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仏壇屋の憂鬱

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仏壇屋での体験や、仏事に関する情報を書いてます。
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#寺

太りすぎて奈落に落ちた店長

店長は肥えていた。 ありきたりな表現だけど、タヌキみたいな腹をしていた。体重も当然重い。 この店長は少々変わっている。 5時間かけて接客したお客さんの顔を次の日には忘れていたり、大和洞川に代々伝わる薬「陀羅尼助丸」をボリボリおやつ感覚で食べたり、お客さんのところに仏壇の掃除に行ったはずのに、なぜか血まみれで帰ってきたり…… ネタには事欠かない店長と工場の職人とで、お寺のお荘厳の移動に行ったときのお話。 寺と庫裡(『くり』住職が住むところ)の渡り廊下で、バケツリレー方

阿弥陀さんの指を折る

仏壇屋の仕事は仏壇を売るだけではない。お客さんの仏壇を預かって綺麗にしたり、位牌を預かり文字を彫ったり、お寺のお荘厳(飾り)を移動したり…… とにかく古いものを取扱う仕事だ。当然替えはなく、失敗は許されない。 そんな中でも一番古かったものが「江戸時代に作られた仏像」であった。お寺の屋根を直すので、それを移動してほしい、という仕事が入ってきたのだ。 工場から職人を数人呼び、作業にあたることになった。 作業現場は山の中腹にある浄土真宗の寺。真夏だったが、空気はひんやりと涼