわな。ゴミかと思いますわな。でも、「生命の神秘」カラッカラのへその緒なんですな。
「捨てるに捨てられない」大事なへその緒をティッシュに包んで、適当に仏壇の中に放り込む。
それって大切な物の扱いとして、どうなんでしょうか?
大事に取っておくのはいいのですが、ティッシュに包むだけ、というのはやめておきましょう。いつかゴミ箱にポイされます。
2位 離婚届
その家の奥さんと旦那さんとで、仏壇の中身の選別をしていたときのこと。
その夫婦は50代くらいのとても仲の良い夫婦で、ふたりで「懐かしいね」とか言いながら、仏壇の中身を見ていました。
すると、下の方から一枚の紙が出てきました。
「あら、これは何かしら?」取り出した紙を見た奥さんの顔が引きつりました。「離婚届……」
「お、おい。な、なんでこんなものが入ってるんだ!」旦那さんは戸惑いを隠せません。
「わ、わたし知らない」
「お前の名前がしっかり書いてあるじゃないか!」
奥さんは一度離婚を考えたのでしょう。しかし、自分の名前を書いたあと、踏みとどまり、「もう一回チャンスを与えてやろうかしら。次の浮気でこれを出してやるわ!」と、とりあえず仏壇の中に放り込んだ。そんなところでしょう。あくまで私の予測ですが。
奥さんはその紙をグシャグシャにし、なにごともなかったかのように選別を再開しました。そのときの空気の悪さたるや、ハンパではありません。
あれほど仲のよかったふたりが険悪になり、その場にいるのが辛くなった旦那さんは部屋から出て行きました。
その旦那さんは最後まで出てきませんでした。あの夫婦は結局どうなったのか。それは私も知りませんし、他人事なのであまり興味もありません。
1位 札束
仏壇を引き取り、店の地下に置いたあと、いつも通りひとりでサボっていました。そのとき下台の奥の方から、それは出てきました。
「さ、札束……」しかも、100万円くらいはありそうです。
私はそれを素早く上着の内ポケットに入れ、ウロウロしました。あまりの衝撃で覚えていないのですが、気がつくと駐車してあるトラックの荷台で仰向けになっていたりしたことから、かなりの動揺をしていたのでしょう。
ウロウロしながら、なにが起こっていたかと言いますと、自分の中の天使と悪魔が私に絶えず、話しかけていたのです。
天使「オイ、100万やぞ、100万。1万ぐらいやったらワシも目つぶるわい。でもな、100万はあかん」
悪魔「いやいや、誰も見てないんやから、ネコババしたったらええねん」
天使「あかんあかん。きっと持ち主も困ってはるわ」
悪魔「わからんて。どうせ誰かのへそくりやねんから、持ち主も気づいてへんて」
天使「アンタは昔から正直者でええ子やった。ワシはな、アンタにはずっとええ子でおって欲しいんや」
悪魔「正直者でおってよかったこと一度でもあったか? 結局悪いヤツが勝つんやで」
天使「バレたら、逮捕やで。刑務所やで。前科モンなんか彼女できひんで」
私「彼女できひんのは困る。返しに行こう」
ということで、悪魔をドツキ回したあと、持ち主に返しに行ったのでした。
あの天使のひとこと。そして私の類まれなる性欲がなければ、ネコババしていたに違いありません。もしかしたら前科がついていたかも。
精神的に大いに消耗させた。そういう意味では断トツでイヤなものでした。
★★★
ちなみに札束の持ち主である奥さんいわく、「ケンカしたとき、今は亡きお義母さんが隠したんです。ずっと探してたんです! ありがとうございます!」とのこと。
お姑さんよ……天寿を全うしたなら、死ぬ前に出してやれよ。仏壇をひっくり返さないと見つからないような場所に札束は隠してあったのです。
「死んでも渡すか!」を体現した、数少ないお姑さん。きっとあの世で「キィィィィ! 見つけよった!」と悔しがっていることでしょう。
私がこの前、信号無視の車に轢かれそうになったのは、その姑さんの呪いかもしれません。
大概のいさかいは当事者の死によって終わるが、「嫁姑問題」だけは死んだあとも続く、ということを知った世にも恐ろしい話でした。くわばら、くわばら……
働きたくないんです。