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仏壇屋の憂鬱

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仏壇屋での体験や、仏事に関する情報を書いてます。
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#仏像

仏像の洗い方

「仏像を綺麗にしたってくれへん?」 こんな依頼がたまに来る。 仏具の中でも、仏像は特に触ることが憚られる。なんせ仏さんそのものだ。「触るなんて考えられない」という人も。 なので、めちゃくちゃホコリが溜まる。 そこで仏壇屋である我々が預かって綺麗にするのだ。 お客さんは「なにか特殊な方法で綺麗にしてくれるんだろう。なんてったって仏を掃除するんだから」と思うかもしれない。 ということで、仏壇屋である私がしていた仏像の洗い方を紹介しようと思う。 1.クモの巣だらけの地

つまようじを持つ日蓮上人

仲の良いお客さんに日蓮宗のおばあちゃんがいた。日蓮宗は「南無妙法蓮華経」の宗派である。 日蓮宗を作ったのは日蓮上人という人だ。 そのおばあちゃんは多くのお金をかけて、日蓮さんに尽くしてきた。彫りものが入った仏器(ごはんを入れる器)を買ったり、沢山お供えがしたいということで経机を二つ買ったり、仏壇の高さが気に入らないと言って、特注の台を作ったり…… 毎日のお題目はかかさず、とにかく日蓮さん一筋の健気なおばあちゃんだった。 そんなおばあちゃんの家に仏壇の掃除に行ったときの

阿弥陀さんの指を折る

仏壇屋の仕事は仏壇を売るだけではない。お客さんの仏壇を預かって綺麗にしたり、位牌を預かり文字を彫ったり、お寺のお荘厳(飾り)を移動したり…… とにかく古いものを取扱う仕事だ。当然替えはなく、失敗は許されない。 そんな中でも一番古かったものが「江戸時代に作られた仏像」であった。お寺の屋根を直すので、それを移動してほしい、という仕事が入ってきたのだ。 工場から職人を数人呼び、作業にあたることになった。 作業現場は山の中腹にある浄土真宗の寺。真夏だったが、空気はひんやりと涼