マガジンのカバー画像

仏壇屋の憂鬱

40
仏壇屋での体験や、仏事に関する情報を書いてます。
運営しているクリエイター

#社長

変化が怖すぎる社長

仏壇業界は「伝統を守る」という大義名分のもと、「変化しないこと」が美徳とされてきた。変化する必要がなかったのである。 変化しないと生き残れない時代でも、ずっとあぐらを組んで、なにもしてこなかった。 今まで通りのことを、繰り返し、するだけ。 それではいけない。仏事離れが急速に進んでいる。 仏壇業界の人たちは沈みゆく船に乗っていると言っていい。 しかし、なにもしない。ジャックとローズみたいに足掻いたりしない。 じーっと助けを待っているだけ。 「伝統を守りたいから」と

「元引越屋」の静子さん 2

前回までのあらすじアホの社長のせいで、華奢な静子さんと、私とで重たい仏壇配達に行くことになった。 ★★★ 静子さんを助手席に乗せ、配達先に向かうとそこはマンションだった。部屋番号から推測すると、エレベーターなしの三階である。すなわち最悪である。 「わたしで大丈夫でしょうか……?」静子さんは泣きそうな顔で言った。 「だ、大丈夫ですよ……」私は心にもないことを言った。 マンションの下に車を停め、仏壇をひっぱり出す。仏壇は本体と下台で分かれるようになっている。 下台は小

「元引越屋」の静子さん

引越屋で長いこと働いていた、静子さん(仮名)がパートとして仏壇屋に入ってきた。口数が少ない大人しい人で、年はアラフォーくらい。 華奢な体型で、ちょっと大きな段ボールすら持てそうにない人だった。 なので、静子さんは働いていた引越屋で、事務員をやっていたことが容易に想像できる。というか、男でもキツイ引越作業を女性がするのはちょっと考えられない。 そんな当たり前のことが、ひとりだけわかっていない人がいた。若山富三郎そっくりの社長である。 ★★★ ある日、仏壇の配達が同じ時

コロコロ社長

私が働いていた仏壇屋の社長は、映画『ブラックレイン』に出てくる若山富三郎にそっくりだった。腹が出ており貫禄たっぷり。しょっちゅう怒鳴る70歳を越えたおじいちゃんだ。かなりイカつい。 こんな社長が2階でずっとテレビを見ているのである。仏壇の接客をしているときは気になるらしく、2階からのぞく。正直やりにくくて仕方ない。 さらにこの社長はなにもできない。仕事はおろか、カップラーメンすら作れない。 なにもできないのに、威厳はしっかり保とうとする。 仲の良い住職が来たら、威厳を