仏壇屋のお仕事紹介『仏壇販売』
今回はいよいよメインの仕事、『仏壇販売』です。
これができて初めて、仏壇屋を名乗ることができます。
気をつけるポイントがいくつかあります。
・宗派、菩提寺
・置き場所
・仏具
・予算
順を追って説明していきます。
宗派、菩提寺
宗派によって仏壇は違いますので、お客さんが来たらまず宗派を聞きます。
浄土系(「南無阿弥陀仏」の宗派)は金仏壇、日蓮系は法華壇(位牌を入れる部屋がある)、それ以外は唐木仏壇(黒いやつ)です。
モダン仏壇(家具みたいな仏壇)はどの宗派でもいけます。
仏壇販売はまず初めに宗派を訊かないとどうにもなりません。
あと一応、菩提寺も聞きます。寺によってもやり方が違ってくるからです。「あの寺の住職はうるさいから、ちきんとした仏壇じゃなきゃダメだな」というひとつの判断になります。
とは言っても最近は住職の力も弱くなってきてますので、好きな仏壇で良いのですけどね。「金仏壇は目がチカチカするからイヤ」という人も増えてます。たしかに、にしきのあきらを彷彿とさせるあのキラキラ感では、嫌悪する人の気持ちもわかります。
置き場所
どこに置くのかもしっかり訊かないといけません。
仏間なら普通の仏壇。
タンスやサイドボードの上なら上置き仏壇。
仏間の寸法も訊きます。お客さんがしっかり測ってくれていたら問題ないのですが、「え~っと、これくらい」と両手を広げて適当に答える場合は、自ら家まで行って測ることもあります。
置き場所には気をつけないといけません。安置するときになって「入らない」という最悪のケースにもなりかねないからです。
仏間のサイズより少し余裕を持たせ、小さめを選ぶのがポイントです。仏間いっぱいだと安置するときに大変苦労します。仏壇屋が。
仏具
仏具も宗派によって違い、また寺によっても違います。
同じ浄土宗でありながら、「あの寺は木魚がいる」「あの寺はいらない」という風に寺によっても使う仏具が違ってくるのです。
「ややこしいから全部つけちゃえ」と言いたいところですが、こちとらちょっとでもケチりたいので、つける仏具も最小限にしないといけない。
仏具はすべて仏壇の値段の中に含まれています。それでも「この仏具も付けますよ」と恩着せがましく言うことがポイントです。恩を着せて少しでも仏壇の値引きをさせないようにします。
仏壇を売る前に仏具をすべて仏壇の中に置いてイメージを沸かせる、というテクニックもあります。仏壇だけだと味気ないので、仏具を置くと豪華に見えます。
予算
仏壇にも定価があるのですが、かなりのどんぶり勘定です。
「定価で売れば大儲け、値引きでもまあまあ」みたいな感じです。
昔は「仏事を値引くと悪いことが起こる」という考えがあったので、定価で買う人が多かったみたいですが、最近の人は勇猛果敢に値切ってきます。
店長は散々値切られたあと、ブチ切れながら「あの客は地獄に落ちる」とかほざいてましたが、地獄に落ちるどころか浮いた金で寿司でも食っているでしょう。
仏壇選びより、値引き交渉に時間がかかることもあります。「これ以上値引けない」と言うと、「じゃあ良い仏具付けてよ」となり、また時間がかかります。こっちもゴネたいところですが、「なんでアレつけてへんねん!」と住職が乗りこんでくる場合もあるので、落としどころが難しいです。
かといって、住職の言う通りにすると社長にキレられ、お局さんに3日に渡る嫌がらせを受けるので、ホント難しいです。
ただ、買う人はゴネてください。ゴネてゴネて、ゴネまくるのです。するとビックリするほど安くなったり、ひとランク上の仏具をつけてくれたりします。仏壇屋からするとやっかいなことこの上ないですが。
ウチの場合、売ってもホメられることがなく、給料が上がるワケもなく、売るメリットが皆無なので、私は仏壇のお客さんからは逃げてました。だって面倒くさいんですもの。
★★★
以上が仏壇販売のポイントです。
他の販売業と違い、住職というやっかいな存在が絡んでくるので、考えながら売らないといけないのが大変なところです。好きにさせえ。
次回は、『仏壇の納品』です。
働きたくないんです。