性的同意サービス「キロク」利用規約を読み解いてみた
利用規約ウォッチャー みなしボウイです。
2023年12月「性的同意サービス キロク」がリリースされ、メディアでも取り上げられる等、話題となりました。このサービスは、「『不同意性交等罪』で「本当は同意していなかった」という相違を防ぎつつ、その場の雰囲気を壊さず性行為の同意をお持ちの端末上で行える」ということです。
今回、「キロク利用規約」をウォッチしていきます。重要な3つのポイントに注目して利用規約をウォッチしていければと思っています。
安心安全にサービスをご利用頂けるポイントになりますので、最後までよろしくお付き合いください。
そもそも「性的同意」とは?
複数の論説等を見ましたが、「刑法の言うところの性的同意」と、それよりも解釈の広い「当事者同士の性的同意」、の2つがあるのだろうと思いました。
刑法の言うところの性的同意
改正刑法では、「同意しない意思を形成し、表明し、若しくは全うすることが困難な状態」でわいせつ行為を行った場合には不同意わいせつ罪が、性交等を行った場合には不同意性交等罪が成立することになります。
では、「同意しない意思を形成し、表明し、若しくは全う困難な状態」は具体的にどういった状態であるのか、法務省の見解をまとめると下記になります。
被害者を上記いずれかの状態にさせ、あるいはそのような状態にあることに乗じて、わいせつな行為又は性交等を行うことにより、不同意わいせつ罪や不同意性交等罪が成立することになります。
当事者同士の性的同意
いくつかの考え方があるようですが、ある程度まとめると、「性的同意」とは、全ての性的な行為(手をつなぐ、キスする、セックスするなど)に対し、お互いがその行為を積極的にしたいと望んでいるかを確認すること、のようです。
いかがでしょうか。
私は、「刑法の言うところの性的同意」と「当事者同士の性的同意」というのは、重なる部分はあるが別のものだと思っています。刑法の言うところの性的同意とは、嫌疑・事案があってそれが刑事罰の対象となるのかどうかであり、当事者同士の性的同意とは、嫌疑・事案とは別に当事者が意思疎通を明確に図ることの大切さや思いやり、なのだと思います。
性的同意アプリは本当に役に立つのか?
これはなかなか難しいところであると思われます。性的同意に限らず社会には様々な「同意」がありますが、同意というのは良好な関係性が続く上ではほとんど問題にならず、紛争時に「同意の有効性」が問われてくることになります。
刑事事件の場合、具体的にどういった事案で犯罪が成立するかどうかは、捜査機関が情報を収集し、個別の証拠に基づいて裁判所で判断されますが、被害者の証言のみで犯罪が成立するか否かを判断することはなく、同意書なら全て考慮されるというわけでもなく、他の証拠も含めて最終的に判断することになります。
また、性的同意アプリがいわゆる「同意書」と同様の効力を持ちえるものになるのか、という問題もあります。このことは、「キロク利用規約」でも触れられています。
どのような「性的同意」が理想的なのか?
性行為の場面だけを切り取って同意とするのか、性行為を含めた当事者の関係性まで含めた同意とするのか、これによって同意のあり方も変わると思われます。
例えば、お互いの関係性が見えていて、同意書やそれに類する書面を作成して性行為をすること自体に当事者同士が抵抗がないのであれば、それはそれでよろしいように思います。ただこれでも、お互いが冷静に判断できる場面で同意する必要があるでしょう。
一方で、「初見で酒の席からのワンナイトラブ」のようなシチュエーションであった場合、性的同意を何らかの形に残すことが現実的に可能なのか?とは思います。一つ考えられそうなことは、自身の性行為や関係性に関する考え方について記録を残しそれが認証されていて(認証方法などは別途ですが本人確認等は必要でしょう)、何らかの紛争時に証拠の一つとして差し出せる(ようはサービス上で性的同意があったかどうかは問わず、あくまで争うのは事件となってから)、そういったソリューションがあればアリなのかもしれません。
今回は、このあたりで終わります。ありがとうございました。
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